第9-2話 たまたま玉に選ばれた(ホントに)
魔族って……なにその裏事情!?
今回は、いろいろ聞いたけど、頭こんがらがりそう~~!
「確かに――オレは強いな」
少しの沈黙のあと、玉は続けた。
「王が秘密裏に繋がっていた魔族がいてな。そいつがオレの力を見て“無理だな”と判断したらしい」
「……え? 魔族って、敵なんじゃないの?」
甘奈はゆっくりと腰を下ろしながら、眉をひそめる。
「オレは王の命令で、何度か全力で魔法を見せたことがある。そいつの前でな」
「結果は“不十分”。これでは女魔王には勝てない――そう判断された」
甘奈とヤーラは顔を見合わせた。
「ちょっと昔の話になるが……」
「昔、人間と魔族の間には取り決めがあった。魔族に関するものはすべて封印、あるいは破棄。その条件で、“お互い干渉しない”って約束だったんだ」
「……でも、さっきと言ってることと矛盾してるじゃん? 裏でコソコソやり取りしてるんでしょ?」
「どこの世界にもはぐれ者はいる。女魔王も、仲間の魔族からは疎まれていると聞く」
「いちばん偉いのに嫌われてるの……?」
甘奈は、めっちゃ小言を言う校長先生を思い浮かべた。性格に難ありってこと?
「魔力が強いやつが上になる。それが昔からの習わしだ。だが、どれだけ強くても自分でその力を制御できなきゃダメだ。周りから見れば、いつ暴発するかわからない危険物にしか見えない」
「ヤーラ。お前の村を襲ったモンスターたちが、最終的にどこへ向かうか分かるか?」
ヤーラは耳をピクッとさせて、顔を強張らせた。
「………わかりません」
「魔族たちの住む北の地へ向かう」
「魔力に惹きつけられているのか、あるいは土地そのものかは詳しくは分かっていない。だが、多くのモンスターは本能的に北を目指す。その途中にあるものは、破壊しながらな」
「じゃあ……ただの通り道だったってことですか…?! あんなに、ひどいことをされてっ……」
ヤーラの声は震えていた。拳をぎゅっと握りしめ、今にも泣きそうな顔で俯く。
「そういうことだ」
「多くのモンスターに意思はない。目の前に邪魔なものがあれば、人間だろうと魔族だろうと襲うだけだ」
「でもさ……いっぱいモンスターが一箇所に集まったら、それはそれでやばくない?」
「その通りだ。だから魔族は、増えすぎたモンスターを狩って、数を抑える役目も負ってるんだ」
「えっ?! 仲間じゃないの?」
「仲間じゃない。モンスターに意思はないからな。魔族でさえ、中には厄介に思ってる奴もいるだろうな」
「そもそも、あいつらは魔力が満ちている限り空腹になることはない。寿命も人間と比べてはるかに長いから、基本穏やかな性格をしてるといってもいい」
「……それだけ聞いたら、こっちが悪じゃん…」
甘奈がぽつりと呟くと、玉は首を横に振った。
「だが女魔王がいることで、この世界のバランスが崩れる。あっちもあっちで、手をこまねいてる状況だろうな」
その場に、言葉を探しても埋められないような沈黙が流れた。
なんかさ、強いからって全部うまくいくわけじゃないんだね……。
ヤーラ……大丈夫かな……次回は、もうちょっと救いがある話がいいな~!