第9-3話 たまたま玉に選ばれた(ホントに)
やっほ〜☆今日の話はちょっとマジでびびった!!
なんか戦争とか、死の大地とか出てきて…やばくない?
しかも、異世界に「飽きた」って書いて来た人とかほんといたらしいんだけど?!
「人間と魔族は、かつて土地を巡って争っていた」
「……はじめて聞きました」
ヤーラは目を伏せ、少し震えるように息を吐いた。
「山を焼き、川を毒し、森ごと消えた。そんな戦争だ。魔力のぶつけ合い、土地もえぐれ“死の大地”が生まれた。雨が降っても草は生えず、空気も汚染された」
甘奈は思わず眉をひそめた。
「……やば……マジでやばいやつじゃん……」
「破棄されなかった古文書によれば、“世界の狭間から来た者が、人と魔族の戦いを止めた”という記録がある。異世界人――つまり、お前たちの世界の人間だ」
「え、じゃあ……前にも、あたしと同じように連れてこられた人がいるんだ?」
「いや。彼は“自ら来た”らしい」
「えっ?!」
「本人いわく、“飽きた”と紙に書いて寝たら、ここにいたと」
甘奈はぶっと吹き出した。
「それさー…あたしの世界で、“飽きた”って書くと異世界に行けるってオカルト?みたいな話があって。お兄ちゃんもやってたよ。マジで異世界行っちゃったパターンか……」
甘奈に構わず、玉は話を続ける。
「最初は言葉も通じず、意思疎通も困難だったらしいが、異世界人だったからこそ成長も早く、やがて皆が彼に一目置くようになった。世界の仕組みに慣れた頃、人と魔族の間に入り、仲裁したそうだ。……円満というより、“圧”だったらしいがな」
「え……でも、あたし普通にみんなの言葉わかるけど?」
「それは、昔の異世界人が残した書記をオレが分析して、簡単に言えば“自動通訳”みたいな呪文をかけてるからだ」
「……それ、めっちゃチートじゃん……」
目をキラキラさせる甘奈。
「――セリオン王は“もし異世界人を再び呼べば、魔族と交渉できるかもしれない”と考えたのだろう。たとえ交渉が無理でも、打つ手が増えると」
甘奈は口をとがらせた。
「で、そのために……玉に命令して、異世界まで?」
「そうだ。オレに転移の準備をさせ、セリオン王は命じた。“異世界で、可能性のある者を連れて来い”と」
「実際はお前の世界に行くだけでかなり魔力を使ったから、能力を吟味している時間なんてなかったが……」
甘奈はじっと玉を見つめて、目を細めた。
「なんか……雑だなあ。テンション下がるわ……」
「その“救世主”の人は、どうなったんですか?」
玉は一瞬、視線を落とした。
「……帰れなかったらしい。何度も来た時と同じことを試したらしいが」
「そっか……」
「結局この世界に残ることを選んだ。争いを止めた功績を認められ、セリオス王国の当時の姫と結婚したそうだ」
ため息をつきながらスプーンをくるくると回す甘奈は、ぽつりとつぶやいた。
「……なんか、チュートリアル終わった感あるわ……」
「違う」
玉が低く、迷いなく言った。
「まだ、チュートリアル中だ」
「うっそでしょぉ……」
甘奈の嘆きが、再び食堂のざわめきに溶け込んでいった――。
はい!てことで今回は「チュートリアル終わり」かと思いきや、
まさかの「まだチュートリアル中です☆」ってオチでした〜。
玉マジで鬼。てか王様も雑すぎじゃない!?