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「間違い」と「正解」は――  作者: 六土里杜
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――謝罪という名の愛を。(NL)3

ネットでチャットをしているといつの間にか夜で、先輩からの飲みの誘いが来た佳代は家に誘うも、大上の言葉に疑問を持ち始めて――

 それから一日中蓮さんとチャットのやりとりをして気が付けば夜になっていた。そんな時、携帯から着信音が響いた。

 誰から何の用なのかと思ったら大上先輩からの電話だったので、仕事の内容かと思ったから躊躇いもせずに通話をONにした。


「先輩、どうしたんです?」


 何でもない感じに尋ねる。実際特に何かを隠している訳ではないから、そんな事思う必要もないのに、どうしても見られている感じがして、パソコンを隠すような体勢になっている。


『ん? あぁ、いや別に……。ちょっと声が聞きたくなったから電話してみた』

「さよと一緒に居るんじゃないですか?」


 尋ねてみると、どうやらもう二人とも解散したようだったので、どこに何をしに行っていたのかは明日にでも聞いてみようと思いながらも、携帯の向こうから聞こえてくる音に耳を済ませていると、聞いた事のある音が流れた。


 どこかのコンビニにでも居るのだろう。不意に『近くに居るんだけどさ、ちょっと飲むのに付き合ってくれねぇか?』と尋ねられたので身構えてしまい「い、今からですか!? どこで……」と挙動不審になりつつも返答した。


 肩に携帯を挟みながらキーボードを打って『今日は落ちます』と文字を打ち、パソコンの電源を切る。


『どこでも良いけど。佳代が行きたい所あるなら連れて行ってやる』

「特にないですね……。私の家で飲みます?」

『佳代がそれで良いなら、な』


 一言間を置いたのが気になったけれど、それには突っ込まず、じゃぁ……。と言って電話を切って部屋の鍵を開けておいた。


 どうせ部屋の前までくるとインターホンを鳴らすのに、って鍵を開けた後に思い知った。


 **


「……なぁ」


 不機嫌そうな後輩の声。休憩中だった気がするがそういったところまではよく覚えていない。


「どうした?」


 何か不満でもあったのだろうかと思ったので、何気なく聞いたつもりだったのだけれど、良介は普段のふざけた様子は見せず、そっぽを向きながら呟いた。――否、実際には呟いていなかった。


 ――お前、佳代の事好きなんか?


 口の動きは確かにその文字を示していた。俺はその時どう答えたのか、今は思い出す事が出来ない。

 そんな事をコンビニを出た途端、思い出した。そういえばそんな会話したな、と。今になって思い出す。


 好きなのか、そう聞かれて俺はどう答えたのか。その答えは良い答えだったのか、悪い答えだったのか、つい最近の事のはずなのに今の俺は佳代の家に行けるという嬉しさで満たされているので、そんな事を考える暇はなかったのだろう。


**


 ――ピンポーン。インターホンが鳴った。時刻はそこまで遅くない。午後八時半ぐらい。

 ドアを開けると、そこには昼間見た大上先輩の姿がある。まるっきり変わっていない、大上先輩の姿。


「佳代も飲めるようなの探すのに時間かかったな」

「私はお茶やジュースで合わせますよ……」


 そこまでしなくても良いのに、何て思いながらも適当に買ってきたであろうおつまみを乗せる為に、食器棚から白いお皿を出し、袋を開けた。

 ピーナッツや柿の種、チーズを焼いたお菓子など、ビールにはよく合うようなおつまみが色々とあった。


「佳代が何飲めるかよく分からねぇから、これ買ってきた」


 そう言ってビニール袋から出されたのは「カルピスチューハイ」と書かれた、お酒。ものによれば甘く、物によれば甘くないやつ。


「ありがとうございます」


 笑顔で礼を言って、二人で飲み会を行っている時。不意に携帯が鳴った。誰かからのメールで送信相手を見てみると、「蓮さん」と書かれた文字。


 大上先輩も携帯で少し調べ物をすると言っていたので、大上先輩が終るまでに返信をしようとメールを開くと『今何してるん?』と書かれていた。だから、躊躇いもせず、思ったままの事を打ち込んでいく。『仕事の先輩と飲み会しています』――と。そしたら、いきなり私以外の携帯が鳴り出す。


「やべっ……」


 大上先輩の焦るような声と共に、送信完了の文字。


 ――まさか、そんな事って。


「あ、母さんからか。脅かすなよ」


 どうやら違ったようで、同じタイミングにメールが届いたのか、と思ってはすぐに大上先輩の言葉が引っかかる。


 何かを隠しているような、予測していなかったような、そんな言葉が脳内から離れずにいる。

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