表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

ロイさまのエスコート。


「さ、ロイ。ビアンカちゃんを夫婦のお部屋に案内して差し上げて」

と、お義母さまが告げれば。


「―――っ」

コクンっとお面をつけたままのロイさまが頷けば、のそっと立ち上がり、そして私の前にやってきた。


目の前に立つとーーおっきい。

そしてすっと手を差し出してきた。ごつごつとした手。やはり武道を嗜まれているのだろうか。緊張しつつもその手の上に私も手を添えれば、刹那ぐいっと引き起こされた。


「きゃっ」


そしてそのまま胸元にダイブさせられると思えば、急に手を引く力が弱まり、背中をそっと支えられる。


「―――す、済まない。か、加減が」

慣れていらっしゃらなかったのだろうか。


「い、いえ。ありがとう」


「―――っ!!」

何だろう。今猛烈に背景にお花が咲き誇ったような幻影が見えたような。


「さぁ、おにーたんとおねーたんはこれからふたりでーーきゃっ♡だからいい子でお部屋行こうね~」

と、その左右ではお義母さまとアルくんが双子ちゃんたちを回収していた。あぁ、私のかわいい双子ちゃ~んっ!しかしながら、今は私の旦那さまである。そして“きゃっ♡”って何だろうお義母さま。


しかしながら、その後のロイさまは何だか緊張しながら私をエスコートしていらっしゃる。

だけどもーー


「あの、もっと早くても大丈夫ですよ?」

何だろうこの亀さん歩行。


のっそ、のっそ。


ちょっとかわいくもあるんだけども。


「―――では、もう少し」

「はい」

そして4~5回試行錯誤の末、やっと普通の歩行になった気がする。


***


使用人に案内させることもあるのに、わざわざ旦那さまになるロイさまが自ら案内してくれるのも、何だか幸せなのかもしれない。


行き交う使用人たちも丁寧に礼をしてくれて、何だか過ごし良さそうだなぁ。


「―――っ」

そして、大きな扉の前に辿り着いた。


「そ、そのっ、えぇと、こ、こここがっ」


「あ、あの。落ち着いてください。まずは深呼吸をっ」

やっぱり女性慣れしていらっしゃらない?いや、慣れすぎてても困る気がするのだが。


「その、は、入るぞ」

「は、はい」

何だかノリとしては立派な洋館風お化け屋敷に入る前のような心境。いや、どこからどうとっても豪華な超豪邸なのだけども。


ロイさまが扉を開けてくださると、その中はとても広々としている。そして部屋の中央には夫婦ふたりで使うと思われる大きなベッドがあった。


「あ、あのっ」


「これが私たちがふたりで使うお部屋なのですね。ステキです」


「ふ、ふたり、でーーい、いいのか」

え?だって夫婦になるわけだし。


「ロイさまがよろしければ、喜んで」


「よ、よろこーーもごもご、そうか。こ、こちらへ」

そうして、ベッドの前までエスコートされたので、早速ぽふんとベッドに腰をおろしてみる。わぁ、ふっかふかぁ。


「とても寝心地がよさそうです」


「ね、寝心地ーーその、がんばる」

何をだ!?


でも何だかかわいらしい旦那さまで良かった。ーーでも気になるのはやっぱりきつね面よねぇ。てか、やっぱり何できつね面をつけているのか。聞いていいんだろうか。それとも聞いたらいけないんだろうか。まさかアレが見えているのは私だけ?


私は意を決して立ち上がった。


「?」

ロイさまが何だろうと首を傾げる。


くまさんお耳、触りたーーじゃなかった。


私はゆっくりとロイさまのお面に手を伸ばす。


ゴクリ。


ぴとっ


手に触れたのは、お面のすべすべとした質感。


ーーある。確実に、顔の表面にお面が、ある!私にだけ見える幻とかではなかった!


「そ、そのーーこの後は、夕飯だ」

「はい」

そう言えばそろそろお腹が空いてきたかも。


「き、着替えて、くる」


「は、はい。そうだ、私も」

旅装のままだし。


「すぐに、使用人を呼ぶ。因みに、あちらが俺の部屋に通じる続き扉。反対側が、その、び、びび、ビアンカの、部屋ーーだ」

私の名前噛みすぎとちゃう?いや、緊張しているだけだろうけども。


「は、はい」

頷けば、ロイさまは自身の私室に向かう。


暫くするとメイドたちが着てくれたので、お気に入りのワンピースを出そうと思ったら、是非これをと示された服に袖を通す。黒いシックなワンピースである。

そして持ってきたアクセサリーの中から、メイドたちが絶対これと推してきた銀色の宝石が付いたネックレスを身に付ける。


「これでロイさまもイチコロですよ!」

え、イチコロってどういう意味?


「ロイさまはむっつりなだけで本当は優しいんです!」

「ファイトです奥さま!!」


「あ、ありがとう?」

メイドたちに応援されて部屋を出れば、ちょうどロイさまも私室の外扉から出てきたところだった。


あれ、待って。

何にも変わってなくない?服も靴も、変わった感じがなーーあっ、ま、まさかっ!


私はロイさまの口元に目を向ける。


きつね面の口元が食事用にオープンになっているぅっ!

まさか着替えって、―――単に食事用お面に付け替えただけかあああぁぁぁいっっ!!!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ