第八話『突然の惨劇』
────久しぶりだなぁ。この家。
沢山の荷物を背負いながら、懐かしいと思えるような風景。そして扉のドアノブに手をかけて、ゆっくりとドアを開ける。
「あぁ!!シンくん!!!!!ひっさしぶりいぃぃい!!!随分体大きくなったね!!相当頑張った証だ!怪我は?怪我はしてない?──── 」
ゆっくりドアを開けた光景とは裏腹に、思いっきり飛び出してきたバカ一人。何も変わってない彼女に安心しつつも、うっとおしい。
「あらあら、おかえりなさい。よく帰ってきたね。えらくがっちりしたじゃないか。」
おばあちゃんが続けて出迎えてくれた。
「ほう、これは大したもんじゃ。一年だけとはいえ、見違えるほど変わったな。正直予想外じゃよ。」
「師匠!はい、美咲から色んなことを教わりました。これで、あなたを超えられるはずです。では早速、木刀を用意して貰えますか?」
「ふふっ、いいじゃろう。来なさい。」
1年ぶりの庭に案内された。
思えば一年前のあの時、ここで負けてから、俺は闘志に火がついて、今まで修行してきたのだと思うと、考え深い部分があるなぁと感じながら、ストレッチを軽く行い、木刀を握り構えた。
「────オレ、もうあの時より弱くないですよ師匠。今日オレは、あなたを越えます。」
「分かっておるわ。その構えから既にな。言っとくがワシも本気で行く。覚悟しとけ。」
─────その前に!私が作ったサンドイッチ食べてからにしませんかー!
遠くから声が聞こえた。見ると彼女がおぼんにサンドイッチが乗っかった皿を持ってきた。師匠と俺は二つ返事で。
「ああ、食べる。」
「ああ、食べる。」
完全にハモった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「ふう、食った食ったあ。」
完全に満腹になった2人、先程よりエネルギーが出てくるのを感じていた。
「では始めるとしようか。深海。」
「ハイ、お願いします師匠!」
「いけー!がんばれー!負けるなー!」
両者が構え、どちらか足を動かした瞬間。
木刀が交錯した。火花を散らせながら風を巻き起こしている。
「2人とも早くて、目で追えない!!やっぱり相当強くなってる!!」
彼女は興奮気味に見て、おばあちゃんは息を飲んでいた。
数分間続き、お互い体が温まってきた時─────
──────おぉっと、一旦そのお遊びは終わりにしてもらおうか?
いきなり爆弾のような物を投げつけてきた巨体の男。
2人は反射的に避け、すぐさま飛んできた方を見た。
その見た目やオーラから、窓付近にいる女性二人を危険だと判断し、大声で叫んだ。
「おい、おばあちゃん!コイツは危険だ!アイツと一緒に下がれ!!」
「だから、名前で呼んでよ!もう!おばあちゃん!こっち!!」
おばあちゃんと愛菜は避難し、庭にじいちゃんと2人で横に並んで侵入者を待ち構えた。
「一時休戦じゃ、深海。」
「そうした方が良さそうですね。」
「お主らは何者じゃ、いきなり割って入ってくるとは失礼なヤツらじゃのぉ。」
「ぁ?うるせえよジジイ。正直、あの一撃でくたばってくれたらよかったんだけどなァ?」
フードを被っていて顔が分からないが、身長が明らかに人間を超えていた。
見た感じ2m20cmはあるように見えた。
「……自己紹介をしてやろう。俺は信仰宗教 "天道教" 幹部『弁慶』だ。」
「弁慶!?え、あの弁慶!?つか天道教って何!?」
「…信仰宗教天道教は、この東商を拠点に活動する極悪集団の一つ。天道教の奴らは皆、歴史上の人物から名前を取ってくるんじゃ。じゃからあれは本名じゃない。自分でつけた偽名のようなもんじゃ。」
「天道教の教えは、天の定めた道に従えと教える宗教でな。神の教えに従えば必ず報われる、幸せになるという教えを信じ続けた人間達が集まる場所じゃ。余談じゃが一昔前に韓国という国で、同じものがあったようじゃが、これとは別物じゃ。」
「フン、長々と要らねェ説明してくれてありがとよ、ジジイ。さて、最初の爆破作戦が失敗に終わったんじゃ。口封じのために全員始末しねえといけねえなぁ?」
嫌な予感がした。
何か狙われている。周りを見渡した。
そこには、奥に逃げたはずのおばあちゃんが怯えながら見えていた。
「最初のターゲットは、あの婆さんだ。あの婆さんを始末する。ババアの死体を見るのは気が引ける部分はあるがな、仕方ねぇよなあ?」
「ばあちゃん!!!なんでそこにいる!!いいから家の中に入れ!!狙われてんぞ!!!」
思い切り叫んだ、だが婆さんは腰を抜かしていたようだった。もちろん弁慶は待ってはくれず、弁慶の手からは銃のようなものが出てきた。
そして一瞬の出来事だった。
弁慶の一撃は確かに放たれた。俺とじいさんが全力で守ろうとしても銃弾の速さには間に合わなかった。
婆さんは、腰を抜かして後ろに尻もちを着いた、助からない。そう思った時。目を疑った
─────愛菜の腹部に、銃弾が当たった。
銃弾によって空いた穴から血が吹き出し、吐血する。
婆ちゃんの前で庇うように銃弾を受けた愛菜は、倒れた。
「ぐふっ … 、」
「…… あい…な?」
俺は目の前の惨劇を前に、彼女の名前を呼んだ。
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