やっと褒美を貰えた。
「陛下、お連れしました」
と、ついて早々跪いて告げると、近衛ももう慣れた様で、一度軽く武器を向けた後、すぐに戻し直立の姿勢に戻った。アイナとエレクトラは何故か土下座をしていた。子供たちもそれに倣っている。そうか、知らないのか。これから大変そうだな、彼女達も。
「おお! アラステア無事でよかった。しかしエルバートは本当に仕事が早いのう。転移で隣町に送らせてからまだ二日だと言うのに。うむ、良くやってくれた」
陛下は、安堵の表情を浮かべて、アラステアの無事を喜んだ。
「父さま、お手を煩わせて済みませぬ。エルバートを向かわせて頂いてありがとうございました。間一髪の所で命を救われました」
「おい、良いって。もう掘り下げんなよ恥ずかしいな」
俺はもう学習した、こいつらは真剣な表情をしていても信用してはならない。空気も読めないし。
「馬鹿者、こういう事はしっかりと報いねばならんのだ。我慢しろ!」
くっそ、何でおれが我慢すんだよ!……場所がここじゃちょっと分が悪いな、後で虐めてやろう。
「そうであったか。アラステアよ、よく無事で帰った。うむ、無事ならばそれで良いのだ。して、そっちの少女たちがお前が選んだ者達か? お前達表を上げてよいぞ。今日は礼儀作法は問わぬ。好きに発言しなさい」
「あ、ありがとうございます。アラステアは私の大事な男です。義父さまアラステアを私に下さい」
エレクトラは顔を真っ赤に染めながらいつもの様に暴走をした。俺は必死に笑いを堪えたが耐え切れず吹き出した。
「ぶっ、ぶはっ。あーちゃん形無しだな」
「あ~てめぇ何笑ってんだよ、私は本気なんだからな。もうすべてをかけるって決めたんだ」
エレクトラは笑う俺を見て立ち上がり文句をつけて来た。
「……父さま、お願いがございます。他の事は諦めます。ですのでアイナとクトラ、二人を娶る事をお許し頂きたい」
「ふはは、面白い子を見つけた様じゃな。まさかアラステアを下さいと言われる日が来るとは夢にも思わなんだ。して、そちらの少女はどうなのじゃ?」
陛下は楽しそうに笑い、アイナに視線を向けて問う。
「はい、私はアラステア様に貰って頂きたいです」
アイナはかなり緊張していて気おくれしてはいるが、しっかりと言えた様だ。
「うむ、お前たちの気持ちは分かった。アラステアよ、覚悟はあるのだな」
国王陛下は大きく頷き、視線をアラステアに向け、その覚悟を問う。
「はい、友にも問われ、もうすでに覚悟は決まっております」
アラステアもしっかりと視線を合わせて、少し笑みを浮かべ言葉を返した。
「ってちょっと待てよ。アラステアお前諦めるって言ってたよな! 私がお前に諦めさせる事になるのか?」
「馬鹿者、俺はお前とアイナが欲しいからその対価を払うだけだ。ただ、嫌な仕事でもちゃんとやると言っているのだ。はぁ……お前には教えなきゃいけない事がたくさんある。勉強漬けになる事を覚悟して置け」
エレクトラがアラステアの肩を掴み、揺らしながら問うが、いつもの様にアラステアに叱られて口を尖らせながらも勉強する事を了承していた。
「オッホン、して、エルバート、取りあえずはアラステア達に聞きたい事は大体聞けた。そっちの報告も聞こうかの」
陛下は話を切り替え、俺に今回の件の報告を求めた。と言っても俺はほとんど戦って無いんだよな。不意打ちの魔法連発で倒しちゃったから。
「はい、まあ、旧魔族と言うので間違いないでしょうね。倒した奴持って来ましょうか? 氷漬けにしてありますが。姿形を確認したいでしょう?」
そう、姿かたちはしっかり把握しておくべきだ。と、思い聞いて見たが……
「いや、文献に残っておるのでそっちの心配はない。グラディスを見張らせていた者達もそのように報告している。しかし、問題はその強さじゃな。敵は一人だったと聞く、あの町には200レベル付近の者も二人おったはずじゃ。その者達が敵わないとなると、相当高レベルだと考えねばならんな」
なるほど、魔王の姿形も分かるのかな?って居れば魔力感知で嫌でも分かるか。
「父さま、俺は今244レベルですが、あれを相当な格上と感じました。おそらくではありますが、280~290レベル位のつもりで居た方が良いでしょう」
アラステアは自分が直接戦った感じから大体の戦力を予測して報告した。
「あ~大体あってるな。もうちょっと正確に言うなら、魔力数値は、この国の人基準でだけど、300レベルちょいって所だったよ。まあ俺は肉弾戦やって無いから技術の程はさっぱりだけど」
と、アラステアに向かって言葉を投げかけた。アラステアは『なるほど、よくよく便利だな、感知と言うものは』と頷く。
「ふむ、エルバート、彼女等を350レベルにしてくれるのであったな?」
陛下はアイナとクトラに軽く視線を向けながら、この前した約束の話を持ち出した。アラステアがそれを聞いて目を見開き、歯を食いしばる。
「あ~、それは構いませんが、今回は俺がやりますよ。魔王っての以外は多分やれるでしょう。だけど、あれが下っ端と考えると魔王とやり合えるかは分かりません」
それを聞いたアラステアは必死な表情を悔しそうな表情に変え目を閉じた。本当は自分でやりたいんだろうな。だが、今回はちょっとダメだな。冒険優先にしてなければちょっとレベリングの追い込みをして連れて行けただろうけど。
「ふむ、魔王か、確かにそう考えると厳しいのう。そこまで強さが変わらない事を願うしかないか」
王座に座る国王陛下は背もたれに身を預ける様に仰け反り、困ったように宙を見上げる。それを見たアラステアは焦る様に口を開く。
「エルバート、あれだけの強さだったのだ、あれが魔王と言う線は無いのか?」
……あーちゃん、それはいけないな、お前は将来国王になるんだから。まあ、今のは陛下が困っているのを見て、どうにかしたいと焦っていたからだろうが。
「絶対に無いとは言い切れないが、人の協力者が居るんだぞ?300レベル程度じゃ結局負けるのは分かっているだろう。そんな所に王を向かわせるか?俺は小手調べの下っ端だと思うぞ」
「まあ、そうだろうのう。ふむ、そうなるとここも安全ではないのぉ。領地のあるエルバートをここに縛るのも出来んよな。どうするかのう……どうにかならぬか?」
陛下は俺に視線を向けて、問う。確かにこの現状で戦力を一番持っているのは俺だ、レベリングマシーンの事を教えた以上その事も分かっているはずだ。やだなぁ。あいつらを危険にさらすの……だからと言ってここに居る者達はもう、俺にとって守るべき存在になってしまった。どうしようもないな。
「そう……ですね。ルディと俺のパーティに声かけてみましょう」
編成をちゃんと考えなきゃな、向かわせるとしたらキャロル、もしくはチェルシーは必須だな。
「ん? ルディは分かるが、パーティメンバーの者は旧魔族と戦えるのか……いや、愚問じゃな。一応レベルを聞いても良いかの?」
「……伏せさせて頂きたい。ですが、ルディより上とだけ」
うん、余裕で全員400超えてるとかあまり知らせたく無い。だけどルディと同格以上じゃ無いと意味無いしな。あれ? でもルディに正確なレベルって聞いた事あったっけ? まあ、それは良いか。
「うむ、十分じゃ。承諾してくれる事を願う」
と、話が一段落した所で俺は褒美の件を改めて聞いて見た。
「それと、陛下、俺の爵位っていつ頃頂けるので?」
「うむ、簡略だが今与えよう」
え? 簡略で済むならもっと早く出来ただろうに。色々面倒な事もあったんだぞ。などと考えつつ、改めて頭を下げた。
「エルバートよ、剣を捧げよ」
そう言われた俺は、腰に差しているオリハルコンの黒剣を刃を自分に向けて献上した。この儀式は見た事がある、確か両肩に剣を一回ずつ乗せた後、剣の刃を持ち、自分の心臓に向けるんだったな。
「うむ、知っておる様じゃな。我に忠誠を誓いし者、誓いの言葉を」
俺は、若干青い顔しながら笑顔でゆっくり首を傾げた。
「なんじゃ? ここまでやらせておいて誓えないと言わぬよな?」
「いや、決まり文句知らないんですよ。すみません」
「ああ、そんなものはない。自分が正しいと思うように誓いを立てよ」
お、何でも良いのか。んじゃ好きに言わせて貰おうかな。
「自分の大切な者を命を賭けて守る事を誓います」
「……この誓いに意義のある者はおらぬか? ……おらぬのか。」
国王陛下は視線を回しながら二度、問う。何故か皆、苦笑いをしている様だ。ああ、もうちょっとわかりやすく宣言した方が良かったか。
「や……やり直します?」
空気をよんで、俺も苦笑いをしながら問いかけると、陛下は『ふむ』と目を閉じ思考した後、口を開いた。
「エルバートの事じゃ大切な者に領民は入っておるのじゃろうし、まあ、良いじゃろ。そんなふざけた物言いをした者は初めてじゃがの」
陛下は楽しそうに言う。だが、俺はやっぱり儀式だしな、と一応謝罪をした。
「ははは、すみません」
「よい、では、エルバートの功績を称え、正式に領地を与え、子爵の位を授ける。他に開拓資金として、金貨1000枚を授ける」
ん?おお!開拓資金まで貰えるのか。これは結構でかいな。
「ありがたき幸せにございます」
「まあ、お主にはすぐにまた褒美を出さねばならぬがな」
それを考えるとちょっと気が重いなぁ。俺が戦場に出る分には良いんだけど……いや、良くは無いか。
「ああ、魔王の軍とやり合わなきゃいけないんですもんね」
「それもあるが、その前にアラステアの命を救った事もあるしな。一応レベル上げの方で金貨千枚を追加したが、何か望む物はあるか?」
ああ、もしかしてそれで待ってたのかな?まとめて褒美を出す為に?まあなんにせよ資金は本当に助かるな。
「あ~そうですね、開拓資金追加して貰えると助かります。後、領地の範囲も正確に教えて頂きたいですね」
「ふむ、こちらとしても金の方が楽でよいな。領地の範囲は証明書類に記されておる。もう用意させておるから帰りに受け取って帰るがよい」
よし、これでこれからの計画を確実なものに出来そうだ。
「そう言えば、魔王って今どこを根城にしているんですか?と言うより、魔王軍が居る場所、か」
「頭が痛い事に、それはまだ、分かっておらぬ。探らせてはおるがな」
あら、じゃあ何か起こるまでは何も出来ないのか。うん、じゃあ褒美を貰ってあの魔族を回収して、一応町も確認してから帰るか。そう考えて俺は、一先ずアラステアに声を掛ける。
「なあ、お前らのレベリングはどうする? 俺が手が空くときに強制的に連れてって良いのならちょいちょい連れて行けると思うけど。それともこの件が片付いてからにするか?」
「いや、すぐに頼みたい。俺だけ、と言いたい所だが。そうはいかぬな」
「気持ちは分かるが、俺この前それで彼女達に大激怒されたよ。逆の立場になったら耐えられんのか?ってさ」
「ぐっ、反論は出来ぬな。別の解決策を探すしかなさそうだ」
「まあ、取り合えずレベリングはする方向で良いって事でちょいちょい連れ出しに行くからよろしくな」
と、アラステアに告げて、褒美を受け取った後、自室に放り込んでそのまま襲われたと言う町へ向かった。だが、俺は向かった事を後悔した。全滅だった。完全に。俺は仕方が無いので、氷漬けにした魔族を持ち帰り、ルディの所に寄り、現状報告と国王の頼みを告げた。受けるも断るも好きにしろと告げた。今回は命がけになるしな。
その後、俺は屋敷に戻り、急遽いつもの皆を集めて貰い、緊急会議を開いた。




