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第12話 ある日のマチネー

「さーて、そろそろ出発するとしましょーか!」

ソフィーの声が聞こえ、そろそろテスト場に向かうとのことから建物の外に先に出てルカとニコはソフィー達を待っていた。


「でも出発って、一体どこに・・・・・・って、ソフィーさん!?」

しかし、出てきた彼らの中、ソフィーの格好を見て驚く。

「ナニ、そのジャラジャラはっ」

変わりのないリクルートスーツ姿・・・・・・なのに、何故か手には指輪がいっぱい。耳にはピヤスがジャラジャラ。

そして左手で持つケースは、所々に黒い紙を貼って封をしており・・・・・・右手には、魔術師なだけに杖。

(右手以外・・・・・・全体的にアンバランス過ぎるでしょ、それはっ)

もう、歩くだけでジャラジャラいうその格好は、何を考えての格好だろうか?


「アレは全て、魔具ですね。

ソフィーさんは魔術師ですが“半人間ハーフテッド”なので、魔具をつけることによって魔力の総量を補っているのでしょう。

ついでに言っておきますけど、あの杖も魔具でして、本来の魔術師は媒体無しで魔術を使えますから」

「ふーん」

(杖=魔法使いのイメージが拭えないよ)


「いやぁ、猫ちゃんは相変わらず物知りだね~」

突然、ソフィーがニコの背後に現れ、勢いよくニコの頭をワシワシ撫でた。

「!?

っちょ、ちょっと止めてください!!」

ニコはかなりビックリして、慌ててソフィーの手から逃れた。

かなり、今のソフィーの行動は不愉快だったらしい。

ニコはソフィーと向き合う形になって、「フー」としっぽを逆立たせ、少し威嚇している。

「ソフィーさん、いきなり何ですか。

それに、わたちの名前は“ニコ”です、ちゃんとご紹介したはずですがっ!!」

「あははー、ゴメンねー」

「・・・・・・っ!!(怒)」

どうやらニコは、ソフィーのことをそんなに良く思っていないらしい。

そんな中。

(あっ、このしっぽ可愛いなぁ)

ルカがニコのしっぽをこっそり触ろうとしていたのは、黙っておこう。


「あれ?

魔術師は何もなくても魔術を使えるって、さっきニコが言ってたけど・・・・・・」

「あっ、これのことですか?」

ルカがニコのしっぽからようやく目を離したとき。

今度はリースの背中に簡易リュックサック風に紐で巻きつけられた、大きな厚い本に目がいった。

その視線に、リースが気付いてくれる。

「あー、私は確かに“魔術師ネオアビリティー”ですが・・・・・・ちょっと、これが欠かせなくって」

笑いながらリースがそう答えるが、ルカの質問の答えになっていない。

(まぁ、どうせわかるだろう)

あまりにソフィーの格好の方がインパクトが強すぎたせいか、リースのその小さな変化はルカの中で、さほど気になるものでもなく、それ以上の追求はしなかった。




レチア組合を出た後。

いつしかニコとともに、嫌々ながら通った細い路地をいくつも折れたり進んだりしていくと、大きな広場に出る。

そこから北へと延びる道を歩いて、歩いて、歩いて・・・・・・。

賑やかだった街中を通り過ぎ、段々と緑が増えてきたこの一本道。

「もしかして、テストは“第八周円状アハト”と“第七周円状ズィーベン”の国境辺りで行うつもりですか?」

「えぇ。

だってここらへんでそこそこのモンスターが出るのって国境辺りぐらいだしー。

やっぱ、強いモンスターと戦って修行とかしようと思ったら、内円の方に行かなきゃダメね」

ニコの質問に、ソフィーが答える。

それを聞きながら、ルカはふむふむと一人、納得。

(なるほど。僕の敵はモンスターってわけか)


「にしても、ウチの組合に召喚師が来て良かったわ。

まず、召喚師の能力持った人って一万人に一人いるかいないかの割合じゃない」

ソフィーの誰に向けて喋っているのかわからない話に耳に傾けながら、その言葉に驚き、思わずルカはニコを見た。

ニコは一つ、コクリと頷く。

(へぇー、だからニコが初めに『素晴らしいお力』って言ってたんだ)

「そんな割合の中、ウチに召喚師が来るなんて・・・・・・これでやっと、ワンランクの上の大会に出られるわ!!」

「ソフィーさん、それ違いますよ!!

大会はあくまで副収入を得るために出てたのであって、せっかく召喚師さんを雇えたなら本業であるギルドとしての仕事をしましょうよ~」

「・・・・・・(コクコク)」

どうやらソフィーの発言が間違いだったらしい。

リースが訂正し、ヨークがそれに賛同している。

「副収入って・・・・・・本当にこの組合、破綻寸前なのか」

つい、ポロっとルカの口から出てしまった。

急いで口をふさいだが、もう言ってしまったものは言ってしまったもの。

「失礼すぎたかな」とソフィーの顔を覗えば、当の本人は全く気にしていない様子。

「あー、ウチが破綻寸前って、バレてた?

といっても今更、『辞めます』とか・・・・・・許さないよ」

聞き間違いだろうか?

ソフィーの顔は相変わらずニコやかなのに・・・・・・最後の語尾だけやたらと低い、ドスの利いた声だった。

「「・・・・・・(ブンブン)」」

ルカとニコは無言で、一生懸命首を振り続けました。



「おっと、この辺でいいかな」

そうこうしている内に、辺りは森の中。

随分と森の中へ入ったところで、ソフィーが歩くのを止めた。

そして、後ろへ振り向くと、ルカに向かって不敵に微笑む。


「じゃ、お手並み拝見ってことで」



ルカは無意識に生唾を「ゴクリ」と飲み込んだ。








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