第3話 なりかけのブルーボーイ
「夢にしたら・・・・・・かなりクオリティ―高いな」
水の中からやっと脱出出来たあと、次に現れたのは、よくRPGなんかに出てきそうな街。
自分が今、立っている場所はどうやら、この街の広場のようで、目の前には大きな噴水があり、広場を円状に囲むように端に飲み物や食べ物を売る露店が立ち並んでいる。
「んー、でも、最近やったゲームにこんな街、あったっけかなぁ?」
まぁ、夢っていうのは、そう現実と繋ぎ合わせるほど確かなものでもない。
そう自分の中で納得し、さて、何か行動してみようかとしたとき、
ボロン
何だか、よく分からない音とともに真横から何ともファンシーな煙が立ち込めた。
「ケホッ、何だよ、このピンク色の煙はっ」
何だ何だと煙の発生源を見てみると、そこには何とも愛らしい黒猫が・・・・・・
二本立ちして自分の服の裾を持ち、喋りかけてきていました。
「!?」
「いやいや、ご機嫌麗しゅー、お嬢様。
わたちの名前はニコでございます。
この度は上様のご命令でここに召喚されてきまして・・・・・・」
「ね、ねこがしゃ、喋っている」
(てか、僕の発想力すげえー)
突然の不思議な猫の登場に戸惑う自分。
いやいや、関心する前にもっと突っ込むところがたくさんあるでしょ。
というかその前に、よくよく見てみるとこの猫、ふさふさ揺れているしっぽが二尾じゃないか。
そうか、こいつは猫ですらなかったんだな。
ふむふむと半分納得している彼に対し、猫っぽいものはなお呼びかける。
「お嬢様。
どうされたのですか、お嬢様」
そう呼びかけられて気付く。
今、この猫っぽいものが一番触れてはならない禁句を口にしているということを。
「誰が“お嬢様”だっ!!
いいか、僕はどう見たって男だし、それに名前だってちゃんと・・・・・・あれ?」
ふと、自分の名前を言おうとしたとき、何故か疑問符があがった。
「・・・・・・ルカって名前があるんだぞっ・・・・・・て?
僕の名前、もうちょい長かった気がするんだけど・・・・・・」
「ん?どうしたのです?
貴女様は“ルカ”様でしょう」
「うんうん、何でもないんだけど・・・・・・」
(何だろう、ナニかが引っかかるんだよなぁー)
不思議だ。
自分が生まれてから今まで使ってきた名前のはずなのに、何だか違和感を覚えてしまう。
しかし、その疑問が吹っ飛ぶくらい、今、先に訂正しておかなければならないことがある。
「だから、僕は“お嬢様”なんかじゃないって!!」
そこはちゃんと訂正してもらわないと困るので、大声で言ってみる。
しかし、猫っぽいなんかは何故か呆れた感じに「はぁ」とため息を吐くと、
「何を言ってるのですか、その容姿、格好で」
と、僕のスカートの裾を持っていた手を離した。
――――ん?スカート?
そこでようやく視界に入った、ヒラヒラ揺れる青い布の端。
「って、何で僕がスカートなんかっってっ!?」
新たに視界に入った異変、その二。
驚き、猫を見ていた視線を上げたとき、チラッと見えた美しい金色の線。
待て。
待て待て待てっ!!
(コレ、もしかして僕の・・・・・・!!)
あることに気付いたルカ。
おお慌てで噴水に駆け寄り、水面を覗きこんだ。
そこに映ったのは―――
金髪の髪が何とも美しい娘さんで。
「ギャー、ぼ、僕が、女の子にィィィィーーー!!!!!?」
あの学生服はどこにやら。
夢の中でも自分のコンプレックスに触れるなんて。
僕の夢、結構意地悪ですよね。




