村が燃えていた。
一体、何が起こってる……目の前の光景が受け入れられず、そんな事を考えて居た。
俺達の眼前には、フルプレートメイルを着込んだ騎士の様な者達が、村人を囲み、せっかく立てた建物には火の手が上がっており、血だらけで倒れている者に覆いかぶさっている村人の叫び声が聞こえてきた。その叫び声を聞き、俺は我に返りった。
「まずは確認をする、待っていてくれ」
俺は、村人を切ろうとした騎士の一人に後ろから腕を掴み、MPを吸収した。その騎士は抵抗する間もなくMP切れにて倒れた。そして、俺達に気が付いた騎士たちはこっちに意識を集中して、剣を向けて来た。
「まず、何がどうなってる。説明しろ。ヒーリングフィールド」
俺は、そう言いながら広範囲回復魔法で集まっている村人全員にヒールを掛け、イメージ魔法にて、雨を降らせ火事を鎮火させた。そんな中、ロルさんが立ち上がり、問いに答えた。
「この者達が、この土地は我らの者だと火を放ち、まずは話をと近寄った見張りの者達が切られました」
「怪我人は?」
「いえ、エルバート様に回復して頂いた者以外は、もう、こときれております……」
と、ロルさんが言った。俺は呆然としていると、直後騎士の一人が言葉を発した。
「貴様がこの場所を勝手に使っている者のまとめ役か。これは重罪である。死を持って償うがいい」
何を……言っている?
「どこの誰だか知らないが。この土地を使うのは国王とマクレイアー公爵には話を通してある。それを知った上で話をしてるんだよなぁ? ああ゛?」
俺は頭に血が上り、怒鳴り散らす様に権利がある事を告げた。
「嘘をつくな! そんな証拠がどこにある。貴様、虚言に王の名を使うとは、楽に死ねると思うなよ」
騎士たちは村人をそっちのけに俺に群がる様に剣を構えた。それを見たジェニ達がこっちに走って来た。
「取り合えず、どこの軍の所属だ? 話はそれからだ。いや……そうか、何を言ってるんだろ、俺は」
そうだ、俺はなんで攻めて来た敵に話をしようとしてるんだ?俺はゆっくりと騎士たちに近づきながら口を開く。
「お前らは、俺の領民を殺した。これがどういう事だか分かるよな?」
騎士の一人が前に出て剣を振り下ろした。俺は、その剣を避けずに頭に剣を打ち付けられた。
「「「「「「エルバート様っ!!」」」」」」
その光景を見た全員が悲痛な声を上げた。だから、俺は声を掛ける。
「ああ、この言葉を言っていなかったな。もう大丈夫だ。俺が来たからにはもう犠牲は出させない。心配せずに見て居ろ」
そう、俺はかすり傷一つ負っていない、当然だ。この国の上位の者でも230レベルくらいだろう。俺はそれより100レベル高い。スキルによる上昇を入れたら最低でも250レベル以上の差になるだろう。その上でオリハルコンの鎧を付けている。この国で俺に傷をつけられる存在はもう居ない。俺に真面に傷をつけられるのはアルテミシアくらいか。
「今のを見て分かると思うが。お前らも手出しする必要ないからな?」
と、俺は驚愕している騎士に目もくれず、ジェニ達に声を掛けた。まあ、俺があれを避けない理由も分かっていた様だし言わなくても大丈夫だったかもしれないが。彼女達は緊迫した表情を浮かべながらも頷いた。
「それで? 大体は分かってるが、お前たちはどこの所属だ? それとどんな命令を受けたんだ? お前に指示した奴は、俺と敵対した事を後悔して貰わないといけないからな」
まあ、もう話し合いをする気は無いのだが。何処に報復すべきなのかは知っておかねばならない。そう考えて聞いたのだが、一向に言葉を返さずに固まっている。
「どうしたんだ? 自分より弱い存在を相手にしている時はあれだけ威勢が良かったのに」
と、見下す様に告げると、さっきの騎士が口を開く。おそらくこいつが隊長なのだろう。
「待て、我々は国の法で動いているんだぞ! 逆らうのか?」
「ああ、そう。お前ら騙されてるんだな? 俺は実際に国王と話をしてるしマクレイアー公爵に書状も直接受け取ってる。その書状なら、屋敷に置いてある。だが残念だったな、お前らは不必要に手を出してしまった。住民に手を出す必要は無かったはずだ。お前らが騙されてたとしても、俺はお前らを許す気はない」
「馬鹿な! ならばその書状を持ってこい」
「なんだ? その物言いは。まあいいや。テレポート」
俺は転移で瞬時に戻り、書状を手渡さずに広げてみせた。
「おい、この代償どうしてくれる。取り合えずお前らの命は貰って良いんだよな?」
「なっ!! そんな……我らは伯爵様に……」
「ああそう、冥途の土産に教えてやろう。その伯爵はもう終わりだよ。王族の人間を拉致ろうとしたり。それを阻止した俺に対しての逆恨みで今お前たちはここにいるんだからな」
「そんな……う……うそだ……」
隊長格の男は書状に目を通し、公爵家の家紋入りの判子を見た瞬間、武器を落とし膝を付いた。そして、騎士達も戦意を喪失した。そして、俺は騎士たちに近づき剣を抜いた所で、思わぬ所から声を掛けられた。
「坊や、おまち。どうするにせよ、今はその命取るべきじゃ無いぞ?」
と、言われて視線を向けると、アナベラさんがやれやれと言った顔で見ていた。
「気持ちは一緒だがの。物事には手順がある。それを守らねば正しくとも無法者扱いを受けるもんじゃ」
俺は、それを知っていた。ウィシュタルの町で嫌と言う程見た。手順を間違えただけで、無罪なのに罪人にされて奴隷堕ちした者達を。だが……
「だけど……俺は……俺のせいで殺された人たちにせめて報いたい」
「それは、その伯爵に報いを受けさせればよい。その為の手順を踏み、必要な相手だけにせんと。いらぬ所から恨まれまた、同じことが起こるもんじゃ」
と、アナベラさんが説明した所でエミールが口を開いた。
「必要な相手ってのに、何で手を出した本人が入らないんだ? やった奴と指示した奴は両方やるべきだろ?」
「まあ、間違ってはおらんの。じゃが、貴族とは繋がりを大事にしとる。血筋の者を色々な所にまわしての。そこの中にもいるじゃろうて。おそらくは、夜盗の討伐とでも聞かされておったのじゃろう。貴族の悪しき風習の常套手段の一つじゃからの。ま、違ったとしても、こんな小物を取って恨まれては死んだもんもそれこそ浮かばれんじゃろうて」
俺はその言葉を聞いて、村人たちに問うように視線を向けた。
「エルバート様はまた、こうして助けて下さった。元より我らは死んだ者も含め、貴方が御心のままにして下さる事を願っております」
ロルさんが言葉を言い終えた後、村人たちは頷いた。
「……分かりました。アナさん、俺はこういう事には疎いんです。段取りのやり方教えて貰って良いですか?」
「簡単じゃよ。ルクレーシャ嬢と知り合いなのじゃろ? ならばお嬢に事情を話し、王宮で決闘でも何でも許可を貰えばよい。そこまでの手順を大々的に行えば、頭の可笑しいのを除けば攻撃してくるものはおらんじゃろ。どれ、わしがついて行ってやろうかの」
アナベラさんは、どっこいしょと言いながら近寄り、ほれ、と、転移を促した。
「じゃあ、取り合えずこいつを連れて行きますか」
俺はそう一言告げて、騎士のつける装備だけをオリハルコンの剣で切り落とした。顔があらわになった騎士の男は顔面蒼白のまま固まっていた。
「あ、そうだ。お前達も装備を外せ。まあ、装備したままでも俺のパーティには勝てないけど。この先何かしたら、問答無用で殺すからな」
と、残る騎士にも釘を打っておいた。
「……にしても坊や、強すぎやしないかい? まあいいさね、ドミニク、お前は行かないのかい?」
アナベラさんは俺の事を見て首を傾げたが、追及する事はしなかった。
「ちっ、お前が行けば十分だろうが、俺は火をつけられちまったから仕事が一杯なんだよ」
と、二人は意味ありげな会話をしていたが、俺はやる事をもう決めている。その段取りも聞いた。取りあえずはそこを抑えて置けば十分だと。ジェニ達に騎士の見張りと、村人を見てやってくれと頼んだ。
「任せて、でも攻める時はおいていかないでね?」
と、ジェニが答えると。
「当然私も行くからね? 私が居ないと危険なんだから」
そうだな、危険だな。ミラが……
「あ~じゃあ、俺は村を守っておく。ローズを危険な目に会わせたくねーしな」
と、エミールさんが。俺もこいつらを危険な目には合わせたく無いんだが……
「私達はエルの意見に従う。だけど、決まったら帰って来て聞かせろよな。終わってからの報告だったら怒るぞ」
エティが姉妹の代表として、俺に声を掛けた。アイリとケイも頷いている。
「ああ、皆の意見は分かったよ。取り合えず国王陛下との話がついたら帰ってくるから、相談しよう」
と、俺は話は帰ってからだと告げた。
そして、俺は、アナベラさんと騎士を連れて公爵邸執務室に転移した。




