対決ハーピー2
飛び上がってからそれほど時間を経たずして俺は切り立った山の中腹辺りだろうか洞窟のような岩場の隙間で放された。俺は飛び上がって数秒で落ちる方が危ないと判断し暴れるのは諦めた。
降りた岩場は意外と広く5、6人は寝転がれる位の広さがある場所だった。奥には寝床にしているのだろうか藁とか木の枝をまとめて作ったような場所があったがそれ以外は何もなかった。俺を降ろした後にハーピーも近くに降り立った。ああ。俺はここでハーピーの餌さとして一生を終えるのか。
とそこで俺はサクラちゃんに貰った巾着袋を思い出した。
「こういう時の隠し武器とか…………。」
急いで袋を漁ると中から出てきたのは生の芋が一つとあと中指位の長さの木の枝が一本のみだった。
「あの猫ー!なに考えてやがんだ。発信器すらねーじゃねーか。」
終わった…………何もかも皆さん……さよ……
「タマゴ…………ツクル。」
「へ?」
「コドモウム。」
ハーピーは真っ赤な顔をうつ向かせてもじもじしながら俺にとんでもないカミングアウトをしてきた。こいつは突然何を言ってるんだ?カタコトの喋り方であるが今間違いなく『卵を作る』『子供産む』と言ったはずだ。
「お前、俺を食べるために拐ったんじゃないのか?」
「?ニンゲンハタベモノジャナイ。レーノア、ニンゲンハコドモウムタメノモノシッテル。」
どうやらこの子の名前はレーノアというらしい。しかも本当に食べるために俺を拐ったんじゃないようだ。そして話を纏めるとやはり俺を使って子供を作りたいと言うことになる。まさか作戦会議中にサクラちゃんと話をしたことが本当のことになるとは…………。とは言え話は出来ない相手では無さそうだ。
「なあ、話は分かった。」
「ウン。ジャアスグニハジメル!」
もじもじしていたレーノアは一転満面の笑みを見せた。今までちゃんと顔を見る機会はなかったが大きな目が特徴的な女の子だった。
「ちょ、ちょっと待って。そうじゃなくてだな。話をしようぜ。会話。分かるか?」
「?」
小首を傾げてこちらを見るレーノア。理解が出来ていないのだろうか?もっと砕いて言わないとダメか?
「うーん。そうだな。自己紹介だ。分かるか?自己紹介。お互いの事を教え会うんだよ。俺の名前は栗原章太郎。章太郎な。」
「ショ・ウ・タ・ロ・ウ?」
「おお!そうだ章太郎だ。お前はレーノアでいいのか?」
「レーノアハレーノア!」
言葉はしっかり通じているようだ。徐々にではあるが会話らしくなっている。
「よしよし。じゃあレーノア聞くよ?レーノアは何処から来たの?」
「レーノアアッチカラトンデキタ!」
そう言ってレーノアは岩場の外を指差した。その方向は狐の集落とは反対の方向だった。
「一人でここに来ているの?」
「レーノアタチハオトナニナルトヒトリダチスルー。タビヲシテアイテヲミツケル。」
「じゃあ今は旅の最中だったんだ。」
「ソウ。ココデヤスンデタ。オナカスイタカラタベモノサガシテタラアッタカラタベタ。」
「ここ以外でも休んだりしたの?」
「ウン。ナンドカ。」
どうやら全体像が見えたみたいだ。恐らくこのレーノアが旅をしている最中に休んだりした近くの集落に食料を求めて入ったのだろう。その結果同じような畑荒らし案件がいくつも上がってきたのだろう。ということはレーノアをなんとかすれば万事解決…………。
「レーノア何を?」
考えを回らせていると不意にレーノアの翼が俺を覆った。つまり抱きついてきたのだ。
「ショウタロウスキ」
「お、おい。何を突然。」
顔を俺の胸の辺りでスリスリとさせ甘えてくるレーノア。ちょっと、いや、かなりマズイ。鳥なのに獣臭いということはなくなんだかとっても甘い香りがする。しかもハーピーとは言えレーノアは裸であるので俺の服越しでもレーノアの胸の感触が伝わってきたのだ。これは男としてマズイ。
「タビオワッタ。ショウタロウミツケタカライイ。ダカラコドモウム。」
「待て待て待て待て待て‼な。ちょっと待とう。」
何とか理性を保ち俺は急いでレーノアを引き剥がした。このままでは本当に本当になってしまう。なんとか一旦気を反らささないと…………。
「そうだ。腹へってないか?芋があるぞ。」
「タベル!」
もしかしたらこのためにサクラちゃんが芋を準備したのかもと袋から芋を取りだし与えてみた。生でも大丈夫みたいでモグモグと食べていた。今のうちに何か考えないと。俺は必死に頭を回転させた。
書いてて寝落ちしたのでこの時間の投稿です。
まだ続くようです。
次回はサクラちゃんパートになりそう。