シャワーシーンは資料としてアリでしょ
放課後、推しの筋肉描いてただけなのに、なんか異世界行くことになったんだけど!?
ギャル×異世界、はじまりまーす☆
放課後の喧騒が過ぎ去り、静寂に包まれた美術室。そのいつもと違う雰囲気に、甘奈の胸は期待に高鳴っていた。
「先生マジ神なんだけど! 放課後に部屋貸してくれるとか、推し愛わかってんね〜!」
机の上には、何度も見返したであろうクシャクシャの資料用プリントと、それを見よう見まねで描いた、お世辞にも上手とは言えない筋肉質のデッサン。
「ドラマの遊くんのシャワーシーン、マジで背中のラインがエモかったんよね〜……」
見る者を不安にさせるほど、もはや腹筋の原型を留めていない謎の線を描き足していく。
「……顔はあとで描こ。顔って超ムズいし」
一息ついたその時だった。
ふと視界の端に、黒い球体がふよふよと浮遊しているのが映り込んだ。
「なにこれやば。え?え?オカルト的な? 写真撮っとこ…」
慌ててバッグを漁り、スマホを取り出そうとする甘奈。
その間に、黒い球体はふわりと甘奈の描いたスケッチブックの上に乗ると、眩い光を放ち始める。
そして、その光の中から――彼女の描いた、あの奇妙な人型が、ゆっくりと立ち上がったのだ。ただし、顔だけが描かれていない異様な姿で。
「…………?」
理解が追いつかない甘奈の目の前で、顔のない人型は静かに言葉を発する。
「お前が描いた体を使わせてもらった。こちらも急ぎでな」
「え、えええええ!? 顔ない! 顔ないじゃん!てかなに!? 擬人化!? 怖い怖い怖い怖い!!」
甘奈の悲鳴にも似た叫びに対し、顔のない人型は至って冷静に返答する。
「顔を描いていないのはお前だろう」
「いや〜……顔って最後に描く派で……てか、状況説明!!」
「……待て。説明してやる。まず、これからお前には異世界に来てもらう」
「は?急すぎて理解不能なんだけど!」
甘奈の叫びが虚しく響く中、スケッチブックごと、彼女の視界は突如として真っ白に塗り潰された。それは、新たな物語の幕開けを告げるにはあまりにも唐突な光景だった。
読んでくれてあざっす!
顔ない擬人化くん、次回もやばいです。お楽しみに☆