初めての武器制作
俺はジェイルエルダーの森から4人を連れて戻って来た後、テーブルの上に鉄鉱石だけを出し。予定の通り武器制作をする事にした。4人も席についてワクワクした表情で見守っている。
「良し、まずはあれだ。不純物を取り除いて形を作ってみよう」
そう、呟いた後、後ろから声がした。
「お、なんだそれ。何やってるんだ?」
と、エミールがローズを連れて、戻って来ていた様で俺達が帰って来た事に気が付き、様子を見に来たみたいだ。
「えっと、ローズはもう大丈夫なのか?無理させるつもりは無いんだが」
隷属魔法の代償により、俺に対して恐怖を抱いているローズに確認してみた。
「あ、あの……一応は落ち着きました。まだ完全ではありませんが大丈夫です」
一応は我を取り戻したみたいだ。
「そう言う事、何があっても俺が守るしな」
エミールはローズを見つめてそう言った。あれ?こいつジェニとミラの前でいちゃつかないって約束忘れて無いか?いや、話の流れもあるしな、これ位で目くじら立ててはいけないな。
「そうか、良かったよ、エミールの彼女に嫌われたままじゃ一緒に行動しにくいったらないからな」
「お、じゃあローズもパーティ入りするの認めてくれるんだな?」
「ああ、構わないぞ、ガチでレベリングする事に今日決まったが、危険が少ない方向で行くつもりだしな。ローズも安心していいぞ、危険な真似はさせない」
二人は見つめ合い安心した様に寄り添った。うーむ。故意でない事は分かるが・・・いや俺が気にし過ぎなんだろうな。
「それで、何やってるんだ?」
エミールは再度、いつもの気軽な調子を取り戻して聞いて来た。
「いや、魔法で武器を作れないかと思ってな」
「おお、マジかよ。楽しそうだなそれ」
「確かに鉱石は魔力でしか加工出来ないと聞きますが、鉄鉱石レベルでも難易度は高いはずです」
ローズは、流石は良い所の育ちだな、俺達が知らないような事を普通に知っている。この状態なら姉さんとしては帰って来て欲しいだろうなぁ。まあ、エミールがそれを許さないだろうけど。
「そうなのか、取り合えずやってみるよ。石で出来たんだ試してみる価値はあるだろう」
俺はそう言いながら、鉄を思い浮かべてそれ以外の不純物を外に出す様に念じた。ぐ、ぐぬぬ、これは魔力消費がとんでもないなって、ああ、理解力が足りてないのかな。でもまあ出来たっぽい。
不純物が取り除かれて、より鉄っぽい色に変わった鉱石をみて皆が思い思いに口を開く。
「おお、なんか綺麗になったんじゃね?」
エミールは平常運転の様だ、ワクワクした様子で思った事をそのまま口にしている。
「お兄、私、剣が欲しい」
ジェニはニヤリと笑い、少し上目遣いでおねだりをして来た。
「あ~ジェニちゃんずるい。私は杖!あれ? 鉄……で……杖? あれれ?」
ミラよ……それでこそミラか。
「ええと、流石にそれはただの鈍器になってしまうんじゃ無いかと」
うん、俺もそう思うぞ。キャロルもっと言ってやれ。
「でもおねーちゃん、発動補助になる宝石とかを組み込めばあるいは」
チェルシーは優しいな、確かにそれならば杖にはなるが。鉄である必要が無いな。鈍器兼用、いやいや無いな。発動補助になりそうなもんは高そうだしね。
「さすがにご主人様でも最初から成功は厳しんじゃ無いかと」
そうだよなぁ。普通はこんなのイメージで作れないよなぁ。スキルとMP量で優遇されてるから出来るんだろうし。まあでも、ここからのイメージは簡単だ。鋭利な刃物は色々な所で見て来たさ、前世が転生のおかげでその前の記憶まであるしな。
「よし、行くぜ」
まずは熱を加えて柔らかく、そしてイメージの形に変形、そして維持させたまま温度を下げて行く。
「あれ? 出来たっぽいけど……こんな簡単なのか? いや、どうせ強度が低かったりするんだろうな」
「あのう、ご主人様? 最初からここまで出来るだけで異常だと思いますよ?」
「やっぱりそうなのか? ローズは色々詳しそうだな、話を聞かせて貰えると助かる。てかエルバートでいいぞ?」
「ええと、この呼び方は自分への戒めでもありますので。出来ればこのままで。それと、そこまで詳しい訳では無いのですが、私の家のお抱えの鍛冶屋が近場にあったもので、幼少期に良くそこに遊びに行き話を聞かせて貰ったりしていたのです」
「呼び方はまあ、了解した。武器や防具を作るに当たってアドバイスと言うか、ぶっちゃけて、その鍛冶屋のやり方を教えて貰ってもいいか?」
「はい、今のやり方の相違点としましては、鉱石の合成を行っていない事、術式の編み込みをしていない事、後は、柄の部分は木や布を使っていましたね、濡れてもグリップしやすいように、でしょうか?」
「おお、流石だな。合成か、やはり魔力の通りを良くするために銀を混ぜたりとかか?」
「はい、やはり元より知っていたのですね。加工の手順も私が見たものと変わりない様に見えましたし」
「いや。鍛冶屋とかかわった事は無いからなぁ。武器防具は姉さんに貰った物で足りてたし。そこら辺は想像でカバーした」
「そう、ですか。流石はご主人様です」
「もう一つだけ聞かせて欲しいんだけど、術式の編み込み方ってのはどうやって勉強すればいいんだ?」
「ええと、一番早いのは魔道王立学校で学ぶ事ですかね、誰かの弟子について学ぶとすると認められてからしか教えて貰えないそうですし。その教えも大抵は王立学校で教わった事まで、自分の成果までは教えて貰えないと聞きます」
「おお、博識だな。これはうちのパーティに引き込んでくれたエミールに感謝しないといけないな。これからも知って居る事があればアドバイスお願いします」
「はい、こちらこそ戦闘面ではお役に立てませんがよろしくお願いします」
「ローズそこは気にすんな、その分は俺が頑張ればいい、ローズは頭が良いんだ貢献はそっちですればいいさ。戦うのとか家を守るのは俺に任せろ」
双子を除いた俺達三人は、エミールのあまりに自信たっぷりな所に、皆自然とジト目になって行き。つい、質問をしてしまった。
「エミール」
「まさか……」
「俺を差し置いて男に?」
俺達三人は戸惑いを隠せないままに質問を投げかけた。
「ああ、すげーきもちっぶらぁ」
ドヤ顔をしたエミールが言い切る前にローズの全力であろうこぶしが彼の顔面を貫いた。
「貴様にはデリカシーと言う物は無いのか」
俺達三人は真っ赤になっているローズに向かって声を掛けた。
「「「良くやった」」」
そしてローズはドヤ顔のまま伸びているエミールの隣で真っ赤になった顔を抑え蹲ってしまった。
「さて、取り合えずこの駄作の試し切りでも行くか。ジェニ、ミラ、付き合ってくれ」
「「了解」」
「チェルシー達は悪いが夕食の用意を頼んでいいか? 金はさっきの報酬から取っていいから」
「「はい、エルバート様」」
そうして双子に指示を出した後、俺達三人は適正レベル110レベルのネズミの上位種の森へと足を運んだ。
「さあ、懐かしのネズミの上位狩場だ。完全に暗くなる前に試しに行こう」
俺がそう提案すると二人の表情が急に沈んだ。
「ネズミってだけで気が重くなるわね」
俺も死にかかったしな、貧血のせいでだけど。
「なんか思い出し泣きしそう。なんであの時はあんな無謀な事してたんだろうね」
ミラは目を潤ませ少し遠い目をした。
「そうだな。同格なら三人で囲んで倒すのがセオリーなのに、俺達は三人なのに、戦闘時は常に9匹以上に囲まれてた気がするな」
「気がするってか実際そうだったわよ。まあ、今は全部お兄に押し付ければいいから安心だけど」
「いや、ちょっと試してすぐ帰るだけだからね? あ、それと、剣は渡して置くから試し切り頼むな?」
そんな言い合いをしながらも俺達は森に入って行き、二回程群れに接敵した後試し切りを終了した。
そして、転移で先ほどの部屋、公爵様から借りている屋敷の一階で居間として使ってる部屋に戻って来た。
「相変わらずだったな」
「うん、でも私達も成長したよね、昔ほど怖く無かった」
「そうね、でも二回の戦闘で34匹って可笑しいと思う」
俺達は地味にきつい思いをしたが成長も実感出来た、と言う成果を上げられた、だが本題はそこじゃない。
「それで、ジェニ、剣の方はどうだった?」
俺は試し切りの成果を尋ねた。
「えっと、頑丈ね、切れ味もそこそこ良いと思う。でも低レベル帯には重すぎるわね」
ほほぉ強度は問題無い様だ。
「じゃあ、ローズちゃんが言ってた柄を布とかに変えて、軽量すれば完璧って事?」
だな、軽量化の方は問題なくクリアできるだろう。
「そうね、おそらくだけど、中の下位の価値にはなるんじゃないかしら。それと出来あがったら完成品一本頂戴ね」
俺達が使っていた装備が下の中程度だし、材料費だけで作れるなら良い稼ぎになりそうだ。ジェイルエルダーはいつまでも稼げるって訳じゃないし、選択肢としてありがたい。
「ジェニちゃん抜け目ないねぇ」
まあ、当然作るつもりだったけどな。
「よし、じゃあ今日は寝るまで軽量化の方をやって、明日は鉱石の種類を増やして色々やってみるか。術式は時間が掛かりそうだから先に薬師と、大工を探そう。取りあえずはそんな所か」
「待って、レベル上げの話が出て無いんですけど」
「ああ、そうだな。その為の準備も平行してやろう。キャロル達にやったようにちょっとズルするから。その為の準備な」
「おお!楽しみにしてるねっ。エルっ」
「そうね、時間は有限だし、狡いとか言ってられないわよね」
「せこいだの狡いだのと、お前たちの要望を応える為にやってるってのに、お前なぁ……ああ、そうか、リーダーとして教育するのは俺の役目に変えたんだっけか?」
俺はにやりと笑みを浮かべジェニに近づきほっぺを今度は力加減を間違えない様につねり上げた。
「いひゃひゃひゃ、おひぃ、やめぇ」
「エルバート様、お食事をお持ちしま……」
「だから、おねーちゃん?最後まで言わな……」
双子はつねる俺では無く、つねられるジェニに視線を向け戦慄していた。二人はそのままゆっくりと移動して料理をテーブルに並べて行き、端の方に座り視線を落としていた。俺はジェニに申し訳ない気持ちになり、手を放した。
「お兄ちゃん、ごめんなさい」
と、ジェニが可愛く謝って来た。だが、それを視界に収めた双子はスープを口に含んだまま口を開けたままで固まった。流石にジェニも困惑している様だ。
「お兄ちゃん、どうしよう。どうしたらいい?」
やはり対応不能と判断した様だ。珍しく判断を仰いできた。
「あ~そうだな、当分そんな感じで優しく接すれば良いんじゃ無いか? 元々ジェニはそれが素なんだし」
そう、俺にとってのジェニは優しく可愛く甘えん坊なのだ。町を出てから、と言うかミラに会った辺りから色々酷くなったが、素のジェニに戻るだけでしばらくすれば解決すると思う。
「分かった。私、頑張るね、お兄ちゃん」
おおう、うん。長らく求めていた。昔のジェニに戻ってくれる機会が訪れたのかも知れない。と俺はひそかに歓喜していた。そんなこんなで夜も更けて俺達は眠りについた。




