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第17話 目覚めた、僕のアビリティ―

ルカが自ら嚙み切った指から、鮮血が舞い散る。

一粒、一粒の赤い雫は地面に滴り落ちると光へ。

閃光は彼女を導くための道となり、今、現れる。


【テフヌート】

古代エジプトの大気の神シューの妻である水の女神。



女神。

そうつまり、ルカはこの危機的状況の中。

一瞬にして・・・・・・


「神様を召喚するなんて、やるじゃない。

・・・・・・世間知らずの箱入り君って聞いてたし、さっきまでの様子から、てっきり下等悪魔を喚起するのが精一杯だと思ってたわ」

ゴクリ

ソフィーの唾を飲み込む音が聞こえた。

もうルカの行動に釘付けで、その表情には驚きとワクワクが入り混じってしまっている。

それもそのはず。

召喚師はこの世でも、一握りしか成れる才能を持つ者はいない。

もし才能があっても、大体はその能力を上手く使えずに高等な召喚ではなく専ら喚起ばかり使ったり、あるいは呼び出すのに失敗して反対にアッチに引きずり込まれたり、呼び出したものに食われたり・・・・・・と。

難しい召喚・・・・・・いわば、神様や天使といった類を呼ぼうとすればするほどリスクは高く。

リスクを低くしようとすればするほど喚起・・・・・・戦闘にも使えぬ下級悪魔しか呼び出せない。

まぁ、喚起に至っては上位クラスとなるとさほど召喚とリスクは違わないが。

つまり、結論。

今、パニックの渦中にいたルカが、あの戦闘素人ぽかったルカが。

正真正銘の召喚術を使って女神テフヌートを呼んだということは、それだけでかなりの上級召喚師の証である。

あとはこのままテフヌートに殺されることもなく、上手く彼女を使いこなせれば上出来なのだが・・・・・・


「もしルカ君が失敗したとき、アタシらで何とかしてあげようとか考えてたけど・・・・・・神様クラスとなるとさすがに手助けできないかもねぇ」

予想外なのだからしょうがない。

もう、ソフィー達に出来ることは結界の中からルカの様子を見守るのみ。

ルカの運命は、ルカの手の中にある。

「まぁ、せめてルカ君の攻撃の妨げにならないように、向こうに転がってるヨークだけは撤収しましょーか」

~ヨーク、撤収のお知らせ。~





きっと外から見たら、冷静に澄ましているとか思われているんだろう。

でも、内は逆。

ほら、よく見てみてよ。

手に汗、背中に汗、顔にも汗・・・・・・。

極度の緊張状態。

はっきり言ってしんどいのかも。

そもそも召喚術を使うのが久しぶりすぎて体がついてくるのにやっと。

でも、気は抜けない。

抜いたら最後、僕が死ぬ。

今、呼び出したテフヌートによって殺される。

多分、今までの僕ならこんなリスクを背負ってまで戦わない、そう今までの僕ならば。

しかし、何故だろう。

確かに緊張はしてるし、怖い気持ちもある。

しかし、何故だろう。

不安感が全くない。

「自分が勝つ。自分なら上手くやれる」

確固たる自信が自分の中から溢れてくる。

そうか。

長年のブレイクさえ気にならないほど・・・・・・僕は最強なのだ!!


「テフヌートに命ず。

敵は我に襲いかかる狼頭。

汝の力を持って、敵を倒せ!」

ルカのその声に、光の根源、ルカの足元から出てきた神々しい美しい彼女は、のそりと前を向いた。

(いい、その調子で敵に攻撃してくれ)

心でそう願いながらも、意志の迷いを起こさぬよう、ルカはただ狼頭の群れ一つだけを見て集中する。

その狼頭の群れ。

先ほどまでのあの威勢はどこにやら。

彼らはルカの呼びだしたものが何かを知らない。

知らないものの、彼らの長年培われてきた野生の感が警告したようだ。相手に敵わないと。

ある者はさっそく反対側へと逃げだし。ある者は茫然と武器を手放し立ちつくしている。

それは正しい反応で。

呼んだ本人であるルカさえも畏怖させてしまう存在感を辺りにまき散らしながら、


のそり


テフヌートはルカの身長ぐらいある大きな純白の手を前にかざした。


かざしただけ。


かざしただけなのだが、次の瞬間。


ザバー

多分、これでも手加減しているのだろう。

本来の彼女なら、いともたやすくこの森を海に変えてしまう。

しかし、今回の彼女が用いた水の量。

ここいら一帯を洪水状態、水没させるだけですんだ。

ソフィーたちは、無事にヨークも連れ戻して結界の中。無事だ。

ルカはテフヌートがもう一方の手で覆って守ってくれているので無事だ。

どうやら、ルカは無事にテフヌートを服従させることが出来たらしい。


しかし。

敵である狼頭達には、彼らを守ってくれるものは何もない。

あのすぐに逃げ出していたやつも、茫然と立ちつくしてたやつも。

みんな一緒。

生まれてこのかた、海で泳いだこともないのに、皆一様滑稽に手足をばたつかして水の群れに抵抗しようとしている。

そんなの、意味ないのに。

その内、水圧に押されるがまま、ぐったりと動かずに水に弄ばれるものがチラホラと出てくるだろう。


可哀そうなものだ。

たかだかルカの能力テストで、群れ一つ、消失させてしまった。

きっと、ヨークに殺られた時点で引いておくべきだったのだろう。

まぁ、今さらになって憐れむ義理もない。




これは完全に、ルカの圧勝だ。










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