23/33
勇者ご令嬢 レットの物語
レットは故郷を失った男である。
大きな正義よりも、小さな大切をーー故郷の人々を守りたかった男である。
しかし、彼の仲間の勇者がレットが選択するよりも早く、誰よりも早く、大きな正義を選んで、行動してしまった。
そのため、レットは選択をする機会を奪われた。
心にふんぎりをつける事ができなかった。
彼は勇者と喧嘩し、袂を分かつ事になった。
そんなレットは、年少の仲間を気にかけていた。
その少年の名前はツヴァイ。
何も守れず、何も成せず、何も残らなかった哀れな少年。
そんな少年に、自分のような過ちを犯してほしくないと考えたレットは、不器用ながら口にできる教えを伝えていった。
しかし、それらは実を結ばない。
結局レットは、少ない何かより多くを選択した勇者を、許しも、敵対し続ける事もできなかった。
レットは、相手に答えを示す事ができなかった。
それは勇者が死亡したからだった。
だから、後に再会したツヴァイが何かに苦しんでいる事に気付いたとしても、レットは助言する事はできない。
その資格がない。
ただ見ている事しかできなかった。




