準備を終え、討伐へ。
今日は町の屋敷で目が覚め、俺はここ最近の出来事を整理しようと思考を回していた。
えーと、買って来た奴らはあれで良いだろう。後は回復してやるだけだ。そう言えば、料理人と鍛冶屋はどうしようか。オファーをしたが、考えさせて欲しいと言われた所が一番手応えがあった店だったという話しか聞いてない。結局は隷属解放時の暴走にすべてを持ってかれてそこで話が止まってしまっている。
他にもグラディスから強制的に譲渡させた奴隷も一週間の期限が過ぎたら解放するべきだろう。ルディと姉さんの件も国に報告した方が良いのだろうか?いや、そこは本人たちがやる事か。ルディはテレポートもあるし何かあれば、俺の所にも来れる訳だしな。
てことは当面の俺のやる事は、買い集めた彼らの回復、村へ呼ぶ鍛冶屋と料理人へ再度確認に行く事、グラディスの……いや、俺の奴隷たちの解放と、その面倒か。まあ、面倒を見る関係はラティーシャさん達に任せちゃってるんだけど……って考えてみると明らかにオーバーワークだよな。屋敷の維持管理に約80名の奴隷たちの世話とか。ああ、奴隷たちに開放までは手伝うようにとお願いしておこう。
と、俺は、布団の上で仰向けになったまま、これからのやる事をまとめ終わり、早速やれる事をと思い、村の屋敷に転移して、奴隷たちに隷属権を使わずにお願いをした。彼らは、何の疑いも無く了承して、まとめ役をラティーシャさん姉弟に任せて、朝食を取った。
「さて、一緒に行く二人は良いとして、残るお前たちは今日はどうするんだ? どこかに送るか?」
「うーん、ただ置いてかれるのも悔しいから、私達は私達でギルドにいって遊んでくるよぅ」
「だな、まあ、順番だけどよ、ギルドなんてあんまし利用した事ねーしな」
「うん、私も見てみたい」
残る三人である、ミラ、エティ、アイリは俺達と同様に冒険をしてくると言って居る。まあ、国内の魔物の森で最高レベルは、240~250程度だし、こいつらならもう安全にこなせるだろう。
「分かった、でも危険な事はしないでくれよ」
「「「はーい」」」
そんな三人の返事を確認した後、俺と、ジェニと、ケイは、転移でアラステア達が居る町へと飛んだ。
「それで、どこで待ち合わせてるの?」
俺達は町の入り口を、誰何を受けながら通過した辺りでケイが口を開いた。
「ん? ああ、すぐそこに何でも屋があってな、そこがパーティーに入った奴等の家なんだ。そこに行けばアラステアが何処に泊まったのかも分かるだろ」
と、俺は、約束はしてないけど問題は無い事を告げた。
「でもお兄、何でそこまで王子に入れ込んでるの?」
「……気持ち悪い言い方すんなよな。まあ、ノリが良いというか遠慮がいらないから付き合いやすいんだよ。俺の知り合いには居なかったタイプだから新鮮なのかもな」
俺は、ジェニの問いを誤解されない様、説明をしたが、余り興味は無さそうに『ふーん』と言葉を返した。そんな話をしている間に、何でも屋に着いた。まあ、町の入り口近くにあるのだから最初から見える程度の場所に会ったのだが。そして俺達は、店の戸を開け、中に入った。
「アイナ、居るかぁ~?」
と、誰も居ない店内を見渡し、店の奥に呼びかけた。
「はーい、って、あれ?」
アイナは俺達は見た後、首を傾げた。まあ、連れてくる事を伝えて無いのだから当然だな。と、俺は二人を紹介した。
「この二人は俺の彼女で、ジェニとケイだ。同じパーティーメンバーとして仲良くやって欲しい」
「え? 二人とも?あ、うん、よろしくお願いします。」
「ええ、こちらこそ、私がケイよ」「ジェニよ、よろしく」
ケイがフレンドリーに握手を求めて名を告げると、ジェニは少し視線を泳がせるように名を告げた。あれ? お前そんなに人見知りしたっけ? などと思っていると、さらに後ろから声が聞こえてくる。
「おーっと、私を差し置いて話進めてんじゃねーよ、私はエレクトラ、よろしくな」
「え? お前クトラじゃ無かったの?」
「愛称だよ、分かれよ! この美しい私にぴったりだろ?」
「あ、そう。で、アラステアはどこに泊まったんだ?」
「あん? って、おい、何で出て来ねーんだよ。お前の連れだろ、お前の!」
と、クトラ改めエレクトラは店の奥に向かって大声で呼びかけた。
「え~? もしかして、昨日はあんなに常識人ぶってたのに、家に押しかけて泊まっちゃったの?」
俺は、アラステアに聞こえるであろう音量で、わざとらしく疑問を投げかけた。すると、気まずそうに視線をそらしながら、アラステアが出て来た。
「べ、別に添い寝をさせた訳では無いぞ。空いている部屋があると言うから借りたのだ。それに俺は、金を持っていないからな」
アラステアは、多少むきになりながら、そう言った。
「ああ、悪いな、それは知らなかった。ほれっこの前の共闘の分け前だ。って言っても折半じゃ無いのは勘弁しろよ」
と、俺は金貨10枚をアラステアに差し出しながらそう告げた。
「いや、いい。あの時はお前の金策に手を貸したのだ。これからの糧は依頼をこなして得る。それが冒険者だろ」
「まあ、あーちゃんがそう言うならいいや。ああ、それと俺の彼女だ。最高に可愛いだろ?」
「だからそう呼ぶなと……まあ、確かに綺麗な顔立ちをしているな。俺はアラステアだ、よろしく頼む」
と、全員の自己紹介が終わった所で、俺は装備を取り出した。
「えっとこれは姉さんが出してくれた金で用意した装備だ。遠慮せずに使ってくれ」
俺はそう言って首を傾げるアイナとエレクトラに装備を渡していった。まあ、姉さんと面識ないもんね。でも、この言葉は必要なんだよ。そっとして置いておくれ。
「マジかよ、すっげぇな。全部新品じゃねーか。これ買ったら金貨何枚すんだろうな」
「え? そんなに高いの使えないよ!」
「気にする事は無い、こいつにとってそんな装備を作るのは朝飯前だからな」
あ、こいつ、言いやがった。と、ジェニとケイの方に視線を向けると。あれ? 怒ってない? 昨日もそうだった気がするけど、まあ怒る事でもないよな。うん考えすぎか。と、思っているとジェニが口を開いた。
「ねえ、お兄、そんな事より早く行こうよ。良い依頼はすぐ無くなっちゃうんでしょ?」
「そうだった。ちんたらやってる場合じゃねーな。アイナ、チビ達に店番頼んでこいよ。早く行くぞ」
「ええ? ダメだよ、今日は閉める事にしたからちょっと伝えてくる」
「おい、エルバート、お前は何で彼女に兄と呼ばれておるのだ?」
「そんな事はどうでもいいだろ。お前も準備しろよ」
「む、そうだな、ちょっと待っていろ。すぐ戻る」
と、ジェニの言葉にエレクトラが食いついた途端、バタバタと三人は動き出したので、俺は、ジェニとケイを連れて表で待つ事にした。
「ふーん、まあ、想像した通りかな。予想通りだけどエルが浮気してなくて良かった」
ケイが表に出るとそんな不穏な事を言い出した。
「まあ、お前たちが安心してくれたなら連れて来て良かったよ」
「ふふ、それが目的のすべてだった癖に。お兄、可愛っ」
「む、どうしてジェニは俺の考えがそこまで深く考えを読めるの?」
「そうね、その技は是非とも私にも教えて欲しい所だわ」
「ふっふっふ、ずっと一緒にいるからね。何となく分かるの」
お、恐ろしい。なるほど、だから怒って無かったのか。確かにすべてを見せれば疑われないと思っていたけど。それすらも読まれていたとは……と、三人で会話していると、俺達の間を駆け抜けながらエレクトラが言い放った。
「ほら、先に行っちまうぞ。もたもたすんなよな!」
そう言った瞬間、ジェニが動きエレクトラのダッシュに追走した。
「待たせてたくせに生意気ね、ミラ……じゃ無くてエレクトラだっけ?」
「おお、お前やるじゃないか。よし、ギルドまで競争だ」
「無理、私ギルドの場所知らないもの。けど、私を振りほどくのは無理よ?」
などと、二人は競走しながら一瞬でいなくなってしまった。
「もう、クトラったら」
「では、行くか。エルバートよ」
「ああ、そうだな。テレポート」
俺達は転移でギルドに飛び、ダッシュで走ってくる二人にズルいと罵られた。
「さーて、昨日の依頼は残ってるかなぁ」
俺はそう言いながら、アラステアが昨日、依頼書を戻した場所に目をやると、しっかりと残っていた。それを引きはがし、カウンターに持って行き、カウンターのお姉さんに問いかけた。
「この依頼受けようと思うんですが、大丈夫ですか?」
「え? あ、ええと、この依頼はギルドランクが最低でもC以上は無いとダメですよ? 推奨レベルは170レベルです。70では無く、170レベルです」
と、受付のお姉さんは念入りに俺達が考え違いをしていないかを確認した。俺は受付のお姉さんにギルドカードを提示して、再度問いかけた。
「えっと、俺がBでそっちの彼がC、他は実力はあるけど登録したばっかでランクは初期ランクです。その場合は受けられませんかね?」
「ちょっと待てよ、私は初期じゃねーから、ちゃんとDランクまでは上げてあっからな」
と、エレクトラが横入りしたものの、受付のお姉さんはしっかりと答えてくれた。そのお姉さんの説明を全員で聞きながら、各自問いかけたりしていた。
「あ、ほ、本物ですね。討伐数も上位の魔物ばかり、見た事無い位すごいわ。これならば問題はありません、この依頼は多くの者の願いでもあります。是非お願いします」
あ、そこはエイブラムさんが勝手に前世の事を入れちゃったのです、忘れて下さい。
「あ、だから報酬が高いんですね。複数の出資から来てる依頼とか?」と、ケイが訪ねる。そう、この依頼はすべてこなせば金貨50枚と言う結構な値段の依頼なのだ。村に薬師を呼んだ時に見習いの彼が言って居たが、名の売れている薬屋の2年分の稼ぎと比べても大分多いそうだ。ポーションは結構利益率は良いはずなのに……それほど、金貨50枚を普通に稼ぐのは大変なのだろう。
「はい、領主様の方でも討伐を検討してくれてるみたいなのですが、中々高レベルの方が見つからないみたいでして。領主様と商会の共同出資により、冒険者ギルドに依頼されております。達成証明に20以上の討伐証明部位か、変異種だと確認できる魔物の部位を持ち帰る事をお忘れなきようにお願いします」
そう、この依頼は達成条件が二つある。一つ達成につき金貨25枚となっている。
「うむ、了解した。では、その周辺に行くための道筋を訪ねたい。問題無いか?」
アラステアは腕を組みながら頷き、問いかける。
「えっと、それだけのランクですと、オルセン全域の地図は持っておいでですよね? それと依頼書に記載されている地図を示し合わせて貰えば分かると思います。それと、これはもうすでに一組のパーティーが参加されている依頼となりますので、ご了承下さい」
「なるほど、例えば、群れが40以上で20体以上の討伐がかぶったらどうなるんですか?」
俺は、一応、先行パーティーとの争奪戦になるのかを確認した。
「その際は責任を持って領主様がお支払いして頂けるそうなので、気にせず奮闘してください」
「うむ、良い領主だな。小気味よい」
などと偉そうな物言いを隠そうとしないアラステアをスルーして話を進めた。
「よし、じゃあ地図は俺が持ってるし、場所も把握した。ちょっと調べものしたら、ぼちぼち出発する事にしようか」
そうして、依頼の情報を得た俺達は、討伐する魔物の事について軽く調べた。魔物の名前は、スモールレッサードラゴン、平均レベルは160前後攻撃方法は、物理のみで前足、牙、尻尾、オーソドックスな獣の攻撃だ。だが、名前にドラゴンが付くのだから、きっと力強い攻撃をしてくるのだろう。
初心者っぽいし、200レベル付近のアイナとエレクトラが少し心配だけど、装備もしていて40レベル下の相手なら、パワー重視の魔物でも一撃で即死は無いだろう。と、俺達は安心して町を出発した。そんな中しきりにアイナだけは、私も本当に戦うんですか? と少し涙目になっていたが、エレクトラに当たり前だ! と一蹴されていた。




