私の主様はすごいのです。
キャロル視点です。
「はぁ、どうしよう」
キャロルは、魔法学校の教室で、自分の席に座り、困り果てながら呟いていた。
そう、事の発端は、クラスメイトに小馬鹿にされた時だった。
「少し特殊な事が出来るからって調子に乗るなよ、四属性を真面に使えない雑魚が。まあ、ただの平民に仕えるお前にはおあつらえむきってやつだがな!」
いつもなら、聞き流す所、だって相手は貴族の息子なのだから。だが、今回は思わず口を付いてしまった。
「エルバート様はただの平民なんかじゃない。剣も魔法もとびっきりに凄くてカッコいいんだからっ」
「ふん、どうせ嘘に決まってる。それに、平民の癖に従者を持つとか生意気な奴だな。お前らもそう思うだろ?」
彼の言葉に、彼の取り巻きである人物だけが『そうだそうだ~。』と、同意を高らかに示した。そして、その言葉を聞いたその時の私は言ってしまった。今はあの時の私を押さえつけたい。
「え……エルバート様に向かって生意気……って? 中級の魔法も火の単体しか満足に扱えない分際で?」
「おい、お前、俺を侮辱したな! 後悔するなよ」
そして、私は、クラスの中で一番権力がある生徒に敵対宣言をしてしまったのだ。偉大なる主様はそんな事をいちいち気にする方では無いのに。まあ、自業自得だから我慢しよう。と、その時は思っていたのだが。それから彼の陰湿な虐めが始まった。
だが、それにも耐えた。私は目的の為、勉強だけに意識を向けた。そうして、半月が過ぎて、私は、また、自分の短慮な言動に絶望した。
「おい、お前の主が居る村が分かったぞ。家が三軒しかない村の村長なんだってな! ぎゃはは」
いつも通り教室で授業で見せて貰った魔法をイメージする為、私は、魔法をイメージしやすい言葉を模索していた。そんないつもの一時、彼は、私の許容出来ないラインを突いて来た。だが、それもなんとか耐えようとした。
「だから何? 私達と同年代で、国から開拓を任される事の凄さが分からないのね」
「は? 同年代!? ぶはっ、絶対そいつ弱いわ。俺の魔法で一発だわ」
ああ、もうダメ。こいつは敵。と、そう思った瞬間口をついていた。
「そう、口で言っても分からないのね。力で黙らせてあげましょうか?」
「ほぉ、じゃあ決闘だな。よし、俺は、金貨10枚を賭けよう。お前は何を賭けるんだ?と言っても見合う物はお前のその身くらいしか無いがな」
彼は気持ち悪いにやけ顔を浮かべながら決闘の宣告をして来た。いや、この場合私がしたのだろうか?
「何故決闘をするのにお金を賭けるの? 意味が分からない。賭けるなら受けられないわ」
私はそう受け答えをしながらも内心物凄く焦っていた。これは、主様の足を引っ張る行為だからだ。そんな事は絶対にあってはいけない。賭ける事が問題な訳では無い。決闘をすればレベル差で叩きのめせるだろう。だが、勝ってしまうと言う事は、息子では無く親の方の貴族にも看過できない恨みを買う行為だからだ。
「お前が何と言おうと決定した。貴族に対して力で黙らせると言ったんだ。今更訂正はさせない」
「しないと言ったらしないわ。貴方、言葉が分からないの?」
「お前こそ常識と言う物を知らない様だな。まあなんにせよ明日の正午だ。逃げてもお前の負けだ。捕まえて俺の奴隷にしてやるからな、光栄に思え」
と、そんな事があった為、私は、教室の机に座り、一人困り果てながら『どうしよう』と呟いていたのだ。いつも話しかけてくれる友達は、流石に貴族の怒りは買えないのだろう。申し訳なさそうに離れてたたずんでいる。まあそれは仕方が無い。正直自業自得としか見えないだろうから。
そんな事よりも今はこの事態をどう切り抜けるかだ。自分の頭で打開策が見つからない以上、頼るべき人物は決まっている。絶対に怒られるだろうな。と心苦しい思いだが、私は迷わずに彼女の元へと飛んだ。唯一真面に習得で来た転移魔法を使ってだ。
「チェルシーお願い……助けて」
「え? 何? どうしたの? お姉ちゃん」
そう、彼女とは私の妹、同じくエルバート様に仕える自慢の妹だ。私は彼女に事のあらましを伝えた。
「……お姉ちゃん、何やってるの!」
いつも笑顔の妹は、私に呆れた視線を向けて来た。うん、自分でも呆れてる。
「ごめん」
「ごめんじゃ済まないでしょ。どうするのよ」
「どうしていいか分からないから相談に来たの」
「ここまで話が進んだら、そんなのもう一つしか無いじゃない……エルバート様に言わなきゃ」
「え? それは……それは……」
「気持ちは分かるけど、ダメだよ。もしこのまま受けたらただの迷惑程度じゃ済まなくなる。分かるでしょ?」
「ううぅ」
やっぱり、妹は容赦なかった。でも、そうだよね。それが一番……でも、迷惑かけたくないなぁ……嫌われたらどうしよう。そう考えて居ると。
「はぁ、もう、しょうがないなぁ口下手なお姉ちゃんの為にセリフを考えて上げる」
と、妹は言い出した。
「セリフって?」
私は決闘を回避出来そうなセリフがあるのかな?と期待した。だが、現実は甘く無かった。
「エルバート様にどう伝えたら心象が良いかよ」
……チェルシーがそんな事を言うなんて、主様に嘘をつけと言うの?
「嘘はつけない」
私は、真剣にそれは出来ないと告げた。
「そんな事私も許さない」
???
「都合の悪い事を省くのもダメだよ?」
私は、考えられるのは他にはこの位だったので、再度出来ないと告げた。
「はぁ、言葉はね、並べ方次第で何を強調させるか変わってくるの。良いから私が考えた通りに伝えなさい」
「分かった。ちゃんと伝える。ありがと」
そうして、私は、初めて自分の転移魔法でエルバート様の御屋敷に転移した。だが、誰も居なかった。だけど、このまま帰れない。明日なのだ。なので、私は村に転移した。そして、その光景に度肝を抜かれた。
「何故。こんな所にお城が…………」
と、5分くらい唖然としていると、村長……ううんロルさんに見つかってしまった。いや、隠れてた訳じゃ無いのだけど……
「キャロル、何故、まさか勝手に辞めて来たわけじゃあるまいな?」
と、ロルさんは心配そうに、聞いた。
「いいえ、でも、エルバート様に謝罪とお伝えせねばならない事があります。どこに居らっしゃるか分かりませんか?」
「謝罪……話は後で聞くとしよう。エルバート様はあのお屋敷に居らっしゃる」
「あの……あのお屋敷は?」
「うむ、わしもこの信じられない事態を誰かに話したかった所だ。しかと聞くがよい」
そして、私はエルバート様の新たな武勇伝説に聞き入り目を輝かせる事3時間、辺りは暗くなり始めていた。いや、本来ならば10分も掛からなかっただろう、だが分からない所の考察を二人でやって居たらいつの間にか時間が過ぎていたのだ。
「おお、こんなに話し込んでおったのか。お前はお伝えする事があるのだろう。早く行くと言い」
ロルさんは事情も聴かずに、そう言ってくれた。いや、私が謝罪すると言ったから聞きたくなかったのかも知れない。そんな事はどうでも良いか。と、私は屋敷の大扉を恐る恐る開けた。
「え、エルバート様ぁ……」
この自分には場違いな巨大な建物に圧倒され、誰も聴き取れなそうな小声で主様を呼んでいた。流石に自分でも分かってる、こんな音量じゃ近くにいる者だって聞き取る事は難しいだろう。と、うつむきながら心の中で小心者の自分を呆れた様に笑っていると。
「キャ、キャロル? どうやってここに?」
と、主様の声がいきなり聞こえて来た。私は謝る事があったせいか、建物に圧倒されていたせいか、分からないけど、思考が回らない程にびっくりして。声を上げた。
「ひゃぁああああ、ごめんなさい、ごめんなさい。」
と、頭を下げながら混乱している私に、主様は言葉を掛けてくれた。
「どうした? 謝る事なんて無いぞ?」
その言葉を聞いて、私は我に返って、言葉を返そうとした。
「ご……ごべんな゛ざい~。」
だけど、久々に会って、優しく言葉をくれた、そのせいか主様に上手く言葉を返す事が出来なかった。な……なんとも恥ずかしい事をしてしまった。かさねがさね思う、私はダメな奴だと。また、主様を困らせるような事をしてしまった。
「あ~、キャロル、流石に言ってくれなくちゃ分からないぞ。まあだが、心配はいらない何があっても俺はお前の味方だ。俺に出来る事なら気にせず言えばいい。いや、出来ない事でも言ってくれ。一緒に考えるから」
と、主様は言ってくれて、優しく頭を撫でてくれた。それでようやくぽつぽつと主様に事情を説明出来た。チェルシーが考えた通りに言ってる余裕なんて無かったけど。
「なんだ、そんな事か。任せろ。それとなキャロル、そろそろ自覚してくれ、お前は俺の大切な人だ。何があっても守りたい。特別なんだ。だから、困った時は迷わず頼れ」
これは、夢なのかな? うん、夢の中だ。
「言って置くが、夢じゃ無いからな? ちゃんと覚えて置いてくれよ?」
「やはりこれは夢なのですね。言葉を伝えずとも伝わっていますし。幸せな夢です」
では、思考も丁寧な者に変えねばいけませんね。などと思っていると。
「はぁ、分かったよ、じゃあ一緒に寝ようか。明日、一緒に学校に行こう」
うーん、どこまでが夢なのでしょう……だけど、こんな幸せな夢、起きたく無いです。ううん、寝たく無いです。あれ? あれれ? そんな事を考えて居るのもつかの間でした。
「お兄? 遅いと思って様子見に来たんだけど、今の発言は何?」
と言う、ジェニさんの言葉が聞こえて来て。私が言われたわけでも無いのにとても寒い気がします。凍えそうな位に、やっぱり夢でしょう。そして、主様とジェニさんの話し合いが終わり、私は主様の後をついて行き、眠りに……いえ、ずっと起きてました。だけど元気です。
「えっと、キャロル? まさか寝て無いの?」
と、主様に声を掛けられましたが、私は。
「大丈夫です」
と答えると、主様は安心した様に頭を撫でてくれました。夢とは言え、チェルシーには言えませんね。夢……ですよね?うん、私はあれから起きていない。はず。
そうして、知らないお屋敷の広い場所で皆で朝食を取りました。知らない人もいましたが、まあ、別に夢の中ですし。
「うーん、私はいつ目が覚めるのでしょう。この時間が現実の時間と一緒だととても不味いのですが」
「キャロル? これは夢じゃ無いぞ? 本当に大丈夫か?」
そんなやり取りをしていると、ミラさんに声を掛けられました。
「そういう時はねぇえ、ほっぺをつねってみればわかるのよぉ?」
「ゴホッ……んだよ、ミラ、似合わねー喋り方いきなりするなよな。むせるだろっ」
そうして、私が関わらぬままエミールさんとミラさん、そしてローズさんや主様が加わり、楽しい朝食が過ぎて行きました。私はミラさんの助言を試すことなく、主様に連れられて、学校に転移しました。
「さてと、良しキャロル、取り合えず教室に行ってなさい」
と、主様に言われたので、私はいつも通り教室に入り、いつもの席に座りました。やはり、彼らはこちらを見てニヤニヤとしています。再現力の高い夢です。ああ、この出来事自体が夢だったらいいのに。などと考えて居ると、教室に何故か先生が三人入って来ました。いえ、一人は校長でした。そしてそれに続く主様……主様!?
「あー、俺はキャロルの主でエルバートと言う者だ」
その言葉に生徒は全員唖然としています。私も同様です。
「取り合えずお前たちの先輩として、授業を施してやろうと思う。テレポート」
主様が転移魔法を唱えたとたん、私達と座っている机、すべてが校庭に転移されました。はい、私も含め絶句です。流石は主様。
「良し、良く見てろよ。メテオインパクト」
主様がその呪文を口にしましたが魔法は発動していない様子に、貴族の息子である彼が口を開きました。
「ハッ何も起こらないじゃ無いか。主従そろって転移だけ……」
また、暴言を吐こうとした彼の言葉は、大地が叩きつけられてる衝撃音により搔き消され、私達は、揺れる地面にバランスを崩され机に手をつきながら、風、揺れ、音、精神と言う、色々な衝撃に耐えました。
「今のが最上級土魔法のメテオインパクトだ。隕石が地上に降り注ぐ魔法だな。どうだ? 勉強になっただろ?」
私達は終始絶句していました。私は声を上げお礼を告げたかったのですが、次元が違い過ぎて勉強になったとは言えない。と思ってしまったせいで、委縮してしまいました。
「なんだ、今のでダメなのか?」
「あ、あの! 感激致しました」
と、先生が割り込んできました。
「そ、そうですか。ではもう一つ教えよう。あ~そこの貴族の息子。俺に向かって自分が出せる最高の攻撃魔法を放ってみろ」
「ぐっ、調子に乗りやがって、後悔させてやる」
と、彼は、いつもよりも無駄に時間をかけて魔力を練っています。でも無駄ですよ? エルバート様には軽く防がれてしまうでしょう。
「食らえ、ファイアーボール」
彼は汗を掻くほどに全力で魔法を放った様です。確かに前回に授業で見た時は二つだった火の球が三つに、そして、大きさも一回り大きい様子。でも私は全く心配なんてしていません。主様は強いんです。ですが……いつまで経っても避ける様子もありません。どうしてでしょう。ダメです! このままでは当たってしまいます。
「エ、エルバート様っ!?」
私は直撃した様子を確認してしまった為。泣きそうになりながら叫んで立ち上がってしまいました。
「あ~キャロル、授業中だぞ?」
と、確実に直撃したはずの主様は何一つ変わった様子も無く、私は顔を赤くして再び座りました。
「と言う様にだ、魔法防御力が高いとこの位の魔法なら、無傷で耐えれたりもする。まあ相当レベルを上げないと無理だけどな。この位なら300レベルくらいまで上げれば抵抗装備無しでもほぼノーダメージになる。魔法を使う以上は知っておいた方が良い知識だろう?」
「なっ、ふざけるな! 魔法が一切効かないなんて事がある訳無いだろう。この嘘つきがっ!」
「それはお前の魔法が弱すぎるからだろう。良く見てろよ? ファイアーボール」
主様が魔法を唱えると、全員が凍り付いた様にぴたりと止まりました。まるで時間が停止したようです。まあ、その中に私もいるのですが、これは仕方が無いと思うのです。私達の周りに4メートルから5メートルくらいの大きさの球が100個くらい浮かんでいたのですから。
「この位の魔法をぶつけられたら俺も怪我するぞ?ちなみに良い事を教えてやろう、これでもMP消費は皆と変わらない100だ。魔法の強さを上げたければ、頑張って魔力を上げる努力もする様に」
主様大先生はそう言った後、そのまま上空に向かって魔法を放ちました。その魔法は一瞬で見えなくなる程の速さで飛んでいき、私達に熱風が降り注ぎました。私達の周りで熱いとか、痛いとか、言って居る生徒がいます。それ位は我慢しなさいと言いたいです。
「ああ、済まない、ヒーリングフィールド。あ、これは範囲回復魔法な。ハイヒーリングの上の魔法だ」
「ん~ここの授業は見て覚えるんだよな? あまり参考にならないか? 中級の他の魔法も見たければ何でも見せてやれるぞ?」
主様は少し、不安そうに仰いました。ですが、私には分かります。皆現実についていけてないだけだと。だから私は……
「主様。私、雷の魔法が見てみたいです。」
と、村を救ってくれた時に使ったと言うあの魔法を見せて貰いたいと思い、発言してみました。
「おお、もちろんいいぞ、ターゲットが無いから単体で良いか?」
「え? あ、はい。」
私はあの時の魔法が範囲だと聞いていたので少し止まってしまいました。
「あ~じゃあ、サンダーボルト×50」
辺りが物凄く強い光に照らされて、物凄い音を立てた後、静寂が訪れました。やはり、皆沈黙していました。ですが、一人の生徒が疑問を投げかけます。
「あのう、どうして、詠唱も無く、魔法名を一度言うだけで何度も魔法が放てるのですか?それも魔力の影響?」
「それはだな、イメージ魔法で同じものを作り出せれば出来るようになるぞ。正直何も言わなくても魔法はだせるからな」
と、主様は快く答え、両手から炎をその両手の間には水を浮かべながら大地の土も操作していました。その受け答えをした後、他の皆も各々見せて貰いたい魔法があった様で、順に見せて貰いました。風魔法の時は凄かったです、暴風が酷すぎるからと氷魔法で私たち全体を覆った後、上に向けて撃ったにも関わらず木が倒れてしまいました。ですが、その木でさえ、魔法で直してしまう主様、素敵です。
「さて、そろそろお昼だな。俺の授業はここまで。明日から各自頑張って習得を目指す様に。」
「「「「「ありがとうございました」」」」」」
「よーし、キャロルお昼だぞ、決闘の約束があるんだろう?ちゃんと断りに行くぞ」
「あ、はい、すみません」
そうでした。余りに衝撃的な事が続いたので忘れていました。気が重くなりながらも私は貴族の息子である彼に向かって言いました。
「先日も言いましたが、決闘は受けられません」
「ふざけるなっ、お前が力でねじ伏せてやるって言ったんだろうが。お前は絶対に倒して奴隷にしてやるからな。今からだ! 待ってろ」
彼はそう言いながら、歩いて行ってしまいました。はぁ、やはり、ダメでした。どうしましょう……主様が目の前にいると言うのに。
「あれ? キャロルお前レベル教えて無いのか? 確か80以上に上げてあったよな?」
それはそうなのですが、倒してしまっては……
「はい、ですが、貴族相手では主様に迷惑が……」
「いや、気にすんな。俺も貴族になったみたいだし。まだ爵位は考え中らしいけど。」
は、初耳です。昨日ロルさんに聞いた、伝説的お話の結果なのでしょうか。
「え? で、でもそれでもやっぱり」
「大丈夫だって、本当に心配すんな。この前だって勅命を受けてな、ってこれは此処で言う話じゃ無いな」
「あ、知ってます。ロルさんに聞きました」
「じゃあ、分かるだろ? 俺は、村人もそうだけどそれ以上にお前たちを守る事に限っては自重はしない。必要なら貴族とだって戦う。まあ、お前たちが悪かったらお仕置きするけどな」
「はい。お仕置きは覚悟しております」
「いや、今回は悪くないよ? 久々にここに来てノリで先生なんてやってみて、悪い気はしてないしな」
そんな話をするなか、いきなり話に割って入った者が居ました。言うまでもありません。彼でした。
「ふん、逃げずにいた事は褒めてやる。ようやく俺の物になる気になったようだな。じゃあ、こいつと決闘をして貰う、負けたらお前は俺の物だ」
彼は、大人を連れて来てそう言いました。本当に残念な思考の人でした。うん、過去形です。主様の表情を見ればわかります。とても怒ってくれてます。私の為に……やばいです。この状況。釣り合わないはずの私なのに、まるで、主様の彼女にでもなった気分です。
「ああ、情けない奴だなぁ、男が決闘で代理出すのかぁ。まあそう言う事なら俺が出てもいいかな、俺のキャロルに手を出すと言うなら男として黙ってられないもんなぁ」
もうダメです。幸せ過ぎて思考が……ぼぉ~~~~
「貴様……誰が貴様が出て良いと言った」
「俺は主人だからな。逆に言うが、誰が人の従者を取っていいと言ったんだ? お前が煽って無理やり決闘に持ち込んだのは分かってるんだけど。お前さ、名前なんて言うの? 親にも改めて文句良いに行こうと思ってるんだけど」
「平民風情が、身の程を知らないとは……良いだろう」
「あ、俺はもう貴族にするって言われてるからな。公爵様からも子爵以上は確定だろうと言われてる。ちゃんと先に告げたぞ。んで? どうするんだ?」
「さっきから嘘ばかりつきやがってこのペテン師が。おい、やれ。」
「はぁ、面倒だから頭来てるにも関わらず引き際を与えてやったってのに。まあ、たとえ俺が平民だったとしても折れる事は無いけど」
ん? あれ? 主様の隣にさっきの大人の人が倒れてる……まさか!!
「主様? もしかして決闘は……」
「ああ、相手が代理を立てたから、こっちも俺が出て倒した。あの阿呆はお前もやるかって言ったら逃げてったよ」
「も、申し訳、御座いません」
「ははは、お嬢様を守る為に戦えて光栄でございます」
ああ、これはやっぱり夢です。そうだ、ミラさんに教えて貰った方法を今こそ試しましょう。
「い、いはいれふ」
「ど、どうしたんだ自分の頬をつねって……俺は怒って無いぞ?」
「えへへ、あまりに嬉しくて夢かと思っちゃいました」
そんなこんなで、また主様は私の窮地を意図も容易く救ってくれました。私はこの後の事に不安を覚えましたが、あまりの幸せに不安など押しつぶされて・・・・いえ、正直忘れてました。落ち着いた後、私は不安に駆られ妹に相談をして、何故か大激怒されるのですが、思い出したくないので、それは忘れる事にしました。




