第14話 顔近っ!ギルド職員の裏の顔がバチバチに危険だったんだけど!?
※ヤーラは討伐おわってすぐ爆睡でした〜!頑張ったね☆
「すごい量ですね……」
対応に出てきたのは、以前冒険者登録をしてくれたあの男性職員だった。
ダリオというらしい。
彼の目の前には、山と積まれた薬草やウサギモンスターの素材。
その圧倒的な量に、目を見開いていた。
「仕分けや査定に少し時間がかかりますね。明日、もう一度来ていただければお支払いできますよ」
「そっかー……」
甘奈が気の抜けたように返すと、ダリオはふと甘奈の手元を凝視した。
「……失礼ですが、それはもしかして……魔導具ですか?」
『いいか、魔導具ってのは誰でも持てるもんじゃない。特にお前のは貴重すぎる。他人に知られていいことなんて一つもないぞ』
玉の声が頭に蘇る。
(え、どうしよう……)
ちらりと玉を見ると、彼は少し離れたところで職員と値上げ交渉中だった。
「これだけ状態がいいんだ……もう少しなんとか」
「いや、こちらの提示額では……」
(玉に聞いてこよう)
そう思って動きかけたとき、突然――
「私、魔導具マニアなんですよ」
耳元で囁かれた。
「っ!?」
驚いて振り返ると、ダリオが甘奈の至近距離で微笑んでいた。
「今度、食事でもしながら詳しくお話を聞かせてもらえませんか?」
まっすぐな視線。妙に距離が近い。
顔が熱くなるのが自分でもわかる。
「え!? あの……近い……」
「やめとけ」
背後から、玉の声が鋭く飛んできた。
「え、なに……?」
「ここのギルドって、冒険者を口説くのが仕事なのか?」
「……いえいえ。そんなつもりでは……」
ダリオは笑顔を崩さずに否定したが、その笑顔がむしろ不気味に見えた。
玉は赤面したまま固まっている甘奈の手を引き、ギルドを後にした。
* * *
その頃――
石造りの小さな会議室。
仄暗い燭台の火が、天井を不気味に揺らめかせている。
ローブ姿の者たちが集まる中、ほとんどは白い仮面をつけ、誰が誰だかわからない。
だが、その中にひとりだけ、素顔のまま立っている男がいた。
――ダリオだった。
「王の計画が、どうやら動き始めたようだな」
「倒せそうなのか?」
「まだ詳しくは……ただ、魔導具の確認はできました」
ダリオは簡潔に報告する。
「興味深い。では――」
フードを深くかぶったまま、ひとりの男が静かに口を開いた。
その声は低く滑らかで、どこか知性を帯びていた。
「私が手を回そう」
仮面の者たちがざわめく。
「“依頼”の名目で招こう。正面から接触できる機会は貴重だ」
「危険では?」
「……問題ない。私の立場を使えば、むしろ自然に進められる」
ダリオは無言で一礼し、会議室を後にした。
やがて――夜が、静かに訪れる。
夜。
甘奈たちが宿へ戻った頃には、町全体がひっそりと静まり返っていた。
ヤーラはすでに部屋で寝息を立てている。
「今度からギルドを変える。厄介なのに目をつけられたかもしれん」
「えー、でもいい人そうだったじゃん……」
思い出すとまた頬が熱くなる。
甘奈はもじもじしながら口をとがらせた。
「……甘奈、お前、ほんとにチョロいな……」
呆れたように玉が言う。
「は!? それってぜったい褒めてないよね!?」
「褒めてないな」
玉の目がふと曇る。
「……あいつ、“秩序の院”のメンバーだ」
「秩序の院……?」
「表向きは魔族の脅威を訴えて歩いてる。だが――」
「……?」
「……いや、なんでオレはそんなことを……」
玉の言葉が途中で止まる。
そして、彼は眉をひそめたまま目を伏せた。
「もういい。寝ろ」
そう言って、甘奈を部屋から追い出す。
「ちょ、なにそれ! わけわかんない!」
ぶつぶつ言いながら、甘奈は廊下を歩いていった。
玉はひとり呟く。
「……なんで、オレは“秩序の院”のことを……?」
それは、誰よりも自分を疑う者の声だった。
あとから思ったけど、あの職員さん……
え、よく見たらわりとイケメンだったかも!?