第1章 赤雷との邂逅
ようやくメインヒロインの登場。
行き当たりばったり感が強いので設定ががが・・・
では、宜しくお願い致します。
目を焼き殺さんばかりの眩い赤雷が収まった後、未だぼやける視界が捉えたのはひとりの女性だった。
「求めに応じて参上したぜ、マスター。あぁーようやくあの窮屈さから解放されたぜやっぱり外界は最高だな!」
見目麗しい容貌の短躯の少女だ。年齢は俺よりは上だろう。二十代前半だろう。赤みを帯びた金髪に勝気と自信に満ちた翡翠の瞳。しかしその光の奥には確かな残虐性と闘争に対する愉悦が見えた。
「俺の名はメドラウト。叛逆の騎士、赤雷の剣士、まぁ色々呼ばれているが好きに呼べ。ただ確かなのは、俺は最強の騎士王だってことだ。お前は最高についているぜ。んで、お前の名は?」
「あ・・・あぁ。俺の名前は降谷一海だ。これからよろしく、メドラウトさん」
「おいおい。俺に継承は不要だ。気軽に親しみを込めてメドラウトと呼んでくれ」
呆れたように苦笑を浮かべながら、俺は彼女と握手を交わした。これで一応の契約は完了した。プレッシャーと緊張から解放されて俺は大きく息を吐いた。だが人生をかけて大博打に一先ず勝利した。
「あれ、そう言えばCCを召喚出来るのは塔周辺だったよな?なんでここで召喚できたんだ?」
「あっ、それはですね!各支部は元々は【番外塔】の跡地に建てられているんですよ。その名残なのか、CCの召喚だけなら可能なんです。まぁそれも十全な形ではないですけど」
遥か彼方に飛んでいた意識が戻ってきた小石川さんが説明してくれた。現在確認されている大小多くの【番外塔】はその多くが攻略されて消滅している。そして踏破した暁に現れたのは巨大な魔石だった。
「踏破報酬と言うべきその巨大な魔石は持ち運ぶことができなかったのです。ですから致し方なく、その上にLEO関連の施設を建設することにしたのです。かの有名な【塔街】もこうして作られたと謂れています。それよりも一海くん、この人が貴方の?」
「おうとも!俺がマスターの【代行者】だ。そんなことよりもマスター!これからどうするんだ?あの憎たらしい塔を登りに行くか?というか行こうぜ!久しぶりに暴れさせてくれよ!」
このメドラウトという少女はどうやら戦闘狂らしい。嬉々とした笑みを浮かべているが素人でもわかる程度に殺気とチリチリと赤雷を迸らせている。
「悪いがメドラウト。今日は塔には登る気は無いんだ。と言うか早くても塔に登るのは明後日の土曜日の予定だ」
「ハァア?一日以上先じゃねぇか?なんでだよぉー今から行こうぜー俺の凄いところ魅せてやるからさぁー絶対惚れるぜ?」
気軽に肩を組みながら誘ってくる彼女は気さくな姉御肌のようだが背中に当たる柔らかな感触にも気を使って欲しい。これもまた思春期男子には辛いものがある。
「わかったよ、メドラウト。それでも行くのは明日だ。だがゆっくりとじっくりと俺に雄姿を魅せたいと思うなら、やっぱり明後日まで待って欲しい」
「・・・わかったよ。そこまで言うなら我慢する。だけど覚悟しておけよ、その日が来たら大暴れしてやるからよ!」
「期待しているよ。っと、そうだ。忘れるところだった。メドラウト、俺と【心刻契約】を結んで欲しい」
俺の発言にまたしても小石川さんが驚愕の悲鳴をあげた。そして今まで肩を組んで笑っていたメドラウトもまた視線を鋭くして表情を引き締めた。
「おい・・・言葉は選んだ方がいいぞマスター?」
心刻契約。それは魂と魂による誓約。己が魂に相手の存在を刻み合う。そうすることでマスター、すなわち【探求者】は【コントラクター】の召喚にカードが不要となる。さらに【探求者】の肉体も強化される。それは契約した相手次第だが、メドラウトの場合なら、ある意味人外の領域に片足を突っ込むことになるだろう。さらにこちらが最大のメリットであろうが、万が一【コントラクター】が塔の領域内で消滅した場合、【探求者】の精神力―――魔力とも言うーーーを用いることで復活が可能である。
これだけ聴けば誰も彼もが契約を結ぶだろう。だが実際は殆どの【探求者】がこの契約を結んでいない。何故ならそれにと伴う代償、デメリットがあまりにも大きすぎるからだ。
「それ(・・)をすると言うことはこれから先、CCを増やそうと思ったら他ならぬ俺の許可が必要となるんだぞ?わかるか?俺が認めなければお前は俺と二人っきりであのクソったれな塔を登る羽目になる。それは茨の道だぞ?」
支払う代償。それは新たにCCと契約するのには心刻契約を結んだ【コントラクター】の許可が必要になるという事だ。つまり【コントラクター】が気に入らない、認めなければ新たにCCを得ることが出来なくなる。だから命がけで塔を登らなければならない【探求者】にとってこれは死活問題だ。しかも一度結んだら解約することは不可能。
「構わない。俺は・・・俺を助けてくれたあの人を超えるには並大抵のことでは無理だ。むしろこの道はあの人も歩んだ道。なら俺も貴女ととともにこの道を進みたい。いや進まなきゃダメなんだ」
あの日、【東京中央塔】が氾濫した日。俺を死の運命から救ってくれたあの英雄とその主人のように俺はなりたい。
「・・・・・・わかった。お前の決意、信念、目指す場所、その想いは最早呪いの域だがーーー気に入ったぜ!それでこそ我がマスターに相応しい!」
メドラウトはバシバシと背中を叩いて大笑した。人の決死の覚悟を笑うとしつれいじゃいか?これでも誰にも話したことないし恥ずかしんだぞ。
「そいつは悪かったな、マスター。そんなことより、早く済ませようぜ?ほら、手を出しな」
納得はいかないがどうやら彼女は俺の想いに応えてくれるようだ。気が変わらないうちに俺と変わらない大きさの、しかし幾つもの修羅場を乗り越えてきたであろう力強い手を握った。
「これより先、我は汝に降りかかる全ての災厄を斬り払う劔となろう。これより先、我は汝が背負う悲しみを癒す鞘となろう。故に、我が心は汝と如何なる時も共にある。死が訪れるその時まで」
凛とした声でメドラウトが契約の祝詞を唱える。慈悲深い優しい光が俺たちを包み込む。それはとても暖かくて心地いい光だった。そして感じた。彼女と、メドラウトと確かで強固で何者にも穢されない強い絆が結ばれたことを。同時に【黒金】カードも消失した。
「ヘヘッ、これで【心刻契約】は完了だ。改めてよろしくな、マスター!」
「こちらこそ、よろしく頼む、メドラウト!」
こうして俺は【深紅の叛逆騎士メドラウト】との契約が完了した。ここから俺の塔への叛逆が始まるのだ。たった二人の、叛逆が。
ご精読いただきありがとうございました。
次も早めにお届けできたらと思います。
評価・感想をいただけたら幸いです。
宜しくお願い致します。