定期報告会議発足。
「ええと、これより、村開拓の為の活動報告会議を始めたいと思います。この会議では他に要望、問題報告、なども同時に話し合っていきたいと思います。では最初にドミニクさん、建築の進捗状況を教えて貰えますか?」
俺は目下の目標である、住民全員の住む家を建てる進捗状況を尋ねた。
「ああ、焼けちまった小屋は仕方がねぇから撤去したが、やりかけてた所は荒らされてねぇからな。ちゃんとしたのを取り合えず3軒同時進行で終わらせた。まあ、この婆が一つ乗っ取ったから空き一つだけどよ」
そっか、いなかったから知らなかったけど、あの焼けた家はもう撤去したのか。皆辛かっただろうな……せっかく出来た家だったのに。と、考えている間に話は違う方向に転がっていた。
「ふん、お前さんだってロルと仲良く一つ使ってるじゃ無いか。不満なら早くもっと建てる事だね」
「と言うか、もう三軒も建て終わったのですね。流石です」
俺は、放っておくと、いつまでもいつまでも止まらなそうなので早めに話の方向を戻した。
「きっちり加工された木材があんなにあるんだ。遅い位だぜ。教える手間で結構持ってかれるからな。あ~それと、勝手に住んじまってるが大丈夫か?」
きっちり加工された木材、と言う言葉が出た時にミラがふんぞり返る様に腰に手を当てたが、俺はミラを視線で制して、彼の問いに答えた。
「もちろんそのまま使ってください。それと、住民の方も家が出来るまでこの屋敷の空き部屋を使って良いと通達お願いします。部屋の場所は彼女、ラティーシャさんに聞けば案内してくれるでしょうから」
ラティーシャさんが料理を運んで居る最中、現在話している内容で把握できるはずなので、そのまま彼女に視線を向け軽く頭を下げると、いつも通り『畏まりました』と言葉を返して会釈をした後、次の料理を取りに行った。
「ああ、そこが聞きたかったんだ。いつまでも人が野ざらしって訳には行かねーだろうからよ」
確かにな、と言っても流石に雨風をしのげるようにはしてある場所がある。まあ、それでもやっぱり外と同じ感は否めない。
「そうですね、もう少し早く対応すべきでした」
「いや、それは俺達から打診する事だ。待ってればいい何て考える奴はほっときゃいい。まあ、ちょっと前まで何も無かったんだから野営脱出までは逆に早い位だけどな」
「そうですね。エルバート様を困らせては本末転倒ですし。では、私からも一つお願い事がございます」
ロルさんはドミニクさんの言葉の後、深く考え込み、申し訳なさそうにしながら口を開いた。
「はい、もちろん要望はどんどん言って下さい。叶えるかどうかは会議を通してからですが」
「ありがとうございます。では、そろそろ衣服が駄目になっている者が目立ちます。せめて女性用の者だけでも調達して頂けないでしょうか?」
ああ、それはよろしく無いな。俺の精神衛生上も良く無いだろう。きっと知らずに視線を向けても怒られるんだ。いや、間違いなく怒られる。
「ああ、洋服の事は元々話し合っていた事なので、それは話を通すまでも無いですね。明日にでも用意しましょう。もちろん男性用も」
「ありがとうございます。お願い致します」
ロルさんは、深々と頭を下げて、テーブルに頭をそっと付けた。
「ロルさん、もっと砕けた口調で構いませんよ? そんなつもりで領主をやっているのでは無いので……」
と、俺はロルさんに逆に困ると言外に告げると……
「がっはっは、坊主! こいつはこれが素だ、面白れぇ事に怒りながらも崩さねぇんだな」
「これドミニク、黙ってれば面白い物を。ロルがどう口調を崩すのかが見たかったわい」
「貴方たちはエルバート様がお優しいからと言って、甘え過ぎです。もう少しですねぇ」
と、いつもの二人が野次を入れると、言葉の通り、ロルさんが口調を崩さずに説教をしだした。
「それは、ロルさんの懐が深いと言う事で置いておくとして、次にアナベラさん、薬関係の進捗は如何でしょうか? まあ、アナベラさんへの心配はいらないでしょうけど」
レベルも上げたしね。と、俺は心の中で思いながらも話を聞いた。
「何でいらんのじゃ、盛大に心配せい。と言いたい所じゃが、聞きたいのは弟子の育成かえ?まあ、薬の常備も同時進行で進めてはおるが、いかんせん素材の調達が現地だけだとどうにもならん事もあるからねぇ」
床を杖でトンと叩いた後、俺の言葉にご立腹の演技をしながら口を開いたアナベラさんはそう告げた。
「と言いますと、町への移動手段が欲しいと言う事ですか? 頻繁で無ければ送る事は出来ますけど。常時となると少し厳しいかも知れませんね」
と、転移で連れて行く事は構わないが頻繁にと言うのは無理だと告げた。
「心配せずともそんな事はさせん。取れないものが分かれば、一度行って買い込めば早くダメになる物でも半年は普通に持つはずじゃ、基本的には全部乾燥させて粉にするからのぉ。ポーションとは違い使う時に溶かすもんばかりじゃ」
「そう言う事なら問題無さそうですね。では明日衣服を買いに行くついでに買いに行きましょう」
俺は、安心して早速行こうと提案をしたのだが。
「いや、しばし待て。まだ薬効のある植物の現地生息調査は終わっておらん。全部買う訳には行くまい?」
ああ、なるほど。確かにそれはダメだな。育成させる為には良く無いだろう。
「そう、ですか。では、取り合えず万能薬の材料は買ってきますよ。何かあった時の為に」
「ほぉ、太っ腹じゃのぉ。では頼むとするかの」
そこで、アナベラさんとの話し合いが終わり、次にロルさんに声を掛けた。
「ロルさんの方から報告等はありますか?」
「ええ、喜ばしい事に畑から芽が出始めました。この速さで芽が出たのであれば、収穫も期待できるでしょう」
「おお、では、本格的に畑の拡張をしましょうか。これから先もしかしたら、家と畑を餌に村に人を呼び込むと言う事をするかも知れません。もちろん優先は現在いる村の者からですが。まあ、そんな感じで魔法でちょちょっと拡張して置くので、管理できる分だけ……いや使いたい分だけ使ってください」
「そんな、宜しいのですか?」
「でも、永遠と使えるとは思わないで下さい。と言って置きます。独占しようとする人が出ちゃった時の保険で、ですけどね。もちろん自分で管理して実らせたものに関して年貢以外で徴収する様な真似はしません」
「お心遣い感謝します。皆意欲を出す事でしょう」
「じゃあ次、お前達から何かあるか?」
俺はジェニから順番に視線を向けて行くと、エティがまず口を開いた。
「この前、勧誘しに行った鍛冶屋はどうすんだ? ダメだったのか?」
「いや、それも明日行く事にしている。まあ最後に俺が言おうと思ってた話だけど、せっかく言ってくれたし、説明しておこうか。この前、アナベラさんやドミニクさんと同様に村に来てもらおうと話を回して貰ったんだけど、今は相手側が検討中って所で話が止まっているのが二組、鍛冶職人と料理人だ。取りあえずは俺の屋敷で抱えるつもりでいる」
「ああ、それなら俺らの内誰でも良いから連れてけ、子供だけってのは相手は不安だからよ」
「あ、それは助かります。では……やっぱりロルさんですね」
「了解いたしました」
「そうじゃな、こやつは今はニートじゃしの? ひっひっ」
アナベラさんが茶々を入れると、ドミニクさんが『なんだよ、ニートって』と問いかけ、説明を入れると二人はニヤニヤとしながらロルさんを見た。楽しそうな空気を感じたミラも移動してニヤニヤしている。
「ロルさんは俺の補佐官です。おい、ミラっ! メッだぞっ!! メッ!!!」
俺は老人二人にジト目を向けた後、ふざけた口調でミラを大声で怒鳴った。
「や~……やっ!!」
ミラは最初驚いて泣きそうに成る程圧倒されていたが、俺の口元が笑って居る事を確認すると、反抗的になった。ついいつものノリでミラを弄って遊んでしまい不味いとロルさん達に視線を向けると、俺達は微笑ましい存在を見るような視線を向けられていた。俺は軽く咳払いをした後、続きを話しだした。
「ゴホン、えーとだ、他にも色々な店から引き抜きを行って行こうと思ってる。候補はさっき出た洋服もそうだし、後は日用魔道具、酒屋、甘味処などか」
少し威厳をだそうと敬語を使う事止めて話を進めたが、誰一人気が付いていない様だ……
「ふむ、まずは酒じゃな」
「馬鹿を言ってはいけませんよアナベラさん、洋服店、もしくは魔道具屋でしょう」
「あ~魔道具はいいな。だが、魔道具にも善し悪しがある。良いのが捕まればいいんだが」
もう手慣れた様に三人の老人がじゃれ合い出すと、俺が先ほどふざけたからだろうか、ジェニ達も会話に乗って来た。
「甘味は賛成ね、私達も楽しみが欲しいもの」
「だねぇ、エルはしょっちゅうお出かけしてるし」
ジェニとミラは甘味が欲しい様だ。そしてさりげなく俺に不満をぶつけた。
「そう言えば、オルセンでは食べた事無いかも! えへへ、凄く楽しみ」
「ああ、そうだな。エル、頼んだぞ」
「はぁ、あなた達ねぇ……一応会議終了するまでは自重しなさいよ。まあ、発端はエルだけど?」
アイリとエティが俺に期待の目を向けて、ケイがため息を付きながら俺にジト目を送った。
「ま、まあ、全部交渉には行くよ。ただ全部に言える事だけど、まだ小さな村だから定着はしてくれないかもしれない。だからこそ誰かに弟子になって貰う必要がある。この村に技術を残してもらう為に。だけど、嫌々やらせるのは俺の趣味じゃ無いから村の人たちと話し合いをして置いて欲しいんだ」
「はい、お陰様でアナさんやドミニクさんに弟子入りした者も、とても喜んでやっております。他の者達が羨ましがっているので、きっとすぐに飛びつくでしょう」
ロルさんがそう言ってくれるなら安心だな。この人は気を使うけど変に隠す事もしない。贅沢をいえばもっと気軽に頼み事や発案をして欲しいんだけど、まあ、それは贅沢過ぎだな。アナさんもドミニクさんも契約とは別に村の住人になると言ってくれて居るし。俺は、段々と軌道に乗り始めたと感じた。そんな思いを感じながら、やる事をまとめた。
「最後にまとめようか、今回の会議で決まった事は、住人へ屋敷の部屋の貸し出し、当たり前だが無料だ。次に、薬が出来るまで時間が掛かるだろうから万能薬を常備させる為素材を買ってくる。後は村人に衣服を買う事。他は……畑の拡張か。で、最後に話した職人達の勧誘だな。以上で会議は終了とする。各自好きにしていいぞ」
俺は、そろそろ抑えが聞かなくなっていた彼女達に、好きにしていいと告げた後、ロルさん達にも軽く頭を下げて終了の合図をした。
「うわぁ~、全部エルの仕事ね」
ケイが、少し苦い顔をしながらそう言った。いやいや……
「待て、いや、やるけど全部じゃ無いだろ。ちなみに村人の服は任せるぞ。女性用の服と言われても分からないからな。畑の拡張はミラ、一緒にやろう。んで部屋貸し出しはラティーシャさんだ。つまり俺がやるのは勧誘と買い出し、畑の拡張。の三つだ」
「それじゃほとんど全部だよ? でも、当たり前の様にそうに言えるエルはカッコいいね」
アイリは、嬉しそうに尻尾を揺らして、穏やかな笑顔を見せた。
「あっ、でも冒険の方はどうすんだ? 明日はお休みか?」
エティが行く気満々だった冒険の話が出ない事を気にして口を開いた。
「ああ、一応行くぞ。だが、もしかしたらもう行かないかも知れない。俺が行くと簡単すぎて冒険じゃ無いんだと。つまらないんだと」
そう、アラステアはガチで冒険がしたいのだ。ならばいっその事、別行動を取った方がいい。俺としてもたまに一緒に遊べればそれでいいのだ。あ、でもつまらないとは言って無かったかも。
「ひっでぇな、そんな事言ってくる奴が居んのか」
「エルが親切でやってるのにそれはひどいよ!」
二人が俺を慰める様に、そう言ってくれて居る中、居心地悪そうにしている者が居た。
「じ、事実を述べただけよ……」
と、犯人が自分の姉妹だった事に驚いて目を丸くしていた。
「よし、エル、もうケイにテレポートとか使ってやんなくていいぞ」
「そうだよね。エルの優しさをつまらないと思うんならいらないよね?」
あれ? 俺がつまらないを追加したばかりに、いつも間にかケイがアウェイ状態になってる。助けねばと思っていると。
「待ちなさい、話が可笑しくなってるわよ? 私はエルが凄すぎて冒険をするのは無理だと言ったのよ」
「「ああ、そうだな(ね)」」
と、ケイは自力で脱出した様だ。そんな会話をしている間に、ロルさん達、そして、話さなかったがしっかりと今後の方針を確認していたエミールとローズが退出していた。そして、しばらく皆で談話しているともう夜も更けて、寝る時間になって来ていた。
「お兄、今日はこれを飲んで、一緒に寝てみよ?」
俺は、ジェニの提案に目を見開き、決死の覚悟で『ああ、分かった。全力で飲む』と告げて、自室に戻って行った。




