朝食と召喚状。
ロイさまとふたりで朝食に向かえば、途中でアルくん、リタくん、リコちゃんと出会い、アルくんはリタくんを、私はリコちゃんを抱っこさせてもらった。
わぁ、相変わらずかわいいなぁ。横でロイさまも照れながらリコちゃんとリタくんを順番になでなでしていた。やっぱり末の双子ちゃんだから、ロイさまにとってもかわいいんだろうなぁ。ふふふっ。
「おにーたん、おめんごっこやめたの?」
「きょうおめんないねー」
と、リタくんとリコちゃんがロイさまを見上げてきゃっきゃと告げる。あぁ、昨日のはお面ごっこと言うことになっていたわけね。
朝食のダイニングでは、既にお義母さまとお義父さまが待っていたのだが。
「そ、その、ビアンカ。君はコワモテが好きだと聞いてな」
何故かお義父さまがお義母さまの影に隠れながらこそこそと呟いてくる。もちろんお義父さまのほうが体格も背も大きいので、めちゃくちゃいびつな隠れ方なのだが。
てか、昨晩の話題がもう既にお義父さまのお耳に入ってる!?
「え、えぇ、まぁ」
「だ、だから今日からはお面を取ろうかとーーうん」
そう、自信なさげに頷いたお義父さまのお顔は、とてもロイさまに似ているコワモテである。髪とくまさんお耳は黒で、瞳は鋭く切れ長で銀色である。
「ほら、ガイさまったら。恥ずかしがらなくても大丈夫っ♡」
「そ、そうかな、ラナ」
「そうよ~。あなたは世界一カッコいい私の旦那さまなんだから」
「ぐはっ」
お義母さまに世界一カッコいいと言われたお義父さまはそのまま崩れ落ち、お義母さまの腰にそのまま抱き着いて顔を埋めていた。そんなお義父さまの頭をお義母さまがよしよしと撫でている。
「ね、ビアンカちゃんもそう思うでしょ~?」
「えっ、あっ、ステキなお義父さまを持てて、幸せです!」
「ほ、本当かっ!」
お義父さまがくわわっと私を振り返る。おぅ、コワモテーっ!
「はいっ!」
そう、笑顔で答えれば、お義父さまは満足げに立ち上がり、お義母さまと仲良く席に着く。私たちもと思えば、袖をピッと引っ張られる。驚いて振り向けば。
くわわわわっ
ロイさまがめっちゃくわわわわっとしてるううぅぅぅっっ!!
「ビアンカの世界一は、―――俺」
ドテッ。
「も、もちろん私にとっての世界一ステキな旦那さまはロイさま、ですよ?」
「んっ」
くわわわわっっ。
うん、このくわわわわっっは喜んでいるくわわわわっっだ。
そうして私たちも席に着き、和やかな朝食がスタートした。
***
朝食を終えた後、私はロイさまに屋敷の中を案内してもらっていた。そんな時だった。
「兄さま!お義姉さま!大変です!」
アルくんが息せき切ってこちらに走ってきた。
「何か、あったのか」
「お、王城から召喚状が来たんです!」
「王城から?何か面倒ごとでもあったのか?」
「それが、その、お義姉さまを指名しているんです」
「わ、私を?」
何故、急に獣人族の国の城から呼ばれるんだろう?
「何でも、人族の国の王子が来ていて、お義姉さまに会わせろと言ってきているみたいで」
げっ、ってことはバカルースかぁ。何故隣国まで追ってきたのか。今朝朝食が済んだ後に、お義父さまから無事私たちの婚姻がスピード許可されたと知らせがあったから、私はもうこの国の国民である。それなのに他国の王子が名指しでこの国の城に呼び出すなんて、何を考えているのか。
「なら、俺が共に行く」
「ロイさま、でも」
「獣人族は、伴侶を大切にするから。知らない男に妻をひとりで会わせたりしない。どうしてもな時は家族や信頼できるものを付ける」
「そ、そうなのですか」
私は知り合いだけれど、公爵令息とは言えロイさまはご存じないだろうしなぁ。外交などはほぼ第2王子殿下が担当されているもの。さすがに王族同士の交流はあるだろうけど。
「それはとっても頼もしいです」
そう思わず告げれば、ロイさまが優しく頭を撫でてくれて、ピンと張りつめた緊張の糸が緩んだ気がした。