何故かこいつらは、俺の話を聞かない。
あれから俺達は、レベリングマシーンを使い、三人のレベルを上げた。驚くクトラ、通り越して呆れるアイナ、そんな二人も印象的だったが、アラステアが悔しそうに四つん這いで地面を叩いていた事が一番だろうか?
結局、装備まで整えるとなったら、夜まで掛かってしまう、だから今日は早めに切り上げて、明日までにアイナとクトラの装備を作ってくると約束して、俺は二人にアラステアを任せて屋敷に戻って来ていた。当然今日の朝、アイリをテレポートさせた所からの報告を求められた。
「と、言う事で、王子の……いや、友達の夢を手伝うために行動をして、結果、今に至る」
俺は正直焦っていた、俺と王子は最初からいて当然、なら後の二人を俺達が選んだという事実だ。そう、問題点は二人とも女の子という点だ。俺は必死に弁解をしていた。やましい事が無くても疑われるのは困るのだ。
「ふーん、なんか、アイリの説明はすぐ終わったのに、そっちの方は随分力説してたわね」
ケイが訝しむような視線を向け、言外に何か隠してない? と突いて来ている。
「まあ、アイリの事はすぐ済んだからだろ。エル、ありがとな。あいつホントめんどくせーんだわ。心配ばかりかけやがって」
エティが俺のフォローを入れてくれた。エティはさばさばしててこういう時ほんと助かるよ。と思っていると、ジェニが口を開いた。
「お兄、流石に言葉だけで信じろと言うのは無理だって分かってるわよね?」
何故か、一つも怒っているそぶりがない。いや、心なしか楽しそう? まあ、怒っていないのは幸いだ。と、俺は気楽に言葉を返した。
「……ダメなのかよ。はぁ、何だよいってみれ、ほれほれ」
「流石お兄、じゃあ、私も一緒につれてって、お兄ちゃん」
ジェニが上目遣いでウルウルさせながら、手を握って来た。……流石お兄、じゃあ、と言うまでは普通だったのに、そこから不自然に表情変えられて萌えられるかっ! などと思ってると。
「「「私も行きたい」」」
と、ミラ、ケイ、エティが声を揃えて意思表示した。
「あ~流石にアラステアの冒険の手伝いだからな? 全員で行ったら雰囲気壊れるからな? 一日交代、もしくは今回の同行者として、二人を話し合いで決めてくれ」
俺は、こうなっては妥協案を出さない訳には行かないと思い、二人までの動向を許した。俺だって、こいつらと一緒に居たいんだ。だけど、それじゃ新鮮な冒険心を楽しむことは出来ないだろう。王子が!
「あ、ちょっと待った、アイリの所に行こう、テレポート」
と、俺は説明を終えた以上、アイリが居ない場所で話を進めたくないと思い、借りている屋敷の方へ転移した。
「んじゃ、決まったら教えてくれ。俺はちょっとあっちの屋敷に用があるから」
「ん? 何するの?」
ミラが、指をくわえながら首を傾げて聞いて来た。ほら、そんなにおいしそうにくわえるんじゃありません!
「ああ、フルヒーリング掛けてやらないとだからな、もう魔力は使わないだろうし。まあ、1時間くらいで戻ってくるから、テレポート」
そして、俺は、さりげなく、彼女達の装備を作った。あの場でやると、何で俺がそいつらの装備を作るのか?と言う議題が上がりそうだったからだ。ちなみに材料は前回、姉さんに作る分と多少余分に買ってあった、あの鉄鉱石を流用した。そしてその作業はすぐに終わり、俺は再び彼らの元へと足を運んだ。
「やっと来たわね、約束したんだから早く治してよ。殺しにいけないでしょ」
開口一番、とっても眼力の強い少女がそう言った。年齢的には、俺と同じ位だろうか? 14歳前後と言った所だろう。この子は治療を前回MPが無くて出来なかった側にいた。片腕、片足が無く、片手を使って這うようにこちらを見上げた。
「ああ、じゃあ、今回はお前から治してやるよ。だが、その前にまた話し合いだ。お互いに利のある話になると思う。特にお前にとってはな」
「何? とうとう本性をあらわしたの?」
少女は嘲笑する様な、乾いた笑みを浮かべ、そう問いかけて来た。
「お前さ、いい加減失礼だぞ。俺はお前の復讐の相手じゃない。お前に対して何も悪意のある事をしていないだろう?敵意をむき出しにするな。目的を達成させたいんだろう?」
その言葉に驚いた表情を浮かべて、口を開いた。
「もしかして、本当に?」
「何がだ?」
「本当に直してから自由にするつもりなの?」
彼女は貴方と初めて真面に話をしています、と言った風に言い直した。
「だから、目的は前回話した通りだ。それはこれからの行動で計るという話になっただろうが。改めて聞く事か?」
「だ、だって、あり得ないもの。そんなの今まで一度だって無かった」
だから、その話もしただろうに……
「だろうな。だが、前回そう言う話になったんだ。疑ったままでも良いとも言ってるんだから敵意は隠せよ。そんなんじゃ間違っても復讐は成功しないぞ?」
「ご、ごめんなさい。ちゃんと言う事聞きます。だからお願いします」
「はぁ、極端だなぁ、やりたくない事はしなくてもいいさ。お前たちは奴隷から村人になったんだと言っただろ。それより話を始めるぞ、皆、聞いてくれ」
俺はやっと話を始められると、ため息を吐いて、彼らに宣言した。
「俺は、お前たちの復讐を止ようとはしない」
俺の一言に全員が目を見開き、顔を上げていなかった者も全員が顔を上げた。
「と言っても、別に特別応援してはやらないけどな。そこはお前達自身がやる事だろう?」
と、俺が問うと、半数近くの者が歯ぎしりをするかのように歯を食いしばり、力強い視線を向けた。
「ああ、気持ちはわかったよ。だが、奴隷を持てるような身分の奴は大抵強い者をそばに置いているかそいつ自身が強い。そんな復讐の相手を簡単に殺せると思って居るほど馬鹿じゃないよな?」
「そんな事はどうでもいい、私はあいつを殺す」
……こいつ、さっきいう事聞きますなんて言ってたくせに、すぐこれかよ。先が思いやられるな。
「今のお前じゃ殺されるだけだと言って居る。だからお前たちは俺と約束をした、二年間で、力を付けろ。周辺のレベルの低い森で食料調達ついでにレベルを上げろ。村の為に働く行為なら装備も貸してやるし、戦い方も教えてやる。だから、勝ってこい。そして行く場所が無い奴は戻ってこい」
「はぁ? なんで……どうしてそう言う話になるの?意味わかんない」
「俺も気が狂って復讐に走った事があるからな。あの感情は制御できると思えなかった。今でも無理だろう。だから、止めない。無駄だと分かってるから。なら、隷属解除しちゃった俺が得する方法は一つだ。バレない様にぶっ殺してうちの村に住んでくれ。まあ、失敗しても文句を言うつもりは無いけどな」
「あんた、狂ってるわ」
「お前に言われたくはないさ」
うん、異常な事を言ってるのは分かってる。だが、もう一度心の中で言おう。お前に言われたくはない。
「あはは、それもそうね。うん、分かった。あんたが約束を違えない限り、私はあんたに従うわ。隷属魔法なんて無くても私はそれ以外の生き方知らないし」
「そうか、ありがとな。じゃあ、命令するぞ。俺、エルバートがそこの名も知らぬ少女に命ずる。自由に生きてみろ。以上だ」
「そんなカッコつけられても。分かんないっていってるでしょ……」
何で残念な奴を見る目で見るの……はぁ、俺、こいつ、嫌い。
「あのう、僕は、復讐相手なんていない僕はどうしたら……」
む、この少年と話すのは初めてだな。だが、お・ま・え・も・か。
「だから前回言っただろ。取り合えず俺の所の村人になれよ。金貯めて他の町に行っても良いし、好きに生きろ。あ、二年は居てくれよ。計画の為に人を一杯集めたいんだ」
「その計画と言うのは聞いても良いでしょうか?」
「ああ、もちろんだ。武芸者を呼ぶ大会を開催しようかと思ってな。それを大々的にやりたいんだよ。オルセン全体を巻き込むような大きな大会をさ」
そう、俺は前世で国を出てジェルエルダーに会うまでずっと貧乏生活をしていて、思ってた事があるのだ、どうして、この異世界にはそういう大会が無いんだと。まあ、レベル差がある以上は難しい事はわかってるんだけど、それでも最初に低レベルを選考試験とか作って落とせば、成立は出来ると思うんだ。
「それと私達がどのような関係が」
「あ~そっか、お前らまだちゃんと村見て無かったっけ、この村さ、まだ家も数軒しか建ってないんだよ。だからもっと大きくしなきゃいけないんだ。だけど大きくするには人がいないとだろ?」
あれ?可哀そうな目で見る奴が増えた。ちょっと待て、俺も頑張ってるんだぞ。発足してからそんなに立ってないんだ。ちゃんと段階ふむよ? 考えてるよ?
「町や村は、規模が大きくなってから人が増えるのでは無いのでしょうか?」
「そりゃ年月を掛けて地道にやる場合はそうとも言えるけど、俺はすぐ大きくしたいんだ。まあ、取り合えず俺の提案は終わったけど、不満がある者はいるかな?今のうちに言って置いてくれ、後から後から出て来ても困るからな」
俺が、そう告げると、ぼそぼそと声が聞こえてくる。
「嘘だと思うけど信じてみようと思う」「うん、嘘だと思うけど」「嘘であっても他に道はあるまい」「嘘でもいい、体を治して貰えるなら」「それも嘘かも知れないよ?」
くっそっ、こいつらぁ……最後の奴何なんだよ! 意味わかんねぇよ畜生……
「ああそう。嘘かも知れないよね。うん、皆してそう言うなら嘘になるかもねぇ……もういいよ。そこのお前、約束だからな。優先して直してやるよ。フルヒーリング」
「え? あ、ああ……嘘っ。嘘よね?」
少女は嗚咽を漏らすことなく涙を流し、無くなっていた方の手を残っていた手で握りしめ、座り込み、片腕を抱きしめた。
「ああ! お前らがそう思うならそうなんだろうなっ! フルヒーリングフルヒーリングフルヒーリング」
俺は嘘嘘連発されたショックで、怒鳴る様に言葉を返し、ギリギリまでフルヒーリングを振りまき、耳を抑え、逃げ帰る様に隣町の屋敷にテレポートした。こっちの屋敷では、居間として使っている部屋でいつも皆で話をしていたので、いつも通りそこにテレポートしたのだが、ミラしか見当たらなかった。
「あれ? 他の皆は?」
「あ! おかえり、エルっ。うんとねぇ、アイリちゃんを正妻審問会議に掛けるとか言って、アイリちゃんが寝ている部屋に押しかけて行ったっきりだよ?」
「そっか、ミラは行かないのか?」
「うん、だって私はエルを信じてるもんっ」
俺は、心からの信じてるという言葉に嬉しさがこみあげ、ミラを優しく抱きしめた。
「ありがとう。俺もミラを信じてる。ずっとそばに居てくれよ」
「うんっ! じゃあ冒険も一緒だね?」「あ、お兄、帰って来てたんだ?」
「うん? えーとだな。そこは話し合いしたんだよな?」
「お兄、話し合いはまだよ。もうちょっと姉妹の話し合いが長引きそうだし。それより、どうしてミラを抱きしめてるの? 私は?」
「エルはねぇ、私の信じてるっが、嬉しかったんだよ?」
「オニイワタシモシンジテル」
「……台無しだよ。ミラ、こいつほっといて皆の所行こうぜ」
「え? う? うん? 分かったよぅ。ううん、分かって無いよぅ」
ミラはそんな事を言いながらおろおろしつつ後を付いて来た。
「うえぇぇぇん。おいてかないでよぉ、おにいちゃぁぁぁぁん」
と、ジェニはジェニで楽しそうに、演技をしながらついて来ていた。
そうしてようやく、明日一緒にいく二人が決定した。明日も色々ハードになりそうだな、と思いながら、俺達はそろそろ寝ようかと言う事になった。まあ。部屋割りの件で割ともめたんだが。ジェニとミラを村にある屋敷と同じように別の部屋に分けたらおさまりが付いた。まあ、今の状態でも、正直むなしくなるから、一人の方が良い。そんな事を考えて居るうちに俺は眠りに落ちていた。




