第8話 異世界の喧騒と王の重圧
やっほ~!甘奈だよっ!✨
ついに!ついに!テレポートでお城の町に来ちゃったんだけど!?
マジで人めっちゃ多いし、なんかワクワクなんだけど…玉がそのままお城直行だってー
魔力が戻ったのを確認すると玉が静かに呟いた。
「じゃあ、行くぞ」
光の波が三人を包んだ。
***
「うわ……! す、すごい……っ」
目の前に広がったのは、活気に満ちた城下町。石畳の道、立ち並ぶ屋台、聞き慣れぬ言葉の喧騒、色とりどりの衣装を着た人々。ヤーラの目が輝く。
「初めてです! こんなににぎやかな場所……!」
甘奈はというと、両手をポケットにつっこみながら、周囲をぐるりと見渡した。
「いろんな人種の人がいるんだね。なんか文化祭って感じ~!」
「文化……?」
ヤーラが不思議そうに首をかしげたが、玉が気にすることなく歩き出す。
「ついてこい。城に向かう」
***
城門の前に立ったとき、甘奈とヤーラは思わず息を呑んだ。
「おっき……」
「僕、ああいう場所に入るの初めてです……足が震えて……」
玉は振り返らず、警備兵に何かを話すと、三人はそのまま中へ通された。
そして、謁見の間へ。
荘厳な空間に、重苦しい空気が流れていた。
玉が跪くと、甘奈もヤーラも慌てて真似する。
「ずいぶんと時間がかかったな」
高い玉座から響いた声は、重く威厳に満ちていた。
「急を要するとわかっていたのではないか? お前の“作られた意味”を忘れたか?」
「……魔力を使いすぎて座標がずれた。申し訳ない」
玉は低く頭を垂れる。甘奈とヤーラはピリついた空気に身を固める。
だが――
「なるほど……それならば仕方あるまい」
セリオン王の声のトーンがわずかに和らいだ。
「顔を上げていい。立て」
玉がゆっくりと立ち上がり、それに続いて甘奈とヤーラもおずおずと立ち上がる。
それでも甘奈は少し腰が引けたままだし、ヤーラの耳はぴんと緊張で立っている。
セリオン王は玉に目を戻す。
「それで……なんだ、そのふざけた格好は。体が光っているように見えるが?」
セリオン王の視線が、玉の裸に近い姿と、光に包まれた下半身に注がれる。
「……まぁ、色々あってな……」
玉が言いよどむ。甘奈は思わず小さくうめいた。
(……今度ちゃんと服描かなきゃ……)
セリオン王は今度、甘奈に目を向けた。
「異世界の者よ。どこまで聞いた?」
「っ! あ、あの、ムリヤリ?連れてこられて……詳しいことはよくわかんなくて……」
声が上ずりながらも、甘奈はなんとか答える。
頷くセリオン王。
「……我々の世界には“モンスター”という、理性なき脅威が存在する。それが最近、爆発的に増えている。対処しきれないほどにな」
甘奈は、ヤーラの村で見た惨状を思い出し、ゆっくりとうなずいた。
「……それは、知ってます」
「原因として考えられるのは、最近誕生したとされる“女魔王”だ。その強すぎる魔力が、ダンジョンからのモンスター誕生を加速させているのだろう」
セリオン王の顔には深い疲れがにじんでいた。
「魔族と人間は互いに干渉しないよう、大昔に取り決めがあった。だがその均衡が、崩れてきた今……対処しなければ、国どころかこの世界全体が危うい」
そして再び、甘奈をまっすぐ見据える。
「異世界人は、特殊な能力を持っていると言い伝えられている……こちらの都合で申し訳ないが、協力してほしい」
言い方こそ丁寧だが、その声音には有無を言わせない重圧があった。
甘奈は肩をすくめるようにして、一歩引きかけ――
(……うわっ、圧がすご~……でも、断れる空気じゃないし……)
「……はい」
なんとかそう返したのだった。
てかさ、王様の圧ヤバくない!?無理ゲー感すごいんだけど!?
でも…ヤーラも玉も一緒だし、なんとかなるっしょ?たぶん?
あとさ……玉の服、マジでなんとかしたい。てか、させてくれ~