第10話 ギルドって、マジで現実なの!?
やっほー☆ 甘奈だよっ!
いよいよ旅も本格スタート?みたいな?
でもさ、正直「強くなってね」って言われると、ちょっとビビるんだけど~!?
「ねぇ……これから先は、危険な旅になるっていうし……ここら辺で別れたほうがよくない?」
甘奈の言葉に、ヤーラはびくんと肩を震わせた。だが、すぐに表情を引き締め、甘奈の前に立ちはだかるようにして、深々と頭を下げる。その必死な姿に、甘奈は思わず言葉を失った。
「い、一緒に行きたいです! お願いします……! ボクも、連れて行ってください!」
まるで小さな子どもが駄々をこねるような必死な声。甘奈は困ったように眉を下げ、ヤーラの顔を見つめる。
「……やっぱり、敵討ち的な感じ……?」
気持ちはわかる。大切な村を失ったんだ。でも――
(恨みは憎しみの連鎖になるって、ドラマの中の遊くんも言ってたし……)
脳裏に、推しアイドル遊くんの名セリフがよぎる。「憎しみに支配されたら、自分を見失うよ」――確か、そんな台詞だった…かな?
玉が口を開いた。
「別にこちらとしては構わないが、お前自身にもレベルアップしてもらうぞ。足手まといは要らないからな」
その一言に、ヤーラの顔がぱっと明るくなった。
「……はいっ!」
力強く頷くその瞳には、迷いがなかった。
玉は続けて、甘奈の方をじっと見た。
「甘奈、お前もだ。オレがいれば女魔王のもとに着くのは難しくはないが、それではオレが命がけで送り込んだ意味がない。レベルアップしてもらうぞ」
「………あたしもか………」
強くなるって決めたはずなのに。いざ言われると、体の奥がズンと重くなる。そんな甘奈の反応を見て、玉がにやりと挑発するように言った。
「強くなるんじゃなかったのか?」
「!」
その一言に、甘奈はハッと顔を上げた。
「一緒に頑張りましょう!」
ヤーラが笑顔で手を差し出す。その瞳の純粋さに、甘奈はじわりと胸を打たれ、ゆっくりと頷いた。
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――次の朝――
朝食のパンをちぎりながら、甘奈がぽつりと口を開いた。
「ねぇ……この世界にも、ギルドってあるの?」
「ある」
「困りごとや、モンスターの討伐依頼などが多岐に渡って受けられる。討伐依頼の場合は、モンスターの体の一部を提出して、任務達成を証明する場合もある」
「えー?意外とファンタジー感ない……」
ゲームでしか見たことのなかった“討伐”の現実味に、甘奈は小さく肩をすくめた。
「中には、ダンジョン内にしか生えない植物や、特殊なアイテムの採取依頼もある。ただし、現在は多くのダンジョンが立ち入り制限中だ」
「なんで?」
「前にも言ったが、内部に溜まりすぎたモンスターは外に出て、北のほうに向かっていく。で、ある程度時間が経つと、また中に入れるようになる。このサイクルの繰り返しだ。しばらくは、群れからはぐれてうろついてるやつらを狩る感じになるだろう。」
「運が良ければアイテムも拾えるし、それを売って資金にしてもいい。支度金もさほど貰えなかったからな……」
実戦――という響きに、一気に現実が押し寄せてくる。甘奈の顔がひきつった。
その様子を見て、玉はわずかに笑みを浮かべた。
「安心しろ。最初から無理はさせないさ」
「……うん。ありがと」
ほんの少しだけ、不安が和らいだ気がした。
「とりあえずギルドに向かおう」
玉は立ち上がり、二人を促すように歩き出した。
てかさ、ギルドってマジで証拠提出なんだね!?
ドラゴンのしっぽとかも持ち帰る系!?
でも、玉がちょっと優しかった……あれ、見間違いじゃないよね?
次回はたぶんギルドデビュー☆ よろしく~!