木材加工
よし、今日は何をしようかな。と、キャロル達を連れて来た俺は、やるべき事を考えて居た。
「やっぱり、家を建てるのが後れているのは、加工された木材が無い事が原因だよなぁ」
俺は必死に木を削り、加工しようと頑張っている者達を見つめ、呟いた。
「じゃあ、どうするの? 木材を魔力で作ってみよっか?」
そうミラが提案して来た。ん~相当数必要なのに魔力で作るのも大分時間が掛かる気がするんだよなぁ。って木は作れるのか? と、思考していると。
「魔力で加工だけした方が早いんじゃない? 木は一杯あるんだし」
と、ジェニがそっちの方が早いだろうと、ミラの提案の補足をした。
「よし、ロルさんに相談に行こう」
そう言い、木を削っているロルさんの所に行った。
「おはようございます。今日も手伝いに来ました」
と俺が言うと、皆が手を止めて『おお、エルバート様!』と、歓喜の声を上げた。
「助かります。ですが、何をして頂いたら良いのやら……」
ロルさんは困った様にそう言っているが、一緒にやるのはダメなのだろうか。
「今日は、木の加工を魔力でやってみようかと思います。失敗するかも知れませんが……」
俺がそう言うと、それを聞いていた男が声を掛けて来た。
「エルバート様、木はあちらにいくらでもありますんで試して頂けるとありがたいですな」
彼は、最初に木を伐り倒した時に、声を掛けた男で……名前、聞いてなかったな。
「じゃあ、試しで使わせて貰いますね、ええと、名をまだ聞いていませんでしたね」
「ああ、これは失礼をしました。私はダッドと言います、どうぞよろしくお願いします」
「ダッドさんですね、分かりました。こちらこそよろしく」
俺は、そう答えた後ジェニ、ミラ、俺と三人分の木を担ぎ上げ、良し、やるぞっ!と、二人に声を掛けると、村人達から何故か歓声が上がった。
「おにーちゃん、すごーい」
「レベルが上がるとあんな事まで出来る様になるのかぁ」
「ああ、こんな方に村を守って頂けるなんて、神よ、感謝いたします」
「へへ、狩りしてる時なんてもっと凄いんだぜ?」
「「エルバート様、凄いっ!」」
などと、思い思いに拍手をしたり拝んだり……何故拝む!まあ良いか。取り合えず今はこの木の加工だ。
「さて、一番手は誰だ?」
と、俺は二人を見つめ、誰が最初にチャレンジするか。と、二人に聞いた。
「ミラで場を温めたい所だけど、そうね、今日は私がやってみようかしら」
ジェニが自分からやると言い出したので、俺は木を一本差し出して頷いた。
「まずは、イメージよね。そうね、これが木の板になると、どれくらいの大きさになるのかしら」
ジェニはまず木の大きさを計り、どのくらいの大きさの板が取れるのかを考えだした。
「この位かしらね。じゃあ、行くわっ」
と、掛け声をして、ジェニは魔力を放出しだした。しばらく待ってみると、ジェニは首を傾げた。
「お兄、何も起こらないんだけど……何が悪いの?」
ジェニは口をとんがらせて、どうして上手く行かないのかと、問いかけて来た。
「ふぁーっはっは、私の事を馬鹿にするからだよぉ! ふふん、私に掛かればこんなもの」
ミラがその問いかけを遮り、魔力を込めてうなり出した。すると、ギギギと凄い音を立てながらも、木の板に早変わりした。
「そ、そんな、ミラに……負けた? いやいや、これは夢よ。お兄、私もうこの夢起きたい」
ジェニは地に膝と手をつき、がっくりと頭を下げて、この現実を夢だと決めつけた。
「ミラ、やるなぁ。ジェニはまだ魔力を使い出して日が浅い、嫌なら努力するしか無いな。それと、現実だぞ」
ミラは、俺が目を輝かせて褒めた事が相当嬉しかったのか、三本とも加工して作業を終わらせた。
「いいぞ、凄いぞミラ。じゃあ、あの山になってる木をやれるだけやってみろ。そして、お前の凄さを村の皆に見せつけるんだ」
「えへへぇ、分かった。よぉーし、全部やっちゃうぞぉ~」
とても緩い顔をしたミラが、肩に手を当てもう片方の手をぶんぶんと回しながら軽快に歩いて行った。
「お兄がやってない。ズルい」
ジェニは、俺がチャレンジすらしていない事に不満を漏らした。
「俺は倉庫の続きもやらなきゃいけないしな。それに、あれくらいなら出来ると思うぞ?」
「じゃあ、倉庫終わらせてからやってよぉ、お兄に教わりたい」
「ああ、そう言う事か、ちょっと待ってろよ」
と、ジェニに告げ、昨日の続きの食糧庫の扉を作成した。蝶番にめっちゃ苦労したが結構良い物が出来た気がする。よし、ジェニの要望を叶えに行くか。と足を向けると。
「どーお? エル! 凄い? 褒めて?」
ミラがそう言いながら、俺の周りをぴょんぴょん跳ねた。まさか……と加工前の木の山があった所に目を向けると、そこには、大きさ別に分けられた、木の板が並べてあった。
「凄いな。ジェニ、今回だけは負けで良いんじゃ無いか?」
「むう、ここまでやられちゃ仕方が無いわね、悔しいけど、今日の所は諦める」
今日の所は、か。ここら辺が優秀さの所以なのかもな。ほんとにこいつは諦めないもんなぁ。などと、考えて居ると、ダッドさんがこっちに走って来た。
「エルバート様、木が無くなってしまったので、またお願い出来ないでしょうか? 30レベルの森からはもう取らない方が良いと思うので、護衛をどうか」
「ええ、もちろん構いませんよ。ええと、じゃあそっちの平均70レベルの森にしておきましょうか」
「よ、宜しいんですか? わらわら出てくるかも知れませんが」
「70レベル程度なら100匹に囲まれても、対応できると思いますよ」
「お兄、一人で100はきつくない?守りながらだよ?」
「いや、全員での話だよ?」
「ええーエルならいけそうだよぉ。一人でも」
「ははは、守りながらで無ければいけるんですかい?」
ダットさんは呆れた様な顔でそう言いながらも足をそっちの方向に向けた。俺達も、そっちの方向に足を向けついて行くと、途中途中で声を掛けて、気が付けば6人の屈強なオッサンズと肩を並べながらワイワイと歩いていた。
「ちなみに、エルバート様のレベルはいくつ位なんですか?」
まだ、名前も聞いていない男が興味津々な顔で、俺に問いかける。
「馬鹿野郎っ。失礼だろうが! すいません、こいつは何も考えてねぇ野郎でして」
いきなり性格の豹変したダッドさんが怒鳴り声を上げた後、俺に謝罪して来た。
「いえ、別に構いませんよ、今128になった所です」
「「え?」」
ジェニとミラが俺のレベルを聞いた途端、驚いた表情をした。
「ああ、言って無かったな。ほいっ共有っと」
俺は、ステータスの共有を名前とレベルだけ開示して全員に見せた。
「疑っていた訳ではありませんが、凄いですな」
ダッドさんがそう言うと、他の者もうんうんと頷いた。だが、ジェニとミラは深刻そうな顔で視線をこちらに向けた。
「お兄、もうレベル上げちゃダメだからね」
「そうそう、私達のレベル上げの手伝いしてくれるって言ったよね?」
「分かったから、もう着いたし取り合えず集中しろよ?」
もう森が目の前に来ていたので、そろそろ気持ちを切り替えろと告げると、二人は黙ってうなずいた。
「おめえら!即効でおわらせっぞぉ、気合いれろやぁ」
「「「「「おおおお!」」」」」
そして、前回と同じくダッドさんの号令で皆が一斉に動き出した。そして、もうちょっと、もうちょっと、と、伐る本数を増やしていくと、魔力感知をしていた俺は驚愕した。200近い数の魔物が俺達の存在にいきなり気が付いた様に、こちらに向かい出したのだ。
「一旦離れるぞ、テレポート」
俺は、伐った木ごと、村へと転移した。
「これは……転移ですかい?倒した木まで……ありがたい事で」
と、ダットさんはのんきに聞いて来たが、そんな場合では無い。
「お兄、どうしたの?」
ジェニは、俺の声色で察した様だミラも真剣な表情で視線を向けている。
「魔物の逆鱗に触れたらしい、襲ってくるぞ。最低で200、準備しろ」
「「分かった」」「「「「「ええっ?」」」」」
「大丈夫です。間違ってもこっちには来させませんから。」
「いや、ですが、最低で200って……」
ダッドさんは俺の言葉を聞いて無言でロルさんの元に走り、残った彼らが戸惑いの声を上げていたが、俺は、ジェニとミラに目で指示をして、共に森の方へと走り出した。
「お兄、私、突っ込みたい。いい?」
「エル、私も」
「分かったよ。じゃあ、なるべく倒さない様に引き付けてやるから、こぼれたのを片っ端から片付けてくれ。」
「「分かった!」」
俺達は作戦とも言えない打ち合わせをして、森から出てくる群れを目視で確認した。
「倍、は居るわね……」
ジェニが、あっけにとられた様に数を大まかに数えてそう言った。ああ、500近いかもしれないな。
「うん。あそこに突っ込むのはやっぱり無理かも」
ミラは、あの中に特攻するのは危険すぎる、と、前言撤回をした。
「やるなよ?絶対やるなよ?」
俺は心配になり、ジェニを見ながらお前もダメだからな、と念押しをしたが……
「煽らないでよ。やりたくないって言ってるでしょ」
何故か煽った事にされた。お前はまだ何も言っていなかっただろ!
「煽ってねーよ!って俺は行くからな。それと、俺も全力で倒す事にするわ、これ適当に引いてたら漏れすぎる。村が危険だ」
俺は、そう言うと同時に走り出し、群れの中心へと特攻を掛けた。
「ひゃぁ~、あの中走って行っちゃうんだ。やっぱり私のヒーローは凄いなぁ」
「ふふ、そうね。でも置いて行かれるのも嫌。頑張らないと」
二人は、軽く笑みを浮かべながら、小走りで様子を伺いながら、俺の後に続いた。
俺は、MPの残量を見て、まだ三分の二以上残っている事を把握して、魔法を使う事にした。前世の記憶では、中級範囲でMP消費は300、十回以上は余裕でイケる。平均70レベル程度なら真面に当てれば一撃だろう、だが、まずは確認から……そうだな、即効性の高そうなサンダーレインにしよう。
雷系の中級範囲魔法である、サンダーレインを、取り合えず固まっている場所に放ってみた。
「サンダーレイン」
すると、即座に雷が降り注ぎ、固まっていた、40匹くらいの数の魔物が焦げた様に煙を上げて、絶命していた。周りに居た15匹程度も行動不能になっており、俺は、これならば、と、立て続けに5回放った。
「サンダーレイン」×5
とても広範囲に雷の雨が降り注ぎ、バチバチと音を立てて嫌な臭い、煙、発光、などでむちゃくちゃだった。結果、最初に一撃を含め200匹程度だろうか、行動不能を含めれば半数以上の魔物に効果をもたらした様だ。
「お兄、ストーップ」
「ちょっと、私のポジション取らないでよぉ」
ミラよ、お前な……いや、何も言うまい。
「分かったよ。ここからは、ちゃんとやらせてやるから」
俺は二人にそう言ってトレインを開始して少しずつ彼女達に擦り付けて行き、二時間程走り回った後とうとう最後の一匹になったので、トレインを止めて俺はとどめを刺した。
「ああ~、倒したぁ!」
「はぁ、ここまでして貰って置いて、我儘過ぎよ」
「え? ジェニちゃん、変わり身はやっ」
「お前な、二時間もただ走り回らされて、第一声がそれか……」
俺は、呆れた顔でミラに目をやった後、村は大丈夫だろうかと村の方向に走りながら目を凝らした。
村では装備を固めた三人を前に置いて、戦えない者はその後ろの固まっていた。一応、防衛をしようと試みた様だ。だが、レベルを考えて引く準備をしていて欲しい物だな。無駄死にはさせたくない。
そして、俺は彼等の前に到着して状況を教えた。
「魔物の群れの討伐は完了しました。しばらくは魔力感知で探って置きますので、もう、警戒を解いても大丈夫ですよ」
俺がそう告げると、村人達が物凄い歓声を上げた。
「「「「「「「「「「うおおおぉぉ」」」」」」」」」」
それに、若干気圧されていると、ロルさんが近づいて来て、声を掛けてきた。
「重ね重ね、なんと、お礼を言って良いのやら、我らは貴方に従います。何かあれば、言いつけて下さい。エルバート様」
ロルさんは地に手をつけ、まるで土下座をするかの様に頭を下げた。……これは俺が望んだ帰る場所では無いな、困ったな。だけど、まあ、仕方ないか。
「自分の領民を助けるのは当たり前の事です。ですが、何かあった時は、よろしくお願いしますね」
俺がそう告げると、他の者達も土下座をして嬉しそうに頭を下げた。
「お兄が、領主様っぽい事してる」
「なんか、不思議、エルの癖に」
俺は、表情を変えない様にミラに近づき、ミラの頬に手を添える様に錯覚をさせながら思いっきりつねってやった。こいつめ、最近舐めてるな。
「いやぁぁあああ、ごめんなさい、ごめんなさい、やめへぇええ。いだだだだ。ぎぃやぁぁああああ。」
そんなに大げさにしたって止めてやらないぞ。ほれほれ、もっと泣け。
「お兄、ほっぺちぎれちゃうよ? レベル差考えて。」
俺は、ジェニにそう言われた瞬間気が付いた。やり過ぎた。ミラは顔を引きつらせて本気で泣いている。
「ハイヒーリング。ごめんミラ、やり過ぎた」
「やぁぁ~~」
「悪かったって、なっ、ミラっ」
「やぁっ」
ああ、でもこれくらいで済んで良かった。もっとレベル差が出来たら本当にちぎれてしまうんだろうな。恐ろし過ぎる……ミラには後でお詫びをしなければいけないな。俺はそう思いながらミラのご機嫌を取り続けた。
案外けろっと機嫌を直したミラをよいしょして、木材加工の続きをやらせた。だが、ほんの数本で、魔力が切れて、意識を失ってしまったので、俺が続きをやり、ジェニに教えてやってその日の仕事を終えた。
「では、また明日」
俺は、そう言い残し、二人を連れて、屋敷へとテレポートした。




