躾
そして俺達は、初めての宿を出る事になった。
「ここに住みたいくらいだったな」
俺がそうつぶやくと全員が同意した。
「まあ、そんな事不可能だけど」
そう、この宿は高級宿だ、この二日で、金貨一枚以上は飛んでいるだろう。宿の者に一部屋一泊の金額を聞いた時、俺達はかなり引いた……
「これからどうするんだ? いい加減狩りに行きたいんだが」
エミールがそう、言い出した。なので、俺は提案した。
「じゃあ、ギルドで討伐系の依頼受けて、狩りをしながら、金も稼ごう」
俺の言葉でジェニ、ミラ、は思い思いに口を開く。
「あ、そうね、そろそろ稼げるはずよね」
「でも、どうしたの? 双子ちゃん働かせたり、何か買うの?」
違うな、働かせる為に、金が必要なんだ……世知辛いな。
「いや、彼女等の住む場所は用意してやらなきゃダメだと思うだろ?」
俺は、皆に向けて、質問をした。
「……確かに、金は寄こせ、だが家は無い。とかダメな奴過ぎよね。」
そうだな、あの母さんですら、家と言う物は与えた。
「え? じゃあ、お家借りるの?」
と、ミラはぱぁっと顔を明るくして聞いて来た。
「お、とうとう俺達の家が出来るのか? やっべーな」
エミールも口に手を当てて、にししと、笑っている。
三人は賛成の様だ。
「はっ、今更金を貯めだすとは無計画な奴だ、そんな事だから宿も取れぬのだ」
ローズがまた、茶々を入れて来た。だから、俺はローズの顔面を殴り付けた。
「ぐっ、いきなり何をするっ!」
頬を抑え、眉間にしわを寄せた。余裕そうなのを確認したので、さらに強く蹴り飛ばして床に転がし、踏みつけた。
「おい、お前は何だ?行って見ろ」
俺は、ローズを見下ろし無表情で問う。
「こんな事をして、許されると思っているのか……」
彼女はにらみつけ、反論をして来た。俺はさらに強さを上げ、何度も蹴りつける。
「おい、誰に向かって口を聞いている」
「ぐは、痛い、止め、止めろ」
少しだけ余裕が無くなって来たのを確認し、強さは固定したが、さらに続ける。
「そろそろ、理解したか? お前なんだ?」
俺は再度、ローズに問う、お前は俺の何なんだ? と。
「ど、奴隷……です。だから、もう止めて、下さい」
俺を睨みながらも、彼女は涙を堪えながら、必死に答えた。
こういう事をしたのが、久々だったからか、他の者達も目を見開き驚いた顔をしていた。
「予定を変更してローズ、お前は俺と二人で別行動だ。分かったな」
そして、黙って見ていた三人は、ようやく口を開いた。
「まあその内こうなるとは、思っていたけど……正直腹立つしな」
と、エミールが俺も腹が立っていた、と言い。
「だねぇ、逆に良く我慢してたよね」
ミラが遅い位だと、言った。
「あら、馬鹿ね。お兄は別にそんなに怒って無いわよ? やらないと生きていけない事、としてやっているのよ」
ジェニはそれは違うと、二人に告げる。そして俺は、三人に向かって口を開いた。
「悪いが今日は三人でギルドに行って、依頼を適当に受けて来てくれ、稼ぎの方は考えなくていいからさ。最初だしな」
「はいよ。でも、どうするんだ? お前たちは」
エミールは、お前まさか……と言う顔をしながら俺に聞いて来た。
「ああ、こいつを追い詰めて、色々理解させる」
俺がそう言うと、エミールは引きつった顔で『やり過ぎるなよ?』と、言った。
「エミール、それじゃダメよ。私はそのやり過ぎって奴を希望するわ。それでも、ただの子供だった私達より緩いんだから……本当の奴隷の立場って物を理解しなさい」
「ジェニちゃんちは異常だよ? うちも叩かれるけど焼かれた事までは無いもん。せいぜいミミズ腫れが痛くて寝ずらい位だよ」
そうなのか、まあ大体は分かっていたが……
「そ、そうだな、うちも火で脅されたり、水に落とされたりしたけど、死にそうになる程はやらないし」
なるほどな、やっぱりそこら辺で止めて貰えるもんなんだな。
「……分かった。それを踏まえて、少しは常識的にやろうと思う」
二人の俺の家への評価を聞いて、ウィシュタルでも異常だった事を再認識し、追い詰めるレベルを落とす事にした。
その間、ローズはただ青い顔をして蹴られた箇所を手で押さえながら、地に座り放心していた。俺は落ち合う場所を決めた後、ジェニたちと別れ、ローズを引きつれて適正60レベルの森へと移動した。
「なっ……こんな場所自殺行為だ。何故こんな場所に来た」
ローズはレベルが合わなすぎる事に慌て、自殺する気か? と問う。そんな彼女に、俺は、彼女を蹴り付けながら、言う。
「ここなら、魔物の集団性もない。まずはお前のレベルを上げる。失敗をする度に痛い思いをして貰うから、そのつもりでいろ」
俺は、ただ躾をするのは時間が勿体ないと感じ、これからの稼ぎを上げる為、ローズのレベルを少しでも上げて置こうとしここに連れて来たのだ。
「ま、待って、下さい。痛い思いの前に死んでしまう。私はこんな格上の狩場なんて初めてなんだ。だから、戦えない、です」
彼女は、俺のレベルを察したのか痛い思いをするのが限界なのか敬語が混ざり始め、戦えないと告げる。
「そうか、なら、死ぬだけだな」
俺のその言葉に、ローズは強い反応を示した。
「ふざけるな、お前は腹いせに私を殺そうと言うのか!」
ローズはキッとにらみ、使いかけていた敬語を止め、ふざけている。と声を荒げた。
「じゃあ、一応聞いておいてやる、お前は今、何レベルなんだ?」
と、大まかな予想はついていたものの、どこまでかは知らない、もしかしたら10レベルを超える格上かも知れないと、思い、しっかり確認しておく事にした。
「今、57レベルになったばかりだ。だから……」
俺は予想よりも高かったレベルを聞いた瞬間いら立ちを感じ、彼女が吹き飛ぶくらいに蹴り飛ばしてしまった。彼女は木に叩きつけられ転がった。
「お前、甘ったれるなよ? 俺達よりいい装備で、たった3レベル上の狩場で何言ってんだ?」
ちょっと、強すぎたか? と感じながらも、甘ったれすぎだろ。と彼女に言った。
「じゃあ、お前は適正より上の狩場で狩りが出来ると言うのか……」
蹴りが相当聞いたのか、怒りの姿勢は解いていないものの、弱りながら、反論して来た。
「はぁ、面倒な、良いだろう、俺は今97だ、適正105の狩場に移動するぞ」
俺は、近場に同じく集団性の低い、105の狩場がある事を思い出し、先に手本を見せてやると告げた。
しかし、エミールも言っていたが……最近本当にレベル上げをしていないな、と思い、ちょっと行きたくなって来た、と思っていると。
「な、97……だと、嘘をつくな。私だって今まで必死に上げて来たんだぞ」
ローズは俺のレベルに気が付いていなかった様だな、同じ年でレベルに差がある事に食いついて来た。
「はっ、ここで狩る事もビビってるのに何が必死だ。笑わせんな、俺がやれる事を見せたらお前の番だからな」
そう、彼女に告げ、俺達は狩り場を移動した。
「待て、待ってください。こんな所無理だ。思い直してくれ」
ローズは、死んでしまうから、無茶な事は止めてくれと、懇願して来た。でも、まだ余裕がありそうだな。こんな言い方が出来るのだから。
「うるせぇな。見てろよ、俺が死ねば解放されるんだ。好都合だろうが」
もう森に入っている。俺も来るのは初めての狩場、敵の攻撃方法までは知らない。集中していた。だが、うるさくされては先手が取れない事もあり、俺は初めて命令と言う物をした。
「ローズに、俺、エルバートが命じる。俺が死んだと思ったら、確認せずに逃げていい、だから物音を立てず静かに付いて来い」
そう告げると、彼女は沈黙を守り、音を立て無い様注意しながらついて来た。命令すげぇと、感心したが、すぐに気持ちを切り替え索敵を始めた。
種族 ビーニードル
年齢 1歳
レベル 107
種族 ビーニードル
年齢 1歳
レベル 104
見つけた。二匹なら丁度いい、そう、思った俺は、首を横に振り半泣きのローズを置いて、走り出した。即座に後方から近寄り、104レベルの方を一撃で一匹の羽ごと胴体を叩き切り、襲って来たもう一匹と、
相対して、戦闘を開始した。
名前の如く針を飛ばし、クールタイムはある物の何度も飛ばして来た。余りの速さに驚き、遮蔽物を頼りに隙を伺わなくてはならない状況だった。俺は木の後ろに隠れ、神経を集中し、音を頼りに剣を振りながら、予測で攻撃を避ける為に体をずらした。
予測は当たらず、俺の攻撃が先に当り、敵は攻撃を後ろに発射して、地に突き刺さった。だが、討伐は完了して、俺は次の魔物を探し始めた。だが、ローズが俺の裾を掴み涙ながらに顔を横に振り、終了を懇願した。
「はぁ、しょうがない。じゃあ出るぞ」
俺は、ローズを連れて、森を出た、そして命令を解いた瞬間彼女は泣き出した。
「ひっく…ひっく…怖かった、怖かったよぉ……もう……やだぁ……」
もう、俺を気にする余裕も無い様だ。もう少しだな、とか思いながら俺は先ほどの森へと、歩を進めた。
「と言う訳で、俺は嘘を言っていない。やれ」
ローズは涙を流し、口をへの字に曲げ、地面に座り込んだ。もう心がボロボロです。と言う顔を必死にアピールしていたが、俺は再度告げる。
「これは命令でやらせたんじゃ意味が無い、良いからやれ。それと助けないからな」
追い打ちの意味じゃ無い。助けがあると分かった状態で格上とやり合ってもあまり意味は無く、過剰な自信は身を滅ぼすだけだからだ。
そして、言う事は言ったと、動かない彼女のかわりに索敵をして上げて、俺と同じ二匹を彼女の前まで連れて来た。
「索敵はしてやった。もうすぐ来る、敵も二匹だけだ。感謝しろ」
俺は良い状況でやらせてやると、ありがたく思えと、そう告げ、気配を消しつつ彼女の前を走り去り、大木の裏に隠れた。完全に標的が彼女に切り替わった事を確認して木の上を伝い近づき、様子を伺おうとしたが、彼女は震え、辺りを見回した後、膝を付き顔に両手を当てたまま、泣いていた。
これは、絶対に死んでしまう、と、ため息を付いた俺は、木から即座に降り、彼女の前に立った、ぎりぎりだったが、魔物の攻撃をはじき返し、結局俺が倒してしまった。
「はぁ、ダメだな、使い物にならない。こりゃルクレーシャ様に返すしか無いかな……」
俺は、蹲って動かない彼女を無理やりお姫様抱っこで連れ帰り、町に戻って来た。彼女は移動中泣きながらも俺にしがみ付き、下せそうに無かったので、町の手前までは抱っこしてやった。
「ほら、そろそろ降りろ、町の中までこんな格好はお前も嫌だろ」
そう告げると、彼女はゆっくりと降りて、俺を見て告げた。
「もう、怖いのは、嫌です、お願いします。言う事は聞きます。だから、許して下さい」
「はぁ……怒ってやった訳じゃ無いんだがな。お前は、やっぱり何も考えずに生きているんだな」
そう告げると、ダメだしされた事を感じ、彼女はビクッと震えて恐る恐る声を上げる。
「どう……して……ですか?」
「お前は俺達の置かれていた状況を知らずに、ただずっと、知らないから認めないと言い張って来たんだ。だから、さっきの言葉や前に言っていた事、まあレベルを上げる努力を怠っていると言って批判しただろ。だから、言葉の責任と言う奴をとって貰おうと、お前はどこまでやれるのかを見せて貰おうと思ってな」
そう、自分が口に出した事、それは状況によっては責任を取らなければいけなくなる。当たり前の事だ。エミールは平民と言う立場でタメ口を聞いたから殴られた。こいつは奴隷と言う立場なのだから俺からしたらそれと同等の扱いをしてもローズの理論なら許される。
こいつは自分の言っている事が矛盾している事に気が付いていないのだ……
俺は躾の為に優しく教えてやったが、分かっただろうか?
「あ……え……そんな事で……」
分かって無いな、ダメだったか。まあルクレーシャさんがお手上げになるくらいだもんな。
「そんな事、か。お前はそんな事で、死んでもおかしくない立場に落とされる事をしたのを理解してないのか?」
「うっ……そう……でした。ごめんなさい」
理解は足りていないが、少しは分かったようだな……一日での変化としてはまあ、まずまずか? そう思った俺は、どうしても聞いておきたかった事を今更ながらに聞いた。
「よし、本題に入る、真剣に答えてくれ」
俺は、ローズの両肩を掴み、真面目な表情で、口を開いた。
「ほ、本題……今までのは……」
ローズは今日の恐怖体験は本題では無かったのかと、少し戻って来ていた表情をまた青くして口ごもった。
「それは、お前の為だ。俺の為じゃ無い。良いか、真剣に答えろよ?」
と、俺はローズに俺にとってはどうでも良い事だと告げ、再度、真面目に答えろと前置きをする。
「私の……わっ分かりました」
彼女は気を取り直し、了承した。そして、俺は本題を告げる。
「お前と、初めて会った時に」
「はいっ」
「調理して渡してくれた肉、何をどうやって味付けしたんだ?」
「はい?」
ローズは首を傾げ、何を言っているんだろう。と言う顔をした。
「お前……覚えていないのか? まだそこまで経ってないだろ? てか思い出せ、それは重要な事なんだ。」
と、俺は必死にあの時の調理方法を思い出せと、お前の躾より重要なんだよ。と告げると。
「ぐっ、覚えてます……」
そう言いながら、ローズは歯を食いしばり、こぶしを握りながら、答えた。
その答えを聞いた俺は、ローズを引きつれ、町を回り、調味料と言う物を買いまくった。俺は、味見をして飛び上がり、テンションがハイになり、ローズに対して、ジェニ達と同じように接して町を回り散策を続けていると。
「ご、ご主人様」
と、ローズは頬を染めながら、初めて俺を主人と認める発言をした。
いつもより、少し短めです、もう少しすれば、
ようやく物語が進行しそうな気がします。気がします。
大まかな事以外は、その都度考えながら書いている状況になりつつあり、
若干更新が後れそうな気がします。
まあ、普通はもっと更新は遅いみたいなので、平常運転になる気がします。
いつも読んで下さりありがとうございます。 オレオ




