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おしよせる不安と、不意を突く優しい声

ウォマはなんとか挽回しようと必死になって情報を集めるが、中々集まらない。


結局時間になって集まったのは先ほどの男たちと似たような物だった。


「僕たちも同じだ」


デュメリルは少し疲れた顔で言う。

ヒバカリと街を回ると酷く疲れる。

というのも、こういう時に彼女は貴族の奔放さを突然発揮し買い食いを始めたりするのだ。

目を離すと居なくなるのでヒヤヒヤする。

ヒバカリほどの腕があれば早々厄介に巻き込まれない……と思いたいが不安は不安だ。

面倒だからと言ってハララカに押し付けたいが、彼はヒバカリがどんな目に遭っていても助けはしないだろうし、反対にユウダは過敏に反応しすぎる。自分がやるしかないのだ。


「ユウダ先生は何かわかった?」


「いくつかね。

殺された人は大体、街外れの底なし沼の近く山道で見つかっている。

殺された人たちの共通点は、皆新しくこの街に来た人ばかりだった。

遺体はもう埋葬された後だから見ることはできなかったけど、見た人の話を聞くことができた。

なんでも、本当に皮のみになっていたらしい。服を脱ぐみたいに……。

血も出ていなかったから最初見つけた時はそれが何かわからなかったけど、広げた時それが人間だとわかったと」


「悍ましい話ですわね……」


「ああ。

魔物がやったんじゃないという言葉を本当だとすれば人間がやったことになる。

そして、そんな綺麗に人の皮だけを残せるということは……魔術師が犯人の可能性が出てくる」


ユウダは言葉を止めて4人の顔を見る。

皆真剣な顔をしていたが、ハララカだけは不思議そうにこちらを見ていた。


「魔術師が犯人だとは思えません。

人の内臓を集めることになんの意味が?」


「そこなんだよ。

魔術師が犯人だとしたら動機はなんだ?」


「純粋に、人を殺したかったからとか?」


「わざわざこんなことしなくても人を殺す魔法はある。勿論、簡単には使えないけれどね。

それにこんな殺し方をしたら魔を使えるものが犯人だと言っているようなものじゃないか」


デュメリルは腕を組んだ。

魔物でも、人間でもない……?では魔族?

しかし魔族がいればヒバカリは必ず気付く。

ならばこの事件の犯人は何なのだ。


「人間じゃないとするとやっぱり魔物……?

魔物の中に人に擬態して殺す奴がいるとか?」


「人に擬態出来る知能があればそれはもう魔族だ。

でも魔族ならヒバカリはわかる」


「単純に気配遮断が上手い魔物かもしれませんね。

私の能力よりも相手が上回っているだけなのでしょう」


「その可能性もゼロじゃないだろうが、だとしても今まで誰も魔物を見つけられていないというのが……腑に落ちないな」


5人はそれぞれ頭を抱えた。

どうやって倒せばいいんだ?


「これがどんなに厄介かクエストを受ける時気付くんだった……。

そしたら対策が何か立てられたかもしれないのに……」


「どう対策を立てると言うのかしら?

今こうして現場にいても思いつかないのだから、受ける時に思いつくわけがないわよ。

ここで頭を抱えていても仕方がないわ。取れる対策を取りましょう」


「……そうだね。

町民の皆に、わかってるだろうけど外に出ないようもう一度言おう。

もし外出する際は1人では出ないで2人以上で行動することも」


「警備隊に街中の警備よりも外側の警備を重点的にやるよう伝えましょう。

街にいない以上来るとしたら山からですし」


皆意見をポンポンと出していく。

しかし、ウォマは一個も案が浮かばなかった。

なぜ皆湧き出る泉の如く案が浮かぶのだろう。


ウォマの心のうちに焦燥感が湧き上がる。

このままではいけない。足手纏いの役立たずとしてクビにされる。

首の後ろから白くなって頭が回らなくなる。ただ、どうにかしなくてはという思いだけが強くなっていった。


✳︎


街を混乱と恐怖に陥れているものの正体が掴めぬまま辺りは暗くなっていった。


「……仕方がない。そろそろ行こう」


「わたくしたちは散らばった方がいいかしら?」


「……いや、正体がわからないのに戦力を分散させるのは怖いな。

5人で固まっていよう。

まず町外れの山道を行こう。あそこは3人の被害者が見つかった場所だから」


デュメリルを先頭に5人は歩く。

言葉数は少ない。

少しでも何か無いかと皆耳を澄ましているのだ。


山道に踏み入り、奥にある底なし沼へと行こうとした時だった。


「……なに……?」


「ヒバカリ?」


ヒバカリが緑の目を街に向けた。

まさか。

全員得物に手を掛ける。


「……悲鳴が!戻りましょう!!」


今度はヒバカリを先頭に走り出した。


彼女は誰よりも焦っていた。

魔物が街に出たというのか。しかし、ヒバカリの鋭い感覚を持ってしても魔物が街にいる気配も入った気配も無かった。


—一体どうなっているの……。


彼女が剣の柄を握ったその時、こちらに向かって魔物が飛んできた。


「来たわ!」


まるで神出鬼没だ。

先ほどまで気配は無かったのに。


飛んで来た魔物は巨大な蝿のような外見をしていた。


ヒバカリは魔物の赤い目に向かって剣を突き立てる。

それと同時に魔物の胴に矢が突き刺さった。

ハララカだ。

魔物はあっさり、動かなくなった。足がピクピクと動く。


「……これが正体……?」


「こんな弱いのが?

……まあいい。それよりやられた奴がいる。そいつのとこに行こう!」


デュメリルは無造作に蝿の魔物を掴むと、ヒバカリに悲鳴のした方へ案内させた。


「なんでそれ持っていくのよ……!」


「証拠だ証拠!僕だってこんなの触りたく無い!」


「その割にはガッチリ掴んでるねえ」


「落とすわけにはいかないだろ!」


—これが無かったら僕たちが退治したと証明できないというのに!

デュメリルは憤慨した。が、被害者の姿を見た時その怒りは消え失せた。


「これは……」


女の子が1人泣いている。

その横には人間の衣服と肌色のずだ袋のようなものがあった。

血も残さず脱皮のように皮だけが残されている。

ウォマはランプの光を当ててそのずだ袋になった人間を観察する。

目立った傷口はない。ただ肉と骨が最初から無かったかのようだ。


「あなた……大丈夫?何があったの?」


ヒバカリが気遣うように泣いている女の子に声をかける。

女の子はまだ10歳くらいで、髪をおさげにしていた。


「わ、わかんない。

私、1人じゃ危ないのに、夜、1人になっちゃって、

家に帰ろうとしたら、この人も、1人だったから、う、危ないよって、言ったの、そしたら、」


「そしたら?」


「いきなり、口から、大っきな虫が出てきて……ウアああ……」


女の子はヒバカリに抱きついた。ヒバカリも彼女の背中をさすって落ち着かせる。


「怖かったね……可哀想に。

お家はどこ?」


「ここ真っ直ぐ……」


「そう。

警備隊の人が送って行ってくれるから。もう大丈夫よ」


女の子の腕を取り、ちょうど走って来た警備隊の男に事情を話す。

警備隊の2人はデュメリルの持つ蝿の魔物と被害者の皮に怯えながらも女の子を連れて行った。


ウォマはその光景をぼんやり見ていた。


人間の残された皮、大きな虫の魔物、山道、気配もなく現れる、新参者。

その全てが繋がっている。


「……わかった……」


「ウォマ?」


「わかったの、魔物の正体が!」


「蝿だろ?」


「違う、多分、もっと別にいる!」


デュメリル達はぽかんとしウォマを見た。

もしかして彼女……ショックで頭が……。


「違うよ!疲れてるからじゃないよ!

とにかく沼に行こう!本体がいるよ!」


そう言ってウォマは沼へと向かって走り出してしまった。

その後を4人は慌てて追う。


「ウォマ、どういうことか説明しろ!なんで沼!?」


「つまり、ええっと……。

魔物の正体は魔物の産卵だよ!殺された人は卵を産み付けられたんだと思う!

魔物の気配がしなかったのは魔物として完成してなかったから。完成したらああやって体内のすべてのものを食べて飛び立っていくんだよ!

山道先の沼の近くにそれがいるから、あの辺りに被害者が多かった!のかな!?」


「どうしてそれがわかるんだい!?」


「私、蛆が蝿になるところ見たことあるんですけど、あんな感じでした!」


なんとも根拠が薄い。

が、何故か説得力があった。


あっという間に沼まで駆け抜ける。


底なし沼と呼ばれるそこは、確かにおどろおどろしかった。

紫色の濁った沼。手前には看板がかけてあり「底なし沼!注意!」と書いてある。


「ここに親玉が?」


「ま、ま、ま、待って」


「ヒバカリ?」


「蝿の親玉ということは、とても大きな蝿ということよね?」


「デュメリルさんが持ってるのよりは大きいと思うけど……。」


これ以上大きいとな?

ヒバカリの顔が白くなる。

魔物は平気だけれど、虫はダメなのだ。

さっきは夢中だったのでなんともなかったが、間を置かれると怖くなってくる。


「大丈夫、大丈夫、大丈夫、大丈夫……」


「ダメそうだね。虫嫌い?」


「ええ。淑女の嗜みとして虫はダメなのよ」


「そんな嗜みやめちまえ。

とりあえず、石でも落としてみるか」


デュメリルが足元に転がっていた石を拾い沼に投げ入れる。

反応は無い。


「……ウォマ……」


「いやいやいや!そんな小石じゃわかんないって!

もっと大きいの投げよ!」


そう言ってウォマは木の根元にあったほぼ岩といってもいいような石を、砲丸投げの要領で沼に入れた。

ボチャンという音がする……が、やはり反応は無い。


「……帰ろう」


そうデュメリルが翻しかけた。

がその時、ヒバカリの全身に悪寒が走る。

魔物だ。


「いるわ……!それもかなりの大きさよ!」


ヒバカリの魔物感知能力は完璧では無い。

距離があればあるほど感知出来なくなるし、その魔物がジッとしていれば気配を感じられない。

そして、今回の敵はその二つが当てはまった。

魔物はジッと動かなかった……そして、この沼は真に底なし沼であった。


ゴゴゴという地響きの後、沼の水がバシャバシャと音を立てる。

5人は沼から距離を取る。


そして……ついにそれは姿を現した。


「これは……」


「な……」


それは巨大な、20メートルはあろうかという植物に見えた。

月明かりに照らされ、緑色の幹がヌラヌラと輝く。

虫じゃない!?ウォマは驚いた。そしてその後、なんだこのエロ同人に出てきそうな姿は!と思った。

エロ同人に出てくる触手を思い出して欲しい。思い出せたあなたはエロ同人を読んだことがあるんですね?すきものめ。


それは緑色のツタ状のものだった。

太い幹から数え切れないほどツタが伸びている。

ツタ以外にも食虫植物のような形をした、ウツボットのようなものがぶら下がっている。


「蝿じゃない!良かった!」


ヒバカリは大声で笑いだしたかった。

植物など笑止千万!余の相手ではないわ!


「……どうやって倒せばいいんだ?」


「とりあえず燃やそうかな……」


ユウダはボソボソと呪文を唱え、ぶら下がっている食虫植物を燃やしてみた。

メラメラと燃え、ツタがのたうつ。

効果はあるようだ。だが、炎はすぐに萎んでいく。

この植物全てを燃やすほどの炎を出すとなると、他への被害が甚大ではない。


「弱点は……」


「普通の植物なら根でしょうか」


「根っこか。……わかった。

私が地面を伝って根っこに攻撃をする。

他の皆で攻撃を凌いでくれないかい?」


「わかりました」


ハララカは矢をツタの付け根に向かって正確に放つ。

デュメリルとヒバカリは伸びてくるツタをなぎ払っていた。

ウォマもツタを払うが、薄暗い中でツタの動きに翻弄され本数を減らすことが出来ない。


このままじゃいけない。

ウォマは必死で剣を振るう。

このパーティに認めてもらわなくては。そうでなくてはサヴに小屋を貰えない。

小屋を貰えなかったら私はずっと己の居場所を作れない。1人だけで眠ることが出来ない。


その焦りがいけなかった。

ツタの一本に気を取られていた彼女は後ろから来ていたツタに気が付かなかった。


「ギャ!!」


ツタは彼女の腕を巻き取り宙へと吊り上げる。

そして悲鳴をあげる間も無く他のツタが彼女に襲いかかった。


エロ同人の読み過ぎの人は今後の展開に期待してしまうだろう。

残念ながらこれは全年齢対象であり、更に女性向けなので触手に雁字搦めに滅茶苦茶にされたりはしない。

ツタは彼女の胸……に行くことはない。首に巻き付いた。

それから左肘、右の手首、腹、左膝、右膝を一気に締め上げる。


「うぐ……ア……!!」


バキンと音がした。

左肘が折れたのだ。


「ウォマさん!!」


ヒバカリがウォマがツタに捕らわれていることに気が付いた。


「ユウダ先生!ウォマが!」


「だ、ダメ!私は平気!脱出できそうだから。だから、呪文止めないで!

そのまま攻撃を続けてて!!ユウダ先生を守って!!」


本当は脱出なんて出来そうにない。

ツタはますます彼女を締め付けていく。

だがここで折角の攻撃のチャンスを逃すわけにはいかなかった。


願うはウォマの首が締まる前にユウダが根っこに攻撃をし、植物を倒してくれること。

そうすれば死ぬことはないだろう。


せめて気道は確保しようと折れてない腕をなんとか動かし首のツタを掴む。


頭がぼーっとしてきた。あまり意味はなかったらしい。

息が出来なくなって何分で人は死に至るのだろう。


「動かないでくださいねー!」


ハララカの声がする。

動きたくても動けない。

ウォマが目線だけで彼を見ると彼は、この底なし沼よりも暗い瞳でウォマを見ていた。

彼の弓が引かれる。

耳の横で風切り音がした。


「あ、」


ツタの力が一気に緩み、体が抜け落ちる。

このまま地面に落下する。

2メートル程度だ。大したことはない。

そうして目を閉じた。


が、彼女の体が地面に叩きつけられることはなかった。


ハララカが彼女を抱きとめていたのだ。


「……あれ?」


妙に暖かい感触がしてウォマは目を開ける。


「大丈夫ですか?」


「は、ハララカさん……」


「ヒヤヒヤさせますねえ。」


ハララカは彼女を沼から離れた木の根に下ろした。

ホッと息を吐いたのもつかの間、ウォマの顔に焦りが走る。


「ありがとうございます、でも私なんていいですから、早くユウダ先生のところに行って!ツタが、」


「もう終わりますからあ」


「へ?」


ユウダを見ると、彼は手を地面に当ててある。するとすぐに振動が起こり地響きが鳴った。


「根っこの攻撃は無事出来たみたいです」


植物の動きが急に止まった。

そして、ゆっくりと沼に落ちていく。


「……終わった……?」


「そのようですよお」


デュメリルとユウダがトドメを刺す。

ヒバカリはそれを2人に任せウォマの元へと走って来た。


「ウォマさん!大丈夫!?」


「うん、ありがとう」


「良かった……。あなたがツタに吊るされているのを見た時心臓が止まるかと思ったわ……」


「大袈裟だなあ。大したことないって。

あ、2人とも、私の代わりに魔物の様子見てもらえない?

私はちょっと休んでからすぐ行くから」


「……本当に大丈夫?」


「びっくりして血の気が引いただけ」


ウォマが手を振ると、ヒバカリは気遣わしげにこちらを見ながら2人の元へ走っていく。

あれだけ大きな魔物となると処理も大変なのだ。

ウォマはここまでの魔物を倒したことはないので具体的には知らないが、ギルドに知らせて処理しなくてはならないという。


「ハララカさんも、行ってください。

ギルドに知らせないといけないんでしょう?」


しかしハララカは立ち去らなかった。

彼女の側に片膝をつく。


「左腕を折られたんですか」


「え?

あ、ああ、まあ。そうですね」


ウォマは腕を体の後ろに引っ込めた。少し動かすだけでも痛むが、ハララカにこれ以上借りを作りたくなかった。


「何故言わないのですか?」


「ユウダ先生にお願いしますから。

ハララカさんは嫌でしょう?別にこれくらい、大した怪我じゃありませんしね」


なんてたって、デュメリルが内臓を露出させても魔法を使わなかったという。

既に二度ウォマはハララカに魔法をかけてもらっているが、一度目は挑発に乗って、二度目は牽制のため。両方嫌々だろう。


「話が済んだらユウダ先生に私の怪我を治してもらうよう言ってもらえますか?」


「今すぐに」


「あ、や、いいです、話が済んだらで」


「何故です」


「足を引っ張った身でそんな図々しいこと言えません……」


焦ってツタに捕まったのはウォマの失態だ。それで腕を折ったのも。

もしあそこで捕まらなければ皆余計な気を揉むことは無かった。


「誰が足を引っ張ったと言うのです」


「私が……」


「あなたが魔物の正体に気が付いたのに?」


「それとこれは別の話でしょう」


「よく分かりません。

今回あの魔物を倒せたのはあなたのお陰です」


ハララカのその言葉に顔を見上げた。

彼の顔はいつものあの作った笑顔ではない。


ハララカはウォマの体を抱き寄せた。


「自己犠牲に自己憐憫。楽しいですかあ?」


「な……」


彼の顔は、言葉ではウォマに辛く当たっているというのに、寂しそうな笑顔だった。


「あなたが犠牲にならなくてもこっちは勝手にやりますよ」


彼はウォマのおでこに自分のおでこをくっつけて何か呟いた。

そしてそのまま流れるようにハララカはウォマの頬に優しく口付けた。

左腕から痛みが消えていく。


「……ありがとうございます……でも……どうして。魔法を使いたくないんでしょう?」


「あなたが居なくては魔物の正体に気が付けなかった。

その功績を讃えて、です」


「デュメリルさんが内臓を出してても魔法を使わなかったのに?」


「彼にはどうしても使いたくないんですよねえ。すぐ調子に乗りますし」


可哀想なデュメリル。

ナルシストが仇となったか。

ウォマは軽く息を吐いた。


「じゃあもし私がまた怪我をしたら、魔法かけてくれますか?」


その質問にハララカは小さく息を飲んだ。

ハララカが魔法をかけるということは、彼女に口付けをしなくてはならないということ。

彼女はそれでも良いのだろうか?


「俺は構いませんよ」


「良かった。

また怪我したらどうしようかと思ってました」


ウォマが泣きそうな顔で笑う。

内臓を露出しても治してもらえないなんてごめんだ。

そもそも内臓が露出するような怪我など早々しないだろうが。


「でも出来るだけ怪我しないようにして下さい」


「それはもちろん!好きで怪我してませんよ!」


「フ、なら良いですけど」


彼の気の緩んだ笑顔にウォマは虚を突かれる。

ハララカも普通に笑ったりするのか……。


「どうかしましたかあ?」


「あ、いえ、なんでも!

それより早く皆さんの所に戻りましょう!」


「そうですね」


ハララカはウォマをそっと立ち上がらせて、それから3人の待つ場所へと向かった。

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