幻滅
俺達は、三日間の道のりを経てようやく王都にたどり着いた。流石に王の住まう都だけはあり、整備された道に家が立ち並び、立派なお屋敷がちらほら見らる。お店もとても多い。行き交う人々の数が段違いだ。
「うぉぉぉ、これが王都マイヤーかぁ。すっげぇな」
エミールはお気に入りになった槍の柄を、地に突き立て、町を眺めうなりを上げる。
「苦労して来た甲斐があったね! 早く行こうよう」
ミラよ、どこに行くのか分かっていないのだが、どこに行こうと言うのだろうか。
「お兄? どうしたの? 考え事?」
「ああ、これから、何をしようかと思ってな」
そう、俺はこれからどうしたらいいのかを迷っていた。
「ルクレーシャさんの所に行くんじゃ無いの?」
「ああ、それは行くさ、その後だよ」
彼女は、俺達にご飯をご馳走する。としか言っていないのだ。それすらも、どこまで本気で言った言葉かすらも分からない。
「ああ、そっか。確かに会いに行ったからこれからが決まる、って訳でも無いのよね」
「そうだ。まあ、取り合えず顔を出してからにするか」
そうして、考えるのは用事を済ませてからにしようと決め、頷き合った。
「ねぇねぇ、その人ってさ、よく話に出て来た人だよね? どんな人なの?」
と、ミラが会話に入って来て興味を示した様だ。
「「……お人好し?」」
俺達は困ったような表情で声を揃えた。
「なんだ? 標的にするのか?」
と、エミールが久しぶりに聞く言葉を吐いた。
「いや、それは無い。俺達全員の命の恩人だぞ?」
「いや、全員って……ミラと俺は知らない人だろ?」
あれ? 言った事無かったっけか? と、俺は思い、その理由を口に出した。
「お前、この装備くれたのは彼女だぞ?」
「んあ? そうだったのか? ああ、そりゃ恩人だ。俺もお礼を言いたくなってきた」
エミールは取って返したように、じゃあ行こうと言った。
そうと決まれば。と、俺は通行人にルクレーシャさんの家の場所を聞いてみた。
「すみません。ルクレーシャ様と言うお方の御屋敷がある場所を教えて頂きたいのですが」
「ルクレーシャ様? ああ、公爵様の御屋敷?」
俺達は全員固まった。
「ええ? ルクレーシャ様は……公爵様だったのですか?」
「そりゃ、高貴な身分でその名前っつったら、そのお方しか俺は知りませんよ。お屋敷は此処から見えますあの一番大きなお屋敷ですよ」
と、通行人の彼は俺達が関わり合いのある者だろうと言うだけで、大人の彼が敬語を俺達に使い場所を教えてくれた。
「どうしよう。ホントに行くの?」
ジェニは珍しく怖がるように聞いて来た。
「ここまで来て何もせずに帰るのか?」
「私~、お礼言いたい。この装備無かったらエルが死んでたもん」
俺だけか? と思ったが、きっと刺されたあの時の事を言っているのだろう。
「だな、俺もお礼はちゃんと言って置きたいぜ」
などと、乗り気の発現を聞いたので、なんとなく屋敷に向かっていると、いつの間にか屋敷の庭へとつながる大きな門の前までたどり着いてしまった。
「「「「「「……」」」」」」
全員の視線が俺に集中した。ですよねぇ、リーダーって損ばかりだな。と思いながらも門番をしている者に声を掛けた。
「あのう、すみません」
俺は意を決して話しかけた。
「ここは、マクレイアー公爵閣下の御屋敷だ。子供が近づいて良い場所では無いぞ?」
うん、俺も思うよ。でも、まだ引くほどの言葉を貰って無い。断られるにしても、もうちょっと付き合って欲しい。と、心の中で思いながら、要件を告げた。
「いえ、ええと、ルクレーシャ様に気に入ったから尋ねて来いと言われまして……」
「……ステータスの確認をさせろ。一応、名前は取り次いでやる。だが悪戯なら今すぐ去れ、反逆罪になる可能性もあるからな」
……悪戯なので帰ります。って言っていいかな?と、ジェニを伺うと、わき腹を突かれ『お兄、早くしなよ』と、せっつかれた。会ったのは一度だけ、あれはリップサービスかも知れないじゃん、はたまた別人でからかわれたのかもしれないだろ。などと考えながらもステータスの表示をした。
「むっ、失礼した。通れ」
あれ? まだ取り次いでもらって無いよ? と思っているうちに門が開き俺達は招き入れられた。
「待って、待ってください門番のお方」
俺は必死にくぐった門の先から声を上げた。
「……なんでしょうか?」
何故か対応が変わった……
「ええと、ここからどうしたら良いか分かりません。俺達ただの平民なんです。せめてお取次ぎを……」
「そ、そうか、済まなかった。では、しばらく待て」
そう言うと代わりの門番を呼び、彼は屋敷の奥へと俺達を連れて進んでいった。その途中、何故何も聞かずに通してくれたのか、を話してくれた。
「お前はな、何も聞かずに通して良いリストに入っているんだ。逆に追い返してしまったら俺がお叱りを受けてしまうからな」
と、彼は話してくれた。そして、ドアノッカーを叩くのすらすべてを任せ、俺達はただついて行った。そして門が開き、彼女との対面をするのだろうと思って誇りを払ったり服を整えようとしていたが、メイドに迎え入れられた。そうか、当然だな。と思いながら、うつむき頭をかいた。
「今、主様に声を掛けて参りますので、そのままお待ちください」
メイドは俺達にそう告げ、部屋を出て行き、物凄く立派な客間に俺達だけが取り残された。
「おいお前達、絶対に触るなよ、絶対だぞ?」
「んな、分かってるって。マジ高そーだよな」
「絶対に高いわ。何このキラキラ」
「きれぇー」
俺達は思い思いに客間の感想を言い合い、沈黙した。
「あの、私達居てもいいんでしょうか?」
ずっと黙って居た双子の姉キャロルが問いかけて来た。
「いや、それを言ったら俺もあった事ねーし。いいんじゃね?」
楽天家のエミールさんは、変わって欲しいと思う位余裕そうだ。だが、お前には任せたくない。
そして、ドアがバーンと開き、見覚えのある二人が入って来た。
「ふふ、本当に来てくれたのね、良かったわぁ。あら、お友達が一杯いるのね。今夜は夕食が楽しくなりそうだわ」
と、ルクレーシャさんは相変わらずの様で、おっとりとした空気で微笑んでいる。
「久しぶりだなエルバート、ちょっとは男らしくなったか?」
ローズは何故か俺が男らしくないと思っているらしい。ちょっとムッとしたが、ここは公爵家。俺は必死にスマイルを心掛けた。
「お久しぶりです、ルクレーシャ様、ローズ。俺達以外の者を連れて来てしまって申し訳ありません。相変わらず貧乏人なので、宿も取っていないものですから。」
まず、俺は俺達以外の者を連れて来てしまった事を詫びた。他の者が居づらそうにしていたからだ。ルクレーシャさんなら大丈夫だと言ってくれるだろう。
「まったく、装備をやったのにレベルを上げていないのか? 少し上げれば宿を取るくらい稼げるだろうが」
だが、俺の目論見を遮り、ローズが茶々を入れて来た。
「まあね、だけどさ、無駄遣いしたら装備を新調する事すら出来ないじゃないか」
「もう、ローズ、あんなに遠くから私達に会いに来てくれたのよ。他の皆も据わってゆっくりして頂戴、今夜はご馳走するから」
ああ、やっぱりこの人は気が利くな。
「あの私、ミラって言います。ルクレーシャ様、装備をくれてありがとう。エルの命を救ってくれて本当にありがとう……ございます」
と、ミラは深く深く頭を下げた。
「あら、とても大変な思いをしてきた様ね。お話を聞かせて貰ってもいいかしら? ミラちゃん」
ルクレーシャさんはミラを手招きで誘い、俺達と少し離れた場所に腰を下ろした。
「それで、お前たちは何しに王都まで来たんだ?」
なんだ、来いって言ったのはそっちじゃ無いか。いや、ローズは否定的だったか?
「まあ、行く当てが無くなったから。かな」
「家に帰らなくていいのか? 両親が心配するぞ?」
心配か、大激怒はしてるだろうが……
「うちは母親しか居ないけど、多分戻ったら俺は殺されジェニは売られる。だから帰れないんだ」
「そんなバカな話があるか。口ではそう言っていても、そんな事は親ならしない」
……何と返そうか。いい加減さっきから遠慮が無さ過ぎないか?
「なら親では無いんだろうな。まあ、どちらにしても叩きのめして出てきた訳だし」
「なん……だと……貴様は母親を叩きのめして家を出たのか? そんな事をする為に主様は装備をお前たちに譲った訳では無いぞ!」
ローズは激怒し、俺を突き飛ばして来た。俺はいい加減頭に来ていたが仲間も居る、そしてジェニがいる。不用意な真似をする訳には行かない。
「じゃあ、どうしたら良かったんだ?」
と、俺が諦めた様に言うと、ジェニが割って入り感情をむき出しにした。
「ローズ、お兄はね、毎日金を稼いで来いと言われ叩かれて金を持っていかれて、その上で食事はこっちで用意して、躾だと手を焼かれたり、遊びで骨を折られたり、機嫌が悪かったから気絶するまで水に漬けられたり、12年間も耐えて来たのよ? 貴方にその気持ちが分かるの?」
ローズは目を見開き驚いた表情をして、首をかぶり振った。
「そんな事をする親が居るはずがない。一度や二度、強く当たってしまっただけだろう」
ジェニはため息を吐き、俺を抱きしめながら、俺の装備を剥がしていった。
「この傷は、腐っていた床を踏み抜いてしまった時に壊した代償として、こっちの火傷はつまみ食いした時の折檻の方法だとやっても居ないのに焼かれた。骨折は私の知ってる限りで9か所、お兄は言わないからもっとだと思う。まだ、説明した方がいい?」
ローズは認めたく無さそうにしていたが、ジェニが私は捨て子で本当の親じゃないと言った事で、何かに納得した様に謝って来た。
「そうか、私が悪かった」
と、頭を下げて黙り込んだ。
「あらあら、ローズはもう少し勉強をしないとダメね。人族の一部の町では割と普通な事なのよ。その中でもこんなにも愛らしく育った子供たちだから、私は手を貸してあげたいなって思ったんだから」
ルクレーシャさんは分かっていた様だ。だが、一部なのか? 俺にとってはあれが普通、だと思っていたが。
「でも、主様……私は認めたくありません。子どもが親を殴るなんて」
最初の聡明なイメージが台無しだな……泣きそうじゃ無いか。……なんか訳ありそうだな。
「もう、しょうがない子ね。貴方はもっと色々な物を見なくてはいけませんね。私は、代わりに殺してあげたい、と思いましたよ。胸が苦しくなるほどに」
本当に人が良いんだな。俺達は『代わりに死んでほしい』と言う言葉しか聞いた事がない。
「主様が、そんな事思うはずがありません」
「いいえ。彼、いえ。人族の子供が先に彼女に殺されてしまわなければ、私は人をやり殺させたでしょう。私はあの時、初めて殺す事を躊躇った自分を恨みました」
そうか、ルクレーシャさんはそういう思いで俺達に手を貸してくれたんだな。俺は関係無かったけど何故かすごくうれしい、自分たちを認めて貰えたような気がする。
「そんな……そんな事、おっしゃらないで下さい」
とうとう、泣いてしまった。彼女、ローズは崩れ落ち、前とは髪型が違い長く真っすぐ伸びた髪が床に付き、口をへの字に曲げ、切れ長の目からボロボロと涙をこぼしている。凛とした彼女の面影がかけらもない姿だ。俺は、相当の事情があるのだろうと思うと怒りが収まった。
「貴方にこの話はもうしたく無いと思ったのだけれど、もう一度だけ言うわ、あの男ですら子を持てば親になるの。親になったからと言って本当に心が歪んでいる者は、何も変わらないの。あなたの大事な存在は清き者であっても、そうでない者も多々居る。それを知って頂戴」
彼女は泣き止み、かわりに険しい表情に変わり、低く小さな声で『はい』とつぶやいた。
「よし、この話はおしまいっ。エルバート君、聞いたわよぉ~。ミラちゃんを助ける為に相当無茶をしたみたいね」
ん? 俺が無茶したのはお金の為だが……ミラめ、相当美化して話やがったな。
「いいえ、違いますよ。お金の為にやったのに、こんなのが付いて来る事になってしまったのです」
「意義あーり、いくら何でも、こんなのって酷いよう」
「あら、照れているんじゃないかしら、だって真実は一つよ。売れる状況かでも売らなかった。それに、大事にしてくれてるんでしょ?」
そう、ルクレーシャさんが言うと、ミラは赤くなり顔を両手で抑えもじもじしていた。そんなミラを俺はスルーして会話を進めた。
「それはこいつエミールが、どうしてもやりたいから売らないでと言うものですから」
その言葉を聞いたエミールは飛び跳ね、周りを伺うようにきょどり始め、周りに聞こえてしまう小声で反論して来た。
「ちょ、おま、ふざけんなよ。そんな事、言ったとしても言わなかったって事にしてくれるもんだろ?」
「そうだな、悪かった。お前は言ったけど、言って無いよ」
俺も、エミールにならって、聞こえる様に小声で言った。
「あらあら、エミール君はやんちゃなのね。ダメよ~、女の子は大事にして上げないと捨てられちゃうんだからね」
「あう、は、はい。でも俺ミラの事好きだし、本当に無理やりになんて……」
エミールは固まった。言うつもりは無かったのだろう。
「ごめんなさい。私にはエルがいるから、諦めて?」
「……そう、だな、好きになれって言われてなれるもんじゃ無いし、分かった。諦める」
はっ? お前……いいのかよ。って思うけど、俺が言う訳には行かない所が切ないな。
「まあ、男らしいのね。じゃあ、そんなエミール君には可愛い女の子紹介してあげるわ」
「でも、そんなに早く切り替えらんねーし、いいよ」
と、エミールが精神状態が普通では無いせいか敬語を忘れいつもの口調でしゃべると、ローズがいきなりエミールを殴り付け、罵声を放った。
「貴様、なんだその口のきき方は。無礼だ、無礼過ぎる。」
それを見たルクレーシャさんは、予想外過ぎる出来事に絶句している。だが、それはいい。それよりも俺はもう限界だ、何なのこいつ。エミールは振られたショックでそれどころじゃ無さそうだし。
「おい、お前、いい加減にしろよ? 今のは間違って出ちゃっただけだろうが。さっきから人の粗を探しながら色々言ってきやがって。お前は本当に従者なのか? 主の意志にしたがってねーじゃねーか」
確かにエミールが悪い。身分の違いとはそういう物だ。だが、今回はルクレーシャさんがわざとエミールがそうなる様に仕向けた節がある。それを確認もせずに自分が気に入らないからと殴りつけたのだ。
「なんだと、貴様、ふざけるな。あんな口を叩いておいて、悪く無いとでもいうつもりか!」
ルクレーシャさんは額に手を当て、呆れたように上を向きため息を付いた。
「ああ、お前みたいな奴は知っているよ。頭に来るとその事にしか目がいかなくなって真面な行動も出来ない奴だ。心が弱い証拠だな。お前は男は男はってうるさいから、自分は女だから弱くても良いとでも思っているんだろ?」
俺はいつになく感情が高ぶり、昔なら絶対に避けて通る道を自分から進んで行ってしまった。
「もう許せん。そこまで侮辱されては黙って居られない。決闘しろ、叩きのめしてやる」
「ローズ、貴方は私の意志も問わずに私のお客様に手を上げ、なおかつ決闘をするつもりなのですか?」
彼女は冷たい目をして、ローズに止めろと言った。
「ルクレーシャ様、止めないで下さい。私だって武家の娘。ここまで言われては引けません」
だが、彼女はそれに従わなかった。
「素直に言えよ。ムカついたから言う事は聞かないって」
俺は、決闘でも何でもするつもりでいると、ルクレーシャさんが俺に言葉を掛けて来た。
「エルバート君、あの子のした事は謝ります。だから抑えて貰えませんか?」
そう、ルクレーシャさんがとても困った様に、俺に頭を下げた。
「え? い、いえ、あの、ルクレーシャ様……そんな、止めて下さい。分かりました。ですから頭を上げて下さい」
俺は命の恩人である事を再認識し、今は尊敬に値する存在になっている彼女に頭を下げられるのはとても嫌で、恩を少しでも返せるならこの位安すぎると思い、感情を殺して場を収める事にしてローズに向かって土下座をした。
「申し訳ありませんでした。すべて謝罪致します。どうか、お許しください」
そして、ローズは言葉を返した。
「な、き……貴様、プライドは無いのか。私はお前を許せない、だから断る。決闘しろ」
「ルクレーシャ様の御許しがあれば、お受けいたします」
と、俺は土下座を続けながら判断を彼女にゆだねた。ルクレーシャさんは目を見開き『はぁ、これではどちらが従者か分からないわ……どうしましょう』とつぶやいた。
「もうっ、分かったわ。それで気が済むのね? でも真剣はダメよ。木剣で、ちゃんと回復薬で回復可能な攻撃をする事。分かった?」
そう、彼女はいい。俺はローズと決闘をする事になった。そして俺達は、中庭に出てこの場で決闘をする事になった。
「なあ、エル。どうしてあんなに怒ったんだ? 俺が痛めつけられたからなんて事は無いだろ?」
「俺は、お前の気持ちを知って居たし、俺が何か言っちゃダメだと思ってた。だから半分は八つ当たりだ。何故か家の事情とか突っかかってくるし、従者と言って置きながら主を無視するあほにむかついた。って何言ってんだろうな。俺、可笑しくなってるのかも。はは、どうでも良い事じゃ無いか……」
「まあ、あんがとな。けど、別に言いたい事は言って良いって、らしくないぞ」
そう、エミールは鼻をかきながら、礼を言って来た。
そうして、俺とローズは木剣を取り、向かい合った。
「ふん、立ち合う勇気だけは認めてやる。だが、お前は私が倒す」
「木剣のチャンバラで勇気とか言われても、まあ、痛いのは好きじゃないからお手柔らかに」
煽ったつもりは無かったが、思った事を返してしまうと百パーセント煽りになってしまう彼女が悪いなと思いながら、さらに顔を赤くさせた彼女との決闘が開始された。
「いくぞ、ハッ!」
と、何故か掛け声をかけて速度を抑え走ってくる彼女に、俺はどうやって負けようかと考えていた。どう考えてもこれは勝ってはいけないだろう。あれだけ馬鹿をやれる公爵お気に入りの従者、武家の娘とも言っていた。ここは無様に負けて、彼女の自尊心を守ってやる方が断然得だ。
まあ、公爵の護衛をして居る程だ。下手な考えをしなくても、普通にやれば負けるだろう。と思い、俺は接敵した。そして、ある程度の強さを図る為につばぜり合いをして、俺は絶望した。こいつ……レベル50も無いんじゃ無いか? 弱すぎんだろ。レベル50近く離れていて木剣じゃ、三文芝居にしかならない……
「ぐっ、やるな。だが、これならどうだ」
と、彼女はぶつぶつと詠唱をしてから、先ほどとは段違いの速さで攻撃をして来た。俺は、これならやられる事が出来る。と思い、手を抜こうとしたら、ルクレーシャさんが割って入って来た。このままでは彼女が叩かれる事になってしまう。それは色々と不味い。立場上どうやっても俺達が悪いのだ、下手をしたら俺達は重罪人として処刑されてしまう。
だから俺は、無理やりに彼女の前に出て、頭を打ち付けられ倒れた。そして、気絶……している振りをした。俺は結構気絶の振りには自信がある。ジェニも気が付いた事が無いのだ。生きる為の知恵って奴だ。俺は回復薬を流し込まれ、苦しかったが流し込む様に飲んだ。
そして、俺を抱えたルクレーシャさんがローズに言葉を放つのを聞いていた。
「ローズ、貴方今、私の事を殺そうとしましたね。彼が居なければ私は死んでいたでしょう」
ん? いや、それは違うんじゃないか? 俺を殺そうとしている所に割って入ったんだろ。
「いや、そんな、私はこいつを叩きのめそうと……」
「私の言葉を無視し彼を殺そうとして、止めに入った私まで攻撃した。これは事実です」
「……処分は受けます」
少し、今のローズがどんな顔しているのかが見たい。だが、目を開ける訳には……
「よろしい、では貴方は彼の従者、いえ、言う事を聞かないのでは意味がありませんね。貴方はエルバート君の奴隷になりなさい。期間は私が貴方を認めるまでです。それを罰としましょう。それすらも受けられないと言うのならば、この騒動、貴方をかばう事は出来ないでしょう」
やばい、俺はこんなのいらない。だけど言葉を出せない……俺は今気絶しているのだから。
「……わかり、ました」
と、ローズが答えた瞬間、俺は最近感じた事のある様な殺気を感じた。
「お兄、気絶した振り止めてくんない? 私、知ってたからね? 昔から」
な、なん……だと……ぐぬぬ、どうする? 俺。まだ粘ってみるか? いや、ジェニのあの言い方は確信している時の物だ、仕方が無い。そして、俺は目を開くと目の前に大きな山が二つそびえたっていた。
「ああ、良かったわ、エルバート君。それとありがとう、助けてくれて」
ルクレーシャさんはそう言うと俺をそのまま抱きしめ、俺は柔らかい者に包まれながら殺気に包まれた。俺は彼女の肩を掴み引き離し、口を開いた。
「待て、俺は何もやって居ない」




