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第1章 赤雷との邂逅

毎日更新している方に尊敬の念を。

最後までお楽しみいただけたら幸いです。


迎えた週末。メドラウトの機嫌は朝から鼻歌が聞こえてくるくらいに最高潮といっても良かった。かく言う俺のテンションも高い。何せこれから人生初のバベルに登るのだから。


『にしてもよマスター。昨日のあれ、学校だったか?ひでぇ程に退屈な所だな。よくあんな所に毎日毎日通えるよな。信じられねぇ。俺ならすぐに脱退ドロップアウトだ』


「ははは・・・気持ちはわかるよ。でも仕方ないんだ。今の世の中、どんなに面倒くさくても高校は卒業しないと生きづらくなる」


『難儀なもんだな。でもあれだな!あの宮西と羽場って奴は愉快だったな!ありゃいい奴ら!それに対してなんだ、あの君塚とかその取り巻きの連中は?口が達者だが腕の方はサッパリ。そんな奴らがあの教室(監獄)の看守どもときた。お前はそれでいいのかよ?今でも、いや今でなくてもあんな奴らから天下取れるだろ?』


「・・・そこは高度に政治的な問題と言っておくよ、メドラウト。ホント、生きづらい世界なんだよ。この世界はね」


昨日のことを思い出す。当然のことながら昨日は朝からエヴァンス選手の話で持ちきりだった。画面の向こうとはいえ、存在しているのかすら疑われている【黒金】級のCCを生で目撃したのだ。宮西は鼻息を荒くして話しかけてきた。


「おいおいおいおい!一海観たかよ!?観たよな!?なんだよ昨日の試合!あんなCCが出てくるなんて信じられるか!?信じられないよな!?俺が観たのは夢じゃないか確かめたいからお前が観た内容を話してくれよ!」


頭のネジをどこかに落としてきたのではないかと心配するほどに、宮西は一晩経ったというのに興奮していた。


「・・・エヴァンス選手が【黒金】級のCCを召喚して、毛利選手の【翼竜ワイバーン】を瞬殺した。お前が観たのと一緒か?」


「あぁ・・・あぁ・・・あぁ・・・やっぱり昨日のは夢じゃなかったんだな!?つかあの強さは反則じゃねぇか!?あんなのに勝てるのかよ!?」


「ん・・・普通に戦っても無理だろうな。少なくとも同格じゃないと勝負にもならないんじ

ゃないか?」


「そんなこと言ったら日本はいつまでたってもCCCで世界を獲れないよ!?と言うかさ、この後はもしかしてもう消化試合かな?せっかくの準決勝・決勝なのに・・・」


羽場もテンションは高かったがこの先に待つ最早悲劇とも言える大会のことを考えて落ち込んでいる節もあった。


『まぁ俺なら楽勝だがな!つかマスター、さっきから気になっていたんだが、こいつらは誰だ?お前の友人か?』


「仕方ないさ。普通に考えたらいくらベスト4に残ったと言っても【黒金】級CC保持者が混じっていたら普通なら試合は投げるさ。むしろこの時点で棄権してないのが流石だよ。あの限られた情報で勝ち筋を考えているんだろうな」


『なぁなぁマスター!無視すんなよ!聴こえてんだろう!?』


『頼む、メドラウト。少し静かにしていてくれ。この二人にはまだお前のことを知られたくない。いずれは知られるけどそれは今じゃない』


頭の中に響くメドラウトの声に対して俺も念じるようにして答えた。これも昨日彼女に教えてもらったことなのだが、念話は口に出してすることもできるのだが頭の中で言いたいことを思い浮かべるとなんとびっくりそれで会話が成立した。


「ん?どうした一海?ぼーとして。考え事か?」


その代償として眉間にしわを寄せて無言を貫くことになるのでどうしても友人たちからすれば怪しく見えてしまう。独り言をするよりは幾分マシだろうが。


「ん・・・あぁ、なんでもない。そうだな、あんなの見せられたならさすがに現実逃避もしたくなる。ありゃ無理だ」


『おい!何言ってんだマスター!俺はあんな奴に負けないぞ!』


『・・・話を合わせているだけだから。お願いだから少し静かにしてくれ』


「・・・本当に大丈夫か?体調悪いのか?」


「あら、降谷くん、気分が優れないの?」


いつもと同じ時間に彼女、神月哀が話しかけてきた。宮西と羽場の二人がその瞬間い固まるのもいつもことで、メドラウトは『むっ?』と若干警戒の声をあげた。


「いや、なんでもない。ちょっと昨日の試合を観て興奮しちゃって中々眠れなかっただけだから」


「そう、安心したわ。それにしても今日はどこもその話で持ちきりね。ほら、あそこじゃいつものようにが得意げに話しているわ」


視線を向けた先にはこれもまたいつものように教室の真ん中の自席で君塚がその周りには石橋たちを侍らせて、昨日の出来事について大仰に語っていた。


「言わせておけよ。そもそも、わかっているのは名前くらいだろう?あんな一瞬のことであのCCの能力なんて素人にはわからないさ。それは【探求者】である君塚だって同じことだ。だからここでの話やテレビで解説者が語ることなんて所詮妄想の域を出ないさ」


「あら、驚いた。中々言うのね、降谷くん。なら貴方にはわかったのかしら?あのCCのことが?」


「・・・知らん。プロが観て何も分からなかったんだ。素人・・の俺がわかるわけないだろう?」


危うくぽろっと画面越しで視えた能力値を言いかけるところだった。だがこれは俺があの【コントラクター】と同じ、メドラウトと言うあれと同格の【コントラクター】と契約することができたからだろう。君塚のようなただの【探求者】では名前はわかってもその飛び抜けたステータスは視えないだろう。だからこそ、おそらく世界では俺を含めて七人しかわからないことを口に出すわけにはいかない。と言うか話したところで誰一人として信じてくれないだろう。


「フフッ。貴方って本当に面白い人ね。そして隠し事が苦手なのね。今、一瞬悩んだでしょう?」


なんてこった、勘が良すぎるにもほどがあるだろう。返す言葉がとっさに浮かばないくらいに動揺してしまった。そしてそれは揺さぶりをかける探偵を前にしたら自白したも同然だ。


「沈黙は金。ここでのだんまりは肯定と捉えるけどいいかしら?‘


「あっ・・・いや、その・・・」


「フフッ。正直者なのね、降谷くん。一つ助言するけど、こう言う時は沈黙を貫いたほうが得策よ?下手に言葉を紡ごうとしたら今のようにボロが出るだけよ」


「・・・なるほど、勉強になったよ。ありがとう、神月」


俺との会話に満足したのか、神月は席に座って本を読みだした。今日は安室達の輪には加わらないようだ。俺はひとまずは終わった会話と言う名の確信めいた尋問が終わったことに安堵のため息をついた。だが尋問は終わっていなかった。いつの間にか最前列の席―――宮西の席だーーーまで移動してた友人二人が必死の形相で手招きしていた。



「おい!なんだよ今の会話!?やっぱりお前、神月さんと何かあったんだろう!?俺らには挨拶はないのに毎日毎日お前ばっかり!」


「そうだよ!なんで降谷君ばかり神月さんと話しているのさ!?僕たちにもおこぼれがあってもいいんじゃ無いかな!?友達だよね僕たち!?」


両脇をがっちりホールドして耳元で小声で話しかけてくるなよ気色悪い。何が悲しくて朝から男二人にこんなことをされなきゃいけないんだ。


「だからいつも言っているけど理由なんて知らん。気づいたら話すようになっていただけで、別段仲良くはないだろ。俺が神月と朝以外に話すのを見たことあるか?ないだろう?つまりそう言うことだよ」


「いやいや、普通に考えて毎朝話しているだけでも十分仲良いだろう?しかもなんだかお前と話している時の神月さんの顔、すごくたのしそうだぞ?」


「そうだよ!君塚君や石橋君たちと一緒にいる時と比べて、降谷君と話している時の方が生き生きしていると言うか・・・」


本当にこの二人はどんな感情を持って俺と神月との会話を見ているのだろうかしっかりと問いただしたい。特に羽場、お前言っていることだいぶやばく無いか?どんだけ神月のことを視ているんだよ。


「くだらないこと言ってないでさっさと席に着こうぜ。そろそろ担任様がやって来る時間だからな」


俺は話を強引に話を終わらせた。尚も二人は疑惑の目を向けてきたが、タイミングよく教室に担任教師が入ってきたので難を逃れることができた。だが、そんな俺に嫉妬じみた視線を向けてきたもう一人の人物がいた。俺はそれを気付かないふりをして席に着いた。隣の神月が笑みを浮かべていたが、それも気付かないふりをした。これ以上面倒ごとを増やしたく無かった。



一時はどうなることかと思ったが、なんとか昨日はやり過ごすことができた。だけど本当に知られるのも時間の問題であると言うことも判明した。今後のことを思うと今から気が重い。相棒の無頓着さが羨ましい。


『マスター、あの女、神月って言ったか?ヤバイぞ。俺のことは未だしもマスターが【コントラクター(誰かしら)】と契約したことに確実に勘付いている。もしかして同業か?』


相棒は宮西や羽場のことは面白い奴等と称して気に入っている節が見られるが、大して神月のことはよく思っていない、いや要警戒人物と見なした様だった。やはり朝の会話と、授業中、昼休み中、事あるごとに俺以外には気付かれない様に視線を向けてきたことからの判断らしい。しかも彼女曰く、神月もまた【探求者】なのでは無いかと言う。


「いや、神月が【探求者】になったって話は聴いていないけど・・・でもそうだよなぁ。あの様子だと俺が【探求者】になったの確実にバレたよなぁ。あとバイトも辞めたし。それも原因かもな」


『バイト?どこかで働いていたのか?』


「あぁ・・・【探求者】になるためには最低限金がいるんだ。俺はそれを自分で用意したから、そのために少しだけな。そこの常連客だったんだよ、神月が。多分俺が急に辞めたんで怪しんだんだと思う。と言うか、多分店長が喋ったな」


普段は鉄壁の情報管理をしている癖に特定の条件を満たすと途端に口が軽くなんだよな、あの人。まぁさすがに俺の個人情報まで話しているとは思いたくない。


『なんだ、マスターは自分が【探求者】になることを誰かに話したのか?そう言えばあの愉快な二人も思いがあるのは知っていたようだったな』


「あぁ、どうしても働かせてもらうために話さなきゃいけなくてな。多分その話を神月に話したんだと思う。ほら、彼女美人だから」


『なるほど。いつの世も男を惑わすのは女ってわけか』


「否定も肯定もしないがな。そもそも店長は可愛いものには目がないんだ。だから神月がちろっと上目遣いでおねだりしたらすぐに白状ゲロするさ。ちなみに店長は女性だ」


『なるほど。今の世の中は面白いな』


「だろ?まぁそんなことはさておいて、そろそろ行くか。今日は土曜だし早めに行かないと人が集まって来る。塔に登る前に小石川さんのところにも行かないといけないしな」


『よっしゃ!ようやく出発かマスター!待ちくたびれたぜ!』


必要なものを揃えた少し大きめのウェストポーチーーー【探求者】登録した時に小石川さんに勧められて購入したーーーを腰に下げ、俺は家を出た。


さぁ、冒険の始まりだ。その前に小石川さんに呼びつけられているけど。


ご精読いただきありがとうございました。

評価・感想をいただけたら泣いて喜びます。そして執筆頑張ります。

何卒、宜しくお願い致しますm(_ _)m

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