第15話 なんかスマホ見せただけで副校長が勝手に萎えてったんだがww
は〜〜〜〜???なにこの建物、ガチ城じゃん!?
てか魔法学校ってもっとこう、白くてシュッとしてるかと思ってたのに、
めっちゃ年季入りで重厚感つよ…すご…尊…ってなった。
「ちょっといいかな」
昨日のウサギモンスターや薬草の査定金を受け取りに、ギルドへ向かおうと宿を出たときだった。目の前でぬっと立ちはだかったのは、年配の男性だった。
「私はギルドマスターのグレンだ。国を通して正式に、魔法学校から君たちへ依頼が届いた」
口調は丁寧だったが、その目は真剣そのものだった。
「本来なら、宿にまで直接押しかけるような真似はしないんだが……」
グレンは申し訳なさそうに頭をかいた。
「……先手を打たれたな」
玉がため息まじりにぼそりと呟く。
「悪いが、このまま馬車に乗ってもらう。こちらで手配済みだ」
「いいか、甘奈。魔導具のことを聞かれても何も言うな。オレが答える」
出発前、玉は小声でそう言った。甘奈はこくりと頷く。
ちなみにヤーラは、まだ寝ぼけ眼であくびをしていた。
* * *
馬車に揺られて三十分ほど。石畳の坂道を登ると、視界が一気に開ける。
そこに現れたのは、小さめの古城のような建物だった。塔には複雑な紋章が刻まれ、外壁は長年の風雨にさらされながらも不思議と崩れていない。威厳と歴史を感じさせる建物だった。
「わあ……ファンタジー!」
思わず声が出る。隣でヤーラも小さく「大きいですね……」とつぶやいた。
馬車が静かに止まり、扉が開く。
そこに立っていたのは、神経質そうな細身の老人だった。背筋をピンと伸ばし、目つきも鋭い。
そのまっすぐな視線に、なんとなく身構えてしまう。
「……待っていましたよ」
静かな声と共に、彼は名乗った。
「私はこの魔法学校の副校長、クラヴィス。こちらへ」
それだけ言って、クラヴィスは踵を返し、無言で歩き出す。
玉が無言でうなずいたのを確認し、甘奈たちはあわててその後を追った。
* * *
石畳の中庭を抜けた先にある、重厚な扉の向こう――応接室へと通された。
「ギルドマスターから話は聞いていますね?さっそくですが、その魔導具を拝見してもよろしいでしょうか?」
クラヴィスの言葉に、甘奈はカバンからスマホを取り出そうとするが、玉がピシャリと口を挟んだ。
「言っておくが、この魔導具は本人が触っていないと起動しないタイプのものだ」
「……そうでしたか。では、研究室にてご協力いただけますかな?」
* * *
案内されたのは、石造りの廊下をいくつか曲がった先にある、ひときわ重厚な扉だった。
クラヴィスが扉を開く。研究室の中は整然としていたが、どこか薄暗く、妙な緊張感が漂っていた。
壁際には魔導書や古びた道具がずらりと並び、中央には魔方陣の刻まれた作業台。その周囲には水晶や鏡のような器具が置かれていた。どうやら魔力を可視化するための道具らしい。
「……では、ここで調べさせていただきます」
甘奈はスマホを起動し、玉に促されるままいくつかの機能を試して見せた。
「これが地図機能。魔力の濃い場所やモンスターの反応が映るみたいです」
「こっちは記録。相手を撮ると、データが表示されて」
そう言ってクラヴィスをカメラに収めると、スマホは彼の年齢や職業、魔力量などの情報を淡々と表示した。
クラヴィスは無言で頷きながら、その画面を覗き込む。
「……あとは?」
「えっと……今のところ、使えるのはこれだけで……」
本当はアイコンがまだいくつかあった。でも、おそらくレベル不足でロックがかかっている。
次の瞬間、クラヴィスの眉がピクリと動いた。
「……これだけか? 本当に?」
彼はじわじわと語気を強めながら、机の角をコツコツと指で叩いた。
「私は……てっきり“魔族に通じる切り札”になるかもしれないと思っていたのですが?」
沈黙が訪れる。
「──拍子抜けだ」
そう呟くと、クラヴィスはローブを翻し、憤然とした足取りで研究室を出て行った。
* * *
「え、え〜……なんかバカにされた気がする……」
甘奈はスマホをぎゅっと握りしめ、しょんぼりと肩を落とした。
「残念でしたね……でも、依頼ってちゃんと成立したんでしょうか?」
ヤーラが小さな声で心配そうに言った。
「……これで終わってくれれば、むしろ助かるんだがな」
玉がぽつりと呟いた。
その目は、誰もいない扉の向こうをじっと睨んでいた。
え、あたしのスマホ、役立たずだったの?
……ピエン通り越してズーン。
「これが魔導具…?」とか言われたから自信満々で地図出したのに、
副校長めっちゃ顔死んでて逆にあたしが泣いたんだが??




