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魔法使いが魔法使いになりたくて異世界転生をする(英雄の生まれ変わり)  作者: オレオ


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骨と商談と子供扱いと


いつもの様に朝食を取り終えた俺は、ミラを連れて村の畑に足を延ばした。まだ8時前だと言うのに村人全員がいつもの場所でもうすでに仕事をしていた。もうちょっと早く来た方がいいのかな?とか思いつつ、カーラさんに声を掛けた。


「カーラさん、おはようございます。今日も少し手伝いに来ました」


「あっ、おはようございます、エルバート様。こんな早くからご苦労様です」


 カーラさんはこの時間に俺が来たのが初めてだからだろうか。少し驚いている様子だ。


「いえいえ、皆さんがもうこの時間ですでに働いていたので、ちょっと恐縮してます」


「な、何を仰るんですか。エルバート様は領主様なのですから、こんな仕事はする必要無いのですよ。こうやって手伝いに頻繁に来て下さって、私共は申し訳ないと思っています」


 カーラさんは少し焦りながら、とても申し訳なさそうな表情をして告げる。言われてみればそうだな。俺も国王陛下とかに見守られながら仕事とかマジで嫌だわ。平民と領主、貴族と国王、感覚的に差は近いだろう。


「あ~、そうですよね。でももうちょっと村が大きくなって落ち着いたら、完全にお任せする事になると思いますので、それまではお邪魔させてくださいね。それでこの前作った農具の方はどうですか?あれは石で作ったからすぐ壊れると思うのですが、どのくらいで代わりを用意した方が良いのか知りたいので」


「いえ、お言葉の通り使わせて頂いているのですが、とても頑丈で、あれが壊れるなんて相当乱暴に扱わなければ大丈夫だと思います。本数の方も人数的に余るくらいですし、とても助かっております」


 え? あ、そうなの? あ~まあ、石はどかしてあるし、しっかりした石を加工したのが良かったのかな? まあでもそのうち壊れるだろうからその時で良いか。それじゃ、計画通り畑の範囲を広げる方向で行こうかな。


「では、畑に出来る場所の拡張だけやっておきますね。作業量的に無理の無い範囲で使って下さい」


「え? ここからさらに広げるのですか?」


「ええ、人を呼び込んで少しずつ割り振って行きますからまだまだ広げます。まあ、そう言う理由もありますから、取り合えず広げて置いて使いたい分だけ使って貰えれば大丈夫ですから。詳しくはロルさんの方に聞いて貰えれば」


 まあ、大体説明したと思うけど、こう言って置けばロルさんから何かあれば話が回ってくるだろう。


「は、はい、分かりました」


 話が終わると、カーラさんは前回の様に人を集めてくれた。そして準備が整ったので、ミラに声を掛けた。


「ミラ、俺がやるのよく見てろよ。理解力が上がればMP消費が下がってやり易くなるから」


「ん~?良く分かんないけど分かったぁ。エルを見てる」


「……俺じゃ無くて俺がやってる事をな?」


「それ位わかってるよぅ」


 最近オリハルコンの装備を着用しなくなったせいか、ミラは嬉々として引っ付きながら口を尖らせた。そんなミラに『ホントかぁ?』と、ほっぺをぷにぷにやっていると、カーラさんはそれを見て口に手を当てて微笑んでいた。よく見ると住人の目もなんか生暖かい……俺は早く済ませようと、早速作業を始めた。


「場所は道幅と家二軒分を余裕を持って取ればいいか。じゃあ、行くぞ」


「うん、エル頑張れぇ」


 俺はミラの声援を受け、少し調子に乗って一度で500メートル位やってしまった。畑の範囲が倍に拡張された。このままミラにやらせる事を考えるとちょっと広すぎたか? とも思ったがまあ使わなければその上に家を建ててもいい訳だし、いや、土地はいくらでもあるし取って置けばいいのか。


「おー、あれ? 私は何をするの?」


「ああ、こっちの方角に向かって、同じくらいの範囲で同じくらい間を空けてこれを何個か作っておいて欲しいんだ。一番大変なのを終わらせておけば俺らが居なくても使いたい時につかえるだろ?」


「なるほどぉ、分かったぁ! 任せなさい!」


 ミラはそう言って、胸を叩いた。魔力操作は問題無いはずだからもうここは任せて良いかと、俺は次の仕事に移る事にした。


「よし! じゃあ、任せるぞ。俺は勧誘と買い物行かないとだから後よろしく」


「帰ってきたら一杯褒めてね?」


「それは仕事量によるな。じゃあ行って来る、テレポート」


 そう言ってミラに託した後、俺はジェニ達とロルさん、アナベラさんを連れてアナベラさんがやっていた店で万能薬の素材を買いそろえ、要件を終えたアナベラさんを転移で帰し、ジェニ達には服の買い物を任せた。今回はしっかりと時間の潰し易い待ち合わせ場所を決めた。昨日彼女達が騒いでた甘味処だ。


「さて、後は勧誘だな。ロルさん行きましょうか」


「はい、お役に立てるかは分かりませんが。よろしくお願い致します」


「居てくれるだけで良いんですよ。もちろん何かあれば言って欲しいですけど」


 と、いつものロルさんと王都を歩きながら何気ない会話をして進んでいった。


「あ~アイリに書いて貰った地図だとここだな」


 俺は、エティだと心配だったので、あえてアイリに頼んだ地図を見ながら呟いた。


「その様ですね、では、戸を叩いて見ます」


 ロルさんがそう言い俺が頷いた。戸を叩きしばらくすると、不機嫌そうな男が出て来た。身長は高くない、だが、妙に肩幅が広く、胸板も厚いせいかとても違和感のある体格をしていた。


「客か? うちは特注だけだ。金は結構取るぞ。金貨5枚以上の装備が欲しいなら入ってこい」


「いえ、この前、貴方を村へ勧誘したいとお邪魔した者でございます」


 ロルさんが鍛冶職人に事情を説明すると、彼は溜息をつき、口をついた。


「はぁ、金額を考え直したのか? 一年でそんなはした金じゃ鍛冶師はつかまらねぇぞ。さっきも言った様に金貨五枚からだ。年間で5件こなすだけで報酬を超えるからな。まあ、下位装備しか作れねぇ所なら別かもしれねぇが。」


 彼のその言葉を聞いて考えなおした方が良いのかも知れないと言う考えが生まれた。俺がまがいなりにも中級を作れる以上、それは高額を払ってまで必要なのだろうか? と言う疑問が生まれたからだ。だが、技術を村に、という考えから言えば居た方が良いのは間違いない。何となくでやってる俺には教えられないのだから。そう考え彼に問いかけた。


「そうですか、お弟子さんの方に頼んでもその金額だと厳しいでしょうか?」


「弟子なんかいねーよ。いや……取り合えず入れ」


 俺とロルさんは顔を見合わせ、少し首を傾げながらも中に案内された。そして案内された先で、椅子に座ると、彼は即座に質問を投げかけた。 


「鍛冶師は男がやるもんだ。その考えに相違ないか?」


 何の前振りも無かったので、一瞬こいつはいきなり何を言い出すんだろうか? と思考回路に疑問を抱いたが、何か意図があるのだろう。こだわりか? まあ、何にせよ、思った事をそのまま返すべきだな。


「俺は、いい仕事をやって貰えれば性別は関係無いと考えます。いや、出す金額が低いそうなので見込みのある人物で、紛いなりにも作る技術を持っているのならば、と思います」


 俺がそう答えると、彼は鋭い眼光を向けて再度問いかける。


「ああ、そうかい。じゃあお前は女でも鍛冶場に立たせるってんだな?」


 その彼の問いに、俺は営業スマイルを止めて、口を開いた。


「ええ、使う側の冒険者は男も女も関係無いのだから、作る側も男女共に居た方が効率的かと」


「そうか、俺の娘を寄こす。報酬も娘にやれ」


「それはありがたい。でもまずは本人に意思の確認をさせて下さい。屋敷の中でのお抱えとはいえ何も無い村で一年以上過ごして貰うのですし、本人が望まないとこちらも頼めません」


 俺は、そう言うと少し面食らった顔をした。安心した表情を見せた事に対してだろうか彼は舌打ちをして再度表情を硬くした。


「ちっ、そんなやわじゃねーよ。おいハーティ、お前に客だ今すぐこい!」


 そう声を掛けた瞬間、おそらくすべて聞いていたであろう一人の女性が入って来た。今度は俺とロルさんが表情を崩した。その女性はとてもがりがりにやせていて、頬はこけ、目元はくぼみ、色々なところが骨むき出しになっているからだ。


「はい、師匠。来ました。行きます」


 彼女はアンデットの魔物が目を光らせる様に力強くそう言った。


「ほらよ、こう言って居る。問題無いか?」


 鍛冶師の男は、試すような視線を向けて問いかけた。うーん、死なれたりしたら困るんだけど・・・そこら辺は前もって聞いておかないといけないな。


「ええ、仕事を出来るのであれば、問題ありません。とは言え失礼ですが気になりますね。体質なのか、病気なのか」


 体質ならば仕方が無い、飯をちゃんと食っているならば問題無いだろう。まあ、病気だとしても万能薬も買ったし、それも問題ないか。ああ、大丈夫じゃね? まあ確認はするけど。


「病気だな、飯より何より装備を作る事に憑りつかれてる。止めとくか?」


 え? そっち? 精神的なものか。逆に効率が悪いだろうに……そこら辺を話し合って食べるのも鍛冶の仕事位に思わせればいいか。


「あ、そう言う事ですか。分かりました。是非お願いします」


「軽いな。死なせたりすんなよ?」 


「こちらもそれは困ります。これでも領主なので」


「あん? ああ、これは失礼した。ではお願いする」


 そうして、契約書を交わし彼の家を出た。余りにあっさりと決まった事に、俺とロルさんは少し拍子抜けをしながらも彼女と飲食店に入り今後の話を詰めようとした。だが、俺達はまた彼女に驚かされた。物凄くがつがつと食べて、細すぎる体が、胃の辺りだけポコンと膨らんでいた。


「あ~ちゃんと食べてくれる様で安心したよ。うちで雇う以上一日二食はしっかりと取る事をどうやって約束して貰おうかと思ってたから」


 そう告げると、彼女は少し険しい顔をした。


「二食は厳しい。長丁場もある」


「それってどのくらいかかるんだ?」


「12時間くらい? 終わってすぐは疲れて寝るから約束は出来ない。」


 なるほどな、確かにそれなら分からなくも無いが、12時間か。魔法ですぐに出来ると思ってたから意外だったな。


「口に銜えながら食べれるものでも厳しい?」


 俺は妥協案を出して問いかけた。


「……問題無い。けど普通は鍛冶場に食事なんて入れない」


「じゃあその方向で、うちではそう言う常識は気にしなくていい、最強の装備を目指す事優先で」


 彼女がそんな事出来ないとか言いださないで良かった。俺はそう思いながら彼女が目指しているであろう事柄を口に出した。


「さ、最強の……装備……」


 あれ? ちょっと引いてる。あ、そこまで考えて無かったのかな? でもガチで人生掛けてるぽいし、人から言われるのが慣れてないだけかな?


「ああ、それだけ熱中してるなら考えた事はあるだろ? それに目指すだけでいい。目標は高く、だ。現在最強であろうオリハルコン装備はもう持ってるしな」


「まさか……王宮鍛冶師の伝説の? 嘘?」


 彼女は顔を強張らせ、問う。


「後で見せてやるよ。だけど弄ろうとはするなよ?」


 その俺の言葉にガタッと勢いよく立ち上がり、テーブルに勢いよく手をついて食器が音を立てた。


「ぜ、是非。お願い。触ったりしない」


 彼女は目を見開いて目が飛び出そう……いや、ホントに飛び出そう。ちょっと……いや結構怖い。ああ、これはダメだ。一刻も早く彼女には普通の体系になって貰おう。と、俺は決意を新たにした。


「それは分かった。じゃあ最初に仕事を頼もうかな」


「は、はい。何を?」


「工房を作る為に必要な物の買い出しを頼みたい。俺には分からないからね。予算はどのくらいあればいい工房が作れると思う?」


 そう、俺が転移で買って来た方が早い。だが分からない以上は出来ないのだ。


「え? 無いの? 相当掛かる。おそらく金貨40枚から60枚……出せる?」


「必要経費だな……仕方が無い。ほれ、無くすなよ」


 俺は財布から金貨60枚を出して彼女に渡した。


「え? 何故、私に持たせる。困る」


 彼女は困惑してそう告げる。ああ、そっか。隷属者でも無く、契約したばかりの者に渡す金額じゃ無いな。じゃあ誰か連れて来た方がいいか、俺は勧誘しに行かないとだし。そう思った俺は感知で位置を特定して転移でアイリを呼んだ。そして事情を説明すると、快く引き受け入れてくれた。


「うん、分かったよ。じゃあ終わったらどこに居ればいいかな?」


「そうだな、そこの甘味処って書いてある店でどうだ?待たされてる時間は俺の金で食い放題だ」


「ホントにぃ! 分かった。じゃあ早速行こう。ハーティさん」


 アイリは彼女の骨を掴み……手を掴み歩き出した。うむ、流石アイリだ。あれをみて動揺一つ見せないとは。などと失礼な事を考えながら、次のターゲットである、料理人の所にロルさんと二人で歩き出した。


「いや~思いのほかスムーズに進んでますね。これなら料理人の他にも回れそうだ」


「そうですな、これもエルバート様の人徳でしょう。私は最初の質問でおそらくダメでした。女性が入ってはいけないと言われて居る事を知っておりましたので」


 ロルさんは少し肩を落とし告げる。


「ああ、俺も聞いた事はありますよ。でもそんな意味の無い事なんでこだわるのかが不思議でした」


「そう言われてみれば……もしかしたら仕事の独占の為にそうしてるのやもしれませんね」


「あ~その線が確立高そうですね。そこから勝手にルール見たくなっていって神聖視されたとかかな?」


 と、俺はロルさんと意味の無い話を何気なくしていた。初めてかも知れないな。こういう時間をもっと早く取ればよかった。


「流石でございます。この前キャロルともやったのですが、分からない事の考察とは不思議と面白い者ですな」


「そうですね、俺も良くやりますよ」


 などと話しながら歩いてしばらく経つと、やっと目的の料理店に着いた。流石ローズの書いた地図だ、丁寧に書いてある。ここで間違いないだろう。俺とロルさんは店に入り店主であろう人物に声を掛けた。だが、要件を伝えてすぐ、考えてみたがやはり無理だと断られ、3分と経たずに店を出る事になった。


「まあ、そう何でも上手くは行かないか。まあ、時間はまだまだあるんだけど宛がなぁ」


「そうですな。商会などで口添えを貰えると心強いのですが。キャロル達がお世話になった方にお願いするのは難しいでしょうか?」


 え? あ、そうだよ! あるじゃない。最高のコネが! どうして忘れてた……まあ、実際に会いに行ったから彼らは受けてくれた感があるし……無駄じゃ無かったと言う事で良しとしよう。


「本気で忘れてました。すみません。ヘストンさんの所に向かいましょう」


「エルバート様でもそう言う事があるのですな、少しでも役に立てて嬉しく思います」


「いやいや、普通に一杯あるんです。助かってますよ」


 そう言葉を交わした後、俺達はヘストン商会来ていた。もう三度目と言う事もあり、受付に軽く声を掛けた後、彼の仕事場である部屋をロルさんと共に訪れた。


「これは、エルバート君よく来たね。そちらのお方は?」


 ヘストンさんはいつもの営業スマイルを浮かべ俺達を迎えてくれた。


「私は、ロルと申します。エルバート様の補佐をさせて頂いております」


「これはご丁寧に、私はこの商会の会長をしているヘストンと申します」


 二人は仰々しく挨拶を交わした。それが終わるのを確認して、俺は問いかけた。


「えっとですね。俺が村を正式に任された事は知っていますよね?」


「ああ、商売上、耳に入るからね」


 やっぱり知ってるよね。じゃあ説明は省いて良さそうだな。


「では、単刀直入に言います。うちの村に様々な商人を斡旋して欲しいのです。まあ、人を呼びこめるのがもう少し決まらないとですが、利益がある程度見合う段階に来たらお願い出来ますか?」


 そう問いかけると、ヘストンさんは顎を触りながら笑みを浮かべて言葉を返す。


「ほう、それは面白いお話ですな。現在の人口数はいかほどで?」


「お恥ずかしながら、現段階では130人程です。ですが、二月後には最低三倍にはしようと考えております」


 俺は、ちょっと、余りの人口の少なさに気まずい感情を覚えたが、表情には出さない様に気を付けながら説明した。


「……私の情報だと50人足らずと聞いていたが、最近増えたのかな?」


 あ~そこまで知ってるのか・・・これはもうすべてをさらけ出すしか無いか。と、彼に最初から包み隠さずに話す事に決めた。最悪でも奴隷引っ張って来れば人を呼ぶ事は出来る、だから都合の悪い事は伏せて良く見せたい。が、現状を知っているなら心象が悪くなるだけだ。


「ええ、最初の人数は40人ですね」


「ならば、無理だと一笑する訳にもいかないな。だけど、今から用意してくれとは言わないのだね。理由があるのかい?」


「面白い事を聞きますね。利益を上げられない場所に商人を寄こせると?」


 そんな事仮に出来てもすぐ無理が来るだけだろう。私財を投げ打てば軌道に乗せる自信はあるが、現段階でそれを商人にやれと言うのは正直頂けないと思う。彼らは昔の俺と同様、必死なのだ。


「はっはっは、強いコネを持っている人間はそれをしろと突き付けるのが普通なんだがね。現に君は次期国王とその次に偉い公爵閣下ととても仲良さそうにここに訪れている」


「それだけが理由じゃこちらは逆に不安になりますね。貴方方プロにここは金を回せる価値がある場所だと感じて貰わなきゃならないのですから。そうでなければ先の繁栄は難しくなる」


 俺は少し真剣な表情に変え、ヘストンさんに自分の考えを伝えた。彼は少し目を見開き、その後に椅子にどさっと背中を預けて砕けた笑みを浮かべた。


「ふむ、君を気に入って居るし多少の散財で済ませようと思っていたが、悪かったね。君を商売相手だと本気で認める。村の人口数や規模をこまめに教えて貰えるかい? それに応じて必要そうな職種の者を寄こそう。こちらの誠意として、ちゃんとした者を本来より少し早い段階で送る。かわりにうちの商会の支店を当面の間独占で出させて欲しい。どうだろうか?」


 気に入っている。か、まあ、ヘストンさんは俺が知る限りいい人だけど、それだけで散財する訳無いでしょうに。姉さんとの仲を保つ為、あわよくばアラステアとも懇意に出来るかもと言う考えがあるのだろう。その為の投資の一環のはず。それと期間を定めないで問いかけるなんてミスはしないだろう。まだ試されているな……


「そうですね、当面の間という話は詰めさせて貰うとして、今現在呼び込んでいる彼等の妨害行為をしない事を条件に入れさせて頂きたい」


「ああ、済まない。その話を詰めないと条件を揃えて無いんだから答えられないよね。では、こちらの提示は10年としよう。それと、その職種を教えて貰えるかい?」


 くっそぉ、嬉しそうにしやがって……この子供扱いを止めさせたい。さっき商売相手として見るって言ったじゃんよぉ、子供として見ないとは言って居ないとでも言いたそうだな。まあ、こっちは我慢するしかないんだけど。


「大工、薬師、今さっき鍛冶師を雇い入れた所です。10年ですか、それより、規模にしませんか?人口数がいくつを超えたらその条件は無しにして貰うとか」


「なるほど、面白い。それならばお互い利益のめどが立てやすいか。いやしかし商会を通していないのに、君は本当に行動が早いね。まだ話が回って来たばかりだが、任されてどのくらい経つんだい?」


 ん? ようやく認めてくれたかな?


「どうでしょうか。数えてませんが正式に任される前を入れると二カ月程度でしょうか。なので本当にまだまだ何もありませんが、土台作りに金貨2000枚位までは投資しようと考えてます」


「なるほど、期待できそうだ。だが良いのかい?どの土台で我々が稼ぎを持って行くわけだが」


 と、ヘストンさんが笑みを消し、真剣な表情で問いかける。


「はぁ。まだ、試すんですか?」


 と、俺は溜息をついてヘストンさんにちょっとふくれっ面をしながら言ってしまった。むう、俺は我慢が出来ない子。うん、知ってた。でもまあ、これ位ならね。俺は商人じゃ無くて領主だしね。大丈夫、大丈夫。


「くはっ、済まない。そんなつもりは無いんだが、どうしてもね。君を気に入っているからだ。許して欲しい。これは本当に面白い話になりそうだ。お詫びに何か聞きたい事があれば、出来る限り答えよう」


 彼は真剣な表情をいきなり崩すと同時に吹き出しながら謝罪をした……いや、これは謝罪と言って良いのだろうか? と思いつつも聞きたい事なら一杯ある、本当にお詫びを貰おうじゃ無いか。情報という対価で。


「ではいくつか。これをする事で常識に反しないか。犯罪行為にならないかという質問をさせて頂きたい」


「ああ、それは知らないといけない事だね。分かる限り答えよう。お詫びだからね」


「では、他の町からの引き抜きはどの範囲まで許されますか?」


「ああ、それが最も気になるだろうね。だが、難しい話だね。相手の領主に寄るんだ。ただ、少なくとも町以上なら10人20人で文句を言ってくることは無いだろうね。今、町と呼ばれている場所では最低2000人の人口が居るからね。逆にそれ位の出入りは把握しきれない、と答えて置こうか」


「なるほど、では、それが物の場合はどうでしょうか?例えば、家を買ってその家をそのまま持って行った場合」


「……そんな質問は初めてだね。もちろん買っているならば犯罪にはならないよ。民家程度なら文句をつけられる事も無いだろう。いや、ああ、失念していた。町になると関税が発生するな。その手続きを最初にしなくてはいけないね。いや、待てよ、関税は引っ越しの家具には掛からない。ならば……済まない、これは正確には答えられなそうだ」


 なんだとぉ~~~、そうか、関税の事忘れてた。やべっ屋敷どうしよ……今から陛下に相談して褒美に加えて貰うか。ああ、この話もその時にでも聞いて見よう。


「では、最後に、貴方が俺の村に人を呼ぶとしたら、どの様にしますか?」


「難しい質問が多いねぇ。そうだな、やはり定番と言われる家と畑を貸し与えて人を増やすのを最優先に行うだろうね。だけど、君はもうそれを手掛けている。きっと知りたいのはその先だろう……やはりあれだな、住民に金を持たせる」


「金を持たせる……ですか?」


 俺は、余り深く考えず問いかけた。


「ああ、そうだ。何でだと思う?」


 むう、素直に答えてくれないのかよ! お詫びじゃねーのかよ! まあいいや、要するにあれだろ?お金持ちだぜ裕福だぜ~って振り撒いてれば、集ってくる奴らが出て来て、むしり取ろうとしてくる……うーんそれからどうなるんだ?まさか商人が集まったからそれでよしって事はないだろう。


「ええと、金を持ってるならばと商人は集まりそうですが……そこから先のビジョンが見えませんね」


「ふむ、ちょっと安心したよ。では説明しよう。商人の武器、それは情報だ。そして商人は色々な場所に行く。そんな商人を集めて金を稼がせてやれば情報の拡散位はしてくれるんだ。あそこの領主は畑も家もくれるのに少ししか年貢を取らないからあそこの住民は裕福なんだ、当分の間は人を募集してるから狙い時だ。ってね」


 いや、うん、それは分かるけど、それ不味くね? 勝手に住民募集出してるのと結果が変わらない気が……


「それで人が来過ぎたら叩かれませんか?」


 俺がそう答えると、ニヤリと笑みを浮かべて頷き、答えをくれた。


「そうだね、間違いなくね。だから、どこから来たかを把握して、町の規模の2%を超えた辺りで菓子折り持って挨拶に行くのさ。情報が勝手に回ってこんな事になっています。これ以上は問題だと思うので規制をお願いしますってね。こちらは住民を裕福にしただけ、だが、結果を得てるから不味いラインで相手に報告を入れた。そして、そこから先に交渉の余地が出る。まあ、大抵の場合はそれ位ならと、良く報告してくれたと言ってくれるだろう。君は今、強いコネクションを持っているのだからね」


「うっわぁ、流石商人」


 俺は若干苦笑いをして拍手をしながら言った。


「はっはっは、ありがとう」


 ヘストンさんは、悪びれもせずドヤ顔をかましてお礼を言った。そうして有意義な商談を終えて俺達は彼女達との待ち合わせの甘味処へと移動した。

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