逮捕
そして次の日、ルディさんが俺の元を訪ねて来て、あれからの事を教えてくれた。ミルフォード王に報告後、アルテミシア王に話を通して隷属されていた者の大半は解放された。孤児院の者は元の生活に戻り、身寄りがない者は、この国のサポートの元自由な生活に戻って行った様だ。
だが、問題は残っていた。隷属権を分けていた方の奴隷はまだ解放されていないのだ。だから、この案件はまだ終わっていない。
「どうしましょうか? 兄さん。この件に関しては、もうアルテミシアに了承を貰っています。書状も書いて貰ったので好きにやれますが、俺が行ってきましょうか?」
ルディさんにそう言われ、アイリ達を見回した。だが、彼女達の意見は『すべてエルに任せる』と言う物だった。
「俺も、気になって居る事はあります。また迷惑を掛けるのもなんですので俺が行きましょう」
そう、言い切った。もちろん無計画に言っている訳では無い。あの町ではもう領主サイドの人間しか高レベルの者が居ないはずだと言う事もある。だから、俺は一人で行って色々確かめてこようと決断した。
「さっすが、私達のリーダーだ。いつ行くんだ?」
「乗りかかった船だものね。あの子達が助かったからハイさよならって訳にもいかないしね」
「エル、やっぱりエルはカッコイイね。嬉しいよ。私は今からでも良いからね」
エティ、ケイ、アイリは一緒に行く気満々の様だ。確かに心情的にはそうだが、俺は一人で行きたい……もう過去の汚点を彼女達に知られるのはごめんだ……
「いや、大した事は無さそうだし俺が一人で行って来るよ。すぐに戻ってくるから」
俺が、そう言うと、思っていた通り、猛反発を受けた。
「大した事がなかったら一緒には行かないのか?」
だから、俺は、とても適当に
「トイレは一緒に行かないだろ?」
揚げ足を取ってごまかそうと
「いつでも一緒に居たいって言ってたくせに」
のらりくらりと、彼女達の言葉に
「お風呂は別々じゃないか」
言葉を返した。
「私は、邪魔?」
だが、俺はアイリのこの言葉に言葉を詰まらせた。
「……ごめん、正直に言うよ。過去の事を知られるのが怖い。自分ですら何してるか分からないんだ」
さらりと行って、何事も無かったように終わらせたかったが、その為に仲違いをしては意味がない。と正直に話した。
「確かにな、奴隷がどうとか言ってたしな。信じてねぇけど」
「うん、知り合いみたいな口調だったよね。信じて無いけど」
「でも、だからこそ一緒に行こう? 私頑張って支えるから」
アイリの言葉にエティとケイが頷き、連れて行ってと懇願して来た。
「はぁ。記憶が戻ったら自分自身にはバレる訳だしな……でもやっぱり怖いよ……」
俺がそう言うと、ケイが俺に抱き着き、告げる。
「アイリとエティが拒絶したとしても、私が受け入れる。それじゃダメ?」
「「はっ?」」
ケイは二人の威嚇を無視して抱き着いたまま、俺を見上げそのまま口を付けた。
「「ああぁ!!」」
俺は唐突過ぎる行動に驚き、ケイの頬に片て手を添え、見つめたままゆっくりと離した。
「分かった、一緒に行こう」
流石にここまでして貰って怖いから、とは言えず、溜息をついて困り顔で了承した。
「あら、足りなかったのなら、今度はお風呂を一緒に入ろうかと思ったのに」
ケイは少し意地悪そうな顔で笑みを浮かべて、囁いた。
「え? ホントに?」
俺は内容に驚き、さっと振り返った。
「馬鹿~」「あほ~」
振り返った俺に、ご立腹のアイリとエティが、俺に片足を向けながら飛びついて来た。こいつらはどうしてそんなに蹴りが好きなのか、と思いつつ俺は蹴り飛ばされた。
「兄さんはやっぱりモテモテですね。多数と言う事に関しては同情します、俺なら耐えられない」
彼は、俺を苦笑しながら見て同情した。
「はは、それでも俺は、彼女達に出会わなかったらと思うと背筋が凍りつきそうですよ」
そんな会話を交わした後、ルディさんを残し、俺達は名も知らぬ人族の町へとテレポートした。
その後、イライザと言う奴の家を探そうと聞き回った。何故か聞くたびに馬鹿にしてるのか、とキレられ、やっと道を教えてくれた奴は、終始俺を可哀そうな奴を見る目で見ていた。
そして、やっと目的の場所に到着した。俺は警戒をして魔力感知をしてみると、弱い反応が一人だけだった。
「目的の奴かは分からないけど、一人だけ中にいるみたいだな。」
俺は、彼女達に感知した内容を伝えた。
「どのくらい?私達で勝てそう?」
ケイが勝てそうかと問う。
「負けるって事は無さそうに感じるけど、魔力感知だけじゃな」
と、俺はそれだけじゃ分からないと答え、他に言いたい事は無いかと間をあけた。
「じゃあ、行くしか無いだろ? まだ何かあるのか?」
エティのその言葉を聞いて、俺は自分が恐怖で竦んでいた事を実感した。そして、言われた通り行くしか無い。そう思って、警鐘を鳴らす心を抑え込み、足を動かした。
「頼みがある。近くに居て欲しい」
「「「うん。分かった」」」
「だけど、手は出さないで欲しい」
「「「ヤダ」」」
まあ、そうだよな、仕方が無いか。でも、この子達は打ち合わせでもしているのだろうか? はもりすぎだろ。そんな事を考えながら足を進めドアをノックした。扉は開かずに、声だけがした。
「誰だ!?」
奴隷商人は共同出資みたいに言っていたので、名乗るより分かりやすい言葉を行って見た。
「奴隷商人は捕まえた。次はお前の番だ、観念しろ」
俺がそう言うと、ドアが開いた。
「その声、やはり貴様かぁ! エルバートぉぉ!」
その女性は、扉を開けるなり剣を振り上げながら飛び込んで来た。ああ言った以上、警戒をして剣を構えていた俺は、振り下げた剣を避けて剣を持っていた両手を落とした。
「ハイヒーリング、テレポート」
そのまま、転移で全員をルディさんの家の前に転移させた。
「……本当にすぐ終わったわね」
「えげつねぇな……確実だけど」
「エルの知っている人っぽかったね」
三人は少し唖然としていながらも、思い思いに言葉を発した。
「あああぁぁ、私の、私の腕っ。貴様ぁあああ、子供の分際で親を殺そうって言うのかいっ」
「「「子供!?」」」
「悪いけど、記憶に無い。にも拘らずあんたには嫌悪感しか浮かばない。このまま連行させて貰う」
イライザは俺を睨みつけた後、あざ笑う様に言った。
「はっ、やっぱりあいつの子だね。ジェニは捨てたのかい?」
何を意味の分からない事を……と、そう思った。はずなのだが……
「――れだ……誰だ。教えろっ!」
俺はいつの間にかイライザの胸倉を掴み、壁に勢いよく叩き付け、その子は誰なのかと問いただしていた。イライザはいい気味だと言うかの様に薄ら笑いを浮かべてこちらを見ていたが、答える様子が無い。だから俺は、壁に押し付ける力を強めた。
「あっ、多分あの子。私達と戦った時に居た子だと思う。ジェニ、ミラ、エミールってエルが仲間をそう呼んだ事、私覚えてる」
と、アイリが代わりに答えてくれた。イライザは舌打ちをした後、喋り出した。
「なんだい? 妹の名前も忘れちまったのかい? はは、こりゃ愉快だね。そのまま仲違いでもして地獄に落ちな」
イライザは苦しそうにしながらも睨みつけ罵倒した。そんな時、押し付けた壁の隣にあるドアが開いた。
「兄さん、もっと普通に呼んでくださいよ。なんでいつも家の前で騒ぐんですか……」
そうだ。ルディさんの家の前だった……俺は一気に我に返り、ちじこまりながら言った。
「ご、ごもっともです。すみません、これから注意します」
「まあ、良いんですけど。無事に終わったようですね。こちらで引き取りましょうか?」
ルディさんは、俺達が無事だった事に安堵した様だ、これからの事もやってくれるらしい。ありがたいな、是非ともお願いしたい。
「はい、お願いします。これをそばに置いてもろくな事にならなそうですし」
俺は、未だにぶつぶつと恨み言を並べているイライザを見ながらそう言った。
「エティ、俺の体を家まで運んでもらって良いか?」
「んあ? まあ良いけど、甘えん坊だな。よっと」
エティは俺がお願いした通りに俺を抱きかかえた。今すぐのつもりで言ったんじゃないんだが……
「一回だけ掛けてやる。フルヒーリング」
そして、どこまで治ったかも確認できずにエティに抱えられたままで意識を失った。
「おはよ。起きたか、甘えん坊なエル」
俺はエティの声で意識を覚醒させた。
「む、随分心外な評価だが目は覚めた。ありがとな、エティ」
そんなやり取りをしながら、目が覚めた。ここはもうおなじみの場所、俺がおいて貰っている部屋のベットの上だ。三人ともベットの周りで椅子に座っている。
「どこまで……治った?」
俺は、小声で、囁く様に聞いた。
「手首の関節の辺り……よ」
ケイが目を伏せながらも答えてくれた。
「そうか。なんかあれだな。記憶が無くてもなんかやっぱり、嫌だなぁ」
「当たり前じゃない。エルはよく頑張ったよ」
アイリはそう言ってくれた。
「所で、俺はどれくらい寝ていたんだ?」
MPが全回復している。少なくても5時間近くは寝ていたと思うが。
「10時間くらいじゃ無いかな? 私達も結局一緒に寝ちゃってさっき起きたばかりだし」
と、アイリが教えてくれた。そんなに寝ていたのか。ん? 一緒に? 一緒に?
「ここで?」
と、俺は自分が寝ているベットを指差して聞いた。
「そんな訳無いでしょ。自室にすぐ戻ったのよ、あんたがすぐには起きない事は分かってたから」
ですよねぇ。でも、そんなに遅い時間じゃ無かったよな。
「なんだ? 寝ている俺の顔でも見て釣られて眠くなったのか?」
と、ケイを見てニヤリとしながら聞いて見ると。
「はぁ、あんたの為に寝たんでしょうが。まったく」
俺は何の事だから意味が分からず、彼女達を順に見まわした。そして、エティが口を開いた。
「じゃあ、次はエルの妹って奴に会いに行って見るか。気になってるだろ?」
俺はエティのその言葉に目を見開き、それと同時に意も知れぬ戸惑いを覚え、困惑した。
「いや、いいよ。うん、どこにいるのかも分からないんだしさ」
俺は、会いたい。姿を見たい。と、言う気持ちに襲われながらも、迫りくるような恐怖を同時に感じて断ってしまった。
「じゃあ、どこに居るのか調べよっか」
「そうね。あの時オルセンの王都に居たって事は分かってるんだし」
と、アイリとケイがそんな俺の表情を見透かしたのか、探せば良いと言って来た。
「ケイ、なんでお前がそんな事知ってるんだ? 私達がオルセンの王都行った時はエルバートの事知らなかっただろ?」
エティは、どうして自分が知らない事をケイが知っているのかが不思議だった様だ。
「はぁ、エルは王都のギルドで依頼を受けたはずなの。なら一緒に居たのは間違いないでしょ? 馬鹿ね」
ケイは、推測すれば分かる事だとエティに言った。
「知ってたし、うるせーし」
そして、姉妹喧嘩が始まってしまった。少し待ってみても言い合いが終わらない事を見かねたアイリが、二人に声を掛けた。
「もう、止めてよぉ。なんでそんな事で喧嘩するの?」
「「いつも面倒かけるアイリには言われたくない」」
二人は言い合いを止めて、アイリに声を揃えて言った。
「あ~ひどーい。もういいよ、私達だけで探しに行こう喧嘩を止めない二人はほおっておいてさ」
アイリは俺に目配せをして、秘儀、置いて行こうとすれば喧嘩が終わる。を発動した。
「あ~あ、叫びながら魔物を狩りに行きたい気分になって来たわ」
ケイが納得がいかないと言う顔をして、アイリに向かってそう言った。
「まったくだな。私のバカー、バカー、なんて言いながら、戦闘中に行動停止でもしてみるか」
エティもそれに乗っかり何故か標的がアイリに移った。アイリの秘儀は不発に終わり、カウンターを食らった。言い返せない言葉を言われたアイリはとうとう泣き出してしまった。
俺はアイリの頭を撫でてあやしている最中、何という毛並みの良さ。と、泣き止んでからもひたすらアイリの髪の毛を弄っていた。
「ありがと、もう大丈夫。だから……ね?」
そう遠慮がちに顔を赤くして、撫でる俺の手を掴み下に置いた。少し心残りを感じながらも俺は今日の所はと、撫でるのを諦めた。
「おい、それでどうするんだよ。王都マイヤーに行くのか?」
エティが話を戻し、これからどうするかと言って来た。
「そうね、エル、テレポート出来る?」
と、ケイに聞かれたが。
「いや、だから分かんないって。また適当に飛んでみるか? でも、どこも家の中なんだよな、記憶があるのって……そのほかの大半は森の中だし……前回みたく廃墟じゃ無いと思うから覚悟がいるかも」
人の家に勝手に上がり込むことになってしまうかも知れないぞ。と、懸念事項を前もって説明した。
「ああ、そうなるのか。まあでも、歩いて行くよりそこで謝った方が早くねぇか?」
「そうよね。エルの知り合いの可能性が高いのだし。ちょっと怖いけど」
「エルに任せる。多分それが一番だから」
エティ、ケイ、アイリはそう言って来た。まあ、そうだな。確かに何日もかけて行くくらいなら、ある程度大丈夫そうな所に飛んでそこが何処か確認した方が得策な気がする。
「じゃあ、取り合えずで倉庫みたいな場所に飛んでみるか」
俺は記憶の中で一番人が居なそうな場所を選び、取り合えずそこに飛んでみようかと言って見た。
「「「はーい」」」
どうやら賛成の様だと言う事を確認して、変な事にならない様にと願いながらその場所へと転移した。
「テレポート」




