第7話 大事なファーストインプレッション
「いらっしゃいませ~。
こちら“レチア組合”でございますぅ。
今日はどんなご用件で?」
綺麗な高音を響かせ、僕達を出迎えたのは・・・・・・マッチョな男性。
「「・・・・・・」」
(ちょっ、ちょっと待ってくれ。
衝撃が強すぎて、何がなんやらで・・・・・・)
チラッと隣に立つニコの様子を覗ってみた。
さすがのニコも絶句してしまっている。
そりゃそうだろ。
この声でその図体って・・・・・・あまりにも反則的だ。
動けずに数秒。
その間中も目の前の高音を出すマッチョさんは、僕らが話し始めるのをニコニコしながら待っていてくれて―――
「っっって、また何やってんですか、ソフィーさん!?」
ドアの中からマッチョさんではない、また違う女性の声が上がった。
(大丈夫。
僕はもう驚かないぞ。例えその人がマッチョでも、エイリアンでも・・・・・・)
心構えは必要だ。
下手したら、さっき以上の驚きで失神してしまうかもしれないから。
しかし、次の瞬間出てきた人は・・・・・・後ろで一つで纏めている紅髪がなんとも美しい女性で。
(あぁ、良かった。
ちゃんと女性だ、良かった!!)
変に感動してしまったのは僕だけではないだろう。
その赤髪の人は僕達と目が合うと、「どうも」と軽く会釈をし・・・・・・マッチョに泣きついた。
「お願いですソフィーさん、止めてください!!
そうやって毎回、来る人来る人脅かして・・・・・・いいですか。
ソフィーさんのその行為によって、お客さんは来ず、召喚師さんも来ず。
はっきり言って、もうレチア組合の財産はソフィーさんが思っている以上に残っていませんからねっ!!」
早口で紅髪の人はマッチョを叱った。
すると、マッチョは「ガーン」といったオーバーリアクションを取り、仕方ないといった風にある言葉を口にする。
ボソッ
「解除」
「チッ、リースがそう言うなら仕方ないけどさー。
まぁーいいや。
ところで、そこのキャワイイ子と猫、今日はどんなご用件で?」
先ほどと変わらずの笑顔で、そう訪ねてきたのは―――
「あ、あれ、さ、さっきまでマッチョさんじゃあ・・・・・・?」
リクルートスーツっぽい衣装に身を包んだ、女性。
もちろんムキムキでも図体がでかいわけでもなく・・・・・・まだ、ルカよりは背が高いが紛れもない女性。
「あー、さっきのはアタシが君達を驚かそうと魔法で化けてただけ。
いやぁ、予想通りの反応で面白かったよ」
「あ、あの。
別にソフィーさんは、その、あなた方をバカにしたとかそんなんじゃ・・・・・・っちょっと、ソフィーさんも謝ってくださいよ~」
ケラケラと腹を抱えて豪快に笑うリクルートのお姉さんと、慌てて謝罪する紅髪の女性。
二人のやり取りを見て少しホッとする。
(なーんだ。
やっぱり、マッチョソプラノじゃなかったんだ)
変なところでホッ。
ニコも気を取り直したのか、「ゴホン」と一つ大きな咳払いをした後、いつもの調子で喋り始めた。
「こちらこそ、ご無礼を。
わたちはニコ、そして主人のルカ様です。
わたち達は求人の情報を見てやってきました。
―――こちらは、“レチア組合”で合っておりますか?」
ペラペラと流れるようにニコは言う。
多分、先ほどのあれがなければ、もっと早く、こういう風に要件を言えていたのだろう。
「はい、こちらは“第八周円状”領主直属ギルド、レチア組合でございます。
私はレチア組員、魔法使いのリースと申します。
そしてこちらの方が、この組合の組長であり、“第八周円状”領主の娘さんである、同じく魔法使いのソフィーさんです。
どうぞよろしくお願いします」
ニコと同じように自分達を紹介した後、リースという女性は腰を大きくおり、お辞儀した。
それにならい、僕も慌ててお辞儀する。
「あっ、よろしくお願いしますっ!!」
その時は思わずそう言ってしまった。
しかし、その後で気付く。
(あー、そういえば僕、ここで働くの反対してたのに)
「よろしく」と言っちゃったのだからしょうがない。
一先ず、話だけでも聞いておくとするか。