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スットコドイチェラント  作者: 亜留間次郎
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第五話 連邦憲法擁護庁(Bundesamt für Verfassungsschutz)

前書き

この作品は現実世界の現代ドイツを舞台にした物語です。

作中に登場する法律は全て実在する現行のドイツ法です。

 俺たちはマーサが用意してくれたマンションに引っ越すことになった。ミヒャエルの財産は一切持ちだせないので、荷物は意外と少なかった、ただしマリアの自分用じゃない衣類は除く…

マスコミに追い回されれているので郊外の一戸建てよりもセキュリティがしっかりしたマンションの方がありがたい。


 マンションに到着すると見知らぬメイドが待っていた、メイドは高い萌え声とふわふわした口調で「お帰りなさいませご主人様、あたし、マルガレサ・ゲルトルイダ・ゼルと申しますグレーテルとお呼びください」と名乗った。

マーサが「グレーテルは住み込みで働くヘル・オタク専属メイドの設定になっています」と解説した。

なんかスカートが短めだしJかKに見える巨乳だし、もしかして、エロゲー選択肢ありのメイドさん、俺がビルダやマリアにソレナンテエロゲーなことをしないようにマーサが用意してくれたのかと邪悪な考えが頭をよぎった。


 グレーテルは短めのスカートをつまんで「ご主人様、グレーテルを可愛がってください」と可愛く頭を下げた。

今度はエロゲー選択肢を選んでいいんだと俺の理性は判断を誤った、思わず手が出て目の前に出た巨乳をつかんでしまった。

左側の巨乳を揉んだ俺の右手は何とも言えない違和感を感じたが、現実に巨乳を揉むは生まれて初めてなので、何がおかしいのか言語化できなかったので俺の理性は考えられる可能性を上げてみた。


1.現実の巨乳は想像と違う

2.巨乳用のブラジャーは分厚くて硬い

3.シリコンで盛られた人造巨乳

4.乳以外の物が入っている


 そして、俺はナゼか乳を掴んだまま腕をひねられて床に倒されて動けなくなっていた。

グレーテルは胸の谷間に右手を入れると左胸から黒い金属の塊を取り出し、それはグレーテルの手の中で変形して銃口を俺に向けた。

俺の腕をつかんでいた左手を離すと右胸に手を入れて手帳のような物を取り出した。

右手に銃を左手に身分証明書を持ったグレーテルは低い毅然とした声で本当の名乗りを上げた。


連邦(Bundesamt)憲法( für )擁護(Verfassun)(gsschutz)PMK捜査官マルガレーテ・ケストリン・レンチュ」


マーサが「PMKはPolitisch Motivierte Kriminalitättoの略で政治的動機による犯罪を専門に扱う捜査官で彼女の担当はネオナチです」と解説した。

俺もヒルダ達も固まっていた。


 俺はやっとマーサが「専属メイドの設定になっています」と解説した意味を理解した。

そして、俺はマルガレサ・ゲルトルイダ・ゼルという名前を思い出した、女スパイの代名詞と呼ばれたマタ・ハリの本名だ!

彼女は日本で言う公安に相当する組織の捜査員でハンス達のネオナチを捜査していた。

グレーテルは折り畳み式の拳銃と身分証明書を胸の谷間から巨乳の中に戻した。

あの巨乳は捜査官の装備を隠すポケットらしい、つまり偽乳…


 俺はマーサにどういうことなのか説明を求めた。

話を要約すると、ドイツ政府としてミヒャエルの莫大な遺産がネオナチに渡ることは絶対に阻止したい、ついでにネオナチを一網打尽にしたい。

その為に彼女は俺を護衛と監視するために派遣されてきたらしい。

彼女はマーサの法学部時代の同期で実はエリートらしく、友人であるマーサを通じて接触してきたそうだ。


俺が「グレーテルさん」と呼びかけると「グレーテルと呼び捨てになさってくださいませご主人様」と作り笑顔っぽい笑顔で答えた。

「マーサより若そうに見えますけど、おいくつですか?」と控えめに聞くと「設定年齢、永遠の18歳です」と答えた。


俺は真実に気付いた「コスプレっぽいメイド服も巨乳も若く見えるのも全部作り物だ」


今度は「オタクと同伴しても不自然に見えないように作りました、変装に不自然な所があってもコスプレで誤魔化せるので楽な変装です」と低いドスの利いた別人のような声で返事をされた。

マーサが「グレーテルの地声は低いんです」と解説した。


グレーテルは「メイドは捜査の為の変装です、第三者の前で体を触ることは許容しますが、それ以上の行為は禁止します、第三者が居ない場所では禁忌です」とドスの効いた低い声で威圧するように専属萌えメイドの取扱説明をしてきた。


取扱説明が終わると表情を作りかえて「じゃあ、グレーテルがお手伝いするから、ご主人様、早くお荷物を片付けましょうね萌え」と今度は高い萌え声で言った、

そして「メイドは設定で現実には手伝いません、私が手伝った設定で自分でやってください」とドスの効いた低い声で続けた。


これはなんだろう、二重人格ツンデレメイドとか新しいジャンルなのかと俺の頭は混乱しながら自分の荷物を自分で片付けた。

それより、俺って日本で言う公安監視対象になったの、それも24時間監視付きで。

無職無収入の俺は自分の人生がどんどん心配になってきた…




 俺たちは各自で部屋を片付けるとダイニングに集まって欧州一オタク大会二次予選の打ち合わせを始めた。今日からグレーテルも参加することになった。

100人の中から何人が生き残るか、ここから何人に絞り込むべきか、どんな審査を行うべきか俺は何も考えていなかった。

とりあえず、100人分のプロファイルと作品を順番に見ていくことにした。



ジャン=バティスト・ナポレオン・ボナパルト

フランス人

作品:セーラームーンOP実写再現


 コスプレイヤーがよくやってる定番動画だが、上位勢だけあってクオリティが高く1人でセーラー戦士全員を演じ分けた演技力がすごい、1人で全員を演じて合成している映像技術もかなりの物だ。

俺が納得しているとマーサが「ちょっとまってください、本名がジャン=バティストなら男性のはずです、フランス人でこの名前の女性はありえません」と疑問を投げかけてきた。

変だと思い「作者のプロフィールを見て、そこから配信動画をたどってみると、女装するための化粧、体作り、ウイッグの手入れまで何十本もあがっている」


やっと気付いた俺は「こいつ、男の娘だ、男の娘だよ!」と叫び声をあげた。


皆は意味が分からず?マーク(フラーゲツァイヒェン)が浮かんでいた。


俺は皆への説明を放置して疑問を投げかけた「ナポレオン・ボナパルトって中二病をこじらせた苗字だけど、コレって本名なんだよな?」

グレーテルがファイルを出してきた「彼は本物のナポレオンの子孫です、現在もフランスの憲法にはナポレオンの子孫を皇帝とする条文が残っているために昔からボナパルト家の人間はフランス皇帝の地位を要求する帝位請願者と言われてきました」「彼はナポレオン9世を名乗って女体化ナポレオンのコスプレをしてボナパティストからコアな人気と非難を集めています」

「ちょっ、女体化ナポレオン9世のコスプレした男の娘が本物のフランス皇帝の地位を要求してるって、二次元と三次元を混ぜるな!、混ぜるな危険!」いきなりのヤバイ奴に俺は頭痛がしてきた。



ヴァルター・メンギン

オーストリア人

作品:石器時代に飛行機作ってみた


グレーテルは解説を続けた「オーストリアのウィーン大学、古代考古学科の教授で実践考古学を専門にしています」

俺は「実践考古学?」と意味が良くわからず訊ねた。

「実際に石器時代や青銅器時代の人間になりきって当時の技術や生活を再現する考古学分野です」

「以前にピラミッドの石を切り出すのに木のクサビを打ち込んで水をかけて膨張させる通説を机上の空論と笑い、実践して学説を書き換えた実績がある考古学の大御所です」

「日本の漫画Dr.STONEを見て千空のキグルミを着て動画撮影したら急激に人気になり、大学院生に大樹役を頼んで二人で撮影した動画です」

「メカ千空にかけて生千空と呼ばれています」

「本当に自作の飛行機を飛ばしています」


「俺もその漫画読んだことあるけど、作中で飛行機の作り方は描かれてなかったんじゃ?どうやったんだ?」マリアは「動画を見てみましょう」と再生を始めた。

「なるほど、塩から金属ナトリウムを作ってテルミット反応でアルミを精錬してるのね」俺にはさっぱりわからないが、ヒルダは分かったらしい。

ヒルダに「これがわかるのか?」と聞くと「私これでもベルリン工科大学目指してるんですけど」と文系の俺を馬鹿にする理系の目で笑われた。



アテナ・キアク・クリスチャンセン

デンマーク人

作品:レゴブロックで機動戦士ガンダムを再現


「レゴで作ったガンダムを使ったストップモーション・アニメです、ビームや爆発まで全てレゴで再現してCG不使用を自慢しています」

「彼女はレゴ社の経営者一族の令嬢でレゴ社専属のプロビルダーをしています」

「今までにも彼女が作ったモデルがいくつも発売されていて、レゴの公式HPで彼女が作ったレゴガンダムの販売告知が出ています、公式版権を取得しているみたいです」


俺は「これってブロックの大きさからみて、相当デカイよな?下手したら人間の身長ぐらいないか?」と気になった。

隠れオタクなマリアはさらっと「十分の一スケールですね」と言い切った。

俺は「レゴの社長令嬢ってそんなに金持ちなの?」と素朴な疑問を投げかけたが「あんた、そんなことも知らないのレゴ財閥はデンマーク最大の財閥よ、消防救急のファルクを始めデンマークの公共サービスの半分はレゴで出来てるって言われてるぐらいなのよ」とヒルダにドヤ顔されたのがムカついた。



サルバドール・ロペス・シエラ

スペイン人

作品:実写動画、マジンガーZのパロディ


「スペインの奇祭マジンガーZ祭で誰よりもマジンガーZになりきれる男と呼ばれ、スペインの田舎に全高10mのマジンガーZを建ててしまった人物です」

「マジンガーZ愛ならだれにも負けないと豪語しているだけあって、低予算で技術的にも稚拙なのに愛にあふれた動画と評価が高いです」

「職業は農家です」

俺にはわかる、作品への愛だけで上位に食い込んできたツワモノだよ、愛が技術や予算の不足を凌駕した強オタクだ。



ジャミラ・バブーシア

アルジェリア系フランス人

作品:特撮ドラマ、ウルトラマン第23話「故郷は地球」の前日譚を描くオリジナルストーリー


「移民の女性が宇宙飛行士に選ばれて宇宙に行って見捨てられ怪獣ジャミラになって帰ってくるまでを描いた特撮ドラマです、この動画にウルトラマンは一切登場しません」

「作者もアルジェリアからフランスに移民した二世ですね、この作品で主役を演じているだけでなく特撮監督として特撮も手掛けています」

「CGを一切使わず模型を使用した初期の円谷作品を再現することに強いこだわりを見せ、欧州全土の移民から絶大な支持を得ています」



フランチェシカ・モジェスカ

ポーランド人

作品:漫画、女騎兵プワスキ


「ポーランド版宝塚ともいえる劇団の主宰者で日本の漫画を題材にした演劇を上演しています」

「プワスキ将軍が男装の麗人だった設定で作った演劇で人気があり、そのコミカライズ作品を出してきました」

「日本の少女漫画のような絵柄で高い支持を得ています、さっそく日本の出版社から日本語版のオファーが来ているようです」

俺は少女漫画も読むけど、これはベルばらの再来じゃないかよ…



ジャージー・イワノフ・ザイノヴィッチ

ギリシャ人

作品:実写ドラマ聖闘士(セイント)


「現在は星座と認められていない猫座の聖衣(クロス)をまとった聖闘士(セイント)猫になって監視者メシエ座の聖闘士(セイント)と闘う実写ドラマです」

「ボルタ電池座や軽気球座などの現在は星座として認められていないニッチな聖闘士(セイント)が登場するコメディ色の強い作品です」

「実際にアテネの古代遺跡で撮影しているので背景の無駄遣いと呼ばれています」

「作者はギリシャの高校生です」

俺はこの作品をオタクの腹筋を崩壊させる迷作だと思った、そして俺もお腹痛い。



ゲルハルト・ベーレント

ドイツ人

作品:アニメ、ドラえもんの最終回


「セル画に手書きしたアニメ作品です、単純な子ども向けの絵柄なのに作画技術が高くロストテクノロジーと呼ばれています」

「ドラえもんの設定を独自解釈したオリジナルストーリーで人気アニメの最終回を描いています」

「台詞が無い脚本構成で視聴者のネィティブ言語を問わない構成が多くの視聴者を引き付けています」

「作者はベルリン=ブランデンブルク放送を定年退職した旧東ドイツの国営アニメーターだった人物で、何年も前から個人で作製を続けていたようです」

なんかアニメへの妄執のようなものを感じる…



ゴットフリート・フォン・ホルンベルク

ドイツ人

作品:ライトノベル、ボー・ブランシェが中世ドイツに異世界転生して無双したら伝説の拳聖になりました

「日本の漫画スプリガンの二次創作です、スイスで育った多言語話者で6言語同時発表でテキスト作品の不利を打ち消しています」


クライナヴァルト・クヴェレザッツ

ドイツ人

作品:漫画、ドッグ・シット・ワン


リヒャルト・アオヤマ・クーデンホーフ

日系ドイツ人

作品:特撮、愛国戦隊鉄十字


・・・・・・・・・・・・・

次々ととんでもない作品ばかりが続いた・・・・・・・・・・・・・


俺たちは一週間かけて100人の詳細なプロフィールと関連作品に目を通した。

まだ、二次試験の内容も日程も決まっていない。


ハンスの仲間を絞り込むためグレーテルが犯罪プロファイルを出してきたが該当者は見つからなかった。

身元の綺麗な仲間を潜り込ませたのか、全員落ちたのか判断が付かない。


この中から己の萌えのみに従う本当のオタクを選ばなければならない。


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[良い点] スペインのマジンガーZ愛は素晴らしく、水木のアニキが行くと国賓待遇と聞きました。(それに比べるとK国のテコンダーV敗訴は最悪ですが) 車の宣伝でも水木のアニキの曲が使われるほど人気です。 …
[気になる点] ドイツだとナチスは違法なのは知っているのですが、ネオナチって実際にドイツでどれだけやらかしてるのでしょうか?テルアビブの空港で銃を乱射した某組織並なのでしょうか? [一言] ゲルハルト…
[一言] 設定という概念が、浸透しきっているのがなんとも言えず。 作品もどれもものすごいけれど(ネタを思いつくところが)、映像作品が多いように思うのは、やはり言語がそこまでわからなくても万人受けする…
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