準備
村予定地を歩き、声を掛けられた。
「ああ、エルバート殿、お戻りになられたのですね。エミール殿に聞いたのですが、正式にこの地の領主になられたとか?」
「あ~、はい、まだ、正式にと言う訳では無いんですけどね。国からやってみないかと、言われています」
「な、なんと、お国の方から……ですか。私共と致しましても、そうなってくれれば大変嬉しゅうございます」
ロルさんは、打診がこちらからでは無い事に驚き、是非やって欲しいと笑みを浮かべた。
「まあ、その事はさておき、どうですか? 開拓で苦戦している所はありませんか?」
「いえ、おおむね順調と言えますが、何分ほぼ全員が素人ですので、時間が掛かってしまう事は否めません。」
ふむ、建築系は俺達が関わっても、大して進捗の向上はしないだろう。でもなぁ……
「そうですか、困ったな、公爵様にこの村をよろしくと言われた手前、何もしないのもなぁ……」
俺は、何か仕事を下さいと、遠まわしに行って見た。
「こ、公爵様……ですか!?そ、それは……凄いですね」
あっ、そうか、最近慣れて来たから何とも思わなくなって来たけど、確かにビビるよな。
「ええ、だから、俺も、何か功績を上げないといけないのかな、と言う強迫観念に襲われてまして……」
まあ、明日言った時に何か聞かれたらどうしようかな?と思ってるだけなんだけど。何だかんだ言って、行く行くって言って、結局何かが起こってこれなかったからなぁ……何にもしない奴だと思われそう。
「そう、ですね。で……では。水をお願いします。川は少し遠く、運ぶのが大変なので、井戸を掘らねばと言う話をしていた所でして」
ああ、なるほど、確かに俺向けの仕事だな。
「分かりました、では掘る場所を教えてください」
「あ、いえ、まだ、何も出来ていないので、場所はどこでも大丈夫です」
そうか、後から都合の良い場所に作りたい物を作れば良いだけだったな。
「じゃあ、中心だし、ここでいっか」
と、場所を決めると、ミラが、問いかけて来た。
「どうやって掘るのぉ?」
さて、どうやるかな、道具はあるのか? ん~……ああ! そうか!
「ふふ、見てろよ、って上手く行くか分からんけど」
俺は、そう言いながら、イメージを膨らませた。前世の前世?にある様な、井戸を思い浮かべ、まず、魔力で土を吸い上げるイメージで土を掘り出した。
「なっ、なんと!! これは一体……」
「おお、エルすごーい」
「私のお兄が……いつの間にか高性能になってる……」
三人があっけにとられている間も作業は進み、取り合えず水をくみ上げられる所までは掘り下げられた。
「よし、次は、っと」
そして、岩で周りを固めるイメージで周りの土を囲った。どうせならと、石造りの屋根も作り、即座にちょっとした井戸が完成した。
「エルバート様は……大魔法使いでしたのですね」
ロルさんは、殿から様に呼び方を変え、俺を大魔法使いと呼んだ。
「いえいえ、そんな称号は持っていませんよ」
俺はそう言いながらもステータス画面を見て、最近見てないけど何か変わってたりしないかなと、目を通すと……
「あ、大魔法使いに……なってる」
俺は、色々称号が追加されて、ステータスも大幅に上がって居る事に気が付いた。
「自分の事なのに、どうして気が付かないの」
と、ジェニに突っ込みを入れられたが、しょうがないだろ。
「記憶を失ってる時、散々確認したっての。そん時は無かったんだよ。何でだろう」
俺は、不思議に思っていると。
「記憶を失っていたのですか、それでしたら、あり得るかも知れませんな。称号に関する記憶が無くなると、称号が消える事がある。と聞いた事があります」
そう、ロルさんが教えてくれた。
「へぇ、じゃあ、エルは記憶は失う前は持ってたって事になるね。お馬鹿さぁん」
ミラは、してやったりと言わんばかりにニヤニヤとした。俺は、一つも反応をしない様、気を付けながら無視をした。
「よし、井戸は終わったな、次はどうしようか、ロルさん、他に要望はありませんか?」
「え? あ、どうでしょう。あ、では石造りの倉庫をお願いしたいのですが、宜しいでしょうか? 食材を保存する為にしっかりとした物をと思っていた所でして」
「ああ、それは大切な物ですね。では、まだMPも残っていますし、やってみます」
俺は集中して、デカイ石の箱を作り後は扉だけと言う所で立ちくらみに襲われ、魔力を放出する事を中断した。
「はぁはぁ、MPが無くなったっぽいな、続きは明日にするかな」
「凄まじいですな。エルバート様なら、お一人でも一週間もあれば、村を作ってしまえそうですな」
ロルさんは終始圧倒された様に、表情を硬直させ、ただただ、驚いていた。
「じゃあ、私もやってみようかな」
と、ミラが、名乗りを上げ、目をやると、チャレンジしようとしていた。
「ムムムムム……ヌヌヌヌ……」
俺が、扉にしようとした場所に、薄い石の様な物が、盛り上がって行き、20センチの位の所で止まった。
「お? 水除か? 考えたな」
俺は、水除の事までは考えて無かったので、ミラを素直に褒めると。
「そうやってすぐ馬鹿にして……良いもん。もうスリスリしてあげない」
ミラは、意味が分からない事を言い出した。馬鹿にして来たのはお前だろう……
「いや、素直に褒めたんだが……それにスリスリってお前、それ、俺の為にやってたつもりなの?」
俺はそこで初めて、ミラがふらふらしている事に気が付き、MPが尽きて止めた事を悟り、魔法の仕組みに驚いた。ミラは、この程度で魔力が尽きる程少なくないはずだ、と、なるほど、イメージで作り出すものへの理解が深いほどMP消費が下がるのか、と確信に近い予測をした。
「なるほどなぁ。もしかして、木材とかも魔力で作れたりするのかな?」
「どうだろうねぇ。そこら辺の木を伐って削れば出来るのに、そんな事した人なんているのかなぁ?」
ミラは、先ほどのやり取りをもう忘れてしまったかの様に、そんな人いないんじゃない?と言ってきた。
「なんにせよ、もう明日にするしか無いでしょ? 二人のMPが無いんじゃ」
「ジェニもやってみたらどうだ? イメージとかお前のがミラより正確に出来そうだし」
「……どう、やったらいいの?」
ジェニが興味を示したので、俺は出来るだけ分かりやすく、教えてやると。
「へぇ。魔法ってこうやるんだ。火と水なら使えそうかな。でも、地属性は厳しいかも」
と、ジェニは口で一度教えてやっただけで、そのまま、ファイアーアローを使った。こいつ、魔法の分野でも天才かもしれない。
「ジェニちゃん……何でも出来てずるい」
ミラは、苦い顔をして、アイデンティティーが無くなりそうだと不安がっていた。
「相変わらず馬鹿だなミラは、お前にはその愛らしさがあるじゃ無いか。お前はそのままで良いんだよ。」
と、俺は、ミラを慈愛に満ちた目で見つめ、頭を撫でた。
「そうね、ミラは変わっちゃダメよ。ミラにはそれがあるからお兄に好かれたんだから」
ジェニも、ミラを慰める様に、そう告げた。
「えへへ、そうかなぁ? そうかなぁ! 分かった。じゃあこのまま頑張る!」
ミラは、とても嬉しそうに、鼻歌をふんふんふん~と謳いながら手を後ろで組み体を揺らしている。
「さて、じゃあ、屋敷に戻るか。ロルさん、明日から当分通いますのでよろしくお願いしますね」
「え?それはありがたいのですが、どこから通うのですか?」
ロルさんは近くに町など無い事を不信に思ったのだろう。だから俺は実際に見せた。
「こういう事です。ではまた明日。テレポート」
そうして、俺達は屋敷の居間に戻り、忘れていた事を思い出した。
「ひっ、来るなぁ……化け物め……謝るから来るなぁ……」
ああ、そうだった、隷属を解除したばかりで不安定なローズの為に、二日ほど姿を消すと言ってあったんだった……エミールも『ああ、せっかく落ち着いてきたのに』と嘆いている。
「悪かったよ、記憶が戻ったばかりで混乱してたんだ、隷属解いた事忘れてたよ」
と、告げると、エミールが立ち上がり、口を開いた。
「マジか! やったな、エル!」
やっと普通に喜んでくれる奴に会えたよ。まったく。だがな!
「ああ、迷惑をかけ……いや、お前は得したんだったな。二人の裸を見て! 裸を見て!」
俺は、あの時の事を忘れていない。あのうっひょーって顔で立てた親指を。理不尽でも受け取れ、俺の怒りを。
「ちょ、おまっ! 待てよ、あれは、あいつらがお前が居なったって、風呂から服も着ないで出て来たからだろ! ローズ、違うからな!」
エミールは必死に不可抗力だった事を説明したが。
「エミール、信じてるから。だから近づけないで。お願い……」
ローズはそんな事より俺の事の方が重要らしい、俺を近づけるな。と、エミールに懇願していた。
「と、言う訳なんだ。悪いエル、用が無いならローズ連れて部屋に行かせて貰って良いか?」
「あ~、ちょっと待った。近づかないから二人ともそのままで話を聞いてくれ。隷属を解いたら公爵様に一度連れて来いと言われている。明日行こうと思うんだが、どうだ?」
俺がそう告げると、二人は見つめ合いながら相談している様だ。
「んあ~ローズは一人で行くと言ってるんだが、俺が連れて行くんじゃダメか?」
そんなに嫌か……まあ、俺も味わったあの衝動、それ以上のものが怖さに変換されて襲って来るなら納得は出来るんだけど。ちょっと凹むなぁ。
「はぁ、分かった。大銀貨2枚やるから、今からお前達だけ王都に送る。宿でも取って取り合えず気持ちを落ち着けろ。それでいいな?」
大銀貨を一枚ずつ指ではじきエミールとローズの手前に飛ばした。
「ああ助かるよ、色々悪いな。王都で稼いで返すからよ」
怖がって受け取る様子の無いローズの分もしっかりとキャッチしたエミールが礼を言っていた。
「いや、まあ気にすんな。元々俺が引き受けた事のつけなんだからな」
「……ありがとな。忘れないから」
エミールは、自分自身に対して頷いてから忘れないと力強く言った。
「まあ、仲間なんだ。これ位は頼っていい。裏切らなければな。テレポート」
俺は、エミールの真剣な感謝に照れ、照れた事を悟られぬように試す様な視線を向け、緩くしてるからと言って別に何でも許す訳じゃ無いと釘を刺した。それにこれ以上お礼を言われても困るから、と強制的に飛ばした。
「あ、やばっ」
俺は、毎度おなじみになったMP切れにて意識を失った。
目が覚めると自分の布団に寝ており、ジェニとミラが横で寝息を立てていた。
「ああ、目が覚めたは良いが、どうするかな……」
二人を置いてどこかに行くと目が覚めた時が心配だ。だが、起きているのにずっとここに居るのも辛いだろう、色々と。
「いや、思い切って手を出してみるとか」
俺はもう、いっその事、と、実行する勇気も無いのに口に出していた。
「あっちの子がねらい目よ」
「うわぁぁあ、起きてるなら言えよぉ!」
やましい事を考えて居る最中にいきなり声を掛けられた事に驚き、大声をあげてしまった。
「んん? なぁに? まだ夜だよぉ・・・何かするのぉ?」
「お兄がミラにエッチな事するみたいよ。心の準備をなさい」
「え? 待って待って待って。まだ出来てないから、準備はまだなの。もうちょっとだけ」
ミラは、ガバッと飛び起きベットの端に座り、ダメだと断った。
「おいジェニ、お前どうしてそうやって変な風に煽るんだよ」
「そうだよ、ジェニちゃんがして貰えばいいじゃん」
「じゃあ、お兄。して?」
と、胸を少しはだけさせたジェニを、俺は襲い掛かる様に押し倒した。
「エル!ちょっとぉ、私が居るのに始めないでよぅ」
ぐぬぬ、こいつら、結局、煽るだけ煽ってお預けするんだよな……
「私は良いのに……ミラ、気を利かせなさいよ」
「ヤダよ! 無理だよ! ジェニちゃんなら出来るの?」
「……無理ね、寝ましょうか」
「もぉ、いつもかってなんだからぁ」
まったくだ、俺はどうやって寝たらいいんだ。もう元気一杯なんだが。
俺は、彼女たちが半分以上寝に入るまで待ち、声を掛けた。
「じゃあちょっと出かけてくるよ、朝までには帰る」
そして、俺は140レベルの狩場に足を向けた。ここはジェニの言っていた物凄く儲かる狩場、前世もお世話になったジェイルエルダーの森だ。ここでは散々狩りをした。まあ前回の記憶が奪われた場所もそうだった訳だが……あれは適正外の場所で舐め過ぎだったな。今思い出しても馬鹿さ加減に萎えるわ。
そんな事はさておき、俺は早速、金策プラスレベル上げを開始した。それはもう全力で。今は深夜で人も居ない、ここは元から人はいなそうだが。なので、倒した魔物は一か所に集めて放置し、そして魔物の残骸が俺の身長を余裕で超える程の山になった頃に、俺は町のギルドへと転移した。
だが……俺は、失念していた。この時間は流石にやっていない事を……真っ暗な室内で、さて、どうしようかと思っていると……
「おや、こんな時間に人が来るとは。ここには盗む物はありませんよ?」
と、声がして明かりが灯された。
「あ、エイブラムさん、お久しぶりです」
「ん?君は、ああ、公爵様の御屋敷を借りた少年でしたね。って、それは!」
彼は、俺が持ち込んだ素材に目をやり驚愕している。
「まあ、そうなんですけど……今回は最高何キロくらいまで買い取りを予定してます?」
「ええと、そうですね。在庫が2200くらいなので……4000キロくらいでしょうか。ですが今回は、ですか。英雄の大規模な売り以来12年買い取り不可が続いて最近買い取りを開始したばかりですが」
「ちょっと、買い取りに踏み切るまで遅く無いですか? 売りは昔から無かったでしょ?」
「ええ、ここ最近になっていきなり他国からの買い取り要請が頻発しましてね。ですが物知りですね、そのお歳で。」
「あ~、別に言っちゃってもいいか、フェルですよ。生まれ変わって記憶引き継いじゃいました」
そう、彼は前世で関わりを持った数少ない人物で、直接指名依頼を持ってきたこともある。
「そんな、馬鹿な。騙そうとしてもそうはいきませんよ。私の前で英雄の名を騙るとは、流石に看過できませんね」
「ん~なんて言ったら信じて貰えるかな。13000キロ? いや、これは調べればわかるか。うーん、あっこんな言葉はどうです?狂犬は可憐」
俺は、ジェイルエルダーを売ったキロ数を言ってみたが、その事で注目されていたのでそれは証明にならないだろうと、顔を隠していた連れの素顔を彼が見た時に可憐だと呟いた事を思い出したので、その事を話してみた。
「ま、まさか。ですが、その言葉は彼にしか……本当に? ああ、神よ、ありがとうございます。何と言う奇跡。」
「信じてくれたようで、良かったです。今回も、売りに来ました。って、今は時間外ですよね……」
「は、ははは、相変わらず物凄い量ですね。もちろん大丈夫ですよ、私が査定致しましょう」
「助かります。また、上限まで売りに来るかもしれないので、よろしくお願いしますね」
「そうですか、突然の買い取りに少々悩んでいたので、助かります」
俺は彼と昔話に花を咲かせた後、金貨80枚を手にして屋敷へと戻った。少し心配だったジェニとミラを見に行くとまだすやすやと寝ていた。俺が出て行ってから6時間程度か?なんにせよ、俺が起きる前から寝ていたのだ、そろそろ睡眠は十分だろうと彼女達を起こす事にした。
「そろそろ、起きろ。起きないと、俺一人で……」
「起きたわ、今準備する」
「うーん、行ってらっしゃい。むにゃむにゃ」
「ジェニ、急げ! こいつ寝ぼけてやがる。置いてきぼりにして、代償と言う物を思い知らせてやるのだ」
「起きた! 今準備するからぁ、待っててよぅ」
「もう、置いて行く気があるならもっと静かに言ってよね」
そんなやり取りをした後、彼女達を連れて朝食を店でご馳走した後、公爵様の屋敷へと赴いた。
「あら、丁度二人は帰ったわよ。まさかエミール君と良い仲になるなんてねぇ」
公爵様は、出合頭にそう言った。まだ9時過ぎなんだが……ローズがそうしたんだろうなぁ。
「俺も、ビックリしましたよ。世の中どうなるか分からないものですね、姉さん」
「ふふ、記憶も戻ったようで何よりだわ」
「良いんですか?二人をあのままくっつけて」
俺は、エミールとローズがくっついても良いのかと問うた。ローズは躾が終わったら従者に戻すつもりだったのでは無いだろうかと思っていたのだが。
「あら、恋路を邪魔するほど無粋じゃ無いわよ。あの子が自分からエミール君と居たいとそう思ったのなら応援するわ」
相変わらず優しい人だな。いや、ローズに手を焼いていて丁度いいのかも知れない。
「それで、キャロルとチェルシーは……」
「ええ、今呼びに行かせているわ。すぐに来るんじゃないかしら」
「そうですか。面倒を見て頂いてありがとうございました」
「ふふ、二人は優秀だったわよ。良い従者になるわね、私が貰いたいくらいよ」
そんな話をしていると、ノックの後に扉が開き、キャロルとチェルシーが入って来た。とても青い顔をして。俺達三人は驚いて顔を見合わせてからキャロルとチェルシーに聞いた。
「おい、どう……したんだ?」
「エルバート様は、忘れてしまわれたのですか?」
「私達、もう御傍に置いては頂けませんか?」
二人は泣きそうな顔で、俺に問いかけた。
「ああ、記憶はもう戻っているぞ? って、言って無いんですか姉さん」
「だって、エミール君に聞いた後入れ替わりで来たんだもの。説明する暇なんて無かったわよ」
ああ、そう言う事か。と思っていると、二人は泣きながら引っ付いて来た。
「「お願いします。どうか、御傍に」」
「ああ、これからもよろしくな。キャロル、チェルシー」
そう言った瞬間二人は顔を綻ばせ、抱き着こうとしたが、装備の凹凸に邪魔され、腕を掴む事で諦めた様だ。ジェニとミラが、ふふんと自信満々な顔をしている。何に自信を持ったんだ?凹凸を避けて抱き着く技術か?
「じゃあ、村に戻って皆で開拓するか」
「「「「「はーい」」」」」
全員が声を揃えて返事をした。
「いや、姉さんは仕事あるでしょ?」
「はぁ、お飾り公爵なのに何故仕事は本物のがちゃんとあるのかしら」
お飾りって、公爵ほどの地位でそんな事あるのか?こんな真面そうな国なのに。
「まあ、姉さんにふざけた事をいう奴が居たら言って下さいね。愚痴を聞くついでに黙らせて来ますので」
「まっ、頼もしくなって。でも、長くなるからホントに聞いてくれるなら今度一人でね。皆が暇しちゃうだろうから。」
と、姉さんがそう言った。俺に話してくれる気がありそうだ。これは貯まりに貯まった借りを返済できる時が来たのかも知れない。
「じゃあ、今度必ず来ますね。では、今日はこれで失礼します。」
「分かったわ、待ってるわね。」
俺は、はい、と答え『テレポート』と唱え、村へと転移した。そして、双子の姉妹を二か月ぶりくらいに彼らの元へと返し、開拓の作業が再開となった。
「なあ、二人はもう行商人とかレベル上げればできそうだったりするのか?」
「「ま、まだ、無理です」」
「ま、そうだよなぁ。二か月じゃ厳しいよな。じゃあ、また当分は一緒だな」
「「はいっ」」
その、生き生きとした、キャロルとチェルシーの声を久々に聴いて、俺は彼女達の頭を自然と撫でていた。




