幕間 世界一位が思うことは
とりあえず幕間として。
宜しくお願い致します。
私ことエヴァンス・カンバーダウトは大会運営組織が用意したホテルの一室でくつろいでいた。世界ランク一位ということもあってVIP待遇で高級かつ最上階のスイートルームを充てがってもらったが、それを喜ぶことができたのはこの日が初めてだ。
用意されていた赤ワインをグラスに注ぎ、チーズを食べながら喉を潤しながら今日の出来事を思い出す。
『嬉しそうだな、マスター。そんなに嬉しいのか?』
己の魂と同化してかれこれ十年近くの付き合いになる相棒は私の抱いている感情に気づいたようだ。まぁそうさせたのは他らなぬ彼なのだが。
「そうだな、ジーク。こんなに嬉しいことはないさ。なにせ世界に八人目となる【黒金】級の【コントラクター】が限界したんだ。これほど嬉しいことはないだろう?しかも例に漏れず召喚して即【心刻契約】を結んだときた。今から楽しみで仕方ないよ」
『日本にはこれで二人目か?あとは確か【白金】級保持者がいただろう?』
「いや、彼女は確かに日本人だがイギリス所属だ。留学中に現地で召喚したそうだからね。当時日本政府は抗議したようだけど。あと【白金】級保持者はすでに引退しているよ。残念だね。せっかくなら戦ってみたかったよ」
『お前はやはり戦闘狂だな。それに付き合う俺の身になってほしいものだ』
「ジーク、嘘はいけなよ。君は私と同類だからこそこうして一緒にいるんだ。それを私だけが悪いみたいに言うのは卑怯じゃないか?」
『それは済まなかったなマスター。まだ見ぬ八人目も気になるが、いよいよ大会も佳境だがどうなんだ?俺の好敵手たる【コントラクター】はいるのか?』
「残念ながら君が楽しめるほどの【コントラクター】はいないよ。ここから先は消化戦になるだろう。今日の【翼竜ワイバーン】はいい線いくと思ったんだけど・・・さすがは竜殺し、面目躍如だね」
『マスターよ、あの程度の竜もどき(・・・・)、何匹来ようが俺の敵にはなりえんさ』
「ハハハ。これは早いこと終わらせて塔攻略に戻った方がいいかな」
私はグラスに入ったワインを飲みながらふと思いを巡らせる。今世界に召喚された【黒金】級と称されるCCは全部で八枚。その全て同じ方法で召喚されており、その全てがこの世界
を創り上げた過去の英雄たちの写し絵だ。これは偶然なのか必然なのか。そして八人目は一体誰なのか。
だがその新人には会うのは当分先だろう。もし会うことができたとしても何年先になることやら。この大会が終わったらまた【ワシントン中央塔】に籠るか。
しかしこの数日後、私は日本行きを決めることとなる。
ご精読いただきありがとうございます。
評価・感想をいただけたら幸いです。
尚、この後彼はさくっと大会を消化させます(笑)その辺はいらないですよね?
次回、果たして主人公は塔に登るのか・・・わかりません。
ではまた次回。