表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そして君は明日を生きる  作者: 佐野零斗
序章『未来へ』
5/68

第五話『基礎体力と剣術』

 ─── 激闘から一夜明け、庭に呼び出された。


「深海、お前さんは根性はあるが体がまるでダメじゃ。強くなるためには、まず基礎的な頑丈な体を作るところから始めねばならん。」


 ごもっともだ。実際問題、中学高校と部活動に入ってなかったのもあり、完全に堕落した体になっている自覚はあった。


「分かりました。師匠。」


 この頃から、爺さんのことを "師匠" と呼ぶ事にした。尊敬しているのもあるが、この人から様々ないろはを学び、自分が強くなるために必要な人間だからだ。


「先ずは基礎体力と筋力、そして武術を全て習得する必要がある。正直討伐士のトップになるなら、基本中の基本じゃ。先は長くなるかもしれんが、絶対に必要な事じゃ。」


「はい。どこまでも着いて行きます。」


 この日から、修行が始まった。

 どんな修行でも嫌な顔ひとつせずこなす覚悟は、もうとっくのとうに出来ていた。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ──── 朝起きたらまずやることは『45分ランニング』だ。

 未来とはいっても、人間の基本的な部分は変わっていない。朝にランニングをすることで、基礎代謝を良くするだけではなく、気持ちよく体力を向上させることが出来る。


 ランニングから帰ってくると。朝ごはんが出来ている。一階の食卓で皆揃って食べる。


「────ねえねえ!今日、肉じゃが作ってみたんだけどさ!結構美味しくできたんだよ!」


 隣で喋る彼女を筆頭に、世間話を交わしながら、黙ってではなく、賑やかに食べる。


 ちなみに愛菜は、おばあちゃんと一緒に家事や買い物に付き合ってくれているらしい。

 俺が怪我した時の治療もしてくれている。

 とは言っても、治癒術士ほどの力はないにしても、凄く助かっている。


 朝ごはんが終わると、すぐさま筋力トレーニングが始まる。日によって鍛える部位が変わっていて、足、腕、お腹、そして剣術。剣術は、ある意味一番大事なスキルだ。


 討伐士は盗賊の平穏を守るだけではなく、ここ数年で変わってしまった地の捜索もするらしいのだが。

 そこは危険が沢山で、もし今でも銃刀法違反など存在していたら生きている者全員がやられてしまうほどの恐ろしい奴もいるらしい。

 だから討伐士と一部の盗賊にのみ。剣の使用が許されている。ただし銃は全面的に禁止だ。機工術師のマニュアルにも、『銃は作成禁止』と書かれているほど。


 そして師匠は、剣の使用が許されている。

 何故だかは教えてくれなかったが、それのお陰で剣術を学べるいい環境だ。


「───ほらほら深海、今の攻撃が当たっていたら。お前は真っ二つだぞ。しっかり見ろ剣筋を。」


 師匠は剣も最強レベルに使える。

 この爺さんな何者なのか本当に分からないが、今はこの環境が1番合っていると、日々鍛錬をこなしている。


 師匠は大体夕方くらいまではみっちり稽古をつけてくれる。それからは、眠いと言って毎回寝てしまう。


 そこから晩御飯を食べたのち、自主トレをする。

 器具を使わずにトレーニングをする。バーピーなどの有酸素運動もかかさずに。


 自主トレが終わり次第、風呂に入って寝る。

 この繰り返しだ。正直体が悲鳴をあげる時だってある、もう辛くて逃げ出したい。なんで俺がこんなこと、なんて思ったりもした。


 その度に毎回、あずさちゃんの顔が思い浮かぶ。

 頭の中で毎回『頑張る君は、素敵だぞッ☆』というあずさちゃんの決めゼリフが頭に浮かび、その度に闘志が燃える。



 そんな生活が、三ヶ月ほど続いた。



 俺は、日に日に身体も強くなり始め、

 師匠を10回に1回のペースで追い込むこともできるようになってきた。



 その時、師匠からある提案を受けた。



「────お前に、ある試練を出す。この試練に合格出来たら、ワシの全てを話そう。」



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ────爺さん。否。師匠の全て。それを知れれば、最強に一歩近づくのは間違いない。


「分かりました、何をすればいいんですか?」


「────ついてこい。」


 と、口数が減りながら先導する爺さんの背中を見ながらついて行き、辿り着いたのは山奥。人気なんてあるはずも無い。というかこの近代化社会とは思えないほどの田舎山だった。


「─────ここは、」


「昔、ワシとばあさんが住んでた所じゃ。流石にこの近くじゃと不憫でな。引っ越したんじゃ。」


「なるほど、それで俺は何を─────」


 木々が揺れた。森の動物たちが住処にそそくさと逃げるほどの圧力。


 何か、来る。背筋が凍るようなオーラを背後から感じた。


「─────お前。名前は?」


 クノイチの様に、音を一切立てずに背後を取られた。

 だがこれだけは直感で理解した。後ろを振り向いたら死ぬ。そう判断するほどの存在感があったが、声色から判断するに、女性だ。


「─── 小柳、深海。」


 自分が唾を飲み込む音が聞こえるくらい、静かな環境の中、爺さんは一言も喋らず、汗が止まらないほどの圧力をかけられていた。


「……そうか、深海か。私は美咲。よろしくな。」


『よろしく』なんて言ってはいるが、信用出来ない。何されるか分からない。その恐怖で蹲りそうになる。


「よし、試練はこうじゃ。数日間、ここで美咲と一緒にトレーニングし、ワシと木刀の模擬戦をして、ワシに勝って見せろ。ワシに勝てたら。全てを話し、深海を討伐士として推薦しよう。」


「───師匠に、模擬戦で勝つ?でも美咲、ちゃん?が俺より強いんですか?流石に女性相手に本気は……」


「美咲、圧をかけすぎじゃ。少しお主の力を見せてやれ。」


「Yes、Master」


 ネイティブ英語だった。明らかに英語が染みているような感じだった。


「よく見てろ深海。一瞬じゃからな。」


『美咲』と名乗った人物は、髪が長くポニーテールで後ろに巻き、顔はハーフ顔。金髪に白い目をしていた。美形というより、"強い美女" というイメージだった。腰には日本刀の様な長い刀を携え、眉毛はキリッとしていた。


「ふっ───────」


 彼女が歩いた。3歩、4歩と。

 そこから一気に踏み込み、彼女は風を、空気を、この世界を切るかのように。円方向に木々を斬った。その数は、一瞬にして山の木が耕かされた様に、周りは平坦になっていた。


「──すげぇ。スピードが桁違いだ。」


「正直、今のワシよりも断然強い。この子に稽古をつけてもらえ。お前さんはもう体も出来始めてきた。あとはその子に任せて、ワシに最終的に勝てば、試練達成じゃ。美咲、その子を頼んだぞ。」


「Yes、Master。ところで深海、その名前少し呼びずらい。なんか呼び名はあるのか?」


「呼び名?あだ名だったらみんなからは『シンちゃん』って呼ばれてたけど。」


「シン、ちゃん?クレヨンか?」


「違ぇよ!誰が永遠の5歳児だ!確かによく言われてっけど!!」


「やれやれ、騒がしいお2人じゃ。山に場所を移して正解じゃった。」


 こうして、2人の同棲訓練生活が始まった。

 山にある一個の小屋で、サバイバル生活をしながら訓練をする。

 正直、早く家に帰りたい。



 ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



「シンくん、大丈夫かなぁ。」


 一人で取り残された私は、何もすることがなく、ただひたすらおばあちゃんの家事を手伝う毎日だった。


「おやおや、おひとりで寂しそうだねぇ。」


「あ、おばあちゃん。」


 おばあちゃんが2階に上がってきた、腰が弱く辛そうなおばあちゃんを見て。少し申し訳なる反面、話せる相手が出来て嬉しかった。


「────正直、不安で。シンくん、いつも無茶するから。オタクのくせに。」


「あの子は、きっと大丈夫だと思うよ、たしかに心配する気持ちは、分かるけどね。愛菜ちゃんは、幼馴染なんだっけ?深海くんと」


「はい!ずっと一緒だったんですけど、中学生くらいになってから、シンくんが別の趣味を見つけて、私、そういうの何も分からないから、話についていけなくて。」


 気付いたら、おばあちゃんに色々話したいと思うようになった。

 寂しいからなのか、恩人だからなのか。



『あ、そういえば。シンくん昔、私の事、助けてくれた事があったんですよ。』

ご覧いただきありがとうございます!


応援してくださる方は、ぜひここで☆からの評価とブクマをお願いします!!

沢山の人に俺の小説を届かせたいです!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ