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魔法使いが魔法使いになりたくて異世界転生をする(英雄の生まれ変わり)  作者: オレオ


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愚痴


 俺は屋敷に転移して、ジェニとミラに断りを入れて、公爵様の愚痴を聞きに行く事にした。


 彼女ルクレーシャさんは、俺達にとっての恩人であり、異性としてでは無いが大切な人でもある。


 最近記憶が戻り、英雄の知識も得た上で昔の事を思い出すと、分かっていた事ではあるがさらに強く思う事がある。あの時ルクレーシャさんに装備を貰えた事が、すべての始まりだったと。


 その彼女が困っている。ならば、俺のする事は決まっている。と、俺は夕方が終わり、夜に変わる頃に公爵様の御屋敷を尋ねた。 


「ふふ、本当に来てくれたのね、嬉しいわ」


 彼女はいつもの様に、朗らかに笑い、迎え入れてくれた。


「姉さんが嬉しいと思ってくれるなら、来た甲斐がありました。それで…早速本題いいでしょうか」


「ん~、でもどうしようかしら。エル君にあまり黒い話をするのもなぁ……」


「はは、姉さん、忘れていませんか?俺の種族を」


 そう俺は人を騙し、かすめ取る事だけを考えて毎日を送って来た。この国での黒い話なんてたわいも無い事だろう。


「そうよね、私からお願いしたんだものね。じゃあ、話すわね?」


「はい、お願いします」


 彼女は意を決したかのように強いまなざしを送り、話しだした。


「えっと、私が元王位継承権第三位の王女だった事は知ってるわよね?それでね」


 と、彼女は、当然の様に話を進めようとしていたが、俺は思わず話を遮ってしまった。


「はっ!?」


 いや、知らないし。驚いたし……


「えっ!?」


 彼女は予想外だったのか、知らないの?と言う風に首を傾げ、視線を送って来た。


「ああ、ええと、俺はこの国の王族の事はほぼ一切知りません。前世で貴族の方二人と面識を持った位でして」


「まあ、そうよね。もう昔の話だもの。でも、前世って?」


 まあ、そうだよね。それも今日、言うつもりで来たんだ。


「あ~、なんて説明したら良いのか……かの英雄の記憶を引き継いじゃいまして」


「え? ええ~~? どうしてそんな事になったの?」


 オーバーな程に驚く彼女に、記憶を引き継ぐ事になった経緯を説明した。


「ほ、本物だったのね。もうっ!どうして前世で出会ってくれなかったのよ」


「はは、俺は、出会わなかった事に安堵していますけどね」


「ひ、ひどいわ……エル君、意地悪ねっ。」


 誤解してるな、ちゃんと説明しないと……でも、姉さんもこうしてみるとただの女性だな、威厳も何も無い。


「いえ、もし出会ってたら、貴方に恋をして連れ回した可能性が高いんですよね。そうなると、どうなるか分かりますよね?」


 同い年でこんないい人で綺麗だし。あ、でも、前世で王都に来た時にはもう恋仲の婚約者が二人も居たか……まあ、これは言わなくていいな。


「あ~、私……生きて無いわね。でも、恋しちゃうのかぁ~惜しかったなぁ……」


「姉さん、本人目の前にいますからね?まあ、姉さんの生まれの事は分かりました。続きを」


 俺は、この話を終わらそうと本題に切り替えて貰うように話を進めた。


「そうね、じゃあ、色々話さないとね。私はね、この家に嫁に出されたの。まあ、政略結婚ね。そこまでは良かったんだけど、この家マクレイアー家の人達は全員殺されちゃったのよね」


 なるほど、そう言う事か……でも。


「全員ですか。それは一体……」


「まあ、5年も前の話になるんだけど。兄弟で当主の座を争った結果かな。私が居ない間に全員殺し合って、残った弟が私を娶るとか言ってたんだけどね。お父様……じゃ無かった国王様がね、そんな奴を認めると思ったかぁぁって激怒して何故か私が後釜に座らされたのよ」


 お父様か、ああそうか、なるほど。道理で国王陛下をぼけちゃったとか平気で言う訳だ。


「なるほど、それで従者以外の者が居なかった訳ですね」


「そうなの、コネも無いしどうやって人を増やして仕事を割り振ろうかと頭を悩ましている毎日なのよ。こんなんじゃ、一生ここに引きこもって永遠と仕事してる人生のまま終わってしまうわ……」


 確かに、自由時間と言う物があまりなさそうだもんな。でもコネはあるでしょ……使いたくないって事か?


「ああ、それは確かに……じゃあ、俺は真面そうな人を探して来れば良いんですか?」


「ええ?ううん、そんな事頼むつもりは無かったけど……出来るの?」


 姉さんは、驚いた表情で、問う。


「うーん、使えるかどうかは、当たりはずれがありますし……まあ、でもお給金ありで人を雇うのならすぐ見つかるんじゃないですか?」


「あ~、うん、でもね。私が気に入らない人材は嫌よ?」


 あれ?意外と人付き合いは苦手なのかな?


「なるほど。取り合えず使ってみて、ダメなら解雇と言うのはやってみました?」


 まあ、雇ってみないと分からないしな、と聞いて見ると。


「ええ、でも、ダメだったわ。すぐ私と関係を持ちたがったり爵位が欲しい欲しいうるさかったりしてね、入る度に逆に疲れるって思っておかえり頂いた人達が何人かいるわ」


 マジかよ、そいつぶん殴りたい……気持ちは分からなくも無いが。


「それは、頂けませんね。では、公爵様の所と言うのは伏せて聞いて見ると言うのは如何でしょうか?」


 それならば、変なのが寄ってくる確率は減るだろうと、提案してみると。


「そうね、でも、そこを伏せて来てくれる人いるかしらぁ。優秀な人材が良いのだけど」


「まあ、それも使ってみて、判断するしかありませんね。ダメそうならヘルマンさん辺りにポイすれば良いんじゃないでしょうか。」


「もうっ、ポイとか言っちゃダメよ?」


 あれ、割と真剣に注意された。そのレベルでダメなのか?


「私の理想の弟像から外れちゃうわ」


 そっちかよ!


「えーと、大分話がそれましたが、って、あれ? 本題は人材不足ですか?」


「あ、ううん、違うの。最近ね、しつこい程言い寄ってくる奴がいるのよ。時間が無いと言ってるのに、何度も会え会えって手紙寄こして来てね、ちゃんとお断りの手紙を何度も出してるのに気が付いてくれないの……」


 そう言う話かぁ。これは、愚痴を聞くくらいしか出来ないかもなぁ。


「なるほど、そいつはちなみにどんな奴なんですか?」


「あ~うん、交渉の場に奴隷を連れて行って、足蹴にしながら話を進める様な奴ね」


 姉さんは心底嫌そうな顔をして、ため息を付きながら答えた。


「あ~威嚇の一種ですね。頭と柄が悪いように見せたいのなら、初めての相手には分かりやすいですよね」


 よくいる自己顕示欲が強い、頭の悪い奴なのだろうな。


「……エル君はそんな事しないわよね?」


「必要なければしませんよ?」


 と、答えると、姉さんはまた、深くため息を付き、お説教モードに入った。


「必要があってもしてはいけません! そんな恥ずかしい行為エル君がしたらお姉ちゃん怒るわよ!」


「はい、分かりました。でも、姉さん。彼等の大半は打ち合わせをしてそう言う行為に及んでいるんですよ? 奴隷の方も上手くやると待遇が良く成ったりするから喜んでやっていますが……」


 まあ、大抵夕食の残飯の良い所が回ってくるって程度、パンでも付けば万々歳な程僅かな差だが。


「ええ? どう言う事? そんな事する奴なら主人の権利使ってやりたい様にやるんじゃないの?」


「まあ、そう言う者も普通にいます。がやはり、打ち合わせをして言葉を選び派手な演出をする方が、相手を騙せた時気持ちがいいみたいですよ?」


「はぁ、どっちにしても最低ね」


 あれ、可笑しいな、愚痴を聞いてスッキリして貰うつもりが、俺のせいでため息ばかり付かせている気がする……


「まあ、何にせよその言い寄ってくる男はそう言う男、と言う事ですね」


 俺は脱線しまくる話を何度も戻し、話を進める。


「あっ、そうなの!でね、立場上、社交界にもたまには出ないといけないじゃない?そう言う時にどうあしらって良い物やら……帰りに馬車に乗せようとまでしてくるのよ。」


「そうですね。私、好きな人が居るんです諦めて下さい。もしくはその人を倒してみせて下さいってのはどうです?」


「はぁ? エル君? なんで倒すが出てくるの?」


「割と効きますよ?男として、倒してみせろ、出来ないなら諦めろ! みたいな言い方は」


「もう、相手の方に迷惑じゃない。と言うか、そんな相手誰にすればいいのよ。あっ、エル君がやってくれるって事?」


「そうですねぇ、それでも良いのですが歳が離れてますし……ルディに聞いて見ましょうか。彼なら強さ的にも適任です。」


「ダメ、絶対。そんな恥ずかしい事言えないわ。」


 あれ?待て。どういう事だ。


「姉さん……ルディの事好きなんです?」


「よ、呼び捨てはダメよ? あれ? あ、でも……いいのかな? それに憧れですぅ」


 むう、これは白黒はっきりさせないとダメだな。


「ちょっと、彼連れてきますね?」


 もう、ルディがいないと話が進まなそうだ。


「え?いや、だってこんな時間だし」


 ふむ、やはり動揺しているみたいだな。


「すぐ帰らせますよ。紹介して欲しかったのでしょう?」


「じゃ、じゃあ、お色直ししてから! ね?」


 これは、確定だな。恋に恋しているパターンじゃ無ければ。


「まあ、居るかどうかも分かりませんし、取り合えず声だけかけて、これそうならまたこの部屋に飛びますね」


「わ……分かったわ」


「テレポート」


 俺はもう何度目になるのか、慣れた彼の家の前に転移した。そして、俺は初めてこの家のドアノッカーに触れた。


「あ、兄さん、いらっしゃい。どうかしたのですか?」


「ちょっと、兄の権限を行使して連れ出してもいいか?」


 俺は、昔の事を引き出し、強権を発動させた。


「もちろん構いませんけど、理由は聞かせて貰えないんですか? ん? 兄さん?」


 彼は、何かに疑問を持ったように呼びかけたが、取りあえずは言った後だと俺は転移をした。


「よし、じゃあ、行くぞ。テレポート」


 そして、彼女の私室である先ほどの部屋に転移で戻り、俺達は椅子に腰を掛けた。


「あの、兄さん? 記憶が?」


 ああ、そっちか。無事に? 戻ったぞ。


「ああ、それとな、お前に女を紹介してやる。素敵な女性だぞ」


 と、俺は、今日連れて来た理由を話した。


「へっ? いや、だって……えっ?」


 きっと、前世の姉様の事を言っているのだろう。まあ、今の姉さんもいっとけよと、俺はとても適当な事を考えながらルディと話を進めた。


「大丈夫だ。お前が決めろ」


 そう、ハーレムルート、個別ルート、どっちでも良いんやで? 泣かせたら怒るけどな。ああ、ブーメランだなこの言葉は……そこまで思考が至り、俺は考える事を止めた。


「まあ、僕の心は決まっていますよ。兄さん」


「ならいいさ。だが、お前の好みだと思うんだけどなぁ……」


 ルディとそこまで会話が進んだ所で、姉さんが戻って来た。


「うわっ、もう居たっ。エル君早い、早いよ! 女の子はね、準備に時間が必要なの!」


 姉さんはまだ準備中だったみたいだ。俺には十分営業中に見えるんだが。


「ほらルディ、挨拶」


 それを待っていると、いつまで掛かるか分からない事は色々な所で経験済みだと、俺は強制的に話を振った。


「ええと、兄さんのお知り合いの方ですよね。夜分にすみません私の名はルディ、よろしくお願いします」


「え、あっ、はい。私の名はルクレーシャ・マクレイアー公爵です。是非、よろしくお願いします」


 よし、これで、このまま話が進みそうだな。


「え? 公爵様? ええ? ここはオルセンですか? 兄さん?」


 ああ、説明は無しで来たんだから当然の疑問だな。


「そうだ、この人の事で俺から頼みがあってだな」


 俺は、説明をしようと、まず、頼み事がある事から伝えた。


「分かりました。お引き受けします」


 またそうやってこいつは……よし、試してやろうじゃ無いか。


「そうか、じゃあこの人と結婚してくれ」


 ふっ、ルディの事だから、失礼な物言いは出来まい。どう答えるんだ?


「はい、兄さんがそう言うなら」


「「ええっ!?」」


 俺と、姉さんは、かけ離れた表情をしながら、同時に驚愕した。


「待て待て、今のは冗談だ。この人が変な奴に付きまとわれているから断る為に名前を貸して欲しいと言うか、言い寄りたかったらルディを倒してからにしろって言っても良いか? って聞きたかったんだ」


「はぁもう、兄さんはいつもそうやって悪ふざけばかり、引く事が出来る冗談で良かったですね」


 うう。痛い所をついて来やがる……


「エル君が言ってくれたら、ルディさんが私の旦那様……エル君!!」


 姉さんが凄い目でこっちを見つめた。あれ? 引く事が出来る冗談じゃなかったか?


「は、はい! どうしました? 姉さん」


「姉さん?」


 ルディは、俺が姉さんと呼んだ事を不思議に思って疑問を口にした。


「あっ、うふふ、エル君とはとっても仲良くなって姉弟みたいに思っているんですよ」


 姉さんは、今更のような気もするが、品のある笑顔を浮かべ、疑問に答えている。


「俺の命の恩人であり、尊敬できる人だぞ。人が好過ぎて心配だけど……」


 俺は、ルディにお世話になった人だと、人柄なども補足した。


「もう、私はそんなおまぬけさんじゃありませーん。あっ、ええと……」


 だが、そんな褒め方はして欲しくなかった様で、姉さんはいつもの口調が出てしまい困惑している。


「そうでしたか。僕、いえ、私からもお礼を言わせてください。もちろん名前の方も使って頂いて大丈夫ですよ、関係を疑われたら呼んでください。飛んでいきますから」


「あら、私の為に、飛んで来てくださるなんて……」


 彼女は飛んで来てくれると言うフレーズが気に入った様で、頬を赤らめながら祈る様に手を合わせ手を傾けながしなを作った。


「ああ、ルディもテレポート使えたんだよな。そん時はよろしく頼むな」


 俺がそう言うと、ぶすっとした顔で睨まれた。あれ? ルディ情報をさりげなく話したのに俺何か失敗したのか?


「じゃあ兄さん、要件は終わった様なので、こんな時間だし失礼しますね」


 ルディは役目を果たしたのならば、とそう告げた。


「ああ、悪かったな、いきなり強制して呼び出して」


 俺は、最近色々無理を言い過ぎている気がして来て、謝罪をした。


「あの、良かったら、また来て頂けませんか?」


 姉さんは、やっぱり好きみたいだ、一生懸命アピールしようと頑張っている。


「はは、構いませんよ。では、テレポート」


 そして、ルディはどっちに答えたのか分からない様な受け答えをして転移していった。やるな、ジゴロか!? そして、ときめく乙女の顔をしている姉さんが、俺に向かって景気よく口を開いた。


「じゃあエル君、次の社交パーティー、一緒に行くわよ。良いわね?」


「ええ!? ルディを誘うんじゃ無いんですか?」


「その為にエル君と行くんじゃない。応援してくれてありがとね、私頑張るからっ!」


 姉さんは、柔らかそうなこぶしを握り、強いまなざしで俺を見つめた。


少し次話投降のペースが落ちると思います。

週二回は上げられるようにするとは思いますが・・・


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