緊急会議
「これより、緊急会議を始める。まずはそのまま聞いてくれ」
俺は、会議室(食卓に)代表メンバーを集め、今回起きた事の報告をした。魔王が復活した事、町が滅ぼされた事、その旧魔族の強さ、そこまでを伝えた。
「という事で、いつここに攻めてくるかも分からない。警戒網を布く必要がある」
俺はそこまで伝えた所で間を空ける。
「お兄、冗談じゃ無いのよね?」
ジェニが視線を向けて問いかけて来た。
「面倒な事だが、本当の話だよ。取り合えず敵の事で分かっているのはその位だ。これは王宮で分かってる事と同程度の情報だ。だから、まだ良く分かっていないと言うのが今の現状になる。俺のパーティーメンバーなら分かると思うが。300レベルがスタンダードな敵兵の強さだと、王都と王宮が落ちるだろう」
王都が落ちると聞いた直後ほぼ全員が目を見開いた。やっと全員が深刻な事態だと見てくれたようだ。
「どうやら状況の深刻さが分かったようだな。そんな状況なもんで、国王から直接依頼を受けた」
「……またなの? エルに頼り過ぎじゃないかなぁ」
と、ミラが珍しくぶすっとした顔で口を開く、それにいち早く反応したのはアイリだ。
「そうだよね。エルがやらなくちゃ滅びるって言うのならエルをまず国王にして貰わないと」
その発言にエティとケイが目を見開いた。確かに前のアイリならこんな事言わないだろうな。っとそれより依頼の事を話さなきゃだな。
「待て待て、その依頼は、俺じゃ無くてお前達だ。4人程王宮の守護に向かって欲しい。頼めるか?」
「四人も? この村の守りはどうするのよ」
ケイが人数が多い事に驚きを示し、問いかける。
「ああ、人数を決めたのは俺だ。それと別にルディも多分来るだろう。この村の守りも当然やる。見張りに関しては俺が居る限り感知で捉えられるからいつも通りだ、敵が来た時も俺が迎撃に出る。俺が出かける時のみ四方に見張りに立って貰いそこに転移陣と合図になる仕掛けを用意しよう」
「……面白い守り方だな。要するに見つけたら合図。誰かが合図したら向かえばいいんだな?」
エティが頷きながら確認するようにまとめてくれた。他の皆もそうする事に異論は無い様だ。
「ああ、その為の転移陣や合図の仕掛けを作ろう。チェルシー、頼むな?」
「はい、主様。お役に立てるんですね。嬉しいです」
俺は、転移陣を書き込めるチェルシーに仕事を頼んだ。俺も出来るが、チェルシーは内容を理解しているので陣の効果を弄る事も出来る。彼女に任せる方が良い結果になるだろう。
「キャロル、お前は王宮部隊に入って貰う。役割は分かるか?」
「危険を感じた時に主様にお知らせすればいいのですか?」
「ああ、それもあるが一番はお前たちの安全確保だ。少しでも危険だと判断したら即帰還していい。そこからは俺が行く」
「はい、了解しました。主様」
キャロルはチェルシー同様、嬉しそうに引き受けてくれた。さて、他のメンツはどうしようかな。
「王宮の守護に行っても良いと言う者は居るか?」
俺は彼女達を見つめるが皆視線をさまよわせ周囲を伺っているだけだ。まあ、そりゃ行きたくないよな。そんな中、ケイが口を開いた。
「仕方ないわね、行ってきてあげるわよ。まあ行く前と帰って来た後にブラッシングを所望するわ」
ケイは溜息をつくかのように告げ、ブラッシングを所望した。
「あ、じゃあ私も!」「ずりぃぞ! 私もだ」
アイリとエティも名乗りを上げた。そんなに気に入ってたんだな。洗って櫛を通しながら魔法で乾かしていくのを。確かに面白いくらいに顔がとろけていたけど。
「ああ、ルディとも連携取りやすいだろうし、お願いするかな。もちろん要望もしっかりと叶えよう。念入りにな」
そう告げると、彼女達は顔を綻ばせた。
「この話はこれで決まりだとして、ハーティ、アイリ達の専用装備を頼みたい、一週間以内に出来るだけ上位の装備でだ。頼めるか?」
これがネックだよな。もっと早く作っておくべきだった。装備は俺が作った物を渡してあるが。上級装備と比べるとかなり落ちる。俺の装備を渡したい位だ……かといって誰か一人に渡すのもな。仮に魔王と当たるとなると俺も必要になるだろうし。
「当然、素材の上限価格はどのくらい? いつもより上限上がるよね?」
ハーティはやる気満々の様だ。
「一人金貨100枚以下で済ませてくれ」
「!?……本気?」
彼女は目を光らせて、本当に良いのかと問いかけた。
「ああ、お前の全身全霊を掛けた装備を頼みたい。時間が無いのが申し訳ないが」
流石に全身装備を一週間で三人分、しかも上級装備と来ればかなり厳しいだろう。しかも出来るだけ早く欲しいから無茶な一週間と言ったが。その前に必要になる可能性だってある。まあ、そこら辺は国王に話して出来るまでは上級装備の貸し出しをして貰おう。
いや、それならば最初からジェニ達の装備を作らせた方が良いか?いや、いいやこっちは俺が最上級装備持ってるしな。基本的に俺が出るつもりだし。それにこの村に大軍勢が来る事は流石に無いだろ。仮に来たとしても全員連れて転移で逃げるけど。
「そんなの後から弄ればいい。分かった、うん。今やってるのは全部投げる。えへへ、楽しみ」
あれ?可笑しいな……さっきから仕事を与えた奴全員が嬉しそうにしてる。結構無茶を頼んでる気がするんだが。いや、まあ良い事か?
「えっと、次は……ああ、そうだ忘れてた。お前らこれを見てくれ」
と、俺は隣の部屋に置いてあった氷漬けになった魔族を転移でテーブルの上に寝かせるように置いた。その瞬間全員が椅子をガタッと鳴らし、何人かは立ち上がった。
「ば、馬鹿お兄! びっくりするでしょうが!」
ジェニは鳥肌をたてながら椅子の後ろに立ち、椅子を押し引きしてガタガタと音を立てながら捲し立てた。
「ごめんごめん。こいつが旧魔族と言われる今回の敵だ。ステータスが見れない。と言うか俺達と同じで本人の許可が居るんだろう。さっきも言ったが見つかったのはこいつだけで、レベルは魔力で見た感じ300レベル位だ。244レベルのアラステアが手玉に取られて遊ばれていたから、魔力だけって事は無いはずだ。全員、見かけたら俺を呼んでくれていいからな。無理に戦う必要は無い」
「じゃあこれで会議は終わり?」
ミラが首を傾げて問いかけた。だが、話すべきことはまだまだある。
「いや、まだだぞ。アナベラさんは最上級のポーションを作成してください。出来れば50本くらい」
「……素材だけでも金貨200は飛ぶぞい? まあ、お前達なら取って来れるだろうけどねぇ」
アナベラさんはそんなに要るのか? と付け加えながら、そんなに金を使って良いのかと問いかけて来た。だが、長持ちする上に売れる。そしてどこかしらで必要になるだろう。これでも最低限のつもりだ。まあ、村人の安全が見込めるまでは取っておくけど。
「おお、それは助かりますね。取れそうなら取って来ます。無理そうなら買いますけど。後、ドミニクさんとダッドさんはすべての建築を止める様に通達、地下への避難場所を作成してください。出来るだけ頑丈に」
当然に全員を避難所の作成に当てる訳じゃ無い。見張りを増やすしその交代要員、それに途中で止めると言っても当分放置する為の作業も当然出てくるだろう。それに保存食の作成もして貰わなければならない。その説明を加えながら話を進めた。
「お、おう。地下か。やった事はねぇが、やるしかねえんだろうな。だが、頑丈にするやり方が分からねえ」
あら、流石のドミニクさんも地下はやった事無いのか。魔法でフォローできるだろうし取り合えずでやって貰うか。
「じゃあそこは俺が後から固めましょう。今の所は何も無い場所に巨大な穴を掘る、と思って居て貰えれば大丈夫です。後はローズ、今回決まった事の予算は俺が出す。お前は引き続き自分の仕事をやってくれ。他まで手は回らない量を任せて居るしな」
「た、助かります。折角で来た予算がすべて飛んでしまうのかと……」
書類整理に追われているローズはこのままで良いだろう。レベルは高いと言っても彼女は戦う技術も低いしな。それでもこの前の奴くらいはやれるとは思うけど、無理に前線に出す必要は無い。
「ああ、安心してくれ、国からの褒美で開拓費として金貨1000枚貰ったからな。今回の出費を考えても逆に貯蓄が増える位だ。後、ロルさん、敵襲の合図が来た際は、即全員の避難が出来る様に、全員に告知、予行練習を行って置いてください」
「はい、大切なお役目ですね。しっかりと行う事とします」
ロルさんは村が襲われた時の事を思い出しているのだろうか。とても真剣な表情で指示を受け入れてくれた。
「さて、残ったのはジェニ、ミラ、エミールか」
「あれ? 壁の四方に見張り立てるの一人足りないんじゃないか?」
エミールは、どうやら自分が見張りに立つつもりだったらしい……まあその方が安全ではあるんだろうが。それだと何かあっても俺が村から長時間離れる事が厳しくなってしまう。
「いや、お前らが立つ必要無いだろ。転移魔法陣を起動できる魔力があればいい。それに四人じゃ交代も立てられないだろ。と、そんな事より、お前達は、俺の指示で色々やって貰おう。素材回収したり買い出ししたり、出来そうなら調査もしたい所だけど、それは危なそうだなぁ」
「えへへ、昔に戻ったみたいだね」
「そうだな。ローズと離れるのは嫌だけど」
ミラとエミールはまたこの四人で行動出来る事を喜んだ。だが、そんなつもりで言った訳じゃ無いんだが。と、訂正を入れる。
「待て待て。全員一緒に行動するわけじゃ無いぞ?村の守りどうすんだよ」
と、言われた二人は『ああ、そうか』と呟いた。
「お兄。そこまでやるって事は此処が狙われてるって考えた方が良い?」
まあ、そうだな。絶対では無いし、来ない方がいいんだけどな……
「可能性はある。グラディスがここを叩きたがるだろう。あいつが発言力があるとも思えないけどな。てか相手がどのくらい居るのかすらも分かって無いのだし……」
そう、あいつは魔王の情報をペラペラと教えてくれた訳だ、自分の命の為に。そんな奴が発言力が高いとも思えない。魔王の居場所すら知らないと言っていた訳だし。
「そっか……不確定要素が多いのって怖いわね」
ジェニは深く考え込み、現在の状況を再確認した様だ。まったくもってそうだな。正直予測ばかりだから想定外の事がどのくらい起きてもおかしくない訳だし。
「ああ、だからこその全力防衛だ。とは言え相手の居場所すら分からないのは痛すぎるけどな」
「もう……やっと来たと思ったら褒美じゃ無くて厄介ごとだなんて、やになる」
俺が、困り顔で頭を支える様に額に手を当てると、ジェニがぷくっと可愛くほっぺたを膨らませた。それを見て少し和んだ俺は、気を取り直してジェニの言葉で思い出した良いニュースを皆に告げる事にした。
「あ、そうだった。俺は今日から子爵だ。それを記す書状もちゃんと貰って来た。領地の方もしっかりと決まったぞ」
「「「「「「「おお!!!」」」」」」」
「お、お兄!し、子爵って言ったらウィシュタルの領主より偉いのよね?」
確かにあそこを治めていたのは男爵だったと思うが。
「まあ、国が違うから比べるのはあれだが、確かに位は上だな」
「というかいきなり子爵って何? 最初は最下層から始まるもんでしょうが」
ジェニもケイも何だかんだ言いながら嬉しそうだ。他の者達も喜んでくれている。厄介ごとは増えるだろうが、皆から祝福されると言うのはやっぱり良い物だな。
「まあ、そんな訳で、いつもと違う状況下で大変な事も多々あるだろうが。いつも通り無理をしない程度に頑張ってくれ。以上だ。問題が出たら直接俺に気兼ねなく報告をして欲しい。じゃあ、解散」
そう告げると、ハーティ以外メンツは頷いてくれていた。ハーティは無理する気満々である。うん、ちゃんと伝えて置かないとだな。装備は借りられそうなら王都で借りると。いや、貸してくれないって事は無いだろ。サイズがあえば、だが。まあ、どちらにしても作りたいだろうから、期間が延びるかどうかの話だが。




