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そして君は明日を生きる  作者: 佐野零斗
序章『未来へ』
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第六話『私を救ったヒーロー』

 ──── 時代は遡り、年長の頃。


 私とシンくんはまだ出会ってまもない時。

 その当時、私達はみんなと同じように "おままごと" や "おにごっこ" をして遊んでいた。


 ある日、いつものようにシンくんを誘おうと思った時。


「────ねーねー!しんくん!おにごっこしよ!!」


「あーごめん、僕今この子達と遊ぶから、またこんどね?」


「あぁ、そうなんだ。うん!わかった!」


 シンくんは、別の友達と遊ぶようになった。

 おままごとやおにごっこも、気付けば私とはやらず、他の子とやるのを見るようになった。


 私は、一人になった。

 一人寂しく、粘土を転がして遊ぶ毎日。


 そんなある日。


「─────ねえ、ちょっといいかしら?」


「え?うん。いいけど。」


 同級生の女の子から呼び出された。その子は親が金持ちで、俗に言う "お嬢様" と呼ばれる女の子だった。


「ねえあいなちゃん。もうしんかいくんに話しかけないでくれる?」


「─────え?なんで?」


「だって、ワタクシが好きな人なのに、取られたらやだもん。だから近付きもしないで。」


 校庭の木の陰で、誰にも見えないところで言われた言葉に、私はグサッと心を抉られた。

 なんで私が、そんな事を言われないといけないのか。理解が出来なかった。

 泣きそうになる気持ちをグッと抑えて。


「──────分かった。ごめんね。」


 と、彼女に謝った。彼女は満足そうな顔をして、そそくさと教室に帰っていった。

 私は、少しの間泣き、涙を必死に拭いて、また教室に戻った。


 その出来事から、2週間後。


「ねえあいな。久しぶりに遊ばね??」


 シンちゃんから声を掛けられた。

 心の中では、久しぶりに話してくれて嬉しいという気持ちがあったが、お嬢様の言葉を思い出し。素っ気ない態度を取ってしまった。


「──────ごめん。私一人で遊ぶから。」


 そういい、走って教室に帰った。

 罪悪感で、胸が張り裂けそうになるくらい痛かった。

 その様子を見たシンくんは、訳が分からない顔をしていたと思う。


 そうして数日後。またお嬢様に呼び出された。


「────見ましたわよ。あなたがしんかいくんと話をしていたところ。ワタクシでさえ話しかけられることがないのに、あなたがなんで話してるの?言ったよね?」


「あれは、しょうがないじゃん。私だって、頑張って話さないようにしたし。」


「─────いいわけですわよ。それ。」


 同じ木の裏で詰められていた。

 私だって、やりたくて避けてる訳じゃないのに。なんでこんなに言われるの?

 もう嫌だな。幼稚園、行きたくない。

 そんな事を思いながら。涙目になっていた時



 ──────お前ら、何してんの?



 シンくんが、私達の近くに来てこう言い放った。

 いつもよりも真剣な声色で、私達に問い掛けた。


「し、しんかいくん!?い、いやぁ別に、ワタクシはただ、このあいなちゃんと仲良くしていただけですわ。」


「仲良くしてるなら。なんで愛菜は泣いてるんだよ。」


「………!」


 それを聞いた瞬間、私は涙が零れ落ちた。

 ずっと我慢してきた。ずっと抱え込んできた。

 そんな気持ちが、晴れた気がした。

 目の前に立つ彼の背中には、テレビで見ていた仮面ライダーと同じくらい、絶対的な安心感があったからだ。


「そ、それは。その……」


「僕 … いや、俺。俺は、人をいじめる子はキライ。それを隠してるのもキライ。」


 シンくんが、初めて俺って言った。

 仮面ライダーを真似したのかと思うと、少し可愛く思えた。


「────じゃあ、なんでワタクシとは仲良くしてくれないんですの!?ワタクシだってしんかいくんと話したかったんですの。」


「話さなかったのはごめん。仲良くしたかったけど、俺が話しかけに行こうとしても、逃げちゃうから。でも俺があいなと話そうと、お前には関係ないだろ。」


「─────キイィ、ワタクシより稼ぎが少ない貧乏のくせに、チヤホヤされて羨ましいのよ!!なんでワタクシよりその子がしんかいくんと!!」


 その汚い言葉遣いは恐らく、親譲りなのだろうと今になってみると思う。

 相当複雑な家庭環境で育ったんだろうと。


「稼ぎ?そんなもん分かんないけど、俺が、あいなと喋りたい。だから喋りかけた。それ以外の理由がいる?」


 お嬢様は泣き喚き、"お母様と先生にチクってやるんだからぁぁぁぁぁぁ" と走り去って行った。


「なんなんだよアイツ。よく分かんねえの。」


「ええっと、助けてくれて、ありが───」


 頭を撫でられた。言葉を喋り終わる前に。

 その瞬間、胸の中がドキッと高鳴った。

 感情に説明はつかないが、熱く、嬉しく。

 いつまでも感じていたい感情だった。


「お前、ガマンしすぎなんだよ。全部我慢してたら、いつかバーン!って張り裂けちまうぞ。そうやって仮面ライダーの悪役が言ってた!!」


「私は…迷惑かけるかもって思って。その、みんなに迷惑かけるよりは─────」


「俺にならかけろよその迷惑。俺とお前の仲だろ?サッカーボールみてえにしっかり受け止めるからよ!!」


 幼稚園生っぽい部分も残しつつ、まだ3年ほどしか経っていないという部分もありつつ、一番は、その言葉が何よりも嬉しかった。


「─────うん!じゃあまた明日から遊ぼ!久しぶりにサッカーしたい!」


「はぁ?サッカーは2人じゃ出来ねえだろ!」


「だいじょぶ!みんな誘う!!」


 なんて話しながら、教室へと戻った。


 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※


 ────ということがあって、私あの時助けてくれなかったら、きっと人間不信になってたと思うんです。


 昔話を真剣に聞いてくれたおばあちゃんは、相槌を打ちながら共感してくれていた。


「そうね、確かに深海君のような子がいるのといないのとじゃ、だいぶ違うからねぇ。」


「私、それで無意識に彼の事を尊敬してるのかもしれないです。」


「大事な事だよ。人を信用し、尊敬できるって言うのはね。なかなかできない事さ。」


「─────そう、なんですかね。」


「そうだよ。だから深海君のことは、大切にしてやらないといけないね。深海くんも、きっと愛菜ちゃんの事が大切だと思うわよ。」


「そうだと、いいんですけどね。」


 確かにその通りだと思った。

 私はただ彼の帰りを待つことしか出来ない。

 今彼は、試練に集中してる。きっと前より強くなって帰ってくる。

 少しでもいいから、その彼をサポートできたら嬉しい。そう心から思った。


ご覧いただきありがとうございます!


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