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エピローグ

「主よ、本当にこんなことをしても宜しかったのでしょうか」

 ふわゆるの淡い金髪を揺らしてハーヴェ神に連れてこられた美少女は不安そうに主人に訴えかける。

 大地を覆う森を思わせる深い緑色の瞳が天上の世界で最高位とされる神の憂い顔を映している。

「いいんだ」

 序列第一位、あらゆる生を司るハーヴェ神。

 彼は金の瞳を曇らせて己の神殿の奥の院に用意された玉座よりも偉大で聖なる場所に座している。

「それにしても、ナッシュよ、お前は男には見えんな」

 ハーヴェ神は少女、もとい、美少年を見下ろして微笑んだ。

「俺の聖女殿、よろしく頼むぞ」

「主よ、あの方に虚偽をし弄ぶなど許されないことです」

 ナッシュは小さな体をさらに小さくさせてボソボソと言った。

「そうだな。ナッシュは神を偽った罪でミューゼに泡にされるかもしれんな」

「ひーっ」

 蒼白な顔で彼は震えている。

「だがラファイアは神ではない。安心しろ」

「しかしあの方を傷つけるなんて不本意です!」

 これは声を大にして言わなければ、とのナッシュの決意が垣間見える言葉だ。

「そうだな」

 ハーヴェ神もそれには同意してさらに美しい尊顔を彩る憂いが増していく。

「ラファイアを傷つけるなんて最低だ」

 それでも彼女の望みを叶えるために必要なことをしただけだ。

 本当は聖女になんてなりたくなかったラファイア。

 甘い夢を見させてもらっていたのは彼の方。

「本当に、最低だ」

 低く呟くとハーヴェ神はナッシュを一瞥して消えた。

「主よ、置いていかないで下さいよぅ」

 情けない声で囁いて、彼もまたその場から姿を消した。

 ナッシュはハーヴェ神の眷属であり従者だ。彼に逆らうことはできない。そして彼の言うことは絶対。妄信的に彼に服従している。

 けれど、ナッシュは他の眷属と少し違う。

 ハーヴェ神に意見することができる。

 だから彼の意に染まぬ行為なのに彼が「やると言ったらやる」というおかしな行為に協力はしても文句は言うのだ。

 自分の主人が心の底から、それこそ自分の命よりも大事にしている聖女ラファイアを傷つけ放逐することで主人もまた心に深傷を負っている様を見ていたくない。

 どうか彼も彼女も救われますように。

 最高神の眷属でありながら祈る祈りは誰に聞き届けられるのか。

 人間たちの騒動とは裏腹に最高神のいない神殿には沈黙が降りたのだった。



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