第16話 天才魔導師ノクスって……それ、玉のこと!?
やっほ〜甘奈だよー
今回はね、魔法学校の中を案内してもらっちゃった〜!
もうマジ映えスポットだらけで、住みたいレベル✨
研究室を出て帰ろうとしたそのとき、背後から声がした。
「ほう、もう終わられましたか。これは驚きだ」
柔らかな声に振り向くと、副校長のクラヴィスとは対照的な、白い髭の老人が立っていた。
その穏やかな目が、一瞬だけ玉の方をとらえる。
まる何かを探るかのように――けれど、そのまま何も言わず微笑んだ。
「このたびはわざわざお越しいただきありがとうございます。クラヴィスは中に?」
甘奈が先ほど起こったことを話すと、老人は軽く頭を下げた。
「それは失礼を……彼は研究熱心なあまり、つい他人への配慮を忘れてしまうことがあるのです」
そう苦笑しながら彼は言った。聞けばこの学院の校長でミルダンというらしい。
「ちょっとびっくりしただけだから……それより、あっさり終わっちゃったねー。拍子抜け!」
最初の予定通りギルドに向かうか話し込んでいた時だった。ミルダンが口を開く。
「お急ぎでなければ、校内をご案内しましょうか。今日はクラヴィスが授業を切り上げたようで、生徒もほとんど残っておりません。静かな時間帯というのも、また趣があるものです」
ミルダン校長が白い髭をくるりと撫でながら言った。
「みたいです!」
ヤーラは耳をパタパタさせ、甘奈も目を輝かせた。
「異世界の学校とか興味あるー!」
一方、玉は興味なさげに遠くを見ていた。
その姿に、校長の視線がふと向けられる。
一瞬、懐かしいものを思い出すように目を細めたが、すぐに視線を外した。
講義室、図書室、食堂――。
どこも名門校らしく、整然としながらも独特の趣が漂っていた。
「え、なにこれ……映えスポットだらけじゃん!!」
「あ、でもカメラとしては使えないんだった!」
「本がいっぱいあります……!ちょっと見てみていいですか?」
甘奈とヤーラがきゃっきゃと騒ぐ中、玉はふと足を止めた。
分岐する通路の先を、じっと見つめている。
「玉、どこ行くの?」
甘奈の声に、玉は我に返った。
立ち止まったままの彼を、ミルダン校長が静かに見つめていた。
その目には、どこか確信に近いものが宿っていた。
「……ひとつ案内しておきたい場所があります。ちょうど近くですので」
連れてこられたのは、校舎の裏手にある静かな場所だった。
ドアも壁もないアーチ状の入り口の奥に、小さな石碑が整然と並んでいる。
「ここは……?」
甘奈が声をひそめて尋ねた。
「この学院の出身者で、戦争や研究中の事故で命を落とした者たちを祀った場所です。楽しい場所ではありませんが、大切な場所です」
「……ちゃんと見ていきたいです」
甘奈は石碑の前で静かに手を合わせた。ヤーラも慌てて真似をする。
その奥、一際目を引く場所に、唯一の肖像画が掲げられていた。
「……この人だけ、絵があるんですね」
「学院始まって以来の天才でした。理屈より感性で魔法を操り、誰よりも研究に没頭していた……」
ミルダン校長が目を細め、わずかに声を震わせる。
「国の主導した魔導実験で命を落としたと聞いています。本当に、惜しい人材でした……」
「……凄くきれいな人。玉、ちょっと雰囲気似てない?」
「……ああ。彼も、あまり多くを語らぬ男でした」
玉は、まるで鏡を見るように、その肖像画をじっと見つめていた。
回想が、彼の内に蘇る。
魔方陣が床一面に描かれ、淡く光を放っていた。
中心にあるのは、黒く禍々しい《玉》――結界の魔方陣内にあるすべての魔力を吸い上げている。
その周囲には、倒れ伏した魔導師たち。
魔力を吸い尽くされ、事切れていた。
「おい! 実験は中止しろ! 仲間が死んでるのが見えないのか!!」
ノクス――玉の怒声が響く。
だが、魔方陣の外に立つ男は、表情一つ変えず答えた。
「さすが天才魔導師様ノクスだな。そこらの魔法使いとは格が違う」
その目には、明確な憎しみが宿っていた。
「お前、最初からこうなるって……!」
「どうした、“天才魔導師”さんよ。そんなもんかぁ? がっかりだなぁ」
「ふざけやがってぇええ!!!」
渾身の魔力を練り、中央の《玉》を破壊すべく放った。
直前、あの男は――仲間を見るでもなく、ただオレだけを見ていた。オレを見て笑っていたんだ。
そして、オレの意識は、そこで途切れた。
「……でも、ここにあるってことは」
「彼は、国の名の下に命を落としたのです」
ミルダンの声は低く、どこか遠くを見ていた。
「……そうだな……オレは強かったし、美しかった」
「え、急に何言ってんの?……って、え?!」
「お前を見てて、普通が一番だとつくづく思った」
真顔でディスる玉に、甘奈はぽかんと口を開けるしかなかった。
そして、ふと横から震えたようなミルダンの声が玉に向けられた。
「……やはりノクス、なのか?」
その声は問いであり、祈りのようでもあった。
玉は答えなかった。
ただ、もう一度、肖像画を見上げていた。
読んでくれてありがとぉ〜!✨
今回はただの魔法学校見学ツアーって思ってたのに、なんか途中から空気変わったんだけど!?
石碑の前とか、玉のテンションガチ低すぎじゃない??
てかあの肖像画……え、なんか似てない?? 気のせい? 気のせいだよね!?




