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魔法使いが魔法使いになりたくて異世界転生をする(英雄の生まれ変わり)  作者: オレオ


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35/79

守られるより守りたい。


 俺は姉さんから借りている屋敷にて目を覚まし、やっと少し姉さんに恩返しが出来た。その事に安堵を覚えつつも、最近本格的に着手し始めた村の開拓の事を考えて居た。


「うーん、村を発展させるに当たって何が一番効果的だろう」


 俺が独り言を呟ていると、隣で寝ているミラが口を開いた。ジェニはまだ眠っているのだろうか、反応が無い。


「町なんて人が集まれば勝手に栄えるっておばあちゃん言ってたよ。村だとそれじゃだめかな?」


「ミラのばあちゃん何者なんだ……まあ、確かにそうなんだが、人を集める術が無いんだよなぁ」


 そうか、先に人を集めると言うのも手か。今の稼ぎならある程度集める事は出来るだろう。だけど、金を使ってただ集めるのは愚策だよなぁ。最低限それに対する見返りが期待できなければなぁ。


 一般的に考えて良さそうなのは、特産物を作り、商人を呼び寄せ、ある程度豊かになってから娯楽施設関係を充実させる事か。でも特産物って言ってもなぁ……


 そうして俺が頭を悩ませていると。いつの間にか目を覚ましていたジェニが口を開いた。


「今私達が一番秀でているのは魔物の狩りよね、それを有効に使えそうな内容なのが一番手っ取り早いと思うんだけど」


「そうだな。でもこのレベル帯なら世界にはごろごろいるしなぁ。魔法でなんか作って売るか?」


「あ、それいいわね! 武器防具なら値段も高いし、名が売れれば人も集まるんじゃない?」


「じゃあ、エルの装備のレプリカを違う素材で作ってみる?」


「ダメよ、不敬だわ。それに高度な魔法陣を組み込まれている装備なの真似しても意味ないのよ」


 不敬って……まだ言ってるのか。だが確かに魔法陣とかは前世で通った事のある学校でも習わなかったしな。


「取り合えず開拓を進めつつ、武器でも作ってみるか」


 俺はその言葉に同意する二人を確認してから、二人とキャロル、チェルシーを連れて転移した。ちなみにエミールとローズは落ち着くまでは別行動をとる事になっている。


 そして村に着いた俺は、いつもの様に元村長であるロルさんに軽く挨拶をして村のみんなの様子を軽く見渡した。


 そこには、家の基礎をつくっているのだろうか。太い木を地面に打ち込んでいるグループ。


 畑を作る為に耕しつつ、石や岩をどける作業をしているグループ。


 そして、装備を着込み、辺りを見張る様に立つグループに分かれていた。


 俺はどこでも手伝う事は可能だが、一番効果の高そうな畑のグループを手伝う事を決めて声をかけた。


「おはようございます。今日はこちらの手伝いに入ろうと思います。よろしくお願いしますね」


 そう告げると一人のやせ細った中年の女性が木で作ったと思われるスコップ代わりの木を置いて頭を下げつつ言葉を返して来た。


「おはようございます。ええと、私はカーラと申します。宜しいのでしょうか領主様にこのような雑用を手伝ってもらうなど」


「ええ、領地を治めるなら色々知らないとダメでしょうしね。知っていれば防具だけでなく鍬や鎌なども必要な物として捉える事が出来たでしょうから」


 と、俺は木で出来た先を平たく尖らせただけのスコップの様な物に視線を落とし、罪悪感を覚えた。


「ええと、領主様?」 


「はい?」 


「私の居た村は500人程度の規模でしたが、この道具が標準です。町が遠くあまり豊かな土地でもありませんでしたので、専用道具を持っているのは畑の規模がでかく稼ぎの多い者たちだけでした。ですのでお気になさらないで下さい」


 彼女は少し困ったように笑みを浮かべ問題無いと告げた。だが、そうか、生き残ったのは十分の一以下か。と、今更ではあるがいかに彼女達がどん底に居たかを知った。


「そうですか、ではせめて石をどかす作業だけでもやらせて欲しいので皆さんを一度こちらに集めて下さい。あーそれとジェニ、木を一本貰って来てくれ」


「ん、分かった」


 カーラさんは俺の指示に従い、辺りで作業をしている者達を集め。戻って来た。そこにはキアとイオネ、あの微笑ましい存在達も混ざっていた。


「よし、じゃあやってみるか」


 俺は前世の癖か準備運動を何となくしてから地に魔力を這わせ、地中も含めた辺り一面の石を中に浮かせて畑区画の外に飛ばした。


「うわ、わわっ、ひゃー、何すんのよエルー!」


 俺が無意識に飛ばした先には、やる事が無く、ぶらぶらしていたミラがいた様だ。ミラはジタバタしながらも石を弾いて文句を言っていた。


「何すんのよーじゃない。俺達は仕事をしに来てるんだ。何でお前はぶらぶらしてるんだよ、集めた石が散っちゃったじゃないか」


「分かったわよぅ。これでいいの?」


 と、ミラは俺がばらまいた石を俺がやったようにかき集めて小さな石の山を作った。


「おお、やるな。その中で一番硬そうな岩を持ってきてくれ」


「ふふん、任せなさい」


 最近魔法で褒められてばかりのミラは、無い胸を張り、調子に乗っていた。いつもなら叩いて大人しくさせていたのだが、俺もうこれで良いんじゃ無いかと思い始めていた。なんか微笑ましいし、と思っていると、木を担いだジェニが戻って来ていた。


「お兄、この位ので良い?」


「ああ、ありがとな」


 その木を受け取った俺は、魔法で加工して圧縮した10本の棒を作り、その先に同じく圧縮加工した石の板をくっつけてお手製の鍬を作り出した。


「よし、石は取り除いたのでこの鍬でも十分耕せるでしょう。畑の規模を広げる時には声を掛けて下さい」


「これを私達が使ってもよろしいのですか?」


「もちろんです。好きに壊れるまで使ってください。次回は鉄鉱石でも手に入れて鉄で作りましょう」


 そう告げるとカーラさんたちは視線を交わし合いながら顔を綻ばせてお礼を言いながら頭を下げた。


 ああ、そうか、直接手伝わなくてもこういう方法もあるのか。


「なぁ、キャロル、チェルシー」


「「はい、エルバート様」」


「鍬の他にあったら便利だと思う物ってあるか?」


「そうですね、建設関係だと蚤やカンナ、ハンマーなどの工具でしょうか?」


「私としては薬でしょうか。誰かが病気になる度に御手間をかける訳には参りませんし」


 なるほど、薬は必須だな。建築が早く進むのもありがたい。でも薬は魔力でどうにかできる物でも無いしなぁ……あれ? 俺はいつから金を使ってはいけないと錯覚していた。希望すれば俺の領地にもできるんだし、ある程度出資する位かまわないんじゃないか?そうと決まれば……


「じゃあ、薬師、大工を雇い入れて、ついでに道具ももろもろ買ってくるか。ああ、鉄鉱石も買わなくちゃな。それに魔法陣に詳しい者も雇いたい所だな。」


「ですが、まだ村には売りに出せる物がありません。もう少し発展させて売りに出せる物を作りませんと」


 うん、まあその通りなんだが、それを実行しようとしたら5年以上は掛かるだろう。そんなに待つのは俺が嫌だ。


「まあ、それについては俺が出す事にするよ。先行投資ってやつだ、わかるか?」


「うーん、薬は分かるのですが。大工はどうなのでしょうか。エルバート様の御屋敷を立てる時だけ呼べば良いと思うのですが」


「いや、この村の住人には手に職を持ってもらおうと思ってな。技術を教えてもらえば教わった者も大工や薬師になれる。そうすれば皆が良い家に住めて、いつでも薬が手に入る様になる。俺の家を作る時だけ呼んだんじゃそこでおしまいだろ?」


 彼女達は顎に手をやりうーんと唸り色々考えている様だ。


「それは素晴らしいと思うのですが、職人たちは自分の技術を守ります。受けて貰えるでしょうか?」


「そこまで高ランクの人物に頼む必要は無いさ。例えば駆け出しに二年間で三年分の報酬を出してやれば飛びつくと思うぞ? 技術なんてもんは良くしようと考えながらやっていれば上がって行くものだしな。出だしだけ支援してやればいい」


「た、確かにいわれてみれば。流石です」


「ですが、やはり私としてはこれ以上エルバート様にご負担を掛けてしまうのは……」


「よし、じゃあ今から皆でその分のお金を稼ぎに行こうか。二人にも働いて貰うとしよう」


「お兄、何する気なの?」


「まあ、行けば分かるさ」


 俺はジェニ、ミラ、双子をつれて転移した。転移先はジェイルエルダーの森、ローブを着た骸骨の魔物で、ここの魔物の骨は生活に使われる魔道具に必要な素材であり、とても高額で買い取りをして貰えるのだ。


「ん? んん? ここって来た事無くない?」


 ミラは自分達まで来た事無い場所だとは思っていなかったのだろう。


「お兄、行けば分かるって言って無かったっけ?」


「ああ、教えてくれたのはジェニのはずだぞ? ほら、金貨10枚の」


 そう、俺がジェニにほっぺを叩かれると言う災難を受けた元凶ともいえる場所である。


「なるほどね。でもここ、推奨レベル150以上じゃ無かった?」


「だよね。誰一人推奨レベルどころか適正でもないよぉ」


「ああ、問題ないよ。魔力感知で敵が近くに居ないのは分かってるし。ここの魔物って範囲魔法使ってくるんだけど、それ以外は何も出来ないに近いレベルで雑魚なんだよな」


「そう言うって事は魔法も封じる手立てがあるって事よね?」


「ああ、もちろんだ。ちょっと反則臭い手でキャロルとチェルシーにも倒して貰おうと思う」


「「ええっ?」」


「大丈夫だ。危険な目には合わせない様にする。信じられないか?」


「い、いえ、そっちじゃなくて。私達が倒すなんて……」


「ふっ、そうだな。指先一つで倒して貰おうじゃないか」


 俺は彼女達にそう告げ、大木を伐り蔦でくくり鐘を突くかのように水平にした状態からさらに片側に蔦を付けて引っ張り上げて、簡易的なトラップの様な物を作成した。


「普通に倒した方が楽なんじゃないのぉ?」


 まあそう思うよなぁ。


「それはそうだが、それだと二人に倒させられないだろう?」


「そこまでして倒させる事に意味あるの? 流石にそれじゃレベルアップしないでしょ?」


「ふっふっふ、妹よ、いつから安全に倒したら経験値が貰えないと錯覚していた。よーし完成だ!」


 俺は、チョイチョイと双子に手招きをした。双子はソワソワしながらもどこか期待をした様に小走りで寄って来た。


「いや確かに大木だけども、打ち付けられる方も立派な大木だけども、それで倒せるの? 当てるの相当厳しいと思うんだけど」


 未だに疑問を投げかける妹をスルーして、まずはキャロルに説明をする。


「そう、そこを外すだけで大丈夫だから。俺が外せって言ったら頼むな?」


「はいっ!」


 本当に指先一つでも外せる様な仕掛けにしてあるので彼女も力強く頷いた。


「良し。じゃあ外せっ!」


「え? あっはい!」

 

 まさか今言われると思っていなかったのだろう。少し戸惑っていたがすぐに仕掛けを発動させた。それを確認した後、魔力感知にて魔物の場所を把握していた俺は、その魔物の目の前まで飛んだ。そしてその魔物を打ち付けられるであろう大木の前に転移で飛ばせた。


「テレポート、テレポート」


 そして俺も、すぐさま転移で皆の元に戻った。


「うっわっ」


「流石お兄、せこい」


「はわわ」


「え? ええ? エルバートさまぁぁレベルアップが止まりません。なんですかこれ? なんですかこれぇ?」


 そこには砕け散った骨とつるされた揺れる大木、そして何故か俺を残念そうに見る二人に混乱している二人、誰とも言わずとも分かるだろう。


「キャロル、レベルいくつになった?」


「ええと、53レベル……です」


「一匹で?」


「嘘?」


「まあ、そんなもんだよな。次チェルシー行くぞ!」


「は……はいっ!」


 そうしてあと20回程繰り返し。二人は85レベルまで上がった。


「エル!ずるいよぉ、私のレベル上げしてくれるっていってたじゃん」


 ミラはいきなり焦り出して、自分の番だろうとせっついて来た。


「私達の努力が……たったの30分程度で……」


 ジェニは頭を抱え、どうしてこうなった。と呟いていた。


「はいはい。分かった分かった。じゃあ、三人でデートするのとレベリングどっちがいい? 洋服でもアクセサリーでも好きな物買ってやるぞ?」


「なんかエル、私達のレベル上げたくないみたい……」


「お兄、説明を求めたいんだけど」


「あ~まあ、なんだ、レベルが高すぎると色々問題が起こるもんだからな。戦争に巻き込まれたり魔物の群れ討伐で強制の様に駆り出されたり、俺はもうそう言うの避けられそうに無いからせめてお前達だけでも安全な立ち位置に居て欲しいんだよ」


 俺はしんみりとした顔で本音を隠さずに告げた。やっぱり二人は納得がいかないと言う顔で睨んでいる。


「どうしてそう言う事言うの?」


 普段の残念な雰囲気が吹き飛ぶような真剣な表情のミラが疑問を投げかけて来た。


「いや、ほら、女性は子を成して家を守る、男は外敵を倒して糧を得てって言うのが普通だろ?」


「言いたい事は分かった。だから怒らない。でもそう言う事はせめて子供を宿してから言ってくれる?」


 怒らないと言っているはずなのに……もう怒ってますよね? ジェニさん?


「いや、だから、このレベル帯位でとどまって置くのが一番安全なんだって」


「せっかくジェニちゃんが怒らないって言ってくれてるのにどうして分からないの?」


 ミラはどんどん表情を曇らせて行って、もう泣きそうになっている。だが、どうしてそこまで強さを求めてるんだ? 確かに弱いよりはいいけどもう俺達は弱くはない。中途半端に強すぎても叩かれる。


「ごめん、どうしても嫌なんだ」


「はぁ、お兄は私を失うのが怖いのよね?」


「あ、ああ」「ううぅ……わ、私は?ねぇ」


「じゃあ聞くわ、私がお兄を失うのを怖がってないとでも思ってる?」


「あ……いや、だが、理由は説明しただろ?」「ちょ、ちょと、ねぇ」


「私がお兄より強くなったら反対の立場を受け入れられるの? 意地でも私より強くなろうとしない?」


 ああ、そうか……納得した。確かにそれは断固拒否だな。じゃあやっぱり危険を覚悟で強く成るしかないか。ってミラは話を聞いていたんじゃ無いのか? なぜ体育館座りで涙を堪える様ににらんでいるんだ?


「そうか。ああ、そうだな。分かったよ。だけどそれならガチでレベリングして行く事になるけど良いのか?」


「もちろんよ、とっくの昔にそう言う生活をする覚悟は出来ているわ」


 俺はジェニと見つめ合い頷いた。


「それでミラ、どうしてそんな顔してるんだ」


「わたしの話……聞いてくれないから……私、きっといらない子なんだ……」


 今のミラは意地でも涙をこぼしたくない心境なのだろうか? 上を向いて必死に堪えている様だ。俺はミラに近づき安心させるように声を掛ける。


「馬鹿な事を言うなよ。ミラが危なくなったら俺は死んでもお前を助けに行くぞ」


「や……やだぁ、死んじゃやだぁぁぁ」


 そしてミラは必死にため込んだ涙を鼻水付きで俺の衣服にしみこませた。


「そうね、今一番死ぬ確率が高いミラには一番きついレベリングをして貰いましょ。死ぬ位に」


「「「ひっ!」」」


 何故かジェニの言葉にミラだけでなく双子も怯えるような反応をした。確かに怖いけども。


「ジェニ、もういいぞ? わざときつく当たらなくても。本来は俺の仕事だ」


「え?素なんだけど……」


「……取り合えず。今日は帰るか。」


 そうして俺達は魔物の素材を換金した後、取り合えず一通りの薬と工具そして鉄鉱石を買いそろえて村に届けた後、屋敷に転移した。

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