王子との冒険
「いやぁ。エルバートお前鬼だな」
「あはは、良く言われます。でもあのままだと絶対姉さんが押し切られて泣く羽目になっただろうし」
そう、性格上、姉さんは押されると弱いのだ。だから押してくる相手は遠ざけていたのだろう。
「あ~王宮は下世話な話が大好きで、いるだけでも色々と話が回ってくるんだが。確かに姉上はそういう経験は無いと言う話は聞いた事があるな」
おお、ルディ喜べ、姉さん経験無いってよ。後で教えてやろう。
「そうなのですか、まあルディは良い奴ですし、これでめでたしめでたしですね」
「素直に喜べない気もするが。そう言う事にするか。まったくとんでもない所に出くわしたものだ」
「まったくです」
王子は俺を見て絶句していたが、俺は気にしなかった。
「じゃあ、狩りに行きましょうか」
と、俺は話を切り替えて予定していた狩りに行こうとした。
「てっきり話の流れ上今日は止めとくと言う事になるのかと思ったが、行くんだな?」
ふっ、王子様、俺達の狩りは遊びでやってるんじゃ無いんですよ。それとなんかかみ合って無いな。
「ええ、行きましょう。それと王子、あの三人は幸せを掴んだのですよ?そこんとこ御間違いなく」
そう、この世界の常識と照らし合わせてもルディ位の大物が二人娶るくらいは可笑しくないのだ。
「うん? まあ、差し引けば幸せなんだろうが」
「違います。姉様も姉さんもルディも心根が良く情の深い人間です。わだかまりが消えればずっと三人で居たいと思えるはずです。まあ、それまでルディには泣いて貰いますけど。そこは男の甲斐性って事で」
と、俺は確信を持っている。まあ、下手に介入して画策した俺は恨まれるだろうけど。
「ふむ、変わった考え方をするのだな。だが、そうかもしれんな」
「でしょ? そんな終わった事はさておき、装備作りましょうか」
俺は、さりげなく転移する時に一緒に飛ばした鉄鉱石を指差して告げた。
「む? まさか、鍛冶屋に今から依頼しに行くのか?それでは簡単な物でも夜になってしまうのでは無いか?」
「ふっふっふ、さあさあ、お立合い、ここにありますのは不細工な鉄鉱石。ぬぬぬぬぬ」
俺は、かねてより練習していた、武器防具制作を悪ふざけをしながら披露した。そして、ほどなく完成した。両手剣と胸当て、ヘルム、肩当、ブーツ、を王子の前に差し出した。
「おお、エルバートは何でも出来るなぁ」
「いやぁ、でもこれ通常より重いらしいですよ。頑張って下さいね王子」
「どれ、む、む? 言う程重くは無いぞ?」
「それは上場、では行きましょう。冒険に!」
「ああ、行こう、冒険に!」
俺達は親指を立てて、視線を合わせた、その瞬間俺は王子と共に毎度おなじみジェイルエルダーの森に飛んでいた。
「ちなみに王子、ここの魔物は出会って10秒以内に倒さないと範囲魔法で瀕死レベルの重傷を負います」
俺は、この森の注意事項を説明した。
「お、おい、難易度高く無いか?」
「大丈夫でしょう。ここの魔物は140レベルです、本来は火抵抗装備必須ですが、その分レベルでカバーしていますしね。ただ、見つけたら出来るだけ早く頭を勝ち割るか胴体を真っ二つにして下さい」
王子は俺を訝しむような目で見ている。何か不満なのだろうか?
「……エルバートはやっぱり鬼だな。初心者に遠慮がない」
うーん、まあそうだな、王子の場合は完全な初心者、ローズの時とは違う。でも50レベル格下の相手だし、問題は無いはずなんだが。よし、ここは口当たりの良い言葉で気持ちよく戦って貰おう。
「最初から甘えが無ければ、対等に付き合い続けられますからね」
「むう、確かに、まあ、ヤバそうなときはフォロー頼むぞ」
「それはもちろんです。共闘とはそう言うものですから」
「共闘か、良い響きだな」
と、打ち合わせも終わり、俺達は森の中を見回しながら歩いた。だが……
「中々いないものだな。早く戦ってみたいのだが」
「了解、テレポート」
俺は、魔力感知で掴んでいた魔物の場所に王子と共に転移した。
「さあ、王子あちらです。参りましょう」
俺は魔物二匹を指差した。まだ魔物はこちらに気が付いてない。
「お、おお!分かった。先手必勝で良いのだな?」
王子もそれを確認して、問いかけて来た。
「ええ、もちろんです。問題がありそうなら指摘させて貰いますので」
「分かった。先に行く」
すたたたと腰を落とし、走り出す王子、俺はそれに続く様について行き、王子が一体を叩き切るのを確認してもう一体の方を倒した。
「よし、倒せた……のだよな?」
「ええ、こちらも問題無く」
俺は懐からギルドマークが入った袋を取り出して、ジェイルエルダーの骨を詰めた。
「何をやっているのだ?」
「分かりませんか? 素材回収です。聞いた事ありませんか?」
「いや、まああるが、そんな骨が使えるのか?」
「ええ、結構な稼ぎになるんですよ。まあ同レベル帯じゃ危険度が大きいから誰もこないんですけどね」
「ほう、稼ぎになるのに人がいないのか。不思議だな」
そうなんだよな、俺は最初の頃ずっと不思議だったんだ。こんなに儲かる狩場が何で放置なのかと。
「仕方ないと思いますよ。魔法攻撃って割とレベル差が無いとやばいのに、範囲攻撃だから発動後は普通は避けられませんし。それに適正外な程レベルを上げた様な輩は普通に稼げるのでもっと上に行きたいと適正に近い狩場を選びますからね」
まあ正確に言うなら、適正じゃ死んじゃう。だけど高レベルだとわずかにここの方が儲かる程度だが、その事実は広まっていない。と言った所か。もちろん俺みたいにガチで狩りするならこっちのが数十倍儲かる。
「なるほど、では、どんどん行くとするか。稼ぎたいのであろう?」
「流石王子様、良くお分かりで。村の為に金貨200枚以上ポーンと出してしまったので無一文なのですよ」
そう、王子を狩りに誘ったのもそう言う事情もあったのだ。友好を深めつつ金も稼ぐ……あ~でも酷い所ばかり見せて友好なんて深められているんだろうか?
「ふっ、無一文になるほどだすとは、いや、エルバートお前はホントに面白いな」
うーん、もうちょっと真面目な所を見せる様にしようかな。いや、王子に対してはこれでいい。深くつながり過ぎても貴族の立場としては良くないだろう。恨まれてしまいそうだ。もう遅い気もするけど。
「お誉めに預かり光栄です。テレポート。さあ王子目の前です」
「なにぃぃ、たぁぁぁああ、おい! エルバート! ってお前それは……」
金稼ぎの御許しを貰った俺は、6匹まとまっている場所に転移して、王子に一体担当して貰いその間に五体仕留めたのだ。その死体も転移魔法で一瞬で回収して次の転移。と繰り返し続けた。
「はぁ、はぁ、ちょっと休憩良いか?」
「あ、休むなら本格的に休憩しましょ。テレポート」
俺は自分の屋敷の食卓として使ってる部屋に転移して、ラティーシャさんにお茶を入れて貰った。
「ははは、これはやばいな、俺でも分かるぞ。こんな狩り方お前だけだろ?」
王子は呆れた様に、言った。だが少し楽しそうでもある。
「あ~ばれちゃいましたか。ええ、金に目がくらんだものの末路だとでも思って置いてください。あ、ラティーシャさんこの屋敷広いから掃除は適当に抜いてやっていいですからね」
「・・・お前は本当に掴み所がないな。まあ、姉上との関係を見ると、わざとそうしてるんだろうが」
あらら、狙いが分かってるなら、逆に甘えさえて貰おうかな。
「・・・流石次期国王、鋭いですね、アラステア様」
「ああ、いいよもう、普通に話せ。面倒だしな」
お、早くもお許しが出た。では早速。
「了解、じゃあ、あーちゃんこれからどうする?」
「おい……あーちゃんは止めろ。今は冒険者だ、アラステアでいい」
うーん、本気で友達になりたくなって来たな。めっちゃ付き合いやすい。
「分かった。んで、これからどういう方向性でレベル上げる?」
よし、真面目に行こう、真面目に。
「お勧めはあるのか?」
「そうだなぁ。やっぱり男としてはただレベル上げるだけじゃ嫌だろ?」
「ああ、もちろん戦える様にならなくては弱いままとあまり変わらないからな。ならば最初からやらない方が良いと思う」
「うん、俺もそう思う。だけど王子の立場ってあまり時間無いだろ?だからあのトラップでがっつり上げて上げる度にこまめに色んな狩場で戦い方を身に着けるのがいいんじゃないか?冒険も出来るし」
「あ~冒険な、あのテレポートだけの冒険な……」
あ~、そうだよな。王子にとっては初めての狩りだったのだ。ちょっと悪い事をしたな。
「いや、あれは俺の金策が混ざってたからさ。悪かったよ。儲かる狩場なんてあそこくらいだし、次はちゃんとやるよ」
「まあ、それはもう良いが、俺は前から興味があった場所があるんだ」
「ん? どこに行きたいんだ?」
「冒険者ギルド」
「いや、行けよ! 行こうぜ。」
俺は何を言ってるんだこいつ、と思いつつも昔の自分を思い出し共感した。良く思い出してみたら俺も王宮から出れなくて画策した時期があったっけな。
「まあ、そうなんだが。言った所で、だろ? 立場的に」
「あ~じゃあ王都じゃ無い場所で俺の付き添いって事で依頼受けに行こうぜ。俺も儲かるし」
そう、今の俺は自由だ。まだギリギリ平民だしな。なのに自分から縛られて行って居る気がするが。
「ほう、それなら大丈夫か。俺は前から依頼書を見て受けてこなすと言う事をやってみたかったんだ。まあ、冒険者から見たら馬鹿らしい話だと思うけどな」
「んな事は俺は思わないぞ、俺も前世が王子でそれを夢見て国を飛び出したんだからな」
「英雄か……お前、本当に英雄か?」
王子は、感慨深く呟いた後、俺に全力で疑問を投げかけた。はぁ、分かってるよ。失礼だな。
「はぁ、違うに決まってるだろ。周りが勝手に言い出しただけだ。前世で俺が死んだ後にな」
「なるほど、そう言うものか。それで、次はいつだ?」
と、王子は今日はもう終わりにしようと示して来た。いつだ?って聞かれてもなぁこっちの方が本当にいつでも良いんだが。
「ああ、そうかもういい時間か。いつが良いんだ?」
「俺は、レベル上げると言う事ですべての用事をキャンセルできるからな、早い方が良い」
ああ、なるほど、お互いいつでもいいんな。じゃあ決定だ。
「んじゃまた明日な」
「良いのか?」
「友達ってのはそう言うもんだろ?」
俺は、ちょっとそわそわしながらも割と真面目に言って見た。
「ふはは、お前に言われると警戒心も何も無いな。ああ、よろしく頼む」
「失礼だな、まあよろしく。んじゃ転移で送るわ」
「ああ、また明日な」
「おう、テレポート」
そうして俺とアラステアは友達になった。やばいな、また守るもんが増えた。いや、そうか。そうだよあっちは王子なんだし守って貰おう。わーいやったね。




