どうやら、私達は一週間後死ぬらしい。
私は知人を隣に城の周囲の見回りを行っていた。知人は見回りの付き添いを全く厭わず、むしろ知人が乗るような形で共にしていた。
ふと私は視線を下に向ける、私達の数歩先には一匹の蟻が居た。せっせと餌でも探していたのだろう。
さて、このままでは私か知人のどちらかがその蟻を踏み潰すことになる。私としてはたかが虫ケラの命なんぞどうでもいいことなのだが
「なぁ、エニグマ」
知人が私の名を呼んだ、私はそれに合わせて動きを止める。蟻はそのままマイペースに巣穴へと帰っていった、己の命が救われたことも知らずに。
「なんだ」
「あそこの雲、たい焼きみたいじゃない?」
「……私はそもそもたい焼きを知らん」
「そっか、じゃあ今度奢るよ」
知人はずっと空を呑気に見ていた。私はその知人に向かって
「…お前、今『運命』を歪ませただろ」
そう言うと知人は
「何の話?」
と、しらばっくれる。
「お前、さっきの蟻の運命を歪ませて死なないようにしただろ」
「あはは、バレたか」
「たかが虫ケラ一匹の命がそんなに尊いか」
「特別な状況下でもない限り、無意味な殺生はやりたくないんだ。まぁ妹はその状況下でも殺さないだろうけど」
何を言っているのかわからないだろうが、実は知人は『運命を歪ませる』ことが出来るのだ。もっと噛み砕いて言うのならば『元より決まっていた』はずの運命を『変える』ことが出来るということである。
とはいえ、運命を変えるには『変わる前の運命』を知人が知っていなくてはならない。何故なら『変わった』のかどうかわからないのだから。先程で言えば、蟻が踏み潰されるという運命を前もって知らずに、私か知人が言えばそれは単なる『偶然』で収まってしまうのだ。
「貴方もその『運命』を知っていたのでしょう?」
ふむ、突かれたな。実は私は『記憶を読む』ことが出来る。記憶というものは何も人間やら動物やらだけが持つものではない、地も空も海も……もはや記憶というものは『歴史』なのだ。私はそれを読むことが出来る。
そして、その記憶を読めば未来で起こることがある程度予測できる。いわば『未来予知』なのだ。私はそれが出来る。
しかし、私は知人のように『未来を予知』することは出来ても『未来を変える』ことは出来ない。知人も同じように『未来を変える』ことは出来ても『未来を予知』することは出来ない。これを加味すると、私達は二人揃った時世界を掌握出来るのではないか? まぁ、そんなもの興味の欠片もないのだが。
さて、お前達の脳足りんの頭でもわかるように説明したつもりだったが理解できたか?
私が蟻が潰されるという『運命』を知人は察し、歪ませて失われるはずのその命は助けられた。蟻はそんなことも知らずにちょこちょこと自分の巣穴へと帰っていったのだ。
そんなことに能力を使うだなんて、私は知人が理解できない。そもそも、虫ケラを助けることが本来の使い方ではないだろう? まぁ、それはこいつの気持ち次第か。
――――――――――――――――――――――
「人里で不慮の事故があったらしいね」
今日から一週間、知人達が俗に言う『お泊まり』で遊びに来ている。知人の妹の小さい方がそう言ってきた。
「エニグマさんにも流石にわからなかった?」
「わかっていたさ」
不慮の事故というのはおそらく老朽化した建物が崩れ、人が下敷きになった、というものだろう。
「じゃあ、なんで姉さんに言わなかったの?」
冗談じゃない。私だって暇じゃないのだ。それに、人里の人間が死んでも私には知ったこっちゃない。どうして私が人間を助けなきゃならないのだ、私だってここのことで精一杯なのだ。
「私が守るのは、私の縄張りだけだ」
「……へぇ」
案の定、という顔をしてそいつは遊びに戻っていった。
運命というものはそう易々と変えられるものではない。それは私も知人も知っていることだ。だから、前もって知っておかなくてはならない。そうすれば『余裕』が生まれる。
私は一ヶ月に一度、何か大きな出来事が起きないかをチェックする。とはいえ先程も言った通り、大抵は私達の運命しか見ないのだが。
「…………………」
「どうした?」
知人が私を気にかける。
「どうやら、私達は一週間後死ぬらしい」
「わお、それは困ったね」
思えば、自分が死ぬ運命を見たのは初めてだと思う。『死の運命』が灯ることはあれど、『死』そのものが鮮明に映るのを見たのは経験がない。
しかも困った事に、死に様が確認出来ないのだ。そこに映るのは闇、ただの暗闇。
「…………………………」
ああ、なんということだ。一週間後にはもはや『世界』が暗闇に包まれているじゃないか。どうしたらこうなるんだ、バタフライエフェクトでも起きたっていうのか?
死に様がわからなければ、どうやって死んだのかがわからない。つまり回避しようとも出来ないのだ。
「過程は?」
「お」
そうだ、結果ばかり見ていて忘れていた。死ぬ少し前の記憶を予知すれば良いだけのことか。
まず、飯を食べて夜までゴロゴロ。妹が淹れてくれた『紅茶』というものを飲む。なんだか舌がビリビリするが、せっかく淹れてくれたのだから飲むしかない。城の輩達が召喚魔法の練習をして海洋生物をたくさん召喚してしまったようで、干物にしているという。何やってんねん。夜飯はでっかい肉、『ステーキ』というものらしい。妹が知人の妹に渡された『胡椒』というものをテーブルにぶちまける。m9(^Д^)
そして、魔法使いが遊びにきて妹達がちょっかいを出した衝撃故か、魔法使いのポケットから閃光手榴弾が落ち爆発。そんなもの持ってくんな。
はて、見ただけではいかにもギャグ漫画のような日常だが? 何の変哲もないまま残り1時間となった。朝日が昇る前、私と知人は薄暗い城下の散歩をしていた。
「そろそろ戻るか」
「そうだね」
私の言葉に知人がそう返したその時だった、知人の顔が歪み
「ぶえっっっぐしゅっっ!!!」
ある意味騒霊らしい見事なくしゃみをかましてくれたのである。私はそのくしゃみに思わず怯み一歩下がる、その時何かを踏んだ。おそらく妖怪の類だろう。踏まれた妖怪が激昂したのか、妖力を溢れさせる。
結果、世界が闇に包まれましたとさ、ちゃんちゃん。
「何それクソワロタ」
「ワロタで済むことではない」
「バタフライエフェクトか………それにしても、その妖怪はきっと闇を操る類のものだったんだろうね」
「あんなに小さくても油断はできないってわけか」
「私がくしゃみをしなきゃ良いんでしょ?」
「生理的なものを我慢するのは意外と難しいもんだぞ」
知人がくしゃみをしたのは見た感じ寒さによるものだろう。風邪でもひいたのか?
「とにかく、当日は外に出ないでぬくぬく過ごすとするよ」
「そうすると良い、ついでに何か温かいものでも出そう」
―――――――――――――――――――――
運命が決まっているということは、私達が歩む道は最初から決まっているということか。
その通りである。
ならば、何をどんなに努力しても無駄なのではないか。
なるほど。お前達の言い分はわかった。
でも歩みを止めたら運命はそもそも進まず停滞するのだ。だから、私は努力は怠らない。知人にぬくぬくするものを貸し、温かいものを差し出す。
「あれ、エニグマ姉さんどうしたの?」
「アイツが風邪をひかないようにさせてる」
「姉さんが他人を心配している!!?」
妹は目を点にさせていた。違う、私は知人を心配しているのではない。ただくしゃみをさせない、それだけに気を配っているだけなのだ。
自分が望む運命は、自分で決めるのだ。
さて、一応見ようか。その日は明日だが一応な。
……………あれ、困ったな。
世界が滅ぶ運命が変わってないんだけど。
―――――――――――――――――――――
「……お前と私は外に出てないというのにおかしいな。飯を食おうと食堂に向かい、席についた時お前はくしゃみをする。途端に世界は終焉を迎える」
「どういうこと?」
「私が聞きたい。でも、前見えたようなドミノ倒しによって起こっていることではない。何故ならその場にあの妖怪は居ないから。つまり、お前のくしゃみは世界滅亡のトリガーなんだろう」
何を言っているのかわからないだろうが、安心してくれ私でさえも知人でさえもわからない。でも、決まってしまっているのだから仕方のないことだろう。どんな仕組みなのかはわからないが、そうなってしまうようだ。
「困ったな。そうとなれば私は歪みに歪ませられないぞ……」
「まぁでも言うなれば、その時刻までくしゃみをしなければいい。さぁくしゃみを全力回避するそ」
「おー」
―――――――――――――――――――――
夜が始まる。自室にて私は知人を隣にただくしゃみをするか、という現象だけを気にしながら未来を予知していた。
「………飯を食っている時か」
見事なものであった。そのくしゃみの5秒後に世界は闇に包まれるのだ。
きっと口で抑えたとしてもそれは『くしゃみをしていない』ということにはならない。だからくしゃみそのものをしてはいけないのだ。もっと根本から絶やさなければ。
何故あそこで知人はくしゃみをしたのか、もう一度その風景に集中する。
「………?」
そういえば今思い出したのだが、ライトと寂滅は外に遊びに行っている。まさか、まさかこの二人が原因か? この二人以外はずっとこの場内で過ごしている。この二人に注視するとしよう。
「……………」
よく見ると二人の身体が黄色く汚れていたのだ、これは何だ?
これは……粉?
ハッ!!?
こいつら花粉を服にくっつけてきたのか!!?
「おい、お前さては花粉症だな!!?」
「え、よくわかったね」
その時、門がノックされる音が聞こえてきた。その刹那私は現役ランナーもびっくりのスタンディングスタートを決め、ドドドドドドと門まで走り抜く。
「おかえりィィィ!!!!」
「たっ、ただいま……」
「さぁ二人とも早く風呂に入ってくるのだ!!!」
「え? 別に今日は汚れる遊びはしてないよ」
「良いから早く入るのだ!!! 私の部屋に近づかず服を満遍なくここでぱっぱして一直線に風呂場へGO!!!!」
「は、は〜い………?」
二人は訝しげな表情をしていたが、私のいつもと違う説得に応じ、服をはらって風呂場へ行ってくれた。
私は近くに居た獣人を呼び
「へ? 花粉症の薬ですか?」
「ああ」
「エニグマ様は花粉症でしたっけ」
「なんでもいいだろっ、大至急だ!」
「はぁ、かしこまりました」
よし、これで大丈夫なはず。私はすぐさま運命を確認する。だが、駄目だった。知人は風邪も引かず花粉症も克服したはずだが相変わらずそこに広がるのは闇だけだった。
「他にも何か原因があるのか?」
今から一時間ほどして知人は薬を飲む。飯時も問題はなかった、ぽわぽわと身体から湯気を出した妹達が現れたがちゃんと身体を洗ってくれたのだろう。知人もくしゃみをせず飯を終えた。
次に、私と知人は紅茶を飲んでいた。その時だった
「ぶえっっっぐしゅんっっっ!!!」
途端に世界は闇に包まれた。
バカな、飯の時間から一切外には出ていないはず。まさか私の服に花粉がついていたのか? いや、ならば飯の時に既に知人はくしゃみをしていたはず。ならば………
「紅茶に原因があるのか?」
私は紅茶を受け取る時点の光景をじっくり見る
「………この紅茶、前のものとは違う味だな」
「ハナヒリノキを使ってみたんだ」
それが原因だよバカ妹。なんで鼻に入るとくしゃみする有毒植物を使ったんだよ、まだトリカブトの方がマシだって。今日に限ってそれとか狙ってるだろ。
というわけで
「ライトよ、紅茶にどんなものを入れてもいいがハナヒリノキだけは入れるんじゃないぞ」
「あれ、バレちゃった?」
「いいか、本当に入れるんじゃないぞ。絶対に入れるんじゃないぞ」
「どうして?」
「どうしてもなんだよォォォォォッッッ!!! 頼むからさァァァァッッッ!!!」
濁声で頼み事をする私を前に
「わ、わかったよ……入れないから……」
哀れなものを見るような目で返事をする。
――――――――――――――――――――
「うおおおあああああああああ!!! やってられるかちくしょーーーーー!!!」
思わず私は叫んでしまう。くしゃみポイントを探し続けていたのだが、今回はどの場所に居ても知人はくしゃみをしてしまうのだ。このままじゃ例の時刻になって世界は闇に侵される!!!
「妹達もただ遊んで私もお前もずっとぐーたらしてるだけなのに!!! くしゃみの要因なんてないのに!!!」
「わ、私が言えたことじゃないけど少し休めよ……」
うるせー、少しでも気を緩めばお前はくしゃみをするんじゃ!!!
「あ、そういえばさ。庭で猫達が海産物の干物を作っていたよ」
「ああ、召喚魔法の練習の産物らしいな」
「しかも面白いのがクラゲばっかでさ、確かアカクラゲだったような………」
「そいつのせいじゃねぇかああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
私は天まで届く叫びを放ち、知人をすっぽかして窓から身を投げる。
アカクラゲの乾燥した刺糸を吸うとくしゃみが出る!!!
「ここかぁ!!! アカクラゲを干している場所はァァァ!!!」
「にゃー!!?」
凄まじい形相をした私を見た猫達は慌て腰を抜かす。そんな猫達を私は気にも止めず、その両腕に炎と雷を纏わせ干されていたクラゲに向かってか●はめ波!!!
幸いにもそれらは干されたばかりのようで、刺糸が離散するような状況は回避できた。
「ふにゃー、ひどいですにゃー!」
「明日になったらスルメをこんもり作ってやるから今回ばかりは我慢してくれ……っっ!!!」
―――――――――――――――――――――
「めっちゃ疲れた……」
だが休んでいる暇はない、早く運命を見なければ。
飯の時間、ステーキが出る。とても美味そうじゃないか。そこで知人の妹に渡された塩胡椒を妹が受け取り、ふりふりとステーキにかけていく。
「あ」
胡椒の蓋が外れ、ドバッとステーキにぶちまけられた。その次の瞬間知人の顔が歪み
「ぶえっっぐしゅんっっっ!!!」
ああ、そういえば胡椒といえばくしゃみだな。
早速私は
「えー、ファントムよ」
「ん、なに?」
「今晩の飯についてのことなんだが」
「ああ、今日はお肉みたいだよっ。おっにくー、おっにくー」
「そのことなんだが……」
私は妹を前に勢いよく土下座し
「お願いだ、今日だけは……今日だけは塩胡椒を食堂に出させないでほしいッッッ!!!」
「へ、何で?」
もちろん妹はくしゃみによる世界滅亡のことを知らない。
「お願いだッッッ」
「えー、でも私味濃い方が好きなのにー」
「今日だけはッッッ、頼むッッッ!!! 今日だけは塩胡椒を使わないで食べてくれッッッ!!! 今日が終わったらうんとかけて良いから!!!!」
私は名人もびっくりな速さで何度も額を床にうちつける。
「わ、わかったよ姉さん……今日は我慢するよ……なんか今日の姉さん気持ち悪い……」
妹も私が何かしらの使命を背負っていると感じたのかしぶしぶ承諾してくれた。
―――――――――――――――――――――
よし、飯時という関門を抜けてやった。妹はやや不満足だったが、今日だけは本当に塩胡椒は駄目だったのだ。許せ。
「おーい」
魔法使いが遊びにきたようだ、正直遊びに来てほしくなかったのだが。
しかし、おかしい。魔法使いが来るのはもう少し後だったような? 私の記憶違いか? とにかく、この後魔法使いは妹達によって閃光手榴弾を落とすはず………
「ぶえっくしゅ!!!」
なんでだ!!? 何故このタイミングでくしゃみをする!!?
「光くしゃみ反射だね、一部の人は強い光を見るとくしゃみが出るらしいよ」
なるほど、そんなものがあるのか勉強になるわー。って感心している場合ではない!!!
「わーい、アビスだー!」
くそ!! もう妹達が来たのか!!! どうする、奴の目を覆うか?
「騒がしいですにゃー」
恐らく閃光が迸った数十秒後、猫達が乾いたアカクラゲを手にしながらここへ現れる運命が見えた。くそったれ。
私は魔法使いに近寄る妹達を飛び越え、魔法使いのポケットを引き裂き、やってくる猫達の足止めとして雷を落とす。
「な、なんだ!!?」
「ふにゃあ!!?」
私は速攻知人を引っ張り
「引きこもるぞ!!」
「うわぁー!」
――――――――――――――――――――
「っ!?」
途中で私は足を止めた。部屋に向かう途中でこいつはくしゃみをしてしまう。かといってここで止まっていたとしてもやはりくしゃみをしてしまう。
私達は来た道を戻る。花粉症の薬の効果が切れ始め、さらには何故かはわからないが花粉がこの城内に蔓延っているのだろう、そうとしか考えられない。
「食糧庫に籠るぞ」
そうして私達は揃って食糧庫に籠る。幸いにもまだ花粉に侵されてはいないようだ。
「ふぅ……」
「いや………なんかごめんね」
「どうして?」
「私がくしゃみをしたら世界が滅ぶのでしょう? なら、いっそ私という存在を消してしまえばいいんじゃないかな?」
ああ、それは盲点だった。だが、私は
「それは、嫌だな」
「どうして?」
「どうしてもだ、私は……お前を消したくない」
すると、知人は安堵の表情をする。
「しかし、ここまでして私にくしゃみをさせようとする運命か……まるで戦術としてそうしているようにさえ思える」
「!」
ああ、だめだ。くしゃみの運命が見えた。今から五分後、老朽化によって崩れた棚に積まれた胡椒の袋がこの狭い空間にぶちまけられる。
私は食糧庫の扉を開けようとしたが、考えればこの先は花粉に侵されたバイオハザード。
「ああ……」
私は思わず頭を抱えてしまう、ここは聖域などではなく処刑台だったのだ。私達は今チェックメイトの状態なのだ。
くそ、こうなればこうする他ない。こっぴどく怒られるけれど、みんなが生き残るにはこうするしかないのだ。
「燃えよ、有機物達よ」
その言葉の後、瞬時に辺りが燃える。全てを灰へと還してしまえば忌まわしいくしゃみ因子がこいつの鼻腔を掠めずに済む。
この作戦の名前は、やけくそ。
私は叡智の腕を掴むと天井に穴を開け大ジャンプ。朝日に照らされつつある淡い青空へと跳んでいった。
しばらくして、私達を追いかけるように城の周囲の緑から黄色い粉のようなものが現れた。あれは、花粉!?
「しまった、上昇気流か!!」
私が生み出した炎によって熱せられた空気が花粉を運んできたということだろう。
「あ、あれは!!」
庭から追いかけてくるのは乾燥したアカクラゲの刺糸! 食糧庫からは焼け残った胡椒も参戦!! 仕舞いには俺も忘れちゃ困るぜ!と言わんばかりのハナヒリノキの粉末!!! うおっ、眩しい!! 油断すれば光くしゃみ反射だ!!!
「……って、いい加減にしろよお前ら……この私を怒らせるんじゃあねぇぜ」
叡智が低いトーンでそう言うと
「私の傍に近寄るなァーーーーー!!!」
熱せられた空気による厚いバリアを展開!! これは暑い展開だ!!!
「「このまま運命の時刻まで生き残ってやる!!」」
―――――――――――――――――――――
いやまあ、言ったかもしれないけど運命が変わっても、運命がわかるといっても、無理なものは無理なわけで。
「えー……魔法使いのポケットの修繕が終わったら猫達にスルメをたくさん買って倉庫を満たすほどの食糧を採って………」
アカン、確かに私がやったことではあるが過労死しそう。
「倉庫の天井の修繕終わったよ」
叡智が疲労に満ちた顔でこちらに来る。
「おぅ、悪いな」
「いいんだよ、世界が滅ぶくらいならこんなの平気だから…………ふぁ、ふぁ」
「…………………」
「ぶぁっぐぐじゅょんッッッ!!!!!」
今のくしゃみで天地が歪んでしまったのではないか。
「魂抜けてないか」
「多分」
「鼻水拭け」
「う゛ん。にしても、今回の私達なんだかダークヒーローみたいだね」
「ふっ、それもそうだな。……よし、ポケットの修繕が終わったからこれを魔法使いに届けてくれないか」
「わかった」
「さて、次は猫達にスルメを買ってやらないと………ヒーローは大変だな………」