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If-First Session-  作者: 蓮飼ななめ
第一章-演者乱舞の章-
8/8

If I can save the world-始まりの朝-

挿絵(By みてみん)



 初めに言っておこう。


 これは、弱かった俺の最低の物語だ。これは理想の英雄譚じゃない。



『もし、あの時ああしていれば』



 そんな思いを抱くことだって一度や二度じゃないだろう。


 だから、ここにある物語は一つの『結末』として受け取ってほしい。


 俺達が理想の世界を取り戻す、これはそんな未来に至るための小さな一歩だ。






 それは陽光降り注ぐ夏の様な四月だった。

 桜は咲き乱れ、蝉が鳴き、灼熱の日光がアスファルトを焼く音が聞こえる気さえする。


「だからさ、凪沙。俺は思うわけよ。この街でコートなんて着てる奴は『馬鹿なんじゃないか?』ってな」

「それを着ている本人の前で言ってしまう君に対して僕は『馬鹿なんじゃないか?』と思ってしまうのだが……。無知な世良島ビギナーの蒼志にも分かる様に教えてやろう。コートというのは魔術師にとっては戦闘服の様な物なんだ。ほとんどの魔術師はその生地に防御用の術式を仕込んでいたり、武器を錬成する為の魔術陣を書き込んでいたりする。致命傷を受けることを避けつつ手の内も隠せるコートは魔術師の必需品とも呼べる物なんだよ。戦闘を想定する魔術師にとってコートを着用することは必須であり、その為の冷却術式を習得することは初歩の初歩の初歩だ。さて蒼志、()()()()()()どちらが馬鹿かという問いは教えずとも分かるな?」

「う、うるせー! どうせ俺は一般人上がりですよ! 理論派魔術師ですよ! 好きなだけ馬鹿にしやがれ!」

「理論派魔術師という言葉は謙遜になっていないぞ? 実践不足の魔術師とでも言い直したらどうだ」

「ぐぁぁっ! ほんとにムカつくな! お前!」


 朝食の準備をする凪沙を相手に蒼志はリビングで悶絶する。


「蒼志、どうも君は口喧嘩が弱いな。割と直ぐに手を出すタイプだろう?」

「そんな暴力野郎みたいに言わないでくれよ……喧嘩っ早いのは否定できないけど」

「魔術師同士の闘いにおいては言葉による攻撃……あ、勿論呪文の詠唱の事を言っているのではないぞ。精神攻撃も立派な戦術ということだ。防具も着けずに殴りかかっているだけではあっという間に殺されてしまうぞ?」

「う……分かってるよ」


 先日の事件から数日。

 第三区画都市では色んな変化が起こっていた。

 全国博士協会の四人の魔術師によって発動させられた真理到達術式【星辰帰納-Call of Chaos-】。その行使によって引き起こされる筈だった世界の終焉は突如現れた二人組の魔術師によって阻止され、儀式に於いて全国博士協会と殺しあうことになる四人の生贄として新たな四人の魔術師が選ばれたのだ。そのうちの二人は先述した二人の魔術師、そして残りの二人のうちの片割れがここに居る白夜姫凪沙というわけだ。儀式が発動している以上、あと一人参加者が居る筈なのだが、そっちはまだ明らかになってないらしい。ともかく今第三区画都市は魔術師達の侵攻と儀式によって起きた被害から復興するために大忙しだった。


 大学もかれこれ一週間休講になっており、ここに学びに来ている蒼志としては非常にもどかしい。

 今日は久々の登校日であり、蒼志と悠緋は学長執務室に行くことになっていた。


「なんだか分かんねえことばっかりだけど……その辺りちゃんと説明とかしてもらえるのかな……?」

「ほら、できたぞ蒼志。早く食べろ」


 凪沙が二人分の食事をお盆に載せて持ってきた。


「あ、わりい。全部やらせちまって。ぼーっとしてたみたいだ」

「考え事か? 色々気になる事はあると思うが、今は思い悩んでいたって仕方ないぞ。これからのことについてはきちんと大学側から説明があるはずだ。考えるのはそれからでも遅くはない」

「……そうだな」


 蒼志は箸を手に取り凪沙の作った朝食を見つめる。


「なあ、凪沙」

「どうした?」


 丼ぶりに盛られた艶々卵のカツ丼、鶏ささみと三種の豆の胡麻ドレッシングサラダ、ほっこりと湯気の立った海老クリームソースのマカロニ、瓶に入った二リットルのオレンジジュースが机の上で幸せな光を放つ。


「……多くねえか?」

「何を言っている。朝はきちんと食べないと一日が上手くいかないぞ?」

「いやっ、そういうことを言ってんじゃねえよ! これ明らかに寝起きに食べる量じゃないだろ! 部活終わりの男子高校生じゃねえんだから!」

「いいから今は食べられるだけ食べておけ。後で後悔しても知らんぞ?」

「マジかよお……食うけどさ……」


 蒼志は観念してカツ丼を頬張る。炊き立ての白米とトロトロになるよう調整された卵、揚げたてのカツが織り成すハーモニーは絶品で、カツ丼という料理を考案した人物に感謝したくもなろうというものだが……これは昼に食いたかった。


 なんとかして一口のサラダとカツ丼を食べ終える蒼志の前で凪沙はカツ丼とマカロニ、残りのサラダを平らげていた。


「……やっぱり魔術師ってやつはよく分からん」


「さ、行くぞ蒼志。【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】は使えるな?」

「当たり前だろ。こんなの高校生でも使えるっての!」


 玄関を出て、蒼志は写本を開く。


「写本イグファントス第二小節【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】!」


 蒼志から蛍光色の黄緑に似た輝きを放つ炎が噴き出し、蒼志の身体が宙に舞う。そのあまりの勢いに蒼志は空中で大きく体制を崩し、ぐるぐると回転した。


「うおわわっ! やばいっ! ぶつかるぶつかる!」


 穴の開いた風船の様にぶおんぶおんと飛び回り、蒼志はようやく体制を立て直した。


「……蒼志、君【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】すらまともに使えないのか?」


 凪沙がにやにやしながら蒼志の方に飛んでくる。


「くっそー、飛び始めが怪しいだけだっての! この炎が出る様になってからずっとこうなんだよなあ」

「写本の覚醒に反応して君の意思の力が呼び起こされたからだ。跳ね上がった魔力に身体がついて行かないんだろう。まあ授業で訓練を積むことだな」

「むうー……なんだって覚醒なんてしちまったんだ」


『蒼志、それは私のことが嫌だと言っているのか?』


 ぼやく蒼志の背後に紅い裏地の白亜の神父服を纏った男が姿を現す。


「あ、エリックお前! 勝手に出て来ちゃ駄目だろ!」

『何故だ? 君が私について話しだしたのだから私がそこに加わるのは自然だろう』

「大学に止められてるんだよ! 説明があるまでは無闇にエリックを出しちゃ駄目だって。もう少しで自由に出れる様になるから待っててくれよ」

『……そういうことなら我慢しよう。だが蒼志、あまりそう露骨に嫌がられると流石に私も傷つくぞ』

「わるい、別にお前の事を嫌がってるわけじゃないんだ。只、余りにもここ数日での変化が大き過ぎてさ、なかなかついていけないんだよ」

『そうか、君なりに悩んでいたというわけだな。確かに、過ぎた力を突然手に入れれば疲れてしまうものなのかもしれないな。私も君の負担にならない様努めよう』


 エリックは美しく整った顔に手を当てた。

 その髪と肌は雪のように真っ白で、目の淵には白い肌に映える紅い隈取が施されていた。

 広い肩や力強く低い声は男性らしい頼りがいを感じさせるが、その顔立ちは女性的で歌舞伎俳優の様に美しい。


 なんだか色々と凪沙に似ている様な気が蒼志にはしなくもない。


「蒼志、早く行くぞ」

「あ、ああ」


 蒼志と凪沙は第一講義堂の最上階にある学長執務室を目指す。


 襲撃によって破壊し尽くされたにもかかわらず、街はたった一週間で元通りになっていた。これは勿論第三区画都市が世界でも有数の魔術学術都市であることの賜物である。


「大学の校舎もすっかり元通りだな……あんな事件があったのが嘘みたいだぜ」

「蒼志、今回も上空から入るぞ。【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】の制御は大丈夫そうか?」

「ああ。操作がしにくいのは飛び始めだけだ。寧ろそれ以外は前よりもやり易くなってる位だし」

「ほう?」


 蒼志は黄緑色の炎を纏い第一講義堂を守護する【セントアルカの鍵-Gate of St.Olca-】へと突っ込んでいく。その身体は水に落ちた小石の様にするりと結界を抜け、そのまま【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】で勢いを殺して着地した。


「お、ほんとに上手くなってるじゃないか……驚いたな」


 凪沙も楽々と結界を抜けて蒼志の横に着地する。


「さーて……ここを通らなくちゃいけないわけだが」

「……まさか、何度もあんな事が起こるわけないだろう」


 蒼志と凪沙の脳内に学部長達の狂乱の宴がフラッシュバックする。


「ま、怖気づいてても仕方ねえ、行くぞ!」


 蒼志が建物の内部へと足を一歩踏み入れた


 次の瞬間、


 研究室の扉が開き、第四地質学部長の縛条刈也がギター状の物質を手に蒼志に躍りかかる。


「Mayveeveeaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaazz! 奏でようぜ始間蒼志ィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!」

「なんでこうなるんだよーッ!?」


 目を見開き硬直する蒼志に振り下ろされた凶器を背後から現れたエリックが長大な戦槌で受け止める。


「オオウ!?」


 一瞬押し返された刈也は直ぐに体制をもち直すと、マシンガンの様な勢いで巨大な鉄塊を何百発も叩きつけた。


 が、エリックは同じ勢いで戦槌を繰り出し、刈也の得物を粉々に叩き砕く。


「オイオイオイィィィ! 楽しいなァ! 最高じゃねえかこいつァ!」

「ちょっ……何やってるんだよエリック! 否、正直滅茶苦茶助かったけど、流石に学部長に手を出すのはまずいって!」

『だが、私には君を守る義務がある。この男を放っておくわけにはいかない』

「俺を守る義務って……そんな凪沙じゃあるまいし」

「バカ野郎! 俺に手を出すのがまずいだと? そいつは一体どいつの理屈だ? この俺からロックを奪おうなんざそれこそ万死に値するぜ!?」


 刈也は両手を広げてけたたましく叫ぶ。


 その首を黒いハイヒールが捉え、そのまま吹き抜けに叩き落とす。

 間抜けな声を上げながら刈也は階下へと落ちていった。


「……病み上がりで何をやってるんだか……これだからあの原始人には治療をしたくなかったんだ」


 キリコが白衣をたなびかせて蒼志の前に仁王立ちする。


「大丈夫か? 蒼志。ケガはしてないだろうな? ……む、血が出てるじゃないか」


 キリコが手袋をはめた手で蒼志の鼻の下を拭う。


「ちょ……キリコ学部長! 下着ぐらい着けて下さいよ!」

「は? 何を言ってるんだ。ちゃんとTバック履いてるじゃないか」

「上も隠せよッ!」


 キリコ学部長のまさかの格好にたまらず蒼志は顔を背ける。


「仕方ないな……白衣の前を閉めればいいだろ? ……全く、おませさんめ」

「くそ……学部長には変態しかいないのかよ……!」


「……蒼志、サイテー」


 凪沙が背後でボソッと呟く。


「なんでだよっ!」


 理不尽だ! 理不尽過ぎる! っていうか急に女の子らしい反応してんじゃねー!


「……蒼志、そいつがお前の探索者か」

「え?」


 キリコはまじまじとエリックの顔を見つめていた。


『蒼志、この御婦人は君の知り合いか? 非常に気まずいのだが』

「えっと……キリコ学部長、何かありましたか……?」


「いいな、これ♡」

「は?」

「蒼志。今夜こいつをワタシに貸してくれないか? 明日の朝までには済ませ//」

「凪沙ァァ! 早く行くぞー!」


 蒼志達はダッシュで学長執務室へと駆け抜ける。


「どうしてあそこを通ると毎回碌な目に合わないんだ?」

「学長執務室前の警備が固いのはいいことじゃないか。あれが本気で侵入を拒みにかかれば並大抵の侵入者では突破できまい」

「冷静に何を言っとるんだお前は……」


 蒼志は執務室の思い扉を開ける。


「よう、蒼志、凪沙君」


 そこには車椅子に座った大悟の姿があった。


「……父さん」


「わるいな、こんな朝早くから呼び出しちまって。ちゃんと授業が始まるまでには終わらせるからさ」

「…………無事だったんだな」

「…………蒼志」

「よかった。ほんとによかった。俺、父さんにちゃんと俺の成長した姿見てほしいんだよ」

「…………」

「もっとたくさん勉強して、死ぬまで一緒に居られる様な友達作って、父さんみたいにはなれなくてもいつか立派な魔術師になって、……また昔みたいに父さんと母さんと三人で出かけたりもしたいし、父さんが経営してる会社だって手伝いたいし、いつか俺がオッサンになった時に、今みたいな昔の事を酒飲みながら話したりもしたいんだよ。………………だからさあ…………勝手に死んだりするなよ…………! 滅茶苦茶心配したんだぞ馬鹿野郎…………!」


 蒼志の目から堰を切ったようにぼろぼろと涙が流れ出る。


「…………ごめんな、蒼志。本当にわるかった」


「だから一発殴らせろ」

「へ?」


 蒼志の拳が大悟の顔面を捉え、窓を突き破ってその身体を場外へと運ぶ。


 が、【セントアルカの鍵-Gate of St.Olca-】が発動し、大悟を落下から救った。


「そ、蒼志! 父さんに向かって何てことするんだ!」

「…………な、なんで魔術使わないんだよ……?」

「いや、その、ちょっと色々あってな」

「魔術……使えなくなったのか……?」

「……ああ。世界をやり直す為の魔法は俺自身が真理へと到達する為の権利、つまり魔術を行使する権利を代償にしたこの世界の創造主との契約だった。それを使ってしまった以上俺はもう二度と魔術を行使することはできないだろう」

「……これからどうするつもりなんだ?」

「どうするって、今まで通りさ。社長として会社を経営して、学長として未来の魔術師達を育てる。蒼志、お前との約束だって忘れちゃいないぞ。……まあ、今回はその、アクシデントがあっただけで」

「…………ならいい。見てろよ、絶対一人前の魔術師になって俺が父さんの代わりに世界を救ってやる!」

「そうこなくっちゃな。その為にここまで計画を進めてきたんだ」

「そうだ、そろそろ俺にも教えろよ、その計画ってやつ。凪沙だけ知ってるなんていい加減不公平だぜ」

「勿論だ。もとより今回はその為にお前を呼んだんだからな。いいか、俺達がこれまでの戦いで達成したかった事は大きく分けて二つだ。先ず一つは『全国博士協会が儀式の場所として選んだ地点を制圧し、連中が真理に到達する事を阻止する』そしてもう一つが『制圧した地点を利用して我々の手で儀式を遂行し、次の世界線へと到達する』。この二つを達成する為に俺達は何度もこの世界線をやり直して計画を進めてきた」

「父さん達が儀式を遂行するのが目的……? 次の世界線に進むってどういうことだ……?」

「ここからはお前には信じがたい話かもしれないが……この世界は今よりもずっと昔に全国博士協会の手によって四つの世界線に分けられてしまったんだ。蒼志、世界線というのは何か分かるか?」

「世界線って言ったら、所謂並行世界的なやつだろ? 自分達の住んでる世界と微妙に異なるもう一つの世界が存在するっていう。SFでしか聞かない様な話だけど」

「その通りだ。連中が元あった世界を四つの世界線に分けたのは無論【星辰帰納-Call of Chaos-】の為だ。()()()()()一つの世界において一度しか行えない【星辰帰納-Call of Chaos-】という儀式を何度も行う為に博士協会は何らかの方法を用いて四つの世界線を創り出したのさ」

「【星辰帰納-Call of Chaos-】ってのは何なんだ……? 父さん達は何の為にこんな儀式をやってるんだよ……?」

「【星辰帰納-Call of Chaos-】は早い話が『第三次元を消滅させてその外側にある第四次元へと到達する為の儀式』だ。言わば宇宙を消し去って宇宙の果ての向こう側に行こうっていう試みだな。当然ながら俺達は宇宙の向こう側に行きたいなんて考えてるわけじゃない。さっきも言ったが俺達の目的は『次の世界線へと到達する事』だ。いいか、現在この世界は複数の世界線に分けられている。言わばこれは……こういう状態だ」


 大悟は机の上に長方形の長い布きれを取り出し、それを真ん中の辺りからハサミで四つに切り分けた。


「この切り始めの地点が博士協会の奴等が四つの世界線を創り上げた時って認識でオッケーか?」

「ああ。大事なのはこの四つの世界線が元の一つの世界線と地続きになっているという点だ。俺達は【星辰帰納-Call of Chaos-】に参加し、勝利することでその世界線を破壊する。そしてそれと同時に得られる『到達する為の力』を利用することで別の世界線へと移動するんだ。こうやって世界線を破壊していって世界線を最後の一本にすることで、世界は本来あるべき姿へと戻ることができる。そして最終的に本来の世界線において博士協会による儀式の実行を阻止することこそがこの世界を滅亡から防ぐための唯一の方法なんだ」

「宇宙の外側に出る為の儀式で他の世界線に移るなんて事ができるのか……?」

「本来ならば無理だ。実際俺達は今までにその方法を試して何度も失敗してきた。【星辰帰納-Call of Chaos-】は第三次元全体を破壊し尽くす術式であり、発動すれば並行世界ですらも破壊し尽くす代物だったからだ」

「な……無理なのかよ!?」

「否、『無理だった』と言うだけの話だ。俺達は魔術理論の研究を続ける中で別の世界線への移動を可能にする方法にたどり着いた。それは『この世界を創造するのに用いられたプログラム』と写本を通じて契約を交わし、世界が崩壊するのと同時に世界を修復することで世界を保持する、というものだったんだ。その写本こそが写本イグファントス、蒼志、お前の写本だ」

「お……俺の写本……!?」

「俺達は世界の創造主との契約でお前が世界を修復するための力を得ることができる世界線、つまりこの世界線を創り出した。ここは本来存在するはずのない第五の世界線なんだ」

「俺が……世界を救う為の力を持ってる……?」

「ああ。だらだらと説明しはしたが、要は俺達がやるべき事は一つだ。蒼志、お前を生かしたまま【星辰帰納-Call of Chaos-】に勝利する、これだけさ。……改めて聞くぞ、蒼志。お前に世界を救う覚悟はあるか?」

「…………当たり前だ。世界の命運なんてドでかい責任押し付けられようが俺が()()()()()()は変わらない。俺は父さんに胸を張れるような魔術師になる。それだけだ。……だから、俺守られる気なんて更更ねーからな」

「そう言うと思ったよ。お前には死なれたら困るんだが、だからって戦いに参加させないなんて言っても納得はしないだろうってな。蒼志、誰かを守りたいなら何よりも先ず力をつけろ。俺達は全力でそのサポートをするつもりだ」

「ああ、任せろ!」


 チャイムが鳴る。そろそろ授業が始まる時間だ。


「蒼志、先ずお前は『ウィル』の使い方を学んで来い。魔術師には絶対に必要な技術だからな」

「ウィル……? わかった。じゃあまたな! 父さん!」


 蒼志は学長執務室の外へと駆け出していく。


「……さて、お待たせしたね凪沙君。次は君に話をする番だ」

「はい、お願いします」





 同時刻、


 東京踏破大学敷地内部。


「いやー、広いもんだねえ。流石は天下の東京踏破大学ってところかァ。なァ? シロちゃん」


 時計塔のてっぺんで男は従者の白装束に話しかける。

 が、白装束は何も応えない。


「なーによつまらんねえ……これだから人形と旅するのは嫌なんだよなあ。これじゃあ独りと何にも変わりゃしない」


「なァ……写本イーツェルカリウス、俺の話し相手はお前だけさァ」


 男は写本を開く。


「今から会いに行くぜェ、始間蒼志。協会ナンバー0093、このエゴラッピンがなァ!」


 響き渡るエゴラッピンの声に、()()()()()()()()()()()()

表紙絵を自作しました! 序章の一話にも表紙絵を入れているのでよかったら見てやってください! 遂に本編に突入したのでガンガン頑張っていこうと思います!

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