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そして君は明日を生きる  作者: 佐野零斗
第五章『天道教 vs 東商討伐士』
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外伝α 第二話『覚醒』

「……やっぱりここにいやがったのか、亜獣!」


 息を呑む間もなく、空気が震えた。

 闇の奥から現れたのは、禍々しい影──毛皮は濡れたように黒光りし、裂けた口の奥で涎が糸を引いていた。

 俺は反射的に灯火の前に立ち、腕を広げて庇う。

 足がすくむ音が、すぐ後ろから聞こえた。


 亜獣は獲物を見定めるように、低く、重く、一歩ずつ地面を踏みしめてくる。大地が、わずかに揺れた。

 その足音は、死を連れてくる足音だった。


「───亜獣だ。はじめてみた…亜獣…、亜獣」


 灯火の声が掠れている。

 恐怖ではない。どこか夢を見ているような、陶酔にも似た響きだった。


「灯火?お、おい!!灯火!危ねぇぞ!!」


 制止も虚しく、灯火は亜獣の方へ歩き出した。

 その小さな足が、ためらいもなく前へ進む。

 掌を開き、まるで愛しいものを抱きしめるように腕を広げ──。


「亜獣ちゃん…!抱かせて…!抱いてみたかったの…!」


「ッ!!」


 亜獣が吠え、地面を蹴った。

 反射的に俺は灯火を抱きかかえ、地面へ身を投げ出す。土の匂いと風圧、世界が裏返るような衝撃が背中を打った。


「──ッ、いてて…。おい、馬鹿な真似するな灯火!死にたいのか…!!亜獣は犬や猫じゃねえんだよ!通称『人喰いの亜獣』──人間をただの肉と認識し、捕まったら最後、地獄の底まで喰らい尽くされる。それだけ危険な動物なんだよ!中には食うことだけじゃねえ、麻酔や毒を持ってるやつもいる!とにかく危険なんだ、無茶な真似はすんな!!」


 腕の中で、彼女の体が小刻みに震えている。

 俺はその肩を強く掴み、息を吐き出す。怒鳴った声は、自分でも驚くほど掠れていた。


 ゆっくりと立ち上がると、亜獣が再びこちらを見据えていた。黒曜石のような瞳が月光を反射し、口角から滴る涎が、土を焼くように泡立っている。


「……俺がやるしかねえのか。俺は戦闘経験ねえし、戦闘とは無縁の世界で生きてきたってのによ。」


「───勝てるわけない。あなたじゃ絶対に勝てない。」


 背後で囁く灯火の声。その言葉が、ほんの一瞬、胸を刺した。だが、事実だった。


 理屈では分かっている──それでも、逃げるという選択肢は浮かばなかった。理由もなく、ただ「立たなきゃ」と本能が叫んでいた。


「…おりゃぁぁぁ!!!」


 地面を蹴り、全身の力を込めて走り出す。

 握りしめた拳を振り抜く。だが、亜獣の突進は速かった。風圧と同時にぶつかり、世界が回転する。視界が白く弾け、地面が遠のく。


「ぐふっ…!ゲホッ……ゲホ……。」


 土を噛み、血を吐いた。肺が焼けるように痛い。視界の端で、亜獣がゆっくりと灯火へ向き直るのが見えた。


「あ…あっ…。わ、私、逃げないと…。っ。なんで、足が動かないっ…。」


 灯火が震えている。逃げたいのに、体が拒む。

 恐怖が心を縛り、筋肉から命令を奪っていく。


 亜獣が低く唸り、首を下げた。

 次の瞬間、地を蹴る。


「うぉぉぉぉぉぁぁぁぁぁ!!!!」


 俺は叫びながら立ち上がり、横からタックルをかました。体がぶつかる鈍い音。互いに弾き飛ばされる。

 土煙の中、俺は立ち上がり、妹を再び庇う位置に身を置いた。


「はぁ…はぁ…。灯火、足が動くようになった、全速力で走って家まで帰るんだ。」


「……えっ?でも…」


「正直、この亜獣に勝てる気がしねえってのが本心だ。だから、少しでも犠牲者を減らすために。灯火は家に避難しておいて欲しい。母さんにも絶対外に出るなって伝えてくれ。」


「……犠牲者って…、なんであなたが犠牲者になる必要が…?そんなの、ずるいよ。……どうして、そこまで私に…。私は、あなた達を突き放してたのよ。私を見殺しにしたって…きっと何も言われない。なのに、なのになんで。」


 その問いに、答える暇はない。亜獣が再び突っ込み、牙を剥く。俺は腕を交差して受け止め、土を滑りながら後退する。爪が肌を掠め、血が飛ぶ。


「俺は、たとえ親父が違くても、お前の兄貴だからだ!さっきは、色々…言っちまったけど、なんやかんや俺は、灯火が、たった一人の妹が大事なんだ!!そんな可愛らしい妹に、生きてて欲しいって願うのは!普通だろ!」


 喉が裂けるほど叫んだ。

 腕が軋む。膝が砕けそうになる。それでも、踏ん張る。その声に灯火が目を見開いた。


 それは、初めて彼女の心に刺さった言葉だった。


「…っ、俺は…灯火の孤独な気持ちを理解してるつもりだ。だからもう、灯火を一人にはしたくねえ、灯火の孤独心を解いてあげたい。母さんも、俺も。そう思って灯火に接してるつもりだった。でも、それが逆に、灯火の心を傷付けてしまっていたんだな。そこは、俺達の落ち度だ。だからこれからは!俺達はお前に寄り添いたいんだよ!!」


 拳が、肉に当たる音。 視界の端で自分の血が跳ねた。

 何度倒れても立ち上がる。

 それが、兄としての意地だった。


「ぐはっ…!」


 亜獣の爪が胸を裂いた。地面に叩きつけられ、視界が霞む。 痛みが全身を貫き、息をするだけで喉が焼ける。

 それでも立ち上がろうとした瞬間、骨が砕ける音が響いた。


「ッ、ぁぁぁぁぁああああ!!」


 足を踏まれ、地獄のような痛みが走る。

 血と涙が混ざり、地面に染み込んでいく。


 亜獣が、俺にゆっくりと近付いた。

 嗅ぐ。獲物の匂いを、確かめるように。


 ──そのとき。


 コツン。


 乾いた音が、夜気を裂いた。

 視界の先で、灯火が石を投げていた。

 彼女の手が震え、唇が噛み締められている。

 亜獣の視線が、ゆっくりと灯火に移る。


「とう…か?……なにを…してんだ。逃げろって……。」


「……私は、孤独に生きてきたし、これから色々な感情を知っていきたいから、生きていたいよ。でも、ここであなたを…いや、“お兄ちゃん”を、見殺しにするほど優しさを捨てたわけじゃない。……犠牲になるなら、私がいい。お兄ちゃんの言葉、素直に嬉しかったよ。」


 月光の下、彼女の頬を一筋の涙が伝った。

 その顔は、幼さを残したまま、それでも凛としていた。立ち上がり、俺の前に立つ。


 小さな背中が、夜風に揺れる。


「…灯火……ッ。」


「─────お兄ちゃん。ありが」


 その言葉の途中で、世界が砕けた。

 横から突進してきた亜獣の巨体が、灯火を吹き飛ばす。彼女の体が宙を舞い、大木に叩きつけられた。


 嫌な音が響いた。


「──灯火…?おい、おいおい。嘘だよな…おい。おいって……灯火……」


 声が震える。膝が崩れた。

 灯火は血に染まり、目を閉じている。

 息をしているかどうかも分からない。

 その瞬間、胸の奥で何かが─────ぷつりと切れた。


 痛みが消える。

 心臓の鼓動だけが、異様に大きく響く。

 頭の中が真っ白になり、意識が遠のいた。

 暗闇の奥から、何かが囁く。


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


「ここは…?俺は確か…亜獣と戦ってて…足を……」


 目を開けると、そこは白い霧の中だった。

 音も、目から得れる確かな情報もない。ただ、どこまでも静かで、どこまでも澄んだ場所。

 霧の奥から、声が響く。


『ここは現世とは程遠い、神の領域。ここで我らが口にした言葉は、現世に戻った際に脳の記憶媒体から抹消される。時間も無いから手短に終わらせる。…お前は今この時、力を授かる権利を得た。問おう。貴様はこの力を欲するか?』


「力を…授かる権利…?なんだよ、その力って。」


『この"神の力"は有耶無耶に振るべきものでは無い。選ばれし者だけが使うことを許された力だ。そして今この時を持って、お前はこの力に選ばれたという訳だ。』


「なんで俺がそんな力を…?」


『我はそんなことを聞いている訳では無い。貴様はこの力を欲するかと聞いている。三度目は無いぞ。』


 静寂が張り詰める。俺は、迷わず言った。


「……なんだか分かんねえけど、俺は妹を助けられるならなんだっていい。その力に選ばれたなら、使ってやるよ。」


『いい威勢だ。貴様はこの力を使いこなし、弱き者を助ける義務がある。これからの健闘を祈っているぞ。』


 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 次の瞬間、現実が戻る。

 全身を包む淡い青の光──水のような、優しい感覚。

 破壊された骨が、肉が、血が、再び形を成していく。


『……なんだ、この感覚。…分からないけど、凄く、心地いい。まるで水に揺られて揺られて旅をしているような、水の流れに身を任せ、水の中で浄化されているような。そんな、感覚────』


 目を開けると、足も腕も元通り。痛みはない。

 ただ、力が全身に満ちていた。


「─────治った?…嘘だろ。俺どうしちまったんだ…。足もしっかり動くし…。……よく分かんねえけど。なんだか凄く、強くなった気がする。」


 試しに拳を握り、地を蹴る。風が裂けた。

 体が、軽い。

 生まれ変わったような感覚だった。


「……灯火、今お兄ちゃんが治してやるからな。」


 彼女の身体に手を当てる。

 言葉が、自然と口から漏れた。


「────傷を、浄化せよ。」


 青い光が、彼女の身体を包む。

 破れた服の下、血の跡が消え、肌が再生していく。


「これでひとまずは大丈夫だな。……さて、大人しく“待て”が出来るなんて意外と言う事聞けるんだな。亜獣。」


『グルルルルル……グガァァァァ!!!』


「もうそれ一度喰らってんだよ。それしかねえのかお前。」


 俺は片手をかざし、川の水面に指を触れる。

 瞬間、水が浮かび上がり、巨大な球体を形成する。

 そのまま圧縮し、亜獣を包み込んだ。


 水の監獄が完成する。

 中で、亜獣が暴れる音が響く。


「────この技に名前を付けるなら…水の監獄。って所だな。どうだ、この脱出不可能な水の監獄に入れられて何も出来ない気分は。」


『グブブブ……グルルル……』


「少し可哀想だけど、そのまま溺れてもらう。」


 暴れ、咆哮し、泡が弾ける。だが逃れられない。

 静かに沈んでいくその姿を、俺はずっと見ていた。


「……しぶといなぁ。まだくたばらねえのか。」


「んん……おにい…ちゃん?」


 小さな声。灯火が目を開け、ゆっくりと起き上がった。 その瞳が、俺を見つめる。驚きと、安堵と、わずかな尊敬の色を宿して。


「起きたか。灯火。大丈夫か?」


「大丈夫…なんとか…。お兄ちゃん…何があったの…?目も若干青色っぽくなってるし…その水は……」


「…この力に関しては、俺も正直よく分からねえ。お前が吹き飛ばされた時、亜獣に対して大きな殺意を持った。その時に何かが弾けて、何かが切れたような。そんな感覚になったんだ。それで気付いたら、この力が使えるようになってた。」


「……凄い…綺麗。綺麗だね…お兄ちゃんの力…。」


 灯火の声が震えていた。

 だが、それは恐怖ではなかった。

 初めて、俺を「お兄ちゃん」と呼んだ──その優しい震えだった。


 そして、亜獣は静かに息絶えた。


 その時、静寂を破るように──背後から軽やかな拍手が響いた。 パチン、パチン、と木霊する音。森の奥から一人の男が姿を現す。月光を背に受けたその影は、どこか優雅で、不気味なほど落ち着き払っていた。


「───いやぁ見事だった見事だった。お前の力、興味深かったんで見物させて貰ったが、やっぱりすげぇな。」


 場違いなほど軽い口調。だが、その目は獣のように研ぎ澄まされ、底が知れない。俺は自然と警戒の色を浮かべ、体の前に灯火を庇うように立った。


「誰だお前。」


「あの人……どっかで見た事あるような…。」


 灯火が小さく呟く。男はわずかに笑みを深め、片手を胸に当てて名乗った。


「────俺は、ストレイド・ヴェルリル。ヴェルリル家現当主にして、シクリータ宮殿を継ぐ男だ。」


「…知らないな。お前の事なんか。」


「まぁ、お前は俺も知らねえから知らねえだろうがよ。──けど、俺は灯火のことを知ってる。久しぶりだな、灯火。」


「…………ゴメン、誰、だっけ?」


「おい!!忘れたのかよ!!保護施設で滅茶苦茶お前に話しかけただろうが!!それが俺だ俺!!」


「あー…あの凄くうるさかった子かぁ…今思い出した。」


「うるさかった子ってなぁ…俺はお前が心配で話しかけてたんだぞ? 俺あの中でも歳上な方だったから、ずーっとひとりで本読んでイベントにも参加しねえ。そんなお前が見てらんなくて話しかけてたのに。…まぁいいや、元気にしてたか?」


「まぁ、ぼちぼちかな。」


「そうか、それでそこの男の人は誰? もしかして彼氏?」


「違う。私に彼氏なんて出来ないって。この人は私のお兄ちゃん。異父兄妹だけど、しっかり血の繋がったお兄ちゃんだよ。」


 その瞬間、胸の奥が熱くなった。

 彼女のその言葉には、一切の偽りがなかった。

 ──俺は初めて、灯火の“家族”として認められた気がした。


「俺は清水蓮。よろしく。」


「おう、よろしく。つかお前、討伐士の上着を羽織ってないってことは……もしかして討伐士じゃねえの?」


「嗚呼、討伐士じゃないな。今まで戦いとは無縁だったから。」


「ええ!?お前一回も戦った事ねえのか!? もったいねえ、せっかくそんな力を持ち合わせてんのによ。」


「この力を持ったのはさっきだからな。亜獣に勝てたのも奇跡みたいなもんだ。」


「へえ、そうなのか。それなのにあの技の練度……天の導きって恐ろしいな、やっぱり。」


「……天の導き? なんだそれ。」


「お前が使った不思議な力の事だ。“天の導き”は、選ばれし者が人外を超えた不思議な能力を得ることが出来る、その不思議な力を使うのを許された、選ばれた人間が使うことが出来る力の総称が、天の導きってワケ。」


「なるほどな…俺はじゃあ、あの瞬間に運が良く力を授かれたってことか…。」


「そういう事になるな。」


 ──だが、胸の奥に違和感があった。

 さっき感じた“水”の力とは別に、何かが体の奥で蠢いている。まるで別の力が、いくつも潜んでいるような──そんな奇妙な感覚。


「…あ、そうだ。蓮。」


「…?───イッ…、え?」


 反射的に顔を上げた瞬間、ストレイドの手から放たれたナイフが閃光のように走った。次の瞬間、肩に激しい衝撃。鋭い音とともに刃が肉を貫いた。


「!!お兄ちゃん…!大丈夫!?」


「あぁ…、全然大丈夫だ。…それに、傷が…無い…?」


 刺さったはずの傷口は、まるで最初から存在しなかったかのように滑らかに閉じていた。

 血も流れていない。痛みも、熱も、無い。


「やっぱりな。お前の天の導きで授かった力はあまりにも強大らしい。体の中で治癒が常時発動してやがるのか。」


「どういう事だ…?」


「この世界には治癒術士が居るだろ? その治癒術士が使う“治癒術”は、この『水の導き』を派生させて生み出され、人間に習得出来るようにした。いわば、治癒術は、水の導きという神の力の劣化技。劣化とは言ったが、しっかりと治癒術は傷を癒す力があり、人間はその力に救われた。……お前は、その水の導きよりも更に強力な力を授かっているってわけだ。…水の導きを授かった人間は、勝手に体が再生したりしないらしいからな。お前の場合、頭の中で治癒術を使おうと思わなくても、勝手に体が治しちまうって事。」


「じゃあ……俺は…もう傷を負うことがない?」


「お前の中に眠る力が無くならない限り、な。ただ傷を負うことが無いだけで、病気や寿命には抗えない。つまり、蓮の死ぬ手段がこの2パターンだけになったって事だな。力が消えない限りは。」


「それは……いい事なのか…?」


「当然だ。その力は強き者の証明だからな。俺も出来るなら、天の導きを授かりたい。……そこで、お前に提案があるんだが。」


「なんだよ。真剣な顔して。」


「─────討伐士に入らないか?」


「……えっ。」


 息を呑んだ。

 まさか、その言葉をここで聞くとは思わなかった。

 “討伐士”──それはかつて父が目指し、挫折した道。俺には無縁だと思っていた。けれど今は、なぜか心がざわめいていた。


 俺が答えを出せずにいると、そっと肩を叩く小さな手。灯火だった。


「お兄ちゃん、なった方がいい。お兄ちゃんが授かったその力を、弱く守るべき人のために使おうよ。」


「灯火…」


「私も、応援…してるから。」


 顔を赤らめながら、それでもまっすぐに俺を見る妹。その姿に、胸の奥が熱くなる。 かつて心を閉ざしていた灯火が、今はこうして背中を押してくれている。


「それで?どうする?もしやるなら明日の朝、俺と一緒に本部へ向かうぞ。」


「分かった。」


「討伐士の本部の場所は分かるよな? 本部で8時に待ち合わせしよう。じゃあ、もう遅いから気をつけて帰れよ。」


 ストレイドが軽く手を上げ、森の奥へと消えていく。

 俺たちはゆっくりと家への道を歩いた。

 森を抜ける風が、妙に澄んで感じられた。


 ──そして翌朝。


「なるほどね、それで討伐士にって事か。いいんじゃない、行ってきなさい。」


「…意外。母さんは…嫌がると思った。」


「何言ってんの、息子がこんなに立派になってお母さん嬉しくなっちゃってえええ。」


 母さんは泣きながら笑い、そして急に真剣な目になる。その瞳の奥に、深い覚悟が宿っていた。


「────ただ、これだけは忘れないこと。やると決めたなら最後までやりなさい。守ると決めたなら最後まで守り抜きなさい。勝つと決めたなら、勝つまで諦めないでやり抜きなさい。あなたならきっと出来るって信じてる。それに灯火と私も精一杯サポートする。ね?灯火。」


「う、うん。…もちろん、だよ。」


「ふふっ…灯火、なんかあったの?家を出ていく前より優しい顔になった。」


「べ、別に…その、少し、大人になっただけ。…今まで、ごめん。お母さん。」


「いいのよ、謝らなくて。……蓮。私はずっとここであなたの帰りを待ってる。だから、さっき私が言ったことを忘れないで、行ってらっしゃいな。」


「ありがとう。母さん。灯火。じゃあ行ってくる。」


 俺は玄関の扉を開け、朝の空気を胸いっぱいに吸い込む。

 風は清く、陽射しは温かい。

 その瞬間、昨日までの世界がまるで別物に見えた。


 ──俺の人生は、この朝から確実に変わった。

 討伐士への道が、静かに幕を開けたのだ。

ご覧いただきありがとうございます!


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沢山の人に俺の小説を届かせたいです!

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