If I beat you.-ならば刃を与えよう!-
「学長のバカ息子風情が……写本なんぞ開いて、本気で俺に勝つつもりか?」
落研……勇吾は落ち着きを取り戻し、重重しい炎のようなものを纏って自分の写本を開く。
「勇吾! 只の喧嘩だろ!? 何で本気出してるんだよ!」
「うるせえぞアルマ! 俺はこいつみたいな奴が一番許せねえんだよ!」
「君達、止めたまえ! 今は試験中だぞ、わかってるのか!?」
慧も静止に入るが、蒼志も勇吾もお互いに一歩も引く様子はない。
「……写本エルダグザ第十六小節【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】!」
勇吾の両拳から力の塊が溢れ出し、竜巻の様な破壊の渦を作り出す。
「よお、御坊ちゃん、てめえの魔術でこいつが受けきれるか? 言っとくがな、俺の魔術は殺傷用だぜ!」
見せしめとばかりに勇吾が拳を振り下ろし、【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】が地面へと吸い込まれる。勇吾の握り拳より一回り大きい程の大きさである力の渦は、その大きさから予想される規模の数十倍の破壊を引き起こし地面を砂状になるまで掻き混ぜた。
「な、何あれ……!? 私のマシンガン以上の威力じゃない……!」
只でさえ意気消沈している早苗の顔が更に青くなる。
「あれがどういう能力なのかは分からないけどなあ。単純な破壊力じゃなくて石の様な固形物質に限定して粉末状に砕く様な能力かもしれないし。慧ちゃんにゃ気の毒だが、俺ちゃんは蒼ちゃんと勇ちゃんのどっちが勝つのか見てみたいねえ」
スコルビや薊は楽しそうに、慧や空は不安そうに、アルマは真剣な面持ちで。それぞれが胸に思いを秘めながら二人の立ち合いを見守っていた。
もっとも、我関せずといった様子で外野から見ている者も若干名いるが。
「行くぜ……写本イグファントス。アイツは土下座させて謝らせないと収まらねえ!」
「ハッ! やれるもんならやってみろよ! さっさとてめえの魔術を詠唱しな!」
「……ねえよ、そんなもんは」
「……何だと?」
「写本イグファントス第二小節【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】!」
緩やかな風の奔流が巻き起こり、蒼志の身体を持ち上げる。
「な……そんな一般魔術で俺と闘う気か……?」
「おいおい! そりゃ滅茶苦茶だぜ蒼ちゃん!」
「そんなもんやってみなきゃ分かんねーだろ!」
叫ぶと同時に蒼志は高く上空へと舞い上がる。
「蒼志の奴……何をする気だ? 遠距離攻撃用の魔術でも持っているのか?」
「薊君! 真面目に分析してる場合かー!? こんなもの下手すれば謹慎案件だぞ!?」
「私はそんなことよりもこっちの方に興味があるな。連帯責任程度であれば、悪いが家庭の事情でどうにでもなるし」
「えええええ! そんな薄情な!」
蒼志は空中で写本を開き、連続詠唱の準備に入る。
「写本イグファントス第三小節【ワイバーンの灯火-Lamp of Wyvern-】! 第四小節【ガルグイユの湧水-Spring of Gargouille-】! 第五小節【ファフナーの万能礫-Hand of Fafnir-】!」
三重詠唱による魔術陣が美しく輝き、蒼志を見上げる魔術師達を小さな太陽のように照らす。
「す、すげえ! 行使中からの三重詠唱かよ蒼ちゃん!」
「だが、使っている魔術は防犯用照明に生活用水源、日曜大工用の誰でも使える魔術……あれでどうやって勝つつもりなんだ……?」
薊の様なできる魔術師の目から見れば、蒼志の行動は武器を持った相手に対して剣玉やヨーヨーで挑んでいるようなものだ。幾らその扱いが巧みであろうと、そもそもの用途が違う以上それで張り合おうなどというのは笑い話なのである。
「……それがお前の魔術ってか……? 専業主夫でもやってろ!」
勇吾が【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】で地面を砕き、そのまま腕を振り上げて上空の蒼志に向かって瓦礫を飛ばす。
「おわわっ……と!」
蒼志は【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】の出力を最大限に上げ、上空で全ての瓦礫を躱しきった。
「そら、今度はこっちの番だぜ!」
真上に投げられた瓦礫は今度は勇吾を襲う落石となって降り注ぐ。
「ハッ、そうかよ」
勇吾は右手だけを自身の頭上にかざし、【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】で全ての落石を粉々に粉砕する。
「俺の投げた岩で俺が自滅するとでも思ったか? 随分と甘い期待をするもんだな!」
かざした手をどけると、
そこに蒼志は居なかった。
「何!?」
振り返った勇吾の目を防犯用の明かりが襲う。
「ごあっ!」
思わず目をつぶった勇吾の顔面に蒼志は追い打ちの鉄拳を叩き込む。
最大出力の【リントヴルムの羽-Drive of Lindworm-】で加速された拳は顔を覆っていた手ごと勇吾の上半身を跳ね飛ばし、思い切り尻もちをつかせた。
「くそ……舐めやがって……!」
勇吾が起き上がろうとした時、彼の身体は既に無数の石柱で固定されていた。手の部分は水で満たされており、【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】はばちゃばちゃと情けない音を立てている。
「……なにぃ!?」
「どうだ勇吾、これがおれの魔術だ! 前言撤回して謝りやがれ!」
「……日用魔術でも最大出力で使えばこれ程の威力が出せるってことか。確かに面白い見世物ではあるな」
「負け惜しみか? お前の魔術は完全に封じられてるだろーが! いい加減負けを認めろよ!」
「……やっぱ馬鹿だなお前。俺にもあるんだぜ? 最大出力ってやつはよお」
「え?」
「【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】!」
水の中で殺されていた【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】がその出力を限界まで上げ、勇吾の身体を固定していた石柱ごと枷を吹き飛ばす。
「……教えてやるよ、戦闘用の魔術としょぼい日用魔術の違いを。写本エルダグザ第九小節【ハーケルの快進撃-Assault of Harkel-】! 第十八小節【ハーケルの不落要塞-Fort of Harkel-】! 第二十七小節【ハーケルの理想郷-Heaven of Harkel-】!」
荒々しい魔術陣が暴走する様に浮かび上がり、術者の肉体を削るかの様な激しい力の奔流が勇吾の体表に奔る。
「おお! 勇ちゃんも負けじと三重詠唱か! ……でもあれって大丈夫か?」
「戦闘用魔術の四重行使……おまけに【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】は最大出力で展開されているから直ぐに魔力限界に達してしまう筈だ。勇吾はもう勝負を決める気だよ」
アルマが心配そうな面持ちで勇吾を見つめる。
「行くぜ……学長の馬鹿息子ォ!」
勇吾の姿が一瞬にして掻き消える。
蒼志がその姿を追おうと首を動かす前に勇吾の強烈な蹴りが蒼志を吹き飛ばし、そのままの勢いで回転しながら【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】で床石を粉々にえぐり砕く。
「ごふっ……!」
腕の付け根辺りに入れられた蹴りは蒼志の呼吸を阻害し、制御の乱れた魔術陣は呆気なく霧散した。
蒼志が何かしようと考える間もなく、勇吾の無慈悲な追撃が蒼志の鳩尾を蹴り上げる。
「おいおい……こいつはやり過ぎだぜ、落研さん」
自分の学生証を拾い上げながら彰が呟く。
勇吾が四重行使を発動してからわずか数秒。
体育館程の広さがあった空間の床は既にその半分が瓦礫と化し、壁にまで被害が及び始めていた。
「……げほっ、おええっ……」
何発も入れられた蹴りで蒼志の口は切れ、口の端からは血が流れていた。
「もう諦めたらどうだ? 自分はコネだけのエセ魔術師だって認めてよォ」
「……うるせえ!【ファフナーの万能礫-Hand of Fafnir-】!」
小さな瓦礫でできた拳が勇吾の鳩尾を突き上げたが、それはまるで鉄の壁に激突したかの様に脆く崩れ去る。
「妙だよなあ、てめえは。色んな属性の魔術を使ってきやがるかと思いきや、どれか一つが秀でてるってわけでもねえ。寧ろ全部が平均以下だ。親のコネ以外でどうやってこのクラスに入って来るって言うんだ? ああ?」
「強くなかったら……魔術師になれねえのかよ……?」
「な、何だと……?」
「確かに俺はお前みたいに強い魔術が使えるわけじゃねえよ。魔術の才能があるわけでもねえし、特別な流派なんてもんがあるわけでもねえ。正直言って、父さんと比較されるのにも飽き飽きしてる。……だから俺は俺にできることで、俺自身の力で魔術師になるって決めたんだ。……別に理解されなくても構わないけどな、俺の努力を知りもしないくせに否定するんじゃねえ!」
振り下ろした蒼志の右腕が空しく空を切る、
……筈だった。
その少年に力はなく、辛うじてその手に残るは独り善がりで只只闇雲な理想のみ。超えるべき壁は天より高く、掴んだ理想はその旅路を切り開くにはあまりに鈍い。
ならば刃を与えよう。
虚ろで脆い、しかしてすべてを切り裂く付け焼き刃を。
「写本イグファントス第一小節【虚焼刃-Fake Blade-】」
それは蒼志の声ではなかった。
蒼志の手に握られていたのは一振りの短剣。
その一閃が勇吾のヘッドホンを見事に切り裂いていた。
「な……何だこりゃあ?」
剣を手にする当の本人が思わず目を丸くする。
「あ、あり得ねえ。あいつの魔術が俺の【ハーケルの不落要塞-Fort of Harkel-】を破ったってのか……?」
蒼志の手にする何の変哲もない刃こぼれした短剣は、その冠する名の通り要塞級の守備力を誇る勇吾の魔術を紛れもなく切り裂いていた。
「なんかよく分かんねえけど……これって新しく使えるようになったってことか……? よっし、行くぜ、勇吾!」
「ぐっ……! あり得ねえ……! 第一小節の魔術如きであの威力だと……!? そんなのあり得るわけねえ!」
勇吾が叫ぶと同時に、手に纏っていた魔術がぼこり、と不気味に膨らむ。
「あ……? 何だよこれっ……!」
【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】以外の魔術が霧散して手を覆う魔術に吸い込まれ、空気を入れ過ぎた風船の様にどんどん歪に膨らんでいく。
「まさか……魔術が暴走してんのか!? このままじゃ勇ちゃんが危ねえ!」
「勇吾君だけじゃない! このままじゃ僕達まで吹き飛ぶぞ!」
慧が素早く勇吾に近づいていき、写本を開いて詠唱を始める。
「写本シルシル第十一小節【ドストルバリスの方程式-Rule of Dustlebariss-】!」
慧を中心に青い光の波紋が広がっていき、周囲の魔術組成を解析していく。
「表層術式クリア。第一、第二純度適合完了。1028の独自術式にアクセス、解析開始!」
「よっしゃ、慧ちゃん! 俺ちゃんも手伝うぜ!」
スコルビが右手を勇吾に向けて広げ、写本を構える。
「写本エカテリーナ第二十九小節【ングストゥスの怠惰-Kludge of Ngustus-】!」
紫がかった怪光線がその右手から放たれ、破裂寸前の【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】をコマ送り式に停滞させる。
「ナイスだスコルビ君! 正直間に合わないかと思ったよ!」
慧の眼前に巨大な魔術陣が形成され、解析された勇吾の術式の波長を正常な状態へと修正していく。
「Q.E.D!」
暴走していた魔術の波長が正しい波長へと修正され、爆発寸前だった術式が収まっていく……
様に見えた、次の瞬間。
スコルビの【ングストゥスの怠惰-Kludge of Ngustus-】ごと【ドストルバリスの方程式-Rule of Dustlebariss-】が勇吾の手に吸い込まれ、更なる糧となってその暴走を加速させた。
「嘘だろ……!? 止めらんないのかよ!」
「まだだ! 何回だって試してやる! 【ドストルバリスの方程式-Rule of Dustlebariss-】!」
蒼志は呆然と立ち尽くしていた。
突如発言した自分の知らない力。
それを嬉々として勇吾に向けてしまったこと。
そして、その勇吾が今死にかけていること。
そうだ。
魔術は只の道具なんかじゃない。
神の方程式によって創られた、この世で最も繊細で身近な神秘なのだ。
よく分かりもしない力を何も考えず他人に向けた自分に腹が立つ。
それでも、
今の自分に出来ることはこれしかなかった。
要塞の様な強大な魔術さえ切り裂く、この力なら!
蒼志は小さな短剣を両手で握り締め、何もかも忘れて勇吾に向かって駆け出していく。
蒼志がその剣を振り上げるのと同時に、限界を迎えた【ハーケルの古代兵器-Arms of Harkel-】から部屋全体を照らす程の閃光が漏れ出し蒼志を貫いた。
砂に刃をねじ込む様な感触を手に、蒼志は何も見えなくなった。
「…………し」
(ん……? 何だ……?)
「……ーし」
(誰かが……呼んでる?)
「もしもーし! 生きてるかーい?」
「たはあっ!?」
「あ、生きてたか。よかった。万が一君達に何かあったら流石に減給じゃ済まないからねえ。いやはや、まさか居眠りしてる間にこんなことになるとは。蒼志君、目は見えるかい?」
「え……? はい、見えますけど」
蒼志の目に映っていたのはは白い部屋、ではなく大きな教室。そして目の前にふわふわな黄緑色の髪を後ろで束ねた中性的な……男性(蒼志は声でそう判断した)。そして、勇吾以外の八人の生徒達。
「そ、そうだ! 勇吾は!? あいつは無事何ですか!?」
蒼志の言葉を聞くと、男は言いにくそうに眉を顰める。
「……残念だけど、彼は……」
「そんな……嘘だろ……勇吾……!?」
「ああ……彼は先程キリコ学部長に気に入られて治療室へと連れて行かれたよ。可哀そうに、あれでは当分戻ってこられないだろうね」
「は?」
「蒼志君、君のお陰で勇吾君は、否、僕ら全員大した怪我もなく無事に生還できたということさ。礼を言わせてくれ、本当にありがとう」
そう言って、慧は礼儀正しく頭を下げた。
「い、いや……俺は」
「謙遜するなって! 滅茶苦茶かっこよかったぜ、蒼ちゃん!」
「うむ。あの勇気はきっと一流の魔術師にも匹敵するだろう。大したものだ!」
「凄かったよ! 蒼志君の魔術!」
「見直したぜ、蒼志。あんたすげーよ」
それは、蒼志にとって初めて見る光景だった。
目の前にいる全ての人が、親以外の人間が、学長の息子ではなく一人の魔術師としての始間蒼志を褒めてくれた。
蒼志の目から、思わず熱い涙が溢れる。
「さて、全員が学生証受領試験に合格した事だし、取りあえずホームルームを始めようか!」
いつの間にか教卓まで移動していた男が空気を変える様に声を上げる。
「ちょっと待って。私学生証なんて貰ってないわよ!? 蒼志や勇吾だって貰ってないんじゃないの?」
男の言葉に早苗が食ってかかる。
「ああ、それは……三人共きちんと合格レベルの実力を持ってるんだけどね。消滅しちゃったんだよね、学生証。あまりにも魔術の威力が強過ぎて。まあ後でちゃんと再発行するから安心して。」
「え……じゃあ、わたしの実力が足りないわけじゃないってこと……?」
「勿論。皆素質はそこ等の魔術師よりずっと上だよ!」
「ふぇぇー、よかったあー……」
安心したのか、早苗はずるずると椅子にへたり込んだ。
「さて、それじゃあ自己紹介。僕は仲間戸翠。君達のホームルームを担当する魔術師だ。加えて基礎魔術の実習も担当することになっている。今日は初日だから話さなくちゃいけないことがいっぱいあるんだけど、寝過ごし……否、試験が予想以上に白熱したせいでもうお昼になってしまった。というわけでホームルームは一旦休憩! 生徒の皆は三十分後にここに戻ってくるように! 以上!」
そう言って翠はささっと教室を出ていってしまった。
「蒼ちゃん! 飯食いに行こうぜ!」
「スコルビ君、抜け駆けは良くないぞ! 僕も蒼志君と魔術について存分に語り合いたくてだな!」
「まあまあ、飯なんだからみんなで一緒に食いに行きゃーいいでしょうよ」
「む……それはそうだな。彰君の言う通りだ。よし!それでは食堂に向かうぞ!」
「おう、俺も今行くよ!」
蒼志が荷物を持って立ち上ると、アルマが此方に向かって歩いてきた。
「おう、お前は……アルマ、だったよな。勇吾の友達だろ?」
「うん。蒼志、さっきは勇吾を助けてくれて本当にありがとう」
「気にすんなって。元はといえばあれは俺が引き起こしちまったもんだしな」
「……勇吾はね、ここに入るために一度浪人してるんだ。彼の家は魔術会では有名な戦闘用魔術の開発メーカーでね。勇吾自身も小さい頃から戦闘用の魔術を叩き込まれて育ってきた。大事な跡取り息子としてね。でも、勇吾の夢は人を傷つける魔術を創ることじゃなくて魔術医になって傷ついた人を助けることだったんだ。只、戦闘用魔法しか使えなかった勇吾は第四医学部に入るために実技試験での入学を諦めた。家族の反対を押し切って家出して、筆記試験だけでこのクラスに入ってきたんだ。……君だってそうだろ?」
「……ああ。あいつも俺と同じだったんだな」
「蒼志、さっき君が倒れてる間に勇吾が伝えてくれって言った事があるんだ」
「…………?」
「この仮はいつか必ず返す、だってさ」
「……へっ、あいつらしいな!」
「おーい、蒼志君! アルマ君! 早く食堂に行こうではないか!」
「おう! 今行く! さ、行こうぜアルマ!」
「うん!」
同時刻。
第三区画都市佐食研究施設地区。
「此方デルタ・グリーン第三区画都市駐屯部隊平塚中隊隊長平塚! 本部への緊急連絡! 現在第三区画都市佐食研究施設地区にて全国博士協会員と思われる二人組の魔術師と交戦中! 敵戦力の予想外の火力により苦戦を強いられています。大至急増援部隊及びAクラス魔術師の派遣を要請します!」
「くそっ……あんなガキ二人に我々が押されるなんて……。なんて出鱈目な連中なんだ……!」
「詠唱もなしに対魔術コーティング戦車を吹き飛ばすなんて学部長クラスの魔術師なんじゃないのか……?」
「とにかく今は耐えろ! 直に近場からの増援と大学からの魔術師が本部からの増援までのつなぎとして来てくれる筈だ!」
燃え盛るビルの上に立つ二人の魔術師。
二人共、その力で対悪性魔術部隊に与えている被害が信じられない程に若く華奢な身体をしていた。
片方は後ろの髪を首のあたりで切りそろえた黒髪のおかっぱ頭。真っ黒なスリット入りのチャイナ服の上にマントの様に漆黒のコートを羽織っている。その目は左目が黒、右目が赤の虹彩異色だった。
もう片方は豊かな美しい金髪。所々に青い薔薇をあしらった真っ白なドレスを身に着けている。此方の目は左目が赤、右目が黒の虹彩異色である。
「ねえ姐流……御館様が言っていた魔術師ってこれなの……?」
白いドレスの魔術師が感情のない瞳で尋ねる。
「ううん、流那、あれは只のゴミだよ。僕達の標的は東京踏破大学の内部にある」
「じゃあまずそこに行かなくちゃいけないね」
「うん、そうだね。こんなゴミに構ってたら御館様に叱られちゃうよ」
姐流が右手を、流那が左手をのばし、お互いの手のひらを合わせる。
次の瞬間地面がばっくりと裂け、巨大な爆発が起きて一個中隊を吹き飛ばした。
「さあ、行こう流那。東京踏破大学学長、始間大悟を殺しに」
何とか27時に無事投稿できました……。毎日投稿って大変だなあ。




