第17話 おねーさんキレイだし優しいし……って油断してたあたしがバカだった
やっほ〜甘奈だよー!
今回はね〜なんか学校でめっちゃキレイなおねーさんに話しかけられたんだけど……なんかヤバかった!?!?
てか、お茶ってふつうリラックスするもんじゃん!?ねぇ!?
甘奈とヤーラは暇をもて余していた。
ミルダン校長が「少し彼と話したい」と言って玉と場所を移し、甘奈たちは最初に案内された応接室に戻って待っているところだった。
「こちらを飲んでお待ちくださいね」
しばらくすると事務員さんらしき女性が、お茶を持ってきてくれた。
ハーブティーだろうか。ふわっと香る独特のにおいは、なんだか健康に良さそうな気がする。
「ありがとうございます! ちょうど僕、喉が渇いてたんです」
そう言って一気に飲んで、案の定むせるヤーラ。
甘奈も一口飲む。ちょっと苦いけど、美味しい。
ふふ、と笑う女性。整った顔立ち、長い銀髪、華奢な体に上品な仕草――どこを取っても“美人”という言葉が似合う人だった。
思わず、見惚れてしまう。
「話は聞いてます。すごい魔導具をお持ちなんですって?」
ふさっと揺れる髪から、ふんわりいい匂いがしそうだった。
「思ったような機能じゃなかったみたいで、副校長が途中で帰っちゃって……」
「まあ、そうなの」
彼女は少し残念そうに言った。
「クラヴィス様も必死なんですよ。魔族を倒そうと……」
さらりと私の手の上に、自分の手を重ねてくる。
同性なのに、なぜかドキドキしてしまった。
「でも、魔族は穏やかな種族って聞いたけどな……」
食堂での玉とのやり取りを思い出して、ぽつりと呟いたあたしに
「誰がそんなこと言ったの? 魔族は、存在そのものが危険なのよ」
「え?」
横にいたヤーラと顔を見合わせる。
「この世に存在しちゃいけないの。根絶やしにしなきゃ……ね?」
にっこりと微笑んだ彼女は、とても美しかった。
でも、同時に――怖かった。
「ね、だから……あなたにも協力してほしい、な」
そう言って小さく首を傾げる仕草は、どこかあざとくもあり。
(協力って何を!? てか、これが“あざとかわいい”ってやつなの!?)
「セラさん? どうかされましたか?」
そのとき、扉が開き、ミルダン校長と玉が入ってきた。
“セラ”と呼ばれた彼女は、甘奈からすっと手を離し、何も言わずに「失礼しました」とだけ告げて部屋を出ていった。
そんな彼女を、玉はじっと見つめていた。
「彼女に……なにか言われたのか?」
「え、あ……うん。魔族は根絶やしにしたほうがいいって」
「……そうか」
「意外……玉も、人に興味あったんだね」
「何言ってんだ」とでも言いたげな顔でため息をついて
「ほら、宿に帰るぞ」と背を向ける玉についていった。
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馬車の揺れが、いつもより心地よかった。
まぶたが、重い。
「……なんか、眠いかも」
「僕もで――」
ヤーラは言い終える前に、こてんと私の肩にもたれかかってきた。
「気を抜きすぎだろ。まだ夕方前だぞ」
玉の声が、遠くに聞こえる。
誰かが近くで、なにかを確認しているような気配がして――
「……やられたな」
それが、あたしの意識に残った最後の言葉だった。
んでね、寝ちゃったの。あたし。しかもめっちゃグッスリ。
あの、おねーさん。お茶に何か入れた???
……まさかね。




