第2話 誰かが呟くフェータリズム
「うわっ、グロっ!」
晴佳は突然泥水の中から現れたそれに、率直な感想を述べる。
何とも形容しがたい、変な色の手首。
そんな気持ち悪い手首と不思議な出会いをしたときだった。
ズザザザザ―
手首は急に限りなくのび、ブランコに乗る晴佳の足を掴んだ。
「へっ!?」
まだ、状態が上手く飲み込めていない晴佳。
しかし、手首はそんな晴佳にお構いなく、勢いよく晴佳を引っ張った。
「ええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇええっ!!」
そして、そのままドロドロの水溜まりへと引きずり込もうとする。
(冗談じゃない。誰がそんな汚い中へ入ろうとするもんかっ)
上手く状況を理解出来ていない晴佳の思考はズレる。
それでも、必死に引きずり込まれまいとジャリジャリする砂に爪を突き立てて対抗するが・・・・・・
ジャボンッ
結果、手首の腕力の勝ち。
―――落ちちゃったみたい、僕・・・・・・
「っっって、ガボッ・・・・・・!?」
どこに落ちるというのだ。ただの水溜まりのはずなのに?
そう晴佳は思った。
しかし、その思いを口にしようとした途端、口の中に水が勢いよく入ってきて上手く息が出来ない。
いわば、溺れている状態。
ただの水溜まりのはずなのに・・・・・・手首に引きずり込まれたそこは、水溜まりのようなものではなく、上も下も分からない無限に広がる水の中であった。
何もない無・・・・・・だと思っていたら、何だか微かに声が聞こえてくるのに気付く。
『・・・・・・ルカ、ハルカっ』
男の人の声が自分の名を呼んでいる。
だけど、辺りの水の中で反響しあって、どこから発せられているのか見当がつかないし、そんな余裕もない。
(く、苦しいっ・・・・・・!!)
『苦し・・よね・・・ルカ。
いい・・・・僕の言うこ・・聞いて・・・・・・』
断片的に聞こえる声。
かろうじて伝わる意味から、話を聞いてくれと言っているようだ。
(こんな状態で話なんか聞けるもんかっ)
しかし、晴佳はもういっぱいいっぱい。
そんな晴佳を知ってか否か、声はお構いなしにこう告げた。
『これか・・・・ルカに・・・・・・
―――召喚師として生きてもらう』
やっと、まともに聞けた言葉。
しかし、今度はその意味がわからない。
(召喚師って、なんだよ・・・・・・)
これはもしかして夢なのだろうか?
最近やったRPGの影響で自分が勝手に見ているだけなのだろうか?
そうじゃないと、あの“手首”のやつなんか説明出来ないし。
ふと、晴佳の中に「これは夢である」という考えが上がった。
『そこ・・ルカに・・・・・・ルーボー・・呪・・を・・・・・・』
(夢だと思うと色々と納得がいくな)
晴佳は声、そっちのけで考えていった。
(でも自分の夢なら何でこんな苦しい思いをしなきゃならないのか)
息が苦しい。
もう限界だ。
(夢なら早く“出口”よ、現れろっ!!!!)
そう晴佳が思ったときだった。
カチッ
何かが弾けるような音。
『ちょっ・・・・・・そんなっ!?
まだ・・・・伝え・・ことが・・・・・・』
声が焦る。
対して、晴佳は次第に苦しくなくなっていくのを感じた。
―――辺りの風景が変わってきて、水でなくなり、普通の街並みへと変化しつつあるのだ。
「おぉ、夢の次の場面か。
・・・・・・というか、いつの間に寝ちゃったんだ、僕?」
もう完全に「コレは夢だ!」と確信している晴佳。
そんな晴佳に消えかかりながらも聞こえる声が言う。
『いいか・・・い魔を・・遣するか・・・絶対・・・・・・アインツに会いに来てっ!!』
最後の言葉が頭いっぱいに響いた。
「アインツって、どこ?それともダレ?」
晴佳の質問。
しかし、声はもう答えない。
辺りに西洋風な街が現れるつれて、その声は聞こえなくなったのであった。