レベリングマシーン、転移型一式②
俺は、とうとう、秘境の地で、初めて魔物の魔力を感知した。足が止まり、冷や汗をかいた。魔力が240レベルから250レベル付近である、フォレストオーガの二倍はありそうだった。俺は、一度感知の外に出て、平野になっている、広い場所の中央で軽く魔力で穴を掘り、作業を始めた。一応念の為、敵に見つかる事を懸念したからだ。恐ろしいほどの高レベルだし、間違っても奇襲を受ける訳には行かない。
そんな警戒をしつつも、テレポートで、王都に飛び、鉄鉱石を買い込み、運び込んだ。そして、トラップを制作し始めた。
「ん~と、ここをこうして……ここで引っ掛けるか」
一応、魔力感知を継続させながらも、ぶつぶつと呟きながら作業を進めて行った。
「よし、取り合えず形だけは完成かな」
俺は、一見すると、ただ、10メートル四方の地面に一枚の鉄板を布いただけの様なものを見て、そう言った。実際には、中に空洞が空いており、その空洞の上下には、2メートルはあるであろう、頑丈そうなランスのようなものが所狭しと設置されていた。ありきたりな仕掛けだが、天井がそのまま降下して、中の者が串刺しになる、と言う物だ。だが、その天井は厚さ一メートルほどある、鉄板である。持ち上げるのは流石に無理だから、降下後は、転移魔法で持ち上げると言う方式を取る予定である。
「んで、魔法陣を書き込んでと。あ、埋め込んだ方がいいか、その方が消えにくいだろう」
と、陣を描き、さて完成と言った所で、四か所ある天井のロックをどうやって外そうかと悩んだ。天井が乗っているだけあってものすっごく重いのだ。軽くなる外せて4か所同時に外せる様に無くてはならない。
「ああ、転移で外せばいいじゃん。じゃあ、ロックを一つにつなげて、と」
そして、ようやく作動させられる段階まで来た。ここからはテストだな。と、思ったが、ここの魔物の強度を知らない。これで倒せるのかが分からないのだ。だが、まあ倒せなければ転移でおかえり願えばいいか。いや、ここまで作って壊されるのもなぁ。
「ああ、メテオインパクトを何度か打ってみればどのレベルで死ぬか分かるか。最上級魔法と言っても、あれはタダの隕石だからな。その一発で死ぬなら、あのトラップでもやれる可能性は高いだろう」
と、言う考えに至り、俺は、最初に魔力感知で探った森の入り口に来た。先ほどよりも森に近い為、割とうじゃうじゃいるのを感じた。そして、いつでも転移出来る様に身構えながら、魔法を放った。
「メテオインパクト」
そう、唱えて2秒ほどのタイムラグを起こしてから隕石が降りそそいだ。
「メテオインパクト」×3
念のため、時間差で最初のと別に三回打ち、経験値の入りで判断しようと言う作戦だ。だが、それは半分失敗に終わった。
「ははは……レベルが上がり過ぎてわかんねぇ……」
そう、レベルアップは何故か一レベルずつ頭の中にイメージが沸く。そして、一秒に一レベル感覚で上がって行くのを認識するのだ。最初の一発目から永遠と上がっているので、比較も何も無いのである。だが、クリーンヒットすれば、死ぬ。と言う事が分かった。逆に言えば、どの程度生き残って追撃で死んだかは分からなかった。まあこの魔法はまばらに隕石が落ちる魔法だから、目視で確認でもしない限り完全な検証は難しいんだけど。
だが、今の魔法攻撃しただけで、100レベル以上も上がった。正確には121レベルか、今現在俺は252レベルになっていた。
「あ~、これ、何度かやって置くか。あいつら連れて来た時に安全にレベリング出来る様になるし」
俺は、彼女達をここに連れて来た時に魔物の対応が出来ない事を懸念して、このままレベルを上げる事にした。まあ、転移で逃げれば良いだけの話なんだけど。まあ、戦えるに越した事はないだろう。こんなに簡単に上げられるんだし。
と、そんなこんなで何度か繰り返し、レベルが324レベルまで上がり、魔物を直に見る事も出来た。大体わかってはいたが520レベル付近で改めて驚愕した。罠の動作確認も出来た。まあ、最初は失敗したと言うか、罠を発動させても倒せなかったんだけど、そこはとげの太さを調整したり、鉄板の上に後一メートルほど石で厚みをだして重量アップする事でどうにかなった。そして、俺は屋敷へと戻った。
「ただいまぁ~」
「「「おそーい」」」
アイリ、ミラ、エティは開口一番に文句をつけて来た。
「はあ、ちゃんと数時間掛かるって言ってたでしょ」
「そうね、でも、私もお兄と一緒に作りたかったわ」
ケイと、ジェニは、最初からそう言った居ただろうと、彼女達をたしなめた。
「まあ、取り合えず行こうか。」
俺は、あの異常なレベルアップを見せる事が楽しみで、彼女達をそそくさと連れて行った。そして、一番手を名乗るジェニに魔道具の使い方と同じだと言う事を説明して、魔物を中に転移で送り込み作動させた。
「……24レベル……上がった。なにこれ、お兄ちゃん」
ジェニは困った表情で固まっている。
「ジェニちゃんて、魔力感知はダメダメだよね。私が一番じゃ無くて良かった。ビックリして動けなかったもん」
「黙りなさいミラ。今の私を怒らせたらどうなるか分かるわね?」
「ぐっ、ジェニちゃんそれは卑怯だよぉ」
と、じゃれ合ってる二人をほおっておいて、獣娘たちに一人ずつやらせていった。
「あ~ずるい、私もっ、私もぉぉ」
「ああ、もう慣れたか?ちゃんとやれるか?」
「えへへ、私の為に慣らしてくれたの? ふふふ、任せなさい!」
ミラはひとしきり体をくねらせた後、胸を叩き任せろと言った。そうして、一人一匹のサイクルが一周した。
「ねえ、あの魔物って言ってもまだ見てすらいないんだけど。何レベルなの?」
ケイは首を傾げ、何かが可笑しいと思っている様だ。
「あ~いくつだと思う?」
と、ケイに試すような視線を送り、問う。
「そうね、少なくとも300は超えてるわよね。まさか400レベルとか言わないわよね?」
ケイは、途中で首を振り想像する事を諦め、逆に質問で返して来た。
「ふふふ、分かる子はいないのかね?」
「はーい、はーい、えっとねぇ。500レベルくらい?」
ミラは、張り切る様に手を上げ、答えた。
「はぁ? 馬鹿じゃねーの。そんな高レベルの魔物なんて居ねぇって。エル、どんな手品使ったんだ?」
「だって、そう感じたんだもん。馬鹿じゃ無いもん」
エティがミラを馬鹿と言った事でミラがほっぺを膨らませて怒った。
「ううん、聞いた事あるよ。誰も言った事の無い場所にとてもレベルの高い魔物が居るって」
「誰も言った事無いなら、誰も知らないだろ? いい加減な情報だな」
アイリも、エティにダメ出しをされて口を尖がらせた。
「あ~、答え合わせする。ミラ凄いぞ、正解だ。一匹確認したが。520レベルだった」
と、俺がミラを褒めるとミラは飛び上がり、エティにドヤ顔をかました。
「それとな、アイリ、合ってるぞ。ここは秘境の地と言われる、まだどの国も手を出せていないどこの領土でも無い場所だ」
アイリもぱぁっと明るい表情をして、エティに『ね? 言ったでしょ?』と言った。
「ちょっと待って、お兄、まさか520レベルの敵を索敵してこっちに転移で送ってたの?」
ジェニは真剣な表情で質問して来た。
「ああ、ビックリしたか?」
俺は、思った通りに皆が驚いてくれた。事に満足してそう答えた。のだが……
「びっくりしたかじゃ無いわよ!! 死んじゃったらどうするのよぉ! お兄ちゃんの馬鹿っ!!」
と、ジェニの本気の怒鳴り声に皆、言葉を止め、言っている意味に気が付き、自分達はその危険に気が付いてすらいなかった。と言う事を悔いていた。
「あ~……待て待て。俺はもう単独でその魔物倒せるからな?」
「どうして、そんな嘘をつくのよ。130レベル程度で叶う訳無いじゃない。それとももう500レベルまで上がったって言うの?」
ジェニは俺を責める様に見つめ、俺の胸に手のひらを当て、握りしめながら、苦しそうに言葉を発した。
「いや、嘘じゃ無いんだ。俺のイメージ魔法は知っているな? それとステータスを見てくれ」
俺は、ステータスをフルで開示して、全員に共有した。
「あれぇ? ゼロが一個おおいよねぇ?」
ミラは、目で直接見てる訳じゃ無いのにステータスの能力値の部分を見て目をこすっている。
「うは、何このステ、やばすぎだろ。こんなに行くもんなのか?」
エティは、驚愕していた。感じた疑問をそのまま口にしている。
「もう、笑うしか無いわね。流石は英雄様ですこと……」
ケイは考えてもしょうがないレベルよ。と、言わんばかりに言った。
「エル、凄い。本当に英雄なんだ」
アイリは、目がキラキラしている。そうか、アイリはこういう反応をするのか。
「嘘じゃ……無かったのね。もうっ、ちゃんと説明してよ。お兄の命を使ってレベル上げてたのかと思っちゃったじゃない」
ジェニは目に溜まっていた涙を拭いながら、先走って怒った事を恥じているのか少し赤くなっていた。
「ごめんな。驚かせようと思ったんだが、どうにも俺がサプライズするとろくな事にならないな。」
「ああ、私らん時も、散々だったな」
「そうね。あの時はこいつは何故、意味も無く人を騙して嬉しそうにしているのかしらとしか思えなかったわね」
「うーん、エルは記憶が無かったんだししょうがないよぉ。治った事を喜んで欲しかったんだよ。気が付かなかったけど……」
「はぁ……これからは、素直に言う事にするよ」
俺は、ため息を付いて、そう告げた。
「じゃあお兄、安全なのは分かったし、お願いね」
と、ジェニに言われて、俺達はレベリングの最中だった事を思い出した。
「さっきまでその件で怒ってたってのに、現金な奴だなぁ、まったく」
「うふふ、それでも私に優しいお兄ちゃん、大好き」
俺は、その言葉で、元気とやる気を取り戻し、アイリ達のMPが尽きるまで続けた。と言っても、5回目くらいでダウンしていた。まあ獣人だししょうがないんだけど。そして、全員200レベル付近まで上がっていた。彼女達のMPが尽きた時点で俺は即座にレベリングを終了させて、屋敷へと転移した。
「なんか。ここまで一気に上がると、言葉が出て来ねえな」
エティは、不思議そうな顔で口を開いた。
「だよねぇ。ほんとはいままで努力ってぇ、とかレベルが上がった事に喜んだりとかあるんだろうけど」
その言葉にミラは、同意してうんうんと頷いた。
「私は、色々疑問は尽きないわよ? こんなに楽してあげて同レベルの相手と対等に渡り合えるのか? とか。」
そこにジェニが口をはさみ、心配そうに告げる。
「ああ、そこはちゃんと訓練しろよ? 当たり前だが、同格なら技量が高い方が勝つぞ?」
「ああ、そっか。わざわざ魔物で技を磨かなくても模擬戦とかすればいいんだ? 不幸な事に人数は居るんだし」
ジェニは自然に言葉を間違えていた。
「幸いな事にな?」
俺はおっかなびっくり訂正しつつ、ジェニの顔色を窺った。
そうして俺達のレベリング一日目は終了した。




